下ノ廊下 歴史の流れに沿って歩く
- GPS
- 16:21
- 距離
- 28.8km
- 登り
- 4,787m
- 下り
- 3,910m
コースタイム
- 山行
- 5:52
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 5:57
- 山行
- 8:49
- 休憩
- 1:03
- 合計
- 9:52
天候 | 1日目 晴れのち雨 2日目 雨ときどき晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
バスタ新宿からJR高速バス(夜行)で富山駅(22:00→05:00)→富山地方鉄道で宇奈月温泉(05:14→06:48)→黒部峡谷鉄道で欅平駅(08:17→09:33) 下山は黒部ダム 黒部ダム駅から関電電気バスで扇沢(17:05)→信濃大町まで路線バス(17:55→18:30ごろ) |
コース状況/ 危険箇所等 |
今年はスノーブリッジが溶けるのが遅かったようで、阿曽原温泉小屋に泊まっての通行は実質10日ちょっとのようです。登山道の状況は、阿曽原温泉小屋のHPを必ず確認してください。 雨の中の旧日電歩道は、ただでさえ怖いので慎重に慎重に歩きました。テント泊装備で15kgを超えてましたが、なんとかなりました。でも装備によって所要時間がかなり変わると思うので、阿曽原→黒部ダム方向は早めに出発がおすすめです。 |
その他周辺情報 | 下山は黒部ダムなので、信濃大町まで出るのにも時間がかかります。ワタシの場合のんびりしてたら電車がなくなり、駅前のルートインに泊まりました。ルートインはとてもきれいでいいホテルです。 |
写真
感想
何年も前から憧れ続けていた、黒部電源開発の歴史を辿る山行に行ってきました。ルートはこだわりの欅平→阿曽原温泉小屋→黒部ダムの、黒部開発順です。先に言ってしまうと、ほとんどの人は黒部ダム→欅平ルートで、たぶんこの日にワタシのルートで歩いた人はほかにいなかったのではないかと思います。秘境中の秘境で声をかけ合う人がいないのは、かなり心細かった。。すれ違いも、一時期にまとめてすれ違ってしますので、ほとんどの行程は一人歩きでした。半径5kmにヒューマンビーイングがいないときに大太鼓とかS字峡とか、心細いったらありゃしない。
小屋で会った人に聞くと、黒部ダム出発の人はほとんどがロッジくろよんに前泊してるそうです。なるほど…無理して夜行バスや地鉄の始発に乗らずに行けたか(調査不足)。
1日目 (2022.10.23)
宇奈月温泉からトロッコ客車に乗って出発。あっという間に谷間に突入。とともにかなり雨が降りはじめて…場合によっては祖母谷温泉に泊まって停滞も…なんてすでに逃げの言い訳を考え始める。けど欅平直前で急に青空。これはもう行くしかねーだろ!なんて今ごろになって覚悟を決める。しょっぱなの登りはきつい。けど雨の影響はなかったようで、足元はそれほど悪くなく、勢いで登れた。このときに同じトロッコに乗っていた2人組を抜かすが、そのあと小屋まで同じ方向の人には合わなかった。
水平歩道に入ると、序盤は普通の登山道でときどき番線が張られてる程度。小屋から欅平に向かう人とはここら辺でほとんどすれ違ってしまう。以降小屋までずっと一人。黒部の怪人の表情を右から左まで眺めながら、水平歩道に歩いていく。志合谷まで深く谷の方に向かうと、トンネル発見。これは怖い…ディズニーシーのセンターオブジアースみたいな気分だけど、迫力が圧倒的に違う。でもディズニーもよくできてるなぁとか思ったり。このとき怖さを紛らわすために、ユーチューバーさながら、俺の最新のiPhone14で動画を撮りながら通り抜ける。すごいのが撮れたと思ったら、撮影開始ボタンを押してなかったようだ。ヒカキンさながらの悲鳴をあげる。慣れないことはやらないほうがいいのか…
続いて1日目のハイライト、大太鼓ちゃんと通れた。番線も丸太もしっかり整備してもらっていて、通れないところではない。しかし怖かった。足がすくむとはこのことか。使い方としては違うのだろうけど番線を両手で掴みながら、恐る恐る、下を見ないように、でも足元はよく見て…母親には見せられない。誰かに写真を撮ってもらいたかったなぁ。
折尾谷を過ぎたころに、雨と雷が。大丈夫、いざとなったらビバークだってできるし、食糧や装備も万全。峡谷から離れて小屋までは下るのみ。集中力を切らさないように、なんとか到着。約6時間ちょっとでした。
