吹雪の明神平でテント泊: 桧塚奥峰往復
- GPS
- 13:34
- 距離
- 23.9km
- 登り
- 1,405m
- 下り
- 1,391m
コースタイム
- 山行
- 4:02
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:02
天候 | 雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
最近、長男が唐突に雪山の上でテント泊をしてみたいと言い出した。しばらく前に私が学生時代の雪の稜線上でのビバークの思い出を語ったからだろうか。煌々とした月明かりに照らされた雪原、銀嶺の彼方に拝むご来光とモルゲン・ロートに染め上がる山並み。雪山の泊まりならではの醍醐味である。しかし、最後の雪山泊からはいつしか、かなりの時間が過ぎてしまっている。まず4シーズン用のテントは2人用のものしかなかったので、3人用のものを新調。3月の下旬までほとんどの週末が出張の予定で埋まっており、泊まりがけが可能な週末は今週しかない。かくしてテント泊を前提とした山行が計画されることとなった。
重装備を考慮すると車で登山口まで行けるところがいい。長男の学校が終業してから登山口に向かうという大きな制約が加わる。あるいは夜間登行を覚悟するか。比良方面は週末は天気が悪そうであるが、大台ヶ原方面は土日は晴れの予報。ということで選んだのは台高山脈の明神平であった。
大又までは道路には雪は全くなかったが、林道に入った途端に雪道となり、ノーマルタイヤでは全く上がれない。買ったばかりのチェーンスパイクの装着を試みるも備品の不良のためか接続の金具がなく、諦めて大又に戻るも16時半である。ほどなく雪も降り始めた。林道の近くの雪の上でテントを張ろうかと提案するも、ここでは物足りないと息子は不服である。林道終点まで歩いて、登山口にテントを張るか、いよいよ夜間登行である。スノーシュー、マット、冬用のシュラフ、テントに食材をあわせると、やはり久しく担いだ記憶がないような相当な重量だ。歩行開始5分ほどで、駐車場の車の脇にポールを忘れてきたことに気が付き、再びスタート地点に戻るが、これで汗をかくことになった。
林道を歩いているうちはなんとか薄明かりの中で進むことが出来たが、駐車場に辿り着く頃には完全に夜の帳がおりる。数台の車が停まっていたので、上でテント泊をされている方々が少なからずいるということか。林道終点を過ぎて登山道に入ると間もなく渡渉である。引き返すことも考慮したが、暗い谷筋が明るくなるまで待つことを考えると、進んでみることに。その後も次々と渡渉が現れるが、ロープの助けを借りて、なんとか渡りきる。暗闇の中を見回すといつしか、樹々にはしっかりとした霧氷を纏っている。幽界の中を彷徨っているかの如く何とも神秘的な夜の光景である。
トレースのしっかりとついた雪道を辿り、突然、視界が開けたところに飛び出すと明神平であった。広々とした雪原に孤立する樹々が散見する光景が目に飛び込む。あしび山荘の脇にはすでに先客のテントがある。小さな東屋があり、風雪も強かったので、東屋の下にテントを設営することに。設営が完了し、テントの中に入ってみると、以外に暖かい。気がつくと汗で濡れた髪はびっしりと凍っていた。大人は早速、ビールとワインで乾杯である。重たい思いをして酒だけで2L以上担ぎ上げたのだが、教育上よろしくなかったかもしれない。
翌朝は相変わらず吹雪が強いままである。早朝からの行動は諦めて、テントの中でゆっくりと朝食を作ることに。荷物をまとめてようやくテントを出立したのは9時近くであった。スノーシューを装着して歩き始めると、雪がしまっているせいか、ラッセルが必要なほどには沈まない。評判に違わぬ霧氷の美林の中を行くが、前日までにつけられていた筈のトレースは風雪で完全に消えている。桧塚奥峰までは樹々の幹に赤テープが頻繁につけられているのと、尾根道であることもあり、ルートを辿りやすい。桧塚奥峰山頂からは雪の中にうっすらと桧塚本峰が朧げな姿を見せる。眺望に恵まれるなら往復したいところだが、到底、この吹雪の中を往復する気にはなれない。霧氷も十分に堪能することが出来たのでここで引き返す。
