野塚岳、トヨニ岳、ピリカヌプリ、ソエマツ岳


- GPS
- 152:00
- 距離
- 48.6km
- 登り
- 2,599m
- 下り
- 2,657m
コースタイム
- 山行
- 8:20
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:20
- 山行
- 4:25
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 5:05
- 山行
- 6:10
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 6:30
- 山行
- 4:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:00
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 8:20
- 山行
- 8:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:40
- 山行
- 7:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:10
アクセス | |
---|---|
コース状況/ 危険箇所等 |
ニオベツ川林道→野塚岳、トヨニ岳、ピリカヌプリ、ソエマツ岳→東尾根 【記録】 翌日の予約をしにいったら、泊めてくれた。親切な浦河のタクシー会社の事務所にて前夜泊。三陸沖には976mbの低気圧。ニオベツ川林道から入山。凍り付いた林道をスキーで歩いて、終点近くの飯場に忍び込む。寒い、風のつよい日で、途中、廃棄されたマイクロバスの中で風を避けたりした。スキーを履いたままシールでバスに乗り込んでネーベンを食べた。 翌朝、野塚岳とオムシャヌプリの中間に登る尾根に取り付き、スキーが潜らなくなった所でバッケンを外し、板だけ捨てる。山岳部では、日高の入山の林道ラッセル用に要らない板をはずして捨てる手を使う。林道は長いけれど稜線では殆ど役に立たないからだ。板はスキー部の部室裏でいくらでも拾えるし新品だって千円で買える。 これは小学校の時から使っていた安物の、青いラインの入った板だ。父ちゃんに買ってもらった奴だ。去年、札幌に板だけ送ってもらって、ジルブレッタの125番をつけて、山ではくようになった。板の表に恵廸吉従逆凶とステッカーが貼ってある。日高でスキー板を捨てる度、その板で訪れた山々のことを思う。この板は150センチしかないので、ラッセルは人より潜り、沢の渡渉でよくスノーブリッジを落としたものだが、くるくるとよく回転し、ヤブをくぐりぬけるパチンコスキーには威力を発揮した。 アイゼンに替えてからはこの尾根はすこぶる快適に、稜線に躍り出ることができた。南日高の丸い主稜線は、かわいい曲線でできている。オムシャヌプリも野塚岳も三角の二つ並んだ双耳峰で。野塚の二つのピークの間にトヨニ岳のぴらぴらした白い稜線が見えた。野塚の山頂につくと、そのトヨニの北峰なのか、果たしてピリカなのか、遠い三角がいくつも重なっている。はるばるピリカに憧れて南日高までやってきた。ピリカはどれだどれだとみんなで探すが、まあ、行きゃわかるか、と煙草で一服。稜線はよく晴れ渡り、太平洋に面した緩く曲がった海岸線は釧路の方まで続いていた。二つの野塚を越えて、稜線の雪が潜りだしたら、東向きに雪洞を掘った。トヨニ岳が城砦のように見上げられる天場だ。 雪洞を出ると、あたりは朝の光で黄金色に染まっていた。金メッキをかけた様なトヨニ岳にしばし見惚れる。左右に均衡よく伸びたスカイラインが大きなトヨニ岳全体のボリュウムを絞り上げている。アイゼンをきしませ、愉快に出発したが、程なく腰までのラッセルに。トヨニの手前の岩稜帯は乗ったり巻いたりして通過、最後のナイフリッジはソガベツ川源頭がパックリと切れ落ちた細い稜線。2、3歩、下を見たくないところがある。アンザイレンして通過。トヨニ南峰に登って、ピリカヌプリがそれと判った。 南日高では群を抜いて、その南面に極端な高度差が有る。左右のたおやかな稜線はどこまでもその傾斜を変えない。山の大きさの印象が、これまでと段違いだ。なるほど名前もいい筈だ。トヨニの北峰にいたって握手。