OSJ 新城ダブル64K


- GPS
- 10:30
- 距離
- 59.0km
- 登り
- 5,497m
- 下り
- 5,491m
コースタイム
- 山行
- 10:03
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 10:30
天候 | 曇りのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
あの岩でコケたら痛いんやろなー
前回5時間切りを達成した、新城32kの時に爆速で駆け抜けた急峻な岩場の下り。
転倒したらどうなるんだろ。という恐怖と、駆け降りる爽快感。
まさか、本当に転倒するとは。
一瞬何が起こったか分からなかったが、体へのダメージで夢ではないことは分かった。
新城ダブル64k。
最終関門制限時間オーバーのDNFで幕を閉じた。
厳しいチャレンジだという覚悟はあったが、どこかで「いけるやろ」という油断があったように思う。
今思えば準備不足で完走できるほど甘くは無かった。
■前日
前回、32k出場の時は雑魚寝だったが、今回はペンション赤トンボで快適前夜を過ごした。電子レンジもポットも完備されているので、お餅やレンチンご飯を持って行っても良い。地元民が集う盆栽センターの食堂は独特の雰囲気で癒される。五平餅も美味。
■スタート
昼から雨予報だったので、駐車場で良いポジションをGETするため、開門前から並んだが、結局第2駐車場に回されるのであまり朝早く出発しなくても大丈夫だった。
スタートまで余裕があったので、もう一度トイレへ。エイドでの補給食が気になるが、水だけかもしれないので、コーラ持参で出発することにした。結局、エイドには水しかなかった。
久々のスタートゲート。
最前列には世界チャンピオンの上田選手。カウントダウンが始まりいざスタート。
あっという間に上田選手は見えなくなり、後ろから来た選手にもどんどん抜かれる。
ちょうどよいポジションをキープして淡々と距離を重ねていく。
このコースをもう一周するのか。不安でしかなかった。
■転倒
すれ違い区間で32kの選手が登ってくる間をすり抜け、飛び降りるように駆け抜ける。新城の醍醐味と言えば、この下りの爽快感だろう。しかし、調子に乗り過ぎた。
すれ違い区間が終わり、関門を通過した直後、急激に足が重くなった。残り数キロを慎重に下ろうと集中力が切れた瞬間、気が付けばメガネが吹き飛ばされ、顔面からコケていた。
何が起こったのか分からないが、地面に這いつくばっている。
ダメージを確認。メガネも、スマホも無事だ。カラダは、動く。どこが痛いのか確かめるようにゆっくりと動き出し、ゴールへ向かう。前のめりに転倒した時に両手のひらで受け身を取ったらしく、左右の手のひらがジンジンと痛む(のちに内出血で真っ青になっていた)
顔面も打ち付けてはいるが、流血は無さそうだ。この時はあまり気にしなかったが、右胸を激しく打ち付けていたようで、約1か月間痛みが消えず、息をするだけで痛かった。(特にくしゃみをすると激痛がはしった)
慎重に、慎重に、これ以上コケたらもう立ち直れない。とにかくゴールにたどり着くことだけを考えようとするが、気持ちが焦り、何度もつまずきながら1週目のゴールゲートを通過した。
■2週目
2週目はタイムが落ちるのは明らかだったので、立ち止まってのタイムロスを避けて、ドロップバックからランチパックを取り出し、歩きながら食べることにした。空腹を満たす方法を考えないと、制限時間には間に合わない。ジェルだけで走れる体作りも必要なのか。
しかし、全く休む間がない。足も徐々にダメージが蓄積され、完走できる気が全くしない。気持ちは焦り、前半の発汗で少し脱水症状にもなっている。
「落ち着け、落ち着け。」
とにかく自分に言い聞かせる。ゆっくりでも休まず進めば6時間で一周できるはず。11時間ギリギリなら絶対にゴールできるので景色も楽しもう。そのうち雨も強くなり、火照った体も冷やしてくれるはず。
そして、雨が降ってきた。恵みの雨だ。
最初はそう思っていた。しかし、この雨がコースを川と化し、行く手を阻んでいく。登りは黙々と消化し、下りを走る「大峯修行スタイル」作戦だったが、下りもグリップしないので、ペースが上がらない。さらに、コケたら終わりという恐怖心も加わり、時間だけが過ぎていく。気持ちを落ち着かせようとするが、焦っていたのだろう、ツルツルトレイルをスライディングで転倒して再びダメージを負ってしまった。
「これくらいで済んでラッキー」
太ももは血まみれのようだが、ラッキーと自分に言い聞かせて、淡々と距離を刻む。とにかく集中して、次の一歩を踏み出す。メガネが雨の水滴で前が見えなくなってくる。太陽の光も弱くなり、陰に入ると暗くて全く何も見えなくなってきた。ライトを点灯しようにも、メインのヘッデンは用意していないため、予備の腰ライトのみ。準備不足を悔やんでも仕方ない。今は、前へ進むのみ。さっき一周したコース、なんとなく覚えている。