明神岳への復路は、驚くことに今しがた3人でつけてきた筈のトレースがすっかりと消えているところが多い。初老の夫婦に出会うが、どちらからいらしたんですかと怪訝な顔で聞かれたので、明神平と答えると、トレースがなかったのでと驚かれる。その驚きは我々も同様である。
明神平に着いても吹雪はいっこうに収まる気配はない。広い雪原での吹雪はホワイト・アウトの危険に晒されやすい。昨夜、天理大学の脇にテントを張っておられた方々かと思うが、楽しげなソリ遊びを堪能されている嬌声が雪の彼方から聞こえて来たときは最初は幻聴かと思ってドキリとした。こういう状況で暖をとることが出来るテントがあるというのは有難い。ゆっくりと昼食を楽しむ。寒さのために昨晩のうちにスマホのバッテリーがかなり失われてしまっていたのだが、充電用のバッテリーに繋いでようやくスマホも域を吹き返す。テントを畳んで、下山しようかという頃になってようやく吹雪も収まり、わずかに青空が顔を覗かせる。
既に多くの登山客が往来したのだろう。昨夜に登ってきた時には柔らかかった足元は踏み固められてガチガチである。早々にスノーシューを外す。下山路からは霧氷に彩られた樹間から屹立する薊岳の稜線が鮮やかだ。時折、雲の中から洩れ出る陽光が樹々に一瞬のシルエットを添えるのが、慌ててカメラを取り出す私をあざ笑うかの如く、シルエットは雪の中に溶けていく。昨夜登ってきた暗闇の向こうに広がっていた世界は何と美しかったのだと、改めて思う。暗闇の中、緊張した渡渉も難なく渉り、後は大又の駐車場までをひたすら歩く。
様々な緊張を強いられた山行であったが、泊りがけの雪山は今季はこれで終わりと思うと、過ぎゆく季節に切なさを憶えるのだった。
青いFFの車の方ですか?
チェーンをつけようとしておられた時に白のエブリィで対向した者です。
車で登れなかったようですが明神平でテン泊できて良かったですね!
青空と霧氷が見れる時にまた訪れてみて下さい、最高の明神平です。
温かいコメントどうも有難うございます。対向の際にはご迷惑おかけしましたが、ご親切な対応に救われました。積雪期登山を再開したのは最近であり、恥ずかしながらスタットレスを装着していなかったのですが、その必要性を痛切に感じました。仰る通り、何度でも訪れたいと思うところであり、可能であればまたテン泊したいと思います。また赤ゾレ山、薊岳、池木屋山といった山々への縦走への思いを強く抱いて、地図を眺めていたところでした。
登山口までの往復、お疲れ様でした。
さぞかしお酒がおいしかったと思います。
東屋〜あしび山荘のあたりは風が強かったでしょう。
正月に登った時は、天理大WVの小屋の裏が風の影でしたよ。
コメント有難うございます。折しも、たった今、wattan様の年越しの明神平のレコを再び拝見していたところでした。wattan様のレコを拝見して、明神平でのテン泊の想いを強く抱いたことを思い出しつつ。私達がテン泊したところはこんなところだったんだ・・・テントの半分のみがテーブルの上で、道理で傾斜がきつかった訳だと、とお写真を拝見して納得した次第です。コメントを頂いていたとは感激です。実はレコでは詳しく書かなかったのですが、天理大WVの裏には数基のテントが張られておりました。東屋の北側、あしび山荘側の吹き溜まりのせいで少しはましだったのではないかと思います。風の影とは素敵な表現ですね。ルイス・サフォンのベストセラーを思い出しますが、私も使わせて頂きたいと思います。どこかでお会い出来ますことを願っております。金剛山、お疲れ様でした。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する