ミヤマキリシマツツジの花咲く雲仙・普賢岳へ
- GPS
- 02:31
- 距離
- 5.4km
- 登り
- 467m
- 下り
- 460m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
普賢岳の周回ルートは時計周りのみ |
写真
感想
1027 雲仙・普賢岳
雲仙の温泉を後に登山口となる仁田峠に向かう。仁田峠に向かう道路は8時から通行が可能となる。高度が上がるにつれ、道路からはパノラマが広がる。仁田峠に到着すると、既に20台ほどの車が停められている。我々が入口のゲートを通過したのは8時を少し回ったところであったが、ゲートが開くのを待って峠に登ってきた車も多いのだろう。
上空には雲一つない快晴の蒼空が広がっており、有明海を挟んで南には天草、東には熊本の山々が綺麗に見える。北側には普賢岳のすぐ右手に岩石ばかりの平成新山が威容をみせる。駐車場の案内板には平成新山が出来る前の写真が提示されていたが、これだけの山が突如として生じるというのは自然の脅威に他ならない。
例年、11月の最初の週末は紅葉のピークを迎えることになり、その週末には相当の混雑が予想されるらしいが、周囲の樹々には紅葉の気配はない。仁田峠の駐車場とロープウェイの駅との間はミヤマキリシマツツジの一大園地となっているが、随所で花が咲いている。中には満開の花を咲かせているものもある。
花の写真を撮っていると、後から来られたご婦人が「あら〜、満開ね。何しろこの暖かさだからね〜。でも果たして来年も咲くのかしら」と仰って、通り過ぎてゆく。既に高度は1070mを超えており、それなりに涼しいが、今日も夏日となる予報だ。花々の狂い咲きに気象の異常を憂うばかりだ。
妙見岳の登山口の案内板によると国見岳から普賢岳に向かう登山道が崩落のために通行止めとなっているようだ。妙見岳、国見岳に登ってから普賢岳に向かうことを考えていたが、普賢岳を周回するルートを選択することにする。
ロープウェイの駅を過ぎて普賢岳に向かう登山道に入ると、数組の登山者が歩いている。妙見岳の山裾をトラバースするとあざみ谷と呼ばれる谷に入る。谷奥からつづら折の急登に差し掛かると、昨晩に泊まった温泉の硫黄成分が毛穴に蓄積されているせいだろうか。汗と同時に体から硫黄の匂いが噴き出すように思われた。
急登をひとしきり登ると国見岳と普賢岳の鞍部に達する。ここからは普賢岳に登るルートとその北西斜面をトラバースして北の風穴に向かう道に分かれる。北の風穴から普賢岳にかけては一方通行となっているので、この周回ルートは時計回りに進むほかない。
トラバース道に入ると全く人の気配が感じられない静かな山歩きとなった。朝陽に対して山影となっているせいで空気がひんやりとしている。風穴は自然の洞穴で、かつては蚕の卵の保存のための天然の冷蔵庫として養蚕に重要な役割を果たしたらしい。その入口にはコウモリがせわしく飛び回っていた。
気がつくと岩を掴んでほぼ水平に生えている大きな樹がある。案内板があり、ヤマグルマの樹であることを知る。一科一属一種の植物であり、他に類縁の植物がないとのこと。花が車輪状につくことに名称は由来すららしい。九州に特有の植物でもなく、本州にも広く分布するらしいが、関西で見た覚えがない。岩からほぼ水平に生えるその異様な樹影はなんとも印象的であった。
北の風穴に至ると、近くにベンチが設けられており、北西の展望が大きく開けている。諫早湾には湾を横切る大きな橋があるように見えたが、実際には灘受堤防と呼ばれる防波堤らしい。トラバース道が終わって、尾根に取り付く地点には鳩穴分岐とある。かつてそのように呼称された風穴があったらしいが、噴火により穴は塞がってしまったらしい。
ここからは一気に急登が始まる。ここから立岩の峰と呼ばれるピークまでは一方通行であるが、確かに離合が困難な細い急登の道が続いている。灌木の中をひとしきり登ると、広々とした山頂大地の一角に飛び出した。目の前には岩石を積み上げたような平成新山が大きく聳える。その岩の間には樹木が一切ないのだが、ところどころで草が生えていることに気が付く。あと百年もしないうちに樹木の生えるようになるのだろうか。
南西の方角にはほぼ台地状の普賢岳の山頂が見える。あとはわずかなアップダウンがあるばかりだ。普賢岳と平成新山との間は霧氷沢と呼ばれ、冬の季節には霧氷がよく発達するところらしい。手前の小さなピークから霧氷沢の谷間に降りてみる。登山道の周囲は妙に空気が冷んやりとしているかと思えば、ここにも大きな岩の下から冷たい風が吹き上がってくるようだ。岩の下に風穴があるのだろう。
普賢岳の山頂に至ると一人のご婦人が休憩しておられるだけだった。先ほどの仁田峠の満開のミヤマキリシマツツジの前でお遭いしたご婦人だ。三角点のある岩がゴリラ岩、西側にはガメラ岩と呼ばれる岩があることを教えて下さる。ご婦人のご案内に従って岩の左手に降ってみると、確かに巨大な亀のような怪獣が口を開けているように見えるのだった。
ご婦人は月に2〜3回はこの普賢岳に登られるそうだ。年齢は76歳とのことであったが、到底そのような齢には見えなかった。足腰もかなりしっかりしておられるが、その頻度で普賢岳に登って来られるようであれば不思議はないだろうか。
山頂の周囲の樹々はわずかに紅葉しているようだった。紅葉の見頃は一週間後であるが、その後にはすぐにも紅葉の季節は終わってしまうとのこと。ご婦人と話をしている間に瞬く間に下から雲が登ってきて、見る見るうちに平成新山を覆い隠してゆく。空には急に雲が増えたようだ。そういえば空気も蒸し暑く感じられるような気がしてきた。
普賢岳の山頂からは先ほどのトラバース道との分岐部まで急下降が続く。下からは続々と多くの人が登ってくる。一気にあざみ谷まで下降すると、再び妙見岳の山裾をトラバースして仁田峠に戻る。峠には多くの人が訪れているようだった。雲仙温泉を観光て訪れた人の多くが仁田峠も訪れるのだろう。
再び雲仙の温泉街に降ると温泉街の外れにあるよか湯に立ち寄る。昨日泊まった雲仙の白濁したどろどろの硫黄泉と異なり、薄緑色の透明な温泉は硫黄の匂いもさほどキツくなく、汗を流すには程よい温泉であった。
温泉街の酒屋で日本酒を入手すると、諫早の駅に向かう。雲仙から橘湾を眺めながら見晴らしいの良い道を降って行くと空にはすっかり雲が広がっているのだった。諫早から西九州新幹線に乗り込むとすぐにも雨が降り始める。束の間の好天に恵まれた雲仙の山旅であった。
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