峰床山 カマクラ谷右岸尾根〜八丁平〜鎌倉山周回
- GPS
- 06:54
- 距離
- 11.8km
- 登り
- 1,179m
- 下り
- 537m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2018年02月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
昨日の暖かい春風のそよぐ丹沢から一転、京都の夜は雪であった。大概の方には迷惑な話かもしれないが、北山の山々が冠雪する期待に胸を膨らませる。降雪後の新雪をラッセルしながら、トレイスのない山に登る機会・・・私の今後のスケジュールを考えると、そのような機会は今シーズンにおいてはおそらく、明日が最後だろう。
今回の山行では結果的には峰床山の山頂に辿り着いたので、その山名をタイトルに冠させて頂いたが、そもそも峰床山にたどり着くには京都の花背側から登っても、朽木の葛川から登っても山を越えなければならず、ラッセルしながらの冬の山行では日帰りは困難である。しかし、その山頂直下に広がる高層湿原である八丁平は、降雪後に雪が深くなった際に新雪の感触を踏みしめながら訪ねてみたい場所の一つだった。ちなみに無積雪期は木道と登山道以外の湿原は立ち入り禁止である。そしてこの八丁平を目指すにあたって、もう一つ、雪深い季節にこそ登りたい知られざるピークがあった。
それはカマクラ谷の右岸尾根の稜線上にある935m峰である。このピークにたどり着く一般道は全くない。国土地理院の地図を注意深くみると、どの登山ルートからも離れて、ポツンと小さな点が記されている。地図を詳細に読み込むと、この山頂付近はいくつかの小さなピークが集合した極めて独特の形状であることが予想される。このピークに登頂した後の時間的、体力的な余裕次第ではこの山のピストン往復のみでも・・・というのが今回の山行計画であった。
折しも、前日に昨年の秋に晩秋に大杉谷から大台ケ原に一緒に登った学生のS君からmailが舞い込んできたので山行にお誘いすると、明日は空いているので、是非ご一緒させて下さい、ということだったので彼に長男のスノーシューを貸与して同行して頂くこととなった。既に冬山もそれなりに経験しているS君だが、スノーシューは初めてとのことで、楽しみにしてくれているようだ。
北山の山に入られる方は周知のことであるが、花背峠、花折峠といった分水嶺を超えるとその手前と向こうでは積雪がまるで異なる。坊村の駐車場には既に多くの車が目につく。御殿山を越えて武奈ヶ岳に登られる方達のものだろう。武奈ヶ岳の登山道でのノートレイスのラッセルを楽しむにはSD氏ご夫妻のように深夜から登り始めて黎明登山をする他ないようだ。駐車場を北に進むと、間もなくカマクラ谷に沿って左手に入る登山道の標識がある。数日前のものと思われるツボ足のトレースを追う。
30分ほど登っただろうか、カマクラ谷を横断する林道に出ると、登山道とお別れである。ここからは勿論、トレースは無い。ツボ足では相当に沈み込むのでここでスノーシューを装着。林道の切り開いた斜面から落ちた雪玉の上には新雪が被り、恰も雪のキノコのようだ。前方にはこれから登る935m峰、背後には武奈ヶ岳から蓬莱山に至るまでの比良山系の絶好の展望が拡がり、さらにフカフカ、モコモコとした新雪の感触の心地よさもあってか、長い林道歩きは全く苦にならない。
林道の終点まで辿り着くといよいよ尾根が始まる。この尾根は安曇川に向かってかなり急峻に切れ落ちており、この林道なくしてはここまでアプローチするのは至難であろう。先日のイチゴ谷山と異なり、今回は鹿の足跡は全く見当たらない。時折、ピンクのテープがあるので誰かがルートをつけて下さったのだろう。最初はなだらかで快適かと思われた尾根だが、やがて急登が延々と続く。ようやくこの急登が終わるかと思いきや、今度は極度の痩せ尾根である。先日のヘラ谷右岸尾根と異なり、尾根上は植生と雪庇のために通過出来ず、尾根の北側の急峻な斜面を慎重にトラバースしていく。
この痩せ尾根を通過してようやく尾根の上部に辿り着いた時の感慨は一潮だ。振り返ると峻険な雪庇の彼方に比良山系の大展望である。白滝山と蓬莱山の間に見える白い筋は先々週に登ったオシロ谷左岸の鉄塔尾根だ。ここからは、それまでとは打って変わり、ブナの美しい混合林が広がっている。確かに地図の通り、なだらかな小さなピークが複雑に絡み合うように聚合している。
地図を慎重に読んでピークからピークへと渡り歩いていく。驚いたことにブナの樹々には頻繁にピンク色のテープが巻かれている。やがて935m峰に辿り着くと、山頂標はなく、ブナに巻き付けられた黄色い一条のテープがあるのみだ。ここで稲荷寿司で一休み。山頂というより、寄り集まったなだらかなピークの一つに過ぎず、山頂とは呼び難いかもしれない。下の林道から見上げた堂々した山容からは頂上の様子は想像し難い。
