安達太良山(塩沢から湯川を遡る)


- GPS
- --:--
- 距離
- 14.4km
- 登り
- 1,158m
- 下り
- 1,152m
コースタイム
- 山行
- 9:10
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 10:00
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
八幡滝から僧悟台まで廃道扱い 軌跡は手入力です |
写真
感想
日地出版の1999年発行「登山・ハイキング」には、塩沢温泉からくろがね小屋に至るルートの途中にある八幡滝から僧悟台に登るルートが記載されている。しかし、このルートは廃道になったらしい。確かに国土地理院の地図には載っていない。それとは別に塩沢温泉から僧悟台を結ぶルートはしばらくの間、自然保護のため放置されたという話も聞いた。けれども、山岳会が整備したという話もある。どうなっているのだろうか、と胸の内は疑心暗鬼の状態だ。
このルートは、ずいぶん前に鬼面山から縦走して塩沢温泉に降りたことが有るのだ。その頃登山はやっていなかったので記録もないし記憶も曖昧だ。安達太良山の山頂経由だったかも判然としないのだ。ただ、滝の脇を通ったことは覚えている。それがやがて登山を始めるきっかけになったかもしれない出来事なのである。いつかは行ってみなければ、と思い続けていてようやく出かけることが出来た。いわば、青春の郷愁を訪ねる山旅である。
塩沢スキー場から登る。直ぐに僧悟台への分岐の標識が有る。もともと僧悟台を目指すのだから、やっぱり道はあるのだ、と軽く考えて沢を渡って進む。良く考えればこんなに早く沢を渡るはずは無いのに、そのうち沢に降りるだろうと軽く考えてそのまま進む。しかし、いくら進んでも沢に降りる気配はない。地図を見ると僧悟台に直接出る道である。ああ、またやってしまったか。前回山行のアヤメ平で竜宮に下がらずに富士見峠まで進んでしまったミスとまったく同じパターンである。
ルートが有るか無いかもわからない状況では、このまま僧悟台まで行って、道があれば沢を下る。無ければそのまま山頂を目指せばいいか、とも考えた。しかし、廃道になって道の記載のない沢を下って遭難でもしたら非難ゴウゴウである。しかるべき段取り無しに沢は下るものではないであろう。時間のロスは痛いが急ぎ戻る。ブナの林で足に優しい道、ということが救いである。
落石注意の看板が出ているが、火山帯だから大きな岩が積み重なっていて、実際に落石が起きたら避けようがない。大雨や強風の時は通りたくない道だ。「三階滝を経て屏風岩」の標識が有り沢床へ向かって降りる。三階滝へのルートは地図には載っていないので、意識していないと通り過ぎてしまう恐れはある。道は踏み跡程度だ。確かに三段の滝だ。透き通った水である。左手のフィックスされたロープで滝を越える。それから二つの滝を越えて屏風岩へ上がる。滝を越えるルートにはテープが下がっており、ロープも有るので、難なく越えることが出来る。
屏風岩は文字通り屏風のような切り立った岩だ。足がすくむような高さだ。岩の上から滝が一か所眺められる。岩の上のシャクナゲやツツジが鮮やかだ。ここからくろがね小屋へのノーマルルートを進む。沢上のトラバース道にはロープや鎖がセットされていて緊張を強いられる。八幡滝に出ると標識が有り、「警告 ハイカーの皆さんへ 八幡滝―中の滝―霧降の滝は、コースとして地図に記入されていますが、危険につき廃コースとします。沢歩きの登山者は、万全な準備と自覚ある行動をして下さい。雨降り、雨後一瞬にして増水します」の標識が出ている。いよいよ本番だ。
沢を横断してトラロープがあり、沢を徒渉して鎖を使って左岸を登るようだ。沢靴は用意していないのでちょっと迷ったが、空身でとりあえず素足で渡って先を偵察する。岩がツルツルするので足でこすってヌメルを落として対岸に渡り、滝上流を覗いて見るとナメが続いていた。両岸は笹竹等が繁茂していて巻道は間違いなく有ると確信する。無ければ藪を漕げばよいと判断上流へ向かう。
いきなりナメ床。いい雰囲気だ。石筵川と同じようなナメ。出来るだけ沢床を歩いた。行き詰まりそうな個所にはテープが巻いてあり難なく越える。標識にあった「中の滝」というのはナメ滝を言っているようだ。霧降の滝は止めの滝であろう。この沢は、行き詰まったら左岸を巻けば良いようだ。というより昔、道が有ったのだから踏み跡を忠実にたどれば問題は無い。沢を離れて僧悟台を目指すと、深く掘れた踏み跡になり、昔、ここにルートが有ったことが分かる。
