権現山北西尾根〜蓬莱山〜森山岳☆朝陽に輝く晩秋の静かな池へ
- GPS
- 04:59
- 距離
- 11.9km
- 登り
- 988m
- 下り
- 1,111m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
下山後、江若バスで中村集落の葛川学校前より平へ |
写真
感想
早朝の好天が期待されるこの日、久しぶりの長男との山行先に選んだのは権現山から蓬莱山を経て森山岳に至るコースである。山行の一つの目的は長男に権現山から小女郎峠に至る稜線、そして蓬莱山から森山岳に至る稜線の魅力を伝えることであった。長男は学校の登山同好会で蓬莱山から小女郎ヶ池を経て下山しているのだが、上記のコースは勿論、歩いたことはない。一昨日、鈴鹿にむかう途中で、琵琶湖の対岸から眺めた時には比良の上の方は白くなっていたので、少しは雪が残っていることも期待したいところである。
まずは権現山である。この山に登るのに平の集落からまっすぐに山頂まで突き上げる北西尾根を登ることにする。この尾根は最近の台風後も含め、明るいうちに幾度か通っているので倒木による通過困難な場所、迂回する方法は頭に入っているつもりである。
平の集落の北に車を停めると、集落の北側から尾根に取り付くと容易に杉林の尾根に取り付くことが出来る。尾根の下部では倒木が集中するが、すぐに明瞭な尾根になる。ひとしきり杉の植林地の急登を登りきると尾根の勾配が少し緩くなり、自然林となる。空には雲が多いが、雲の間から零れ落ちる月明かりで十分に林の中は明るい。
もう一つ、この日、期待していたのは十六夜の月であった。アラキ峠を経る一般登山道は山頂に至るまで終始、杉の植林地の中を歩くことになるので、折角の月明かりの中を歩行することが楽しめないのである。月下山行でなく日中であってもこの北西尾根の方がはるかに魅力的な尾根であるが、下山の場合は集落の裏手に出ないように着地点に注意する必要がある。
あたりが一段と明るくなったかと思うと、先程までは空を広く覆っていた雲がなくなり、煌々と輝く月が林の中まで冷たい光を放っている。先頭を行く私はヘッデンの明かりを消して月明かりの中を歩く。再び杉林になると、その下端では倒木が集中する箇所に出る。尾根がなだらかになる場所で風の通り道となるのであろう、昨年の台風でもとよりかなりの倒木があったのだが、今年の台風によるダメ押しの一撃で、それまで何とか通過可能であった尾根筋は折り重なる倒木でほぼ通過不能となってしまった。ここは尾根の北側の斜面をトラバースして倒木地帯を避ける。
倒木地帯を無事、通過すると、再び急登となるが、あとは山頂直下までは倒も下草もほとんどない、歩きやすいルートとなる。山頂が近づくにつれ、あたりは急速に明るくなってゆく。空が白み始めた頃にアラキ峠からの一般登山道へと出る。
権現山に限ったことではないが、斜面を登りきった先に琵琶湖が飛び込んできた瞬間の景色の壮大さには相変わらぬ感動を覚えるものだ。この日の出前の早朝の時間は尚更である。東の空はラベンダーとブルーグレイのパステルカラーを混淆した幻想的な色合いを見せる。
山頂に辿り着くと丁度、チリンチリンと熊鈴の音がホッケ山の方へと去ってゆくところだった。ご来迎まではまだ時間があるので、ホッケ山に向かうことにする。ホッケ山の山頂直下、ヒメシャラの樹林を抜け出したところで後ろを振り返ると丁度、東の鈴鹿の山の上から日が昇り始めるところであった。朝陽のプリズムを受けて冬枯れの斜面は赤銅色に輝いてゆく。
山頂から北東の方向を眺めると、琵琶湖の湖面は雲海で覆い尽くされており、あたかも湖面が沸騰しているかの如くだ。湖は南に行くにしたがって雲海は薄くなり、丁度雲海が切れたあたりで、やがて湖面に朝陽の反射が始まる。
残念ながら、期待した雪は跡形もなく消失している。その代わりに登山路で目にしたのは霜で薄化粧を施された下草である。凍てついた蕨や笹の霜も柔らかいピンク・ゴールドの光を浴びている。
小女郎峠から小女郎ヶ池の方をのぞくと、丁度、山陰となっているせいで、池のあたりは夜の残滓が漂っているようだ。池の畔に辿り着くと、朝陽が池に差し込むのを待って、インスタントのクリームパスタと家内が用意してくれたおにぎりで朝食とする。
