ITJ 伊豆トレイルジャーニー
- GPS
- 07:02
- 距離
- 67.5km
- 登り
- 3,312m
- 下り
- 3,218m
コースタイム
- 山行
- 6:57
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 7:02
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:修善寺から三島まで電車 |
その他周辺情報 | 松崎町前泊 宿は自動割り振り(松崎地区の民宿に泊まりたかった) |
写真
感想
アジアの壁に挑戦したい!
そんな思いで伊豆トレイルジャーニー(ITJ)にエントリーしました。
結果は富士完走しましたー
しまった、×富士 〇無事完走でした。
今年はトレランの成績もよく、特にONTAKE100kmで上位完走できたので、ITJもいけるんじゃないのー。とか考えていましたが、かなり調子にノリスケさんだったんだと思い知らされました。いざスタートラインに立つと、周りの方のレベルの高さに怖気づいてしまいました。その中でもかなり健闘したと思えるのは、レベルの高い周りの方のお陰と、雄大な富士山の姿だったと思います。
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スタートは午前6時、現在時刻は4時20分を少し回ったところ。寒い。
人口6,500人の町に2,000人近くのトレイルランナーが押し寄せる。熱気は高いが気温は低い。スタートの準備も慣れたもので、すべての準備を終え、あとはスタートを待つばかり。それでも例年に比べて風が無く温かいらしい。例年なら短パン野郎はスネ毛も凍る寒さなのだろう。スタートしてからのロード区間は道が狭く、その後のトレイル入り口で渋滞すると聞いたので、なるべく前の方を陣取る。
ここでふと疑問が。今回の旅の目的は?
まずは完走。それも、思いっきり楽しむ。と、いうことに間違いはないのだが、果たしてそれだけで満足できるのだろうか。これはAsia Trail Masterの一戦であり、招待選手も多数参加している、国内屈指のトレランイベントである。思い切って上位を狙うか、安全策で抑えるか。トップ選手のスピードはどんなペースなのか。いろんな思いが交錯する。スタートセレモニーが始まり、松崎町長の挨拶で幕を開ける「静岡県で一番小さな町の町長ですが、昨日と今日だけは、皆さんのおかげで地方都市の町長になった気分ですー。Have a nice journey!」緊張していた選手たちの気持ちが一気に和らいだ。拍手喝采。素晴らしい挨拶だ。
はい、スターートーーーー
考えがまとまらないままに突然始まってしまった。行くしかない!(結局行くんかいっ!)果たしてトップ選手のペースは!?もう見えない。。。。なんちゅうスピードや。ちなみにトップ選手のゴールタイムは5時間台。異次元の速さで、素人がついて行けば窒息するのは間違いない。ONTAKEの時のようにリズムを刻みながら淡々と、と、考えてはみるものの、最近トレイルの練習をしていなかったためか、ザックの重さが気になり中々リズムに乗れない。違うか、周りのペースが速すぎるのか。やはり考えがまとまらないまま、足の運びもぎこちなく距離と時間が過ぎていく。
どんどん抜かれる。焦る。
私はまだこの大会のレベルに達していないことを痛感した。ロードの登りでは全く通用しない。また抜かれ、突き離される。第一エイドまでの折り返し区間に差し掛かった時、奥宮選手とすれ違った。なんちゅうスピードや。後続も続いていく、なんで窒息しないのだろう。ザックの中に酸素ボンベでも入っているのだろうか。余談だが、トップ選手のザックはみな小さい。必携装備を入れたら8Lのザックはパンパンになると思うのだが、トップ選手は3L〜5Lがペチャンコになる美しさだ。さすがトップランナーである。
A1 白川エイド
何も考えずにエイドに入ってしまった。あかん、ごちゃごや考えすぎや。トップ選手のザックはどうでもエエねん。えっとー、水、、いらん。あっ、なんか美味しそうな桜餅が。いただきます。美味い。もう一つ。いや!違うやろ!さっさとエイド出んかい!心の一人漫才をしていたら女子トップのベロニカ選手に追いつかれてしまった。急いでエイドを後にする。みんなベロニカ選手に釘付けで、私のような一般参加のオッサンには見向きもしない。寂しくエイドを後にする。どんなペースで走ればよいか考えがまとまらないまま、エイドを出て少し下り、割と急斜面な登りロード峠走的区間が現れた。キツイ、体(ザック)が重い、歩こうかな。弱音を吐いていると、後ろから軽快な足音が聞こえる。カーブミラー越しに確認すると、
なんとベロニカ選手だ!