塩沢口から僧悟台へ直接登ってくる合流点に標識が有り大休止する。ウグイスの澄んだ鳴き声が響く。中年の男性が通り過ぎて行った。「台」とつく地名の通り平らな地形である。大きなシャクナゲの木が目につく。今はまだ、つぼみであるが、盛りには見事なシャクナゲが咲くに違いない。安達太良山の稜線が見えていて気がはやる。
山頂目指して進んで行くと標識があり“12年から自然保護のため、ルートの整備はしない”と説明文が有る。塩沢からの直接ルートの整備は中止されているのだ。直ぐに尾根状のルートになり、シャクナゲが咲き出す。尾根上は日当たりが良く雪解けが早いのがその理由であろう。間近にシャクナゲのピンクの花を愛でながらの歩きで心が癒される。箕輪山と鉄山の鞍部、笹平の手前には雪渓が残っていた。
空に薄い雲がかかって来た。これは雨が降るかもしれないな、と思う。風も強い。ここは日本海と太平洋を分ける分水嶺である。天候の変化は激しいのだ。ポピュラーな山だが急激な天候の悪化や硫化水素ガスによる遭難も有る山である。油断のならない山なのだ。まだ那須の山々から吾妻山まで展望可能である。とりわけ飯豊連峰の姿が秀逸だ。雪をまとって弱弱しい陽の光の中に浮かぶ姿は一服の淡彩画を見るかの如くである。
一気に風が強くなって見通しも消えた。鉄山の避難小屋で一休みとした。状況は変わらないがアウターを着て出発。まったく見通しは無くなった。安達太良山には、何回も登っているのだが記憶は曖昧で、地図とナビで確認しながらの歩きとなる。ペンキマークや踏み跡を確認しながら進んでいるうちに見通しも出てきて、山頂付近からは遠くの眺望も見えるようになった。山の天候は変化が激しいものである。山頂には人が沢山見えた。やっぱり人気の山だ。
山頂へ入れ替わりのように登って行くと、なんと誰も居ない。山頂独り占めである。こんなことは初めてである。人気の山で信じられない出来事である。さらに山頂から降りたら二十年ぶり位にMさんと遭遇したのだから奇跡としか言いようがない。これは凶か吉か。もちろん吉だ。天候悪化もほんの一時的なものだったのだから。
奥岳温泉に降りるというMさんと別れて、くろがね小屋からは塩沢目指して一直線。また雨が降り出したが、気になるほどではなく、濡れるほどでもない。まだ吉は続いていた。しかし、ルートは、鎖やロープが下がり、丸木橋のような橋も架かる、なかなか厳しいルートである。走って降りるようなところでは無かった。このルートは初心者には厳しいルートであろう。八幡滝に出て周回したことになる。八幡滝から屏風岩までは、往路を戻ることになる。屏風岩から三階滝には下がらずに塩沢スキー場まで通常ルートを進み山行終了となる。
我が青春時の山旅は、多分、安達太良山頂からくろがね小屋、八幡滝と進んだに違いない。八幡滝から僧悟台までのコースは沢登りの範疇だからそれはありえない。私の中に、横長の長方形のような滝だった、いう記憶が有るのだ。家に帰って八幡滝の写真を見ていると、何となくそれだと思えて来るのだ。そしてそれだ、と確信する。
我が青春の郷愁を訪ねる山旅は無事に終わった。長い年月が妄想を膨らませたが、終わってみればただの山歩きであった。遥かなる青春である。
妙高さんおはようございます
ひっそりと自力で咲く山のシャクナゲは
庭園のシャクナゲとはまた違った美しさですね。
滝と新緑と花と岩、雪渓と
盛りだくさんの山行なんですね。
こんにちは〜
シャクナゲはどうかな〜って感じでしたが、咲いてました(^^)/
家のシャクナゲは、洋シャクですから、何となく大雑把な感じですね。日本というと、和、調和とか釣り合いの世界ですからね。
知らず知らずの内に、そんなところを見てしまいます。
水・新緑・花・岩・雪のコラボは、まさに日本の美、そのものですね。ほんとイイ山行になりました。
吾妻小富士・安達太良山・厩岳 コンプリートですね、
厩岳も?と思ったら、積雪の時期だったのですね。
すばらしいです、
しかも昔の道をご存知とはうらやましかぎりです。
自分でも行けるとは思わなかったのですが、厩岳登ってしまったら2山まとめてやれると気が大きくなって行って来ました。
安達太良ではちょっと天気が怪しくなったけど、気になるほどではなくいい山行でした(^^)/
去年那須では、ルートを勘違いして予定していた、ひょうたん池に行けなかったのでリベンジしたいです。
kingyo_soさんは、楽しい山行が続いているようで安心しました。これからも楽しくいきたいですね。
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