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記録ID: 21280
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アルパインクライミング
谷川・武尊

谷川岳・一ノ倉沢三ルンゼ

1993年10月05日(火) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
3.4km
登り
1,000m
下り
992m

コースタイム

10月5日 前橋(6:20)→上毛高原駅(7:20)→一ノ倉沢出合発(9:00)→南稜テラス(11:00)→F3上引き返し(15:00)→南稜テラス(18:00)→一ノ倉沢出合(22:00)→沼田
天候 晴れのち土砂降りのち晴れ
アクセス
2011年05月20日 14:11撮影 by  CanoScan 9950F, Canon
1
5/20 14:11
2011年05月20日 14:12撮影 by  CanoScan 9950F, Canon
5/20 14:12
2011年05月20日 14:15撮影 by  CanoScan 9950F, Canon
5/20 14:15
2011年05月20日 14:16撮影 by  CanoScan 9950F, Canon
5/20 14:16
2011年05月20日 14:17撮影 by  CanoScan 9950F, Canon
5/20 14:17

感想

紅葉の始まった一ノ倉沢三ルンゼを登る。百聞は一見にしかずという一ノ倉沢に初めて対面する。車を降りて真正面にそびえる大渓谷、嫌なガスをまとわせた灰色、700人が死んでいるという異様な霊気を感じ、皆うれしそうだ。清野、名取とは毎度の長時間行動パーティーだ。今日こそは日のあるうちに下山したいと願いつつ入谷する。

無数に積まれた死者のための小さなケルンや花束を横目に、今年は特に多いという雪渓を越え、テールリッジに取り付く。ノーザイルで登る石英閃緑岩の足場はビブラムでは心許ない。高度感にびびりながら南稜テラスに至る。ここからは延々とザイルを伸ばす。トップは二人に任せて僕は撮影に専念する。

F滝は意外と難しい。早くも指先が痛い。F1を左気味に2ピッチ、F2は真ん中を抜け最後に左へ回り込む。ここらからの高度感は凄い。細いルンゼの谷間から向こうの滝沢スラブが高度差800メートルの滑り台を下げている。F3に取り付くころには、ガスで視界が悪くなってきた。小雨も降ってきた。名取さんがトップで抜け、僕がチムニーの中に入ったちょうどそのころ、ルンゼを流れる水が急に増えてきた。さっきまでちょろちょろだったのがあっというまに滝に変わってしまった。水流が身体をずぶ濡れにし、寒さと焦りで呼吸が激しくなり、腕の筋力も尽きかけたころ駄目押しの一歩で上に抜けた。ここまで来たら稜線に抜けるしかないと思って頑張ったのだが、清野さんが引き返そうという。どのみちこの場所では常にシャワーを浴び続け、留まっていたら疲労凍死の別れ道だ。

清野さんに従い、二人はアプザイレンでおりた。そこからの下りは苛酷だった。ずぶ濡れの身体に気温は4℃、風は強く吹き付けた。手はかじかみ、アプザイレンのザイルさばきがままならない。清野さんはさすがだ。連続するアプザイレンの手際がいい。こういうときに経験の厚みがでる。暗くなる18時までに南稜テラスに降りるという時間読みも的確だった。登った時とは似ても似つかないナメ滝と化した三ルンゼだが、向かいの滝沢スラブはもっと凄い。ぞっとするような瀑布が注ぎ落ちている。ダブル4回シングル1回のアプザイレンで本谷バンドまで降りきったのが暗くなったその時だった。このパーティーにはこれまで毎回欠かせなかったヘッドランプをここでやっぱり出す。ここからもこの暗やみではノーザイルというわけには行かない。烏帽子岩奥壁のトラバースルートにしてもここに何度か足を運んでいる清野さんがもしいなければ、下れなかった。この闇の中でも的確な下降路を下っていった。ここはすべてコンテニュアス。僕の小さめのクレッターシューズは爪先がつもくて下りでは「てん足」のようにきつかった。でも、この靴は濡れた岩の上でもよくフリクションが効いたので、多少痛くてもビブラムに替える気になれなかった。

テールリッジの末端近くまで降りたころようやくガスが晴れ、月灯かりが灯った。降った雨はほんの小量で、出合まで下ったころにはもう水量はもとのとおりにもどっていた。岩盤の沢なのであんなに急激に増水したのだ。初めてづくしの展開に、すべて貴重な経験だ。やはり一ノ倉沢、運も悪かったが簡単にはいけなかった。だが無事に帰れて本当によかった。また深夜の下山になった。苦笑いで握手。


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