女子トップ選手。昨日のプレスカンファレンスで壇上からメッセージを送っていたAsia Trail Master女子上位の選手が真後ろにいる。
これだ!
ONTAKE100kmで鏑木さんとデッドヒートした(と、私は妄想している)時と同じ、ベロニカ選手のペースについていこう。今大会の自分のテーマがようやく決まった。と、思った瞬間、軽快な足取りであっりと抜かれ、引き離されていく。あかん、ここで引き離されたら2度と追いつけない。そして、目標が無くなり、走れなくなってレースがハイキングになってしまう。よっしゃ!と気合を入れ、前を走るベロニカ選手についていく。速い。そして無駄のない走り。全く息を切らさず、淡々とロードを登っていく。私にとっては少しオーバーペースで、ゼイゼイハァハァ息を切らしながらだが、何とか食らいついていると、その前の男子選手にも追いついた。よく見ると、この方もブラックゼッケンのシード選手、水越選手だ。Asia Trail Masterランキング4位の水越選手も交えた3つ巴戦、レースっぽくなってきた。ベロニカ選手は登りの斜度がきつくなると時折歩きも交えながら、淡々と距離を重ねていく。水越選手は登りが辛そうだが、下りは猛烈に速い。2人のシード選手の間で息を切らしながらONTAKEさながらの林道を進んでいくと視界が開けてきた。もしかしたらこの先に待ち望んでいた景色があるかもしれない。そう思うと俄然やる気が出てきた。絶対についていく。すると、ついに来た。
富士山やー!!
青空を背景に、白く染まった美しく雄大な山頂付近の姿が見えると、今まで登ってきた疲れが嘘のようにぶっ飛んだ。女子トップを走るベロニカ選手もカメラを構え写真を撮影している。誰もが足を止め、その姿を写真に切り取って持ち帰りたくなる。富士山の美しさは万国共通だと感じた。その隙に、ベロニカ選手の前に出て、元気になった足をかっ飛ばしトレイル区間で先行した。ベロニカ選手が写真を撮っているところを抜き去るなんて。我ながらせこい、せこすぎるぞ。
A2 仁科峠エイド
折角ベロニカ選手よりも先にエイドに到着したのに、また何をするか全く決めていなかった。とりあえず、名物のうどんをいただきながらこれから先の準備について考える。美味い!旨いぞこのうどん!うどんに夢中になっている間に水越選手とベロニカ選手がエイドに到着し、手際よく準備と補給を済ませていく。カッコイイ。と、見とれている場合ではない。この2人に食らいついていけば、良い結果が待っているはずだ。ポケットの中のごみを捨てるのを忘れたが、まあいいや。2人よりも先にエイドを出た。しかし、すぐに追いつかれ、抜き去られて引き離されていく。うどんを食べた後なので走れない。ズバッと抜き去られた。今度こそ追いつけないのか。落胆する気持ちを振り切ってくれたのは、徐々に近づいてくる雄大な富士山の姿だった。ロード区間を終え、いよいよトレイル区間に突入する。空へと続いているような稜線を抜けると、空の中に見事な富士山が浮かぶ。左手に駿河湾を見ながら、正面には富士山。どこを切り取っても画になる絶景が続く。疲れているはずの足は自然に無敵モードへと突入し、登りも下りも走る走る。最高に気持ちいい。岩湧山の山頂付近のような「走れるふかふかトレイル」が無限に続く。少し急な丸太階段に差し掛かった時、ベロニカ選手に追いついた。いける、トレイルでトップ選手をパスする歓びを感じながら、先行させてもらった。ベロニカ選手が後ろから追ってくる。ONTAKEの時にも鏑木さんに先行し、追われる身となった。背中からトップ選手が追ってくるプレッシャーを感じながら走るのは、大きな存在が自分の背中を押してくれているようでワクワクする。
A3 土肥エイド