蓬莱山への稜線の上が徐々に明るくなり、やがて朝陽が顔をだす。池に光芒が届くまではわずかな時差がある。ようやく水面に光が差し込もうかという時になって急にあたりが暗くなる。なんと揶揄うかのように、大きな雲が光を遮るのであった。
そろそろ引き上げる潮時のようだ。池を周回して再び小女郎峠に出る。太陽は相変わらず雲に遮られたままだが、そのお陰で湖面に反射する光にカメラのレンズを向けることが出来る。
蓬莱山への登りにさしかかると、上から権現山の山頂で聞いた熊鈴の音がして、トレラン・スタイルのソロの男性と出遭う。栗原から早朝に登られて蓬莱山の山頂で日の出を楽しまれておられたとのこと。
蓬莱山の山頂に到着すると、琵琶湖の北から武奈ヶ岳が視界に飛び込む。百里ヶ岳の手間では小入谷にも雲海が湧いている。日中にこの蓬莱山の山頂に到来すると、ゴンドラで上がってきた多数の観光客の中を前にして妙な居心地の悪さを感じずにはいられない。自分と彼らの間に現実と非現実の境界があるのは分かるだが、どちらの側にいるのかわからなくなる戸惑いを感じるのは私だけだろうか。久々に(4ヶ月ぶり)、この早朝の蓬莱山山頂を独占する喜びを長男と共に味わう。
ここからは森山岳へ向かう。尾根上の笹が減っている気がする。最初は季節のせいかと思ったが、鹿の食害が気になるところだ。
森山岳手前の鞍部に差しかかると掘割式の古道が現れる。落葉が堆積した古道を森山岳のピーク直下まで辿ってみる。この古道はピークの南をトラバースして西側の尾根へと下っていくようだ。森山岳が近くなるとブナが続く美しい尾根となる。ブナの葉はすっかり散ってしまって、林の中はとても明るい。
まずは北に進みむと眺望のよいピークで森山岳を振り返る。森山岳の展望台であり、秘かなお気に入りの場所である。ここから長池までは非常に複雑な地形なのだが、少しは地形と池のある場所を覚えてきたように思う。山稜の間にひっそりと佇む池を探り当てて、次々と訪れていく。
多くの池は既に水を失っているところが多いが、わずかに残っている池の水は秋の碧天の深い青を反映して美しい。落葉の絨毯の上には朝の光がブナの長い影を落とす。冬になって湖面が凍りつく前にもう一度、来ることが出来るだろうか。
長池は、池の大部分が草が生えており、湿原と化している。冬に家内と長男と訪れた時はこの池の上で昼食としたのだった。晩秋の朝の池はどこまでも静かであり、心ゆくまでゆっくりと時間を過ごしたいところではあるが、車を停めた平集落まで戻るのに朽木から京都方面に戻るバスを捕まえなくてはならない。
最後は鉄塔尾根を下る。尾根の上部は先日の台風21号でかなり荒れたようである。送電線巡視路のプラスチックの階段を巻き込んで根こそぎ倒れているブナの樹がある。途中から斜面の南側の杉の植林地の中を通過するところがあるのだが、ここはもとより杉の倒木で相当に荒れているところに、さらに今年の台風が追い打ちをかけたようだ。羊歯の生い茂る斜面の北側に踏み跡をみつけ、快適に下る。
鉄塔尾根の一番下の鉄塔まで下ると、ここから眼下に見下ろす展望はよいのだが、下山路が問題だ。送電線巡視路は遠回りになる上、相当に荒れている。今日はバスの時間を気にして先を急ぐ必要があるので、オシロ谷の渡渉点を目指して右手の谷へ尾根に沿って下っていくにする。送電線鉄塔の一番下まで下ると馬酔木の藪があるので、その手前から尾根を目指す。
斜面をジグザグに下ってゆくと、やがて尾根上には見覚えのある倒木の積み重なりが見えてくる。ここを避けて谷筋におりると造林公社の看板がある。ここからは一度、沢を渡渉するとすぐに沢の左岸から斜面をトラバースしてくる送電線巡視路と合流して、もう一度、沢を渡渉する。前回は6月の雨の後で、とりわけ水量が多かったのだが、今回は驚くほど水量が少ない。
杉の植林地の中につけられた明瞭な巡視路を下ると、伐採地に出る。伐採地の中をを下っていると、すぐ下のR367を京都バスが通過して行くのが見える。あともう少しであった。京都バスには乗り遅れたが、有り難いことに次善の手段がある。
中村集落の手前では、以前は多数の倒木を乗り越えなければならなかったのが、倒木は綺麗サッパリと跡形なく片付けられている。雨戸が閉められた民家の前ではススキと紅葉が美しい。バス停に辿り着くと、堅田行きの江若バスがまもなく来る。お陰で午後の山行の約束に無事、間に合うことが出来るのだった。
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