初心に戻って御来光拝みに金峰山、まぁ山頂立ったのは昼でしたが💦
- GPS
- 14:45
- 距離
- 11.7km
- 登り
- 1,211m
- 下り
- 1,216m
コースタイム
- 山行
- 12:32
- 休憩
- 2:06
- 合計
- 14:38
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
大晦日、もやもやしてた。気分が盛り上がらず、また身体も節々が鉛の様に重くリビングから洗面所まで歩くのも辛かった。
前日29日谷川岳に登り避難小屋手前、穴熊沢の頭までトレースを追い歩くがトレースは無くなり、腰まで埋まる柔らかすぎる雪に進むのは諦め撤退するも天候は荒れ視界不良、吹雪、トレースは埋まりかけの戻り道パーティーからはぐれ