抜戸岳東面 秩父沢左俣奥壁
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- GPS
- 32:00
- 距離
- 19.3km
- 登り
- 1,760m
- 下り
- 1,754m
コースタイム
- 山行
- 7:50
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:50
- 山行
- 12:00
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 12:10
天候 | 晴れ 笠ヶ岳の予報(最低-4℃最高4℃) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
先週の高温で不安定な雪は落ち切った状態だった。柔らかくなったデブリが大量にあった。 |
その他周辺情報 | 荒神の湯 |
写真
装備
個人装備 |
ワカンは持って行かなかった。どっちが楽かは微妙なところだけど無くても平気だった。
|
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共同装備 |
カム類0.3-4を1.5セット
ピトン5枚
ボールナッツ
ナッツ
トライカム
ペッカー大
イボイボ1
アルパインドロー10
スリング120×3
捨て縄5m
|
備考 | 5mの捨て縄がビレイ点の補強に使えた。スクリューがあれば使えたかも。緊急用にボルトを携行してもいいかも。トライカム大き目は不要。 |
感想
秩父尾根についてはI川さんやW田さんの記録を見て知った。異様な岩峰群に度肝を抜かれた。
それから永らく、秩父尾根は自分の中の行ってみたいリストに加わっていた。行くなら残雪期が良さそうだと考えていた。
こういう怪しい岩場は人を選ぶのだけど、最近近所に引っ越してきた成田が好きそうだ。提案してみるとすぐに乗ってきてくれた。
その後タイミング的に、遠征トレの日程と被る、ということでガンバルゾムメンバーも一緒に計4人で行くことになった。
ところが直前になって、成田が膝を痛め不参加に。結局、自分、雄大、西田の三人になった。
水木夜のパッキング中にガンバルゾム遠征の動画を見ていたので、金曜夜当日西田に会えた時は、画面の中の有名人にあえた気分だった。
23時に新穂高に着き、仮眠準備をしていると何故か雨。路面もびしょびしょ。これから谷の中に入ることについて心配になり、3時間弱の睡眠時間もあまり眠れなかった。
2時半起床、3時過ぎに歩き始め。2人とも静かに歩くタイプだ。林道の雪は柔らかく、20cmほど沈み、ときおり踏み抜く。この時間でこれかよ。
先頭は二人が主にやってくれた。体力つけなければ、、。
7時前に秩父沢出合着。そこらじゅうデブリだらけ。先週日曜日のものだろうか(先週、高山21℃)。周りの様子を見る限り、不安定なものは落ち切っている印象だった。不安は払拭された。
沢を詰める最中、落石が度々転がってくる。一度、30cm程の岩が近くをかすめて危ない所だった。和田さんが登ったという左稜の末端が現れ、次に秩父尾根の末端が現れた。尾根というには傾斜が強すぎる。そして噂通り脆そう。。明日登攀できそうなラインと、ビバーク適地を探しながら沢を詰めていく。
左俣を2550mまで登ると、沢を2分する岩稜の末端があり、落石から守られた適地があった。幸い水の滴りもあり水筒を補充することもできた。
3人とも寝不足で、テント張ることもなくマットの上で昼寝をした。日向で温かく、いい眠りだった。目を覚まし、周りに目をやると、秩父尾根の側壁がすごい。雪田から垂れる氷柱が宙に延び、クラックが多数走っていて、(岩が硬かったら)いいルートになりそう。
相談の結果、まとまった長さのクライミングができる秩父沢奥壁が第一候補になった。偵察へ。下から見た感じ、この傾斜・形状なら経験上登れそう。そして、ピックで岩を触ってみる。かなりボロい。。過去一の悪さかも。これは経験上登れない。。
意外だったのは、所々ベルグラが張り付いていたこと。だだこれも繋がってはいない。
岩場には鳥が何羽かいて驚いた。のどかだけど、鳥が動くと落石かと思ってドキッとする。
自分は夜、シュラフに入っていると弱気になる。この日の夜も、「少し登ってボロボロの岩にお手上げとなって敗退すんじゃないか。その時は右手の楽しそうな岩稜を提案しよう」なんて思いながら眠りについた。
翌日、5時にテントを片付けデポ。この時、対面の槍ヶ岳にヘッドランプの明かりが見えた。こっち側からの景色は新鮮だ。
1ピッチ目は氷指数高そうだったから、リードジャンケンは辞退した。Nに勝ったYがロープを2本つけて登っていく。岩の基部で奇跡的にとれた支点でビレイ点をつくり、クライムオン。命をかけるような壁じゃないので、無理せずに行けるところまで。
1P目 30m WI4 R
Yが淀みないリズムでアックスをふるっていき、順調にロープを伸ばす。ベルグラをノープロで登っていく。ピナクルと、5m先のストッパーでビレイ。
2P目 30m - 振り子
ベルグラを頼りに5mほど登ったあと、何度も行ったり来たりしている。左下に氷のラインがあったようで、支点を幾つか取った後、ロワーダウン。雪氷と草付のMIXをランナウトし、岩とピナクルでビレイ。
3P目 30m 50° R
傾斜が一気に落ちたので簡単になったかと思ったが、岩がスラブとなり悪い。壊れそうなベルグラだけを頼りにひたすらランナウト。クライムダウンはできない内容だったので、戻れない線を超えていく感覚だった。ベルグラパートから岩のふちに辿り着いてもなかなか支点がとれず、やばかった。なんとかカムがとれる岩まで辿り着きビレイ。
4P目 35m C1 (M6~7 ?)
登り始めようとしたとき、ビレイ点付近の岩が崩れてぞっとした。
ラインは顕著なコーナーを登っていく。素手とアックスを駆使して登るものの、クラック以外のホールドが乏しく完全にパンプ。浮石への対処にも神経をすり減らされ、核心部はカムエイドを交え必死かつ慎重に超えた。フォローも(トライカムの回収があったので)ぶら下がったようだ。アックスフリーだとM6~7ではないかとのこと。カム、ナッツでビレイ。
5P目 25m WI5 or M5-
氷のルンゼ。上部ハングから垂れた氷を、凹角の形状を利用して登るのが核心。スクリューがあれば良さそう。ランナウトで登った西田は強かった。カムと灌木でビレイ。
最後は雪面を登っていき、50mほどで稜線に出た。雪庇に気を付けて2792のピークへ。槍や笠、白山、そしてあまり行ったことのない北ア中部の山々が見えた。雄大がピークへ抜けるクライミングは久しぶりと言っていたが、確かにこういうルートはそう多くない。
情報の乏しい壁を、自分達の眼で観察し、先の見通しが不確かな中、ジリジリと進んでいく。スケールこそ5Pと小さいものの、自分にとっては大満足のクライミングだった。
心配していたビバーク地点への下降だが、秩父尾根南の谷から容易に戻ることが出来た。西田が終電を気にしていたので急いで下山。
荒神の湯につかり、カトマンズ ナンハウスに寄って帰宅した。
和田さんに情報提供のお礼と登った報告をしたところ、去年出版された飛騨山岳会の本「夢紡がれし岩と尾根」の事を教えて頂いた。その本によると、秩父沢奥壁は1961.1に冬季初登されていて、最後の2ピッチはラインも同じだった事が分かった。あまりに昔だったこと、そして当時の登山スタイルについても大変驚かされた。岳人167号にも掲載されているそうなので、機会があったら読んでみたい。
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