■メガネメガネ
徐々に日も落ち、雨は強くなる。メガネの水滴で全く前が見えないので、足元は見えていない。勘に頼りながら、真っ暗なトレイルを一定のリズムで進む。メガネは無い方が良いかもしれない。メガネをサンバイザーに乗せて、ノーメガネスタイルとした。ますます勘に頼りながら集中して進んでいたが、ジェルを取ろうとした一瞬の隙に、枝でメガネが飛ばされた。辺りは真っ暗な森の中。
「メガネメガネ」
と、のび太のようにメガネを探し回るが、枝や落ち葉に紛れて全く見当たらない。タイムロスがもどかしい。どうせノーメガネで進んでいるのだから、このまま先に進もうか。いや、帰りの車はどうするんだ。土砂降りの森の中、小さなメガネを探しながら、独り葛藤する。しばらくすると、先ほど追い抜いた64kの選手に追いつかれ、
「どうしたんですか?」
「メガネを落としてしまって。。。」
「それは大変。どのあたりですか。」
「この枝に飛ばされて、もしかしたら崖下に飛んで行ったかも」
「この辺りですか」
「あっ、ありました!ありがとうございます!」
一緒に探していただいたこの方も、1分オーバーで最終関門アウトだった。本当に申し訳ない。
■最終関門
時計を最後に見たのは16:30、50kmの時だったと思う。あと10kmを切っている、ゴール制限時間までは1.5時間。いける。ようやくゴールが見えてきた。とにかく焦らず慎重に。1週目とは全く様子が違う川になったトレイルを、ジャブジャブ進む。足裏が痛い。雨で皮がふやけて剥がれているかもしれないと思ったが、今はゴールに全集中する。途中、32kのスイーパーを追い抜いたときは、「間に合う」そう確信していた。最終関門でライトチェックがあると思い、腰にライトを装着する。集中、集中。焦るな。自分に言い聞かせながら、岩場を越えていく。そしてついに、最終関門のスタッフが見えた。ライトを差し出し、
「雨の中ありがとうございます。ライトチェックOKですね?」
「いえ、ストップです」
「えっ、ライト点いてますよ。ほら。」
「いえ、関門制限が17時なんです」
「うそっ、今何時?」
手元の時計は17時6分。関門アウトだ。先ほど一緒にメガネを探していただいた方も雨の中立ち尽くしている。ここからゴールまでは、わずか3劼硫爾蝓時間にして30分ちょいだろう。制限時間内のゴールは間違いないと思うが、これはルールだ。スタッフの方が申し訳なさそうに私の計測チップを外した。何が起こったのか。雨の中、茫然と立ち尽くし、現実を受け入れられない。しかし、これはルールであり、現実だ。過去に経験したことが無い関門アウトの宣告と共に、壮絶な戦いは幕を閉じた。
■ゴールへ
最終関門で一緒になった方とエスケープルートからゴールへ向かう。車で搬送してもらうことも出来たが、徐々にこみあげてくる悔しさを走って紛らわせたかった。
「メガネ事件が無ければ最終関門通過できてましたね。スミマセン」
「いやいや、全く関係ないですよ。最終関門に制限時間があるとは想定外でした」
並走しながら会話を交わす。聞けば、64k完走者で表彰台経験もある、かなり有名な方だった。メガネ事件に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。ゴールゲートを通過する選手を横目に、本部にリタイアを告げて終了。並走した方とは、ゴールで「ありがとうございました。また来年お会いしましょう。」と握手を交わした。悔しさと安堵した気持ちが入り交じる。また来年?今は雨の音しか聞こえない。
■来年に向けて
・ペンション赤トンボにはポットと電子レンジがあるので、お餅やレンチンご飯を持っていく
・エイドは水だけなので、コーラと食料をしっかり
・ドロップバックエリアに立ち止まってのタイムロスは避けたいので、パックのオレンジジュースとランチパックを持って早めのリスタート(林道で食べながら進む)
・後半の空腹は柿の種とコーラで凌ぐ(豆大福でも可)
・ジェルは1時間に1個分(計10個)持参
・前半の水分補給は大切(第2エイドまでにchallenger1本飲み干すくらいで)
・すれ違い区間の下りは調子に乗らない(コケないこと←最重要)
・最終関門の制限時間は17時なので、実質の制限時間は10時間半と考える
・ダイトレ大会コースを4時間→5時間で往復するトレーニングが必要
■おまけ
・コケるとダメージはでかいので、コケないように
・胸の強打で、クシャミをするだけで痛む(約3週間)
・前受け身で、手のひら内出血で真っ青(約2週間)
・スライディング時に太ももに傷と青あざ(2週間後かゆくなる)
・ザックは多少重くてもルーファスが良い(安定する)
・ゼッケンベルト用のスパイベルト忘れないように
・ライトは2つ、早めの点灯。
また来年!ホントに行くの?!
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