ピリカの左には神威岳が見え始め、果てしなく続く日高の稜線の旅が実感で沸いてくる。できることならソエマツで降りずに、どこまでも北上していきたい気分だった。 トヨニからピリカにむかい、吹き溜まりの稜線にさしかかったあたりから風が強くなり、吹雪になった。小さな雪庇の隣に雪洞を掘り、今日のねぐらを確保する。穴を掘っている間、急変した天気はそのまま直らず、翌日は停滞。北海道の北を通った低気圧は新雪を降らせ、我らのねぐらを3メートル近くも埋めこんだ。 ついにピリカを目指す朝がやってきた。昨日の吹雪とはうって変わった青空にピリカのボリュームのある山容が聳えている。このピリカ南面の標高差はなんでも日高随一だそうだ。最低コルに腰を降ろして、そのでかいピリカを見上げる。白い階段を一歩一歩登っていく感じ。最後の急な雪稜は多少のラッセルがあったが、見上げる度に頭の上の三角が狭まってくる。山頂からは北望する神威、ソエマツの上に、明らかに39の高まりが認められた。白い白い世界だ。2年前、ピリカの手前で悪天のため引き返した岡島さんの感激は感無量である。 北側の大斜面を下る。ピリカ→ソエマツ間は適当な雪洞を掘れる場所がないため、今日中にソエマツの東尾根まで抜けなければならない。午後、日が高くなり、なにやら朦朧とした意識の中でいくつかのポコを越え、ソエマツ岳南のギャップに差しかかる。10メートルほどの段差を、ハイマツをつかんでぶら下がりながら下る。おりた鞍部は細く両側の谷底がよく見える。そこから嫌なトラバースをするのでザイルを1ピッチ出した。トップは小僧さん。核心部を越えてしまったら最後の登りはひといきだった。 ピークからは尖ったソエマツ西峰、そして神威岳のアイスクリームの様にとろりと雪がのった円錐が見える。中ノ岳、ペテガリと、未だ知らない中部日高の山脈が見渡せた。フルフルでメロンのシャーベットを食べて、今日の寝床を探し始めた。ピークに泊まりたいところだが、やはり天場はちょっと降ろしたほうがいい。50メートル程東尾根に降ろしたところで穴を掘る。完成したころみんなで夕陽に染まる日高山脈を眺めた。ピリカの後ろ姿がなんとも間抜けで憎めない。その左に遠いながらも独特の姿で存在を主張する楽古岳を発見した。ペテガリの三角はここからも美しい。 翌日はソエマツ東尾根を下る。ブッシュに覆われた、極端に細い、奇妙な尾根だ。直径40センチほどのタンネが、それよりも幅の細い尾根に生えている。そのトラバースはちょっとしたものだ。尾根を降りきっても長い長いヌピナイ林道をワカンでラッセルして帰った。雪に埋もれた最終人家(高田さん宅)、ストーブの回りのネコ。いつもながらのエンドタイトルだ。この日は帯広へ出てハゲ天で天丼をお代わりして、夜は畜産大の学生寮に泊めてもらい、翌朝ヒッチで札幌へ向かう。 |
写真
感想
ニオベツ川林道→野塚岳、トヨニ岳、ピリカヌプリ、ソエマツ岳→東尾根
【記録】
翌日の予約をしにいったら、泊めてくれた。親切な浦河のタクシー会社の事務所にて前夜泊。三陸沖には976mbの低気圧。ニオベツ川林道から入山。凍り付いた林道をスキーで歩いて、終点近くの飯場に忍び込む。寒い、風のつよい日で、途中、廃棄されたマイクロバスの中で風を避けたりした。スキーを履いたままシールでバスに乗り込んでネーベンを食べた。
翌朝、野塚岳とオムシャヌプリの中間に登る尾根に取り付き、スキーが潜らなくなった所でバッケンを外し、板だけ捨てる。山岳部では、日高の入山の林道ラッセル用に要らない板をはずして捨てる手を使う。林道は長いけれど稜線では殆ど役に立たないからだ。板はスキー部の部室裏でいくらでも拾えるし新品だって千円で買える。
これは小学校の時から使っていた安物の、青いラインの入った板だ。父ちゃんに買ってもらった奴だ。去年、札幌に板だけ送ってもらって、ジルブレッタの125番をつけて、山ではくようになった。板の表に恵廸吉従逆凶とステッカーが貼ってある。日高でスキー板を捨てる度、その板で訪れた山々のことを思う。この板は150センチしかないので、ラッセルは人より潜り、沢の渡渉でよくスノーブリッジを落としたものだが、くるくるとよく回転し、ヤブをくぐりぬけるパチンコスキーには威力を発揮した。
