庚申山(滑落撤退)
- GPS
- 32:00
- 距離
- 29.0km
- 登り
- 2,019m
- 下り
- 2,026m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
日光白根まで一週間かけて縦走するつもりだったが、2日目に50mぐらい墜ちた。死んだと思った。
庚申山までの急登を終えて縦走に入ったので、スピードアップのためアイゼンとピッケルを一時的に仕舞った後の出来事であった。あの雪質では億劫がらず装備したまま進むべきであったが経験不足から油断した。ピッケル無しで為す術無く落ちて行くのは凄く怖い。
走馬灯は見なかったが、恐怖と同時に「こんなミスで死ぬのか。ダセェな。」という感情と、景色がスローモーションになるのは感じた。脚を折って行動不能になった場合、電波は通じないだろうし捜索願が出されるのは下山予定日を過ぎてからだから1週間はビバークを続けねばならん、食糧は十分だが寒そうだ、てなことも考えた。
骨折のリスクがあるが迫りくる立木にぶつかって止まるべきか、何処まで落ちるか分からないリスク(一応アイゼンピッケルを再装備しようか迷った時に、稜線から数十m下は緩斜面になっているのを見て万一落ちてもあの辺で停まるはず、という判断はあったのだが、実際落ちながらだと無事に停まれるとは思えなかった)をとって立木を避けるべきか迷う。結論が出ないうちに恐怖に負け、結果を先送りする形で身を捩って立木を避けた。
身を捩ったら頭が下になってしまい、いよいよ制御不能となって笹薮に突っ込み、身体が宙に浮いて半回転。浮いていた間は視覚情報の記憶が無い。自分の断末魔の悲鳴が聴こえた。断末魔の悲鳴は「うわぁ〜」だった。結構間抜けな声が出るもんだなという感想も浮かんだ。
笹薮の先が崖にでもなっていたら確実に死んでいたろうが、幸い上から見た通りの緩斜面が続いていて、そこに尻から着地して停まった。すぐに全身の関節を動かしてみてどこも折れていないことを確認。自力下山可能で一安心。
気が動転しているので取り敢えず煙草を一服した。アドレナリンで痛みが無かったが、煙草を吸ってる最中に左腕が血塗れなのに気付く。まだ正常な判断ができず、「この傷で縦走を継続したら途中で化膿して辛いかな」とか、更には「ここから引き返すのはつまらないからせめて六林班峠までは行ってトラバースルートで帰ろうか」なんて有り得ない行動計画を考えたが、一服し終える頃には冷静に引返すことを決定。散らばった装備を拾い集め、ピッケルを出して登り返し、足場と陽当りの良い稜線まで出てから応急処置を行った。
実は往路にて煙草の吸殻を雪面で消火した後、灰皿に入れるのを忘れて出発していた。暫くして気付き、悪いことしたなあと思いつつ進んでいたのだが、撤退したことによってゴミを回収できたのであった。
左前腕部の皮膚の4割ぐらいを喪い、帰宅後応急処置の直まき包帯(剥がすとき痛かった)からラップに巻き替えて湿潤療法を試みる。毎日ラップを替えて1ヶ月ぐらいで再生したが跡が残った。この傷跡は酒を飲むと顔面と共にいち早く赤くなるので、アルコールチェッカーとして今日に至るまで重宝している。
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