ここからは尾根筋を渡り歩いて、鎌倉山からの稜線に合流する。GPSを頼りにしなければ危うく鎌倉山へと向かうところだった。カマクラ谷の源頭には霧氷の森が広がっており、風の通り道にであることを物語っている。あたかも風の道しるべであるかのごとく。オグロ峠に向かって、なだらかに尾根を下ると左手には杉林、右手には広葉樹の稜線となる。オグロ峠の手前で八丁平へと至る谷が見えたので、小さな沢筋の源頭を下降する。
いよいよ雪の八丁平である。一見、単なる草原とは区別がつかないが、雪の中を蛇行する幾筋ものせせらぎが、ここが湿原であるこたを静かに物語っている。訪れるのが容易ではないだけに、道のりの困苦が報われるようだ。流れ行く雲がしばし陽光を遮っては樹々にシルエットをつけたり消したりして、気儘に戯れているようだ。湿原の上は風もなく、ここで道すがらに大原の日曜朝市で買い込んできた焼鯖寿司とドライフーズのキノコのクリームパスタのランチをとる。およそ相性が良さそうとはいえない組み合わせだが、山の上では気にならない。
八丁平に以前、夏に訪れた時には雷鳴を聞きながら、驟雨の中を急ぎ足で通り過ぎてしまったのだが、景色があまりに違うので同じ場所とは思い難い。あまりにも雪原が美しいと、ラッセルで深いトレースを刻み込んでしまうのが申し訳ない気がするのである。
八丁平の奥には非常に美しい草原が広がっていたのを思い出し、湿原の端に沿って北に歩む。夏には防鹿(ぼうろく)ネットが張られていたのだが、すっかりと外されておりネットのための杭の間を進む。美しい雪原の奥の鞍部からは尾根筋に容易に上がることが可能だ。ここまで来ると峰床山々頂への往復の誘惑を断ち切るのは困難だ。
再び尾根筋に沿って美しい広葉樹の林の中をアップダウンを繰り返し、最後の登りを詰めると遂に峰床山々頂である。京都府最高峰の皆子山(峰床山よりわずかに2m高い)から北西の山々に至るまで大展望が広がる。
いよいよ帰路に就き、今度はオグロ峠に向かって尾根筋を辿る。オグロ峠からは我々のトレースに再び合流し、鎌倉山からの稜線と合流するあたりで、ソロの男性の方と出会う。「まさか人と会うとは思いませんでした」と挨拶すると、先方は鎌倉山の登山口からの我々のトレースを追ってこられたのであろう。「林道の方に行かれた方ですか?・・・それにしてもどうやって?」簡単に我々の登山ルートを説明するものの、説明は容易ではない。詳しくはヤマレコ でと約束したので、目に留めて頂けると幸甚である。
我々が登ってきたルートを戻ることも考えてたが、ピークの直下の夜戦尾根のトラバースと長い林道歩きを考えると陰鬱だ。先の男性の方のトレースを辿り、鎌倉山を越えるコースを選択した。それにしてもピーク登ったかと思うと次々と現れるピークに厭気が差しはじめる頃、ようやく鎌倉山に辿り着く。頂上は樹林に囲まれるが、わずかに東方に武奈ヶ岳を望む。そして、この写真を最後にスマホのバッテリーが切れるのだった。後はひたすらに下るのみである。先の方のトレースの深さを見ると登りのラッセルの苦労が偲ばれる。我々が坊村に帰り着いたのはほぼ16時半であった。朝には多数あった駐車場の車も疎らとなっている。擦れ違った方が無事、明るい内に帰還されることを祈る。
この935m峰もいつか機会を見つけて、無積雪期に訪れてみたい・・・と思うような山だった。
もしもご興味がある方はSD氏ご夫妻の黎明山行のレコをどうぞ
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1380578.html
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1366026.html
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鎌倉山〜八丁平間でお会いしたソロハイカーです。葛川から鎌倉山方面への別尾根ルート、機会があればチャレンジしてみたいです。私はその後、遅く着いたにもかかわらず八丁平をしばらく散策し、中村越から中村方面へ下山しました。国道に出た時はさすがに暗くなっていました。ご心配いただきありがとうございます。
ご連絡有難うございます。お帰りを非常に心配しておりましたので、ご連絡いただけて用薬安堵いたしました。中村越から中村のルートも雪が深いでしょうし、トレースがなければラッセルに再び苦労されたのではないでしょうか。感想にも書かせて頂きましたが、鎌倉山への登りではラッセルの苦労の後が偲ばれるように思われました。ご無事に八丁平にたどり着けて良かったですね。冬の八丁平は苦労してたどり着くからこそ味わえる、とっておきの場所に思われます。ご紹介させて頂きました935m峰のあたりも非常に素晴らしく、無積雪期にも訪れたいと思っております。またどこかでお会い出来ますことを期待しております。
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