ここまで約50辧L潅罎覗っていたので補給が足りていないのは明らかだった。しかしハイペースで進んできたことと、メダリストドリンクの飲みすぎで食欲は無かった。UTMFの時もメダリストドリンクで胃をやられたのに、今回も飲みすぎてしまった。相変わらず学習能力が無いと反省した。重くなることを覚悟でザックに入れていたランチパックも食べる気にならない。やはりパンは持ってくるべきではなかったか。後ろからベロニカ選手が追ってきていることを考えれば、無補給でスタートするべきか。ネガティブな発想でごちゃごちゃ考えていると、大勢の富士山(の被りモノを着た)スタッフに迎えられ「お手伝いしましょうか?」と優しく声をかけられた。この時間帯はエイドに選手の姿はなく貸し切りだったので、手厚い歓迎と補給のお手伝いをしてくれる。気分はトップ選手だ。ネガティブ発想は吹っ飛び、一気に気分がアガる。ペットボトルを渡し、「スポーツドリンクお願いします。少し薄めで」などと(カッコよく)オーダーしてみた。ドリンクを入れてもらっている間、エイドを見渡すとシシ汁があるではないか。食欲は無かったが、量を少なめで一杯いただくとメチャクチャ美味い!胃が活性化して食欲が戻り、横にあったオレンジを食べまくる。ついでにランチパックも食べようかと思った矢先、ベロニカ選手が到着した。ヤバい。ここは先行して追いかけられたい。オレンジをもう一つ口に入れ、ペットボトルを受け取り、ごみを捨てて、ベロニカ選手から逃げるように(実際に逃げている)エイドを後にした。
まだお昼前、風のない素晴らしい青空。稜線を走っていけば、その先に続いているのではないかと錯覚する富士山。言葉にならない風景の中に自分も溶け込み、どこまでも走り続けられる気がした。当然、多くのハイカーの方も押し寄せ、この素晴らしい景色を共有する。むしろ、のんびり見ていたい景色の中を、短パンのオッサンたち(と、美しいベロニカ選手)が必至の形相で走っていく光景は迷惑でしかないはずだ。ハイカーの方とすれ違う時はスピードを落とし、極力邪魔にならないように気を付ける。多くの家族連れが思い思いの時間を過ごし、フカフカ芝生の登山道で子供たちと写真を撮っている。スミマセン。通ります。ありがとうございます。声をかけて通り過ぎようとしたとき、小さな女の子が走ってついてきた。
母「危ないから走っちゃダメ」
娘「えー、なんでー、あの人は走ってるのにー」
母「あの人たちはそういう人たちなの」
お母さんが正しい。しかし、娘さんには、どういう人たちに見えたのだろう。もし、少しでも楽しいと感じてもらえたのであれば、将来トレイルランナーとしてそういう人たちの一員として、再びこの地を訪れ思う存分走ってほしいと願うばかりである。
ピークを過ぎるとあとは下り坂。富士山は名残惜しいが、ゴールを目指す。前後に選手の姿がなく、自分のペースがつかめなかったが、ベロニカ選手に追いつかれないように出し切るだけだ。すると、前方に選手の姿が、金ゼッケンのふるさと納税参加選手だ。今ならふるさと納税枠で確実に参加したくなる選手の気持ちが理解できる。このトレイルはまた来年も訪れたい。そして、ずっと走っていたくなる。金ゼッケンの選手に声をかけ、先を譲ってもらう。すれ違いざまに年齢を聞かれたので正直に答えると、どこにそんなエネルギーがあるのかと驚かれた。ちなみに彼の年齢は10歳も年下だ。ロードレースやトラック競技では恐らく歯が立たないだろう。でも、私は彼を抜き去った。いろんな年代の選手がハンデ無しに同じ条件で戦えるのもトレランの魅力の一つではいだろうか。あの追いかけてきた娘さんもいつの日かライバルになるだろう。
ガレ場の下り。既に太ももは悲鳴を上げ、惰性で下っていく。時計を見ると6時間切りに間にあうかもしれないと思い始めた。今まではベロニカ選手に追いつかれないことだけを考えていたが、目の前に7時間切りという目標が出来た。下りは押し切るのみ!気合を入れ、必死にもがいてみるが、気合だけでは押し切れない。やはり最後の5kmでもう一本ジェルを補給すべきだった。終始反省の中、修善寺の街に出た。いよいよゴールが近い。多くの人で賑わっている街中を駆け抜け、時計を見ると7時間を経過した。7時間切りには届かなかったが、全てを出し切ってフィニッシュできたことで体の奥底から達成感が沸き上がってきた。このフィニッシュの瞬間から、辛かった記憶が徐々に楽しかった記憶に変わっていく。不思議だ。
3分後にベロニカ選手が見事に女子トップでフィニッシュラインを通過し、インタビューを受けている。私と競り合った話をしているわけではないだろう。いつか、ベロニカ選手とITJ2019は最高に楽しかったね。と、語り合えるように、私も世界を舞台に戦ってみたい。その前に走力も英語力も高めなければ。
Thank you!ITJ!
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