アイゼンに替えてからはこの尾根はすこぶる快適に、稜線に躍り出ることができた。南日高の丸い主稜線は、かわいい曲線でできている。オムシャヌプリも野塚岳も三角の二つ並んだ双耳峰で。野塚の二つのピークの間にトヨニ岳のぴらぴらした白い稜線が見えた。野塚の山頂につくと、そのトヨニの北峰なのか、果たしてピリカなのか、遠い三角がいくつも重なっている。はるばるピリカに憧れて南日高までやってきた。ピリカはどれだどれだとみんなで探すが、まあ、行きゃわかるか、と煙草で一服。稜線はよく晴れ渡り、太平洋に面した緩く曲がった海岸線は釧路の方まで続いていた。二つの野塚を越えて、稜線の雪が潜りだしたら、東向きに雪洞を掘った。トヨニ岳が城砦のように見上げられる天場だ。
雪洞を出ると、あたりは朝の光で黄金色に染まっていた。金メッキをかけた様なトヨニ岳にしばし見惚れる。左右に均衡よく伸びたスカイラインが大きなトヨニ岳全体のボリュウムを絞り上げている。アイゼンをきしませ、愉快に出発したが、程なく腰までのラッセルに。トヨニの手前の岩稜帯は乗ったり巻いたりして通過、最後のナイフリッジはソガベツ川源頭がパックリと切れ落ちた細い稜線。2、3歩、下を見たくないところがある。アンザイレンして通過。トヨニ南峰に登って、ピリカヌプリがそれと判った。
南日高では群を抜いて、その南面に極端な高度差が有る。左右のたおやかな稜線はどこまでもその傾斜を変えない。山の大きさの印象が、これまでと段違いだ。なるほど名前もいい筈だ。トヨニの北峰にいたって握手。ピリカの左には神威岳が見え始め、果てしなく続く日高の稜線の旅が実感で沸いてくる。できることならソエマツで降りずに、どこまでも北上していきたい気分だった。
トヨニからピリカにむかい、吹き溜まりの稜線にさしかかったあたりから風が強くなり、吹雪になった。小さな雪庇の隣に雪洞を掘り、今日のねぐらを確保する。穴を掘っている間、急変した天気はそのまま直らず、翌日は停滞。北海道の北を通った低気圧は新雪を降らせ、我らのねぐらを3メートル近くも埋めこんだ。
ついにピリカを目指す朝がやってきた。昨日の吹雪とはうって変わった青空にピリカのボリュームのある山容が聳えている。このピリカ南面の標高差はなんでも日高随一だそうだ。最低コルに腰を降ろして、そのでかいピリカを見上げる。白い階段を一歩一歩登っていく感じ。最後の急な雪稜は多少のラッセルがあったが、見上げる度に頭の上の三角が狭まってくる。山頂からは北望する神威、ソエマツの上に、明らかに39の高まりが認められた。白い白い世界だ。2年前、ピリカの手前で悪天のため引き返した岡島さんの感激は感無量である。
北側の大斜面を下る。ピリカ→ソエマツ間は適当な雪洞を掘れる場所がないため、今日中にソエマツの東尾根まで抜けなければならない。午後、日が高くなり、なにやら朦朧とした意識の中でいくつかのポコを越え、ソエマツ岳南のギャップに差しかかる。10メートルほどの段差を、ハイマツをつかんでぶら下がりながら下る。おりた鞍部は細く両側の谷底がよく見える。そこから嫌なトラバースをするのでザイルを1ピッチ出した。トップは小僧さん。核心部を越えてしまったら最後の登りはひといきだった。
ピークからは尖ったソエマツ西峰、そして神威岳のアイスクリームの様にとろりと雪がのった円錐が見える。中ノ岳、ペテガリと、未だ知らない中部日高の山脈が見渡せた。フルフルでメロンのシャーベットを食べて、今日の寝床を探し始めた。ピークに泊まりたいところだが、やはり天場はちょっと降ろしたほうがいい。50メートル程東尾根に降ろしたところで穴を掘る。完成したころみんなで夕陽に染まる日高山脈を眺めた。ピリカの後ろ姿がなんとも間抜けで憎めない。その左に遠いながらも独特の姿で存在を主張する楽古岳を発見した。ペテガリの三角はここからも美しい。
翌日はソエマツ東尾根を下る。ブッシュに覆われた、極端に細い、奇妙な尾根だ。直径40センチほどのタンネが、それよりも幅の細い尾根に生えている。そのトラバースはちょっとしたものだ。尾根を降りきっても長い長いヌピナイ林道をワカンでラッセルして帰った。雪に埋もれた最終人家(高田さん宅)、ストーブの回りのネコ。いつもながらのエンドタイトルだ。この日は帯広へ出てハゲ天で天丼をお代わりして、夜は畜産大の学生寮に泊めてもらい、翌朝ヒッチで札幌へ向かう。
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