すでに黒部ダムからのお客さんで賑わってるけど、恐る恐る阿曽原温泉小屋の泉さんに小屋泊まりできないか聞いてみたところ、食堂で寝るならいいよ、と快諾いただいて小屋泊まりに変更。実はかなりの大雨になっていてテント泊に不安を感じた(という言い訳)。だけど無理してテントで過ごしていたら疲労回復できなかっただろうし、翌日の長丁場の行程で水を吸ってさらに重くなったテントを背負っていくとこを考えると、いい判断だったと思う。なにより小屋の泉さんの話が聞けて、優しさに触れられたことがよかった。きょうはテントはつらいよ、と理解をしてくれたのはうれしかった。でも翌日の到着の瞬間まで、何を背負ってるのか自問自答が続く。。
高熱隧道の温泉までは、小屋から少し下る。サンダルを借りて降りて行ったけど、大雨の中では足びしょびしょ。登山靴で行った方がよかったかな。脱衣所がわりの高熱隧道のトンネル内は超高温。雨なのでここで脱ぎ着するしかないけど、かなり大変。温泉は素晴らしいです。雨でなければ夜中にももう一度行きたかった。小屋の夕食は、名物のカレー。制限時間30分でおかわり自由にしてもらって、とても満足。すごく美味しかった。カレー職人大仏さん、ありがとう。夕食後はビデオ上映。15年前のNHKのビデオを見せてもらった。いまいるこの小屋が毎年解体、再建築されるのを見て、なんだか
感動。自分今すごいところにいる。泉さんの、すごい場所ですごい人たちの努力でこの道と小屋がある。でもここに来るみなさんもすごい!という言葉になんか救われた。小屋泊まりバンザイだ。
2日目(2022.10.24)
05:20に出発。夜のうちに雨は上がる予報だったけど、依然として降り続くなか歩き始める。ヘッ電山行も慣れたもんだけど、油断しないように。仙人ダムに着くころには明るくなった。知ってはいたけど秘境のなかに突如現れる大建造物に驚く。狭い廊下、トロッコの前路、そして熱を発して息をしてるようなトンネル。さらに山肌から突き出した黒四発電所の突き出したやつ、なんだこれは。昨日とはまた違う、人気のないところの時代を感じる建造物に不気味さを感じる。昭和を感じるフォント、好きなんだけど怖い。千と千尋の、誰もいない異世界に入ってしまったんじゃないかと心配になる。お父さんお母さんが中華料理店でブタになっていないだろうか。それらを横目に見ながら長い吊り橋を、心を落ち着かせながら渡る。このあたりで10人弱のツアーのパーティーを抜いたが、黒部ダムまで同じ方向に向かう人には合わなかった。登りが少しキツくなり、気がつくと黒部川の水面からはかなり上の方にきている。番線もほとんどの場所に整備されて、ありがたみを感じる。集中しながら進むと突然目の前にS字峡が現れる。それから半月峡も通過。この辺りはカメラを構える余裕がない。まだまだ今日の行程の1/3も過ぎていないのに、気持ちが切れかかる。集中!とか叫びながらしばらく進む。ずっとあこがれていた十字峡が目の前に飛び込んできたときは、感動の嵐だった。すごい、すごすぎる。こんな言葉でしか形容できないが、しばしボーッと見つめる。ここでコーヒーを落とすのが夢だったけど、先を急がないといけない。ここへ来るのが目的だったけど、まだまだ難所は続くのだ。
エアリアマップではこの先も危険マークが続く。足の調子はいいし、睡眠もバッチリ。行ける。白竜峡から別山出合あたりで黒部ダムからの人とすれ違う。道幅の狭いところで何度もすれ違うため、時間がかかる。休憩と割り切って、集中力を維持する。この区間がいちばんの難所だったと思う。番線に頼らざるを得ないところもあるし、ヘルメットになん度も頭上の岩を当てた。すれ違うときがいちばん危ないので、譲ってもらったとしても絶対に焦らないこと。一人で歩いていても後ろにムスメがいるつもりで、足元注意!横(の岩)注意!上注意!とひたすら言い続けて集中力を維持。
大ヘツリを過ぎたあたりから、登山道は落ち着き始める。でも黒部ダムまではまだまだ長い道のり。でもダムが見えてきたときにはほんとに感動。地上の星を口ずさみながら歩みを進める。黒部川を右岸に渡り、最後の急登。ツラずぎる。黒部ダム駅の入口をなかなか見つけられず、工事の人に教えてもらった。
ヘトヘトになりながらも下の廊下を完登できた。いろんな本や映画を見て予習したけど、残念ながら歴史に浸る余裕はあまりなかった。けど日本の産業開発のために切り開かれた道、それを今の時代まで管理する人、この期間のために小屋を準備してくれる人たちに感謝することができた。
1か月前からトレーニング山行で、日帰りだけどテントを背負ってる歩いた奥多摩も、無駄ではなかった。テントは張らなかったけど、そういう問題ではない。歩き通せたことが自信になった。
ビデオ鑑賞会、良かったですよね😄
コメントありがとうございます。
ビデオ感激でした。翌朝出発するときは、しっかりお礼をしていきました
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