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奥武蔵

武甲山(備忘録)〜熱中症の怖さを体験した山行〜

1984年09月02日(日) [日帰り]
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GPS
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距離
15.0km
登り
1,113m
下り
1,117m

コースタイム

横瀬駅〜生川〜武甲山〜橋立川〜浦山口駅
天候 晴れ
アクセス
利用交通機関:
電車

感想

武甲山には、秩父の叔父の家を拠点にして何度も登ったが、
1984年9月に登った時ほど、強烈な印象を残した山行はなかった。
記憶というものは、困難にあった時ほど強烈に残っているものである。


写真を含め、その時の証拠資料は何もないが、
・大学2年の夏休みの終わりに登ったこと、
・1日じゅう晴天であったが、暑く湿った空気がどよ〜んと漂っていた日であったこと
・山行当日、熊谷ではその年の最高気温を示し、その気温は約38℃であったこと

以上の数少ない記憶の手がかりから、
熊谷での過去のアメダスデーターを調べてみると、
1984年9月2日が、まさしくその日であったことを確信した。

この時の山行を35年前の断片的な記憶を辿って、ここに再現してみたいと思います



叔父の家に遊びに行く途中で、気軽に立ち寄った武甲山。
当初これが、試練の山になることは、まったく予想だにもしていなかった。


生川に向かうダンプ道は、容赦ない太陽の光にジリジリと焼かれっぱなしであった。
樹林帯に入ると、いくらか涼しく感じるようになった。
しかし、風一つ吹かないどよ〜んと漂った熱気の中で、
身体の中では確実に熱が蓄積していったことは知る由もなかった。

18丁目(不動滝)の水場では、冷たい水を浴びるように飲んだ。
水筒にも水を補給して、頂上に向けて勇んで一歩を踏み出した。

勝手知ったる表参道。
1時間も歩けば、武甲山の頂に立てるだろうと考えていたが、この日は違った。

暑さですぐにバテてきて、10分おきの休憩がないと、先に進むことができなかった。
そして休憩するたびに、水をガブガブ飲んだ。
完全な脱水症状になったようだった。

あまりの暑さに、途中から上半身裸になって歩いた。
歩いても、歩いても、頂上はその先にあった。

そして、水場から2時間以上もかかって頂上(御岳神社)にたどり着いた時は、
水筒の水も底を尽きだした。

あとは、橋立川まで下りないと水は得られないかと、暗澹たる気持ちになったが、
念のため地図を開いてみた。
すると、長者屋敷の頭のすぐ近くに、水場の表示が記されていた。

「おお、なんという幸運さなんだろう!」

しかし、この時期、水は枯れているかもしれない。
喉の渇きに負けた私は、一か八かの賭けに出て、水筒に残っている水を全部飲み干した。

頂上から長者屋敷の頭までは、急坂が続く難路だった。
ふらついた足取りの私は、何度もつまづいて道を外しそうになりながらも懸命に歩いた。

ようやくたどり着いた長者屋敷の頭。
懸命に水場を探してみると、あったあった。
私を見捨てなかった神に心から感謝をして、その水を口に含んだ。

この先も、喉の渇きで卒倒しそうになりながらも、長者屋敷の尾根を懸命に下りて行った。

やっとたどり着いた橋立川。
私は1秒でも早く水を口に含もうと、ザックを放り投げてその流れに近づいた。

冷たい水を口に含んだ瞬間、
死にかけていた1つ1つの細胞が、チューチューと水を吸収して、生き返っていくような感覚を味わった。
そしてこの時ほど、水のありがたみを痛烈に感じたことはなかった。

水は飲んでも飲んでも飲み足りない。
ようやく、喉の渇きが和らぎ、水筒に水を満杯にした後、
もう一度水を飲んでから、長い長い林道をトボトボと歩き出した。

林道を歩いている時も何度も足を止め、そのたびに水筒の水をガブガブ飲んだ。


夕闇が迫り、やっとたどり着いた叔父の家。
水筒の水はすでに空になっていた。
私は玄関をまたぐなり、叔父の家で用意していてくれた冷たいビールやジュースをガブガブ飲んだ。

その様子を見ていた叔父は、
「これは完全な熱中症だね。人が亡くなることもあるんだよ」と言っていた。

喉の渇きは深夜になっても止まらず。
何度も寝床を抜け出しては、水をガブガブ飲んだ。
身体も熱がこもっていて、その夜は熟睡することができなかった。

翌朝になって、やっと喉の渇きは無くなり、熱中症の症状が和らいだ。
水分をたっぷりとったおかげで、重度の熱中症になる一歩手前で食い止めたようだった。


今となっては、この山行は熱中症の怖さを思い知る良い体験になったと思っている。


(2019年6月8日 記)

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