美ケ原(過去レコです)。
- GPS
- 32:00
- 距離
- 12.7km
- 登り
- 276m
- 下り
- 271m
天候 | 晴れたり曇ったり。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2003年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所はありません。 |
写真
感想
美ヶ原へ行くのは3度目である。1度目は美ヶ原高原ホテルに泊まったが、ホテルとは名ばかりのジメジメした部屋の感覚だけが残っており良い思い出はない。2度目は子供達を連れての日帰り旅行で、とにかく歩くのが嫌いだったから、いずれの場合も駐車場の周りをブラブラしただけである。山登りをするようになり、深田久弥の「日本百名山」の中の美ヶ原の項を読み、もう一度行ってみたいと思うようになった。
平成15年10月11日、妻と出掛けた。中央道を諏訪で降り、ビーナスラインを通って美ヶ原に着いた時は11時半を過ぎていた。秋の日の三連休の初日で山本小屋の駐車場は満員であったが、幸いにも片隅に車をとめる事が出来た。11時55分、山本小屋を出発し歩いていると、幾台もの車が我々を追い越して行く。まだ先まで車が入る事が出来たのだ。美ヶ原高原ホテルは昔のままの姿で今も営業を続けており、その前の駐車場も満員でそこから溢れた車が道端にとめられている。車止めを廻り込み、両側に牧柵の続く道を行くと、右手に「美しの塔」が現れるが帰りに寄る事にしてやり過ごす。「塩くれ場」まで来ると、「あるking大会」と書かれた横断幕が張ってあり、その周りで沢山の人が昼食をとりながら休んでいた。本日の宿泊所の「王ガ頭ホテル」は行く手に見えるが、まだ時間もたっぷりあるので道草を食って行く事にする。塩くれ場を左にまがり、しばらくすると茶臼山への方向案内があるが、それは牧場の中の道を指している。よく見ると牧場の中に一条の踏み跡があり、大きな牛どもが草を食んでいる。牧場に入り、ギョロメでこちらを睨む牛と目を合わさないようにし、恐る恐る牧草地の中の狭い道を、大きな糞の塊を踏んづけないよう気をつけながら歩く。雄大に広がる高原の中を、遠くに連なる山々を見ながら歩くと、やがて牧草は無くなり、岩がゴロゴロする荒れ地となって牛もいなくなる。高原の端は切り立つような崖となっており、ここは台地であるという事が実感出来る。牧場を出て赤や黄色に色付いた小高い山を登ると、程なく茶臼山の頂上に着き、そこにはふた組のパーティーが休んでいた。13時ちょうど、腰をおろして昼食を摂る。正面左に蓼科山、それに連なる八ヶ岳、真正面には車山、その向こうに富士山と南アルプス連山がくっきりと見える。目を西に転ずれば、中央アルプス、さらには御岳が連なっている。きれいな空気を吸って景色を愉しみながらの食事は旨く、デザートにナシ、食後にコーヒーと、カロリーバランスは大幅な超過である。1時40分、頂上を出発し広大な高原を眺めながら下る。牧場の出口には牛がたむろしているが、ゴメンナサイと挨拶しながらこれをすり抜けて道路に出る。塩くれ場から王ガ頭までの道を歩いている人は我々のほかに誰もおらず、ホテルの送迎用のバスが土煙を残して走り去って行く。パラボラアンテナの林立する王ガ頭に着いたのは3時10分であった。南側には茶臼山から見えたと同じ景色が、東側遠くに秩父の山々が、近くには浅間山が、北東には四阿山、白根山、北には妙高、火打、高妻、さらには雨飾も遠望出来る。わたしでも知っている山々がこんなにも沢山見る事が出来、あの山も登った、この山も登ったと楽しくなる。王ガ頭ホテルは美ヶ原高原ホテルに毛の生えた程度と思っていたが、予想に反しそれは素晴らしいホテルであった。富士山を正面に見ながら入る露天風呂はまさに天国、レストランでの食事は山の上とは思えず、部屋は和室にベッドの寝室がついている。ひと風呂浴び、夕食前に王ガ鼻まで歩いた。林立するパラボラアンテナも無くなり王ガ鼻に着くと、そこは断崖絶壁の岩場で遮るものない景色が広がっている。薄い雲にふたをされた松本平が眼下に広がり、その向こうに右手から後立山連峰、続いて槍、穂高、さらには乗鞍、御岳と3000m級の山々がおしげもなく連なっている。5時15分、雲間から乗鞍の稜線上に太陽が現れ、それが沈むと夕焼けが広がり山々がシルエットとなって浮かび上がる。三脚を立て、それを待っていた人達が一斉にシャッターを切るが、わたしはちゃんとしたカメラを持って来なかった事を悔いながらデジカメのシャッターを押す。
夕食後は美ヶ原の四季の写真をスライドで見せて呉れるが、四季折々の綺麗な写真はホテルの奥さんの名調子で一層盛り上がる。その後、夜景と星空を見るためホテルのご主人が運転するバスで「思い出の丘」に出向く。ご主人の漫談調の解説に皆さん大喜びしながら目的地に着いたが、生憎の曇り空で星は見えない。松本の夜景を楽しんで、漫談調ではあるが時には如何に美ヶ原を守るかという深刻な話しも混じえた案内を聞きながらホテルに戻った。宿泊客の中には優に90歳を超えるだろうと思える超高齢者の姿もあり、バスで送り迎えをし、至れり尽せりのサービスでもてなす事に徹底しているホテルの姿勢に感服する。山の開発、自然破壊、環境破壊が取りざたされているが、山を守りながらの美ヶ原のこのサービスは批判されるものでは無く、大いに楽しめば良い。
翌朝ご来光を見るべく5時に起床し外へ出たが、残念ながら雨で全く朝焼けの気配は無く、再びベッドにもぐり込んだ。朝食をたっぷり食べ、8時40分にホテルを発った。「ただ一面に立ち込めた牧場の朝の霧の海」そのままの高原を歩き、彼の有名な尾崎喜八の「美ヶ原溶岩台地」の詩が刻まれている「美の塔」で鐘をカンカンと鳴らした。
9時25分、駐車場に戻り扉峠から松本に下り、白骨温泉に寄ろうとしたが渋滞の為断念し、乗鞍高原から木曾に向かう紅葉真っ盛りの有料林道を通り、途中、奈川で玄関先に例の「日本の秘湯を守る会」の提灯がぶら下がっている温泉に入り、野麦峠を越えて帰宅した。
とても山登りとは云えないが、今迄登ったどの山よりも素晴らしい眺めがあり、今度は雪が積もった時期に行きたいな。冬は道路が閉鎖されるがホテルは通年営業で、どんなに雪が積もっても松本まで雪上車で迎えに来て呉れるという話しを聞き、妻はもう行く気になっている。
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