入笠山 〜円熟の湿原と見果てぬ空〜
- GPS
- 04:29
- 距離
- 10.7km
- 登り
- 146m
- 下り
- 1,077m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
すずらんの里駅発13:30(中央本線、3410円)小淵沢駅着13:42、発14:29(中央本線)新宿駅着16:24 富士見パノラマリゾートのゴンドラは11/4までの営業。ウィンターシーズンまでお休み!だった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
山彦荘の先、舗装道と分かれてから里に下りるまでの道は、小型のオフロード車が何とか通れる道。1本道なので迷わない。未舗装で、途中旧道もあり楽しいが、実際の距離よりも長く感じる。 |
写真
感想
「ゴンドラ?動いてないと思うよ。雪積もるまでお休み」富士見駅前で衝撃の一言。やってしまった。年中営業していると思い込んでいた。真剣に帰ろうと考えていると、すかさずタクシー運転手の営業トーク。「マイカーはだめだけど、大阿原湿原まで上がれるよ。4千円から5千円」俄かに、当初の予定だったゴンドラ往復金額と往復タクシー料金の合計が頭に浮かんだ。
彼は饒舌で、入笠山エリアの様々な情報を教えてくれた。その中の一つが、猟が解禁になったこと。「釜無山は今の季節、行く人いないよ。クマも出るし」クマ?昨日の「思い出」が脳裏を過ぎる。誤射の恐怖が助長された。
到着後、お互いに礼を言い、彼は往路を引き返して行った。しばし作戦タイム。下山には2,3時間かかる。この季節の誓い、午後3時までに里に下りる、を守れるか。湿原散策は楽しそうだなあ。釜無山を振り切った。
想像以上に気持ち良い素敵な光景が広がっていた。静かな道を進むうちに、急速に充たされてゆくのを感じた。どことなく憂いを含んだ表情に惹かれるかのように、秋の湿原に昂揚させられていた。
一周して戻ると、次なる欲望を満たすために、立ち止まること無く、かの山を目指した。以前はバス通りだった舗装路を進む。見上げれば雲一つない青空。好天が前倒しでやってきた。自然に足早になる。
入笠山へは僅かな登りで到達した。この山で、この天候で、この時間に独りでいること、きっと今年、山で遭遇した雨たちのお詫びの標にちがいない。満喫しよう。南アルプスから始めた。
左回りに視線をずらしてゆく。富士山は雲の中だったが、八ヶ岳、中信高原、浅間山、北アルプス、御嶽山、中央アルプス、いずれも雲から顔を覗かせてくれた。山の数ほどため息が出そうだった。頭の中は空っぽだった。一回りをして、いつもの動作にとりかかる。
コーヒーを淹れ終わった頃、続々とハイカーが上がって来た。皆、眺望と静けさに歓喜しているようだった。ゆっくりと口に運ぶ。上手にできた。11月とは思えぬほど暖かい。いつまでもこの空を見つめていたい。腰を上げるのが、その日もっとも勇気のいる行為だった。
駆け降りると目の前にはマナスル山荘。オフシーズン、休業中だった。下山ルートを相談したい。再び、タクシー運転手の言葉が浮かぶ。「山彦荘の二人は親切でなんでも知ってるよ」大いなる期待と共に向かった。
営業中の札、引戸をゆっくりと開けた。すずらんの里へ下山したい旨伝えると、丁寧に地図を描いて説明してくれた。「9キロくらいだよ。気を付けて」良かった。クマに気を付けてではなかった。深々と頭を下げ、引戸を閉めた。
分岐はすぐにわかった。道標にはハイキングコースとある。変化の無い林道歩きでないことを祈りながら歩き始めた。また、独り。静かで、小春日和で、体は軽かった。気持ち良く緩やかな道を下った。
営業中だったら迷わず寄ったであろうお花茶屋を過ぎてから、ほどなく旧道を進む。低い笹原を分ける踏み跡を辿る。心地良かった。すっかり洗い流された気分になって再び林道へ合流する。
青柳への道を分ける頃になると、少し飽きてきた。レット・イット・ゴーを口ずさむか、最近めっきり減ってきた悩み事の数を数えるか迷ったが、結局、ショートカットを繰り返しながら退屈さを凌ぐことにした。
山彦荘のご主人の言葉通り、農道に飛び出した場所にログハウスが建っていた。右折し、左折し、駅までの1本道を辿る。前方の八ヶ岳を望み、道路脇のヤギに挨拶をし、青空に感謝した。短い時間だったが、今年一番の山行になった。明日も良い日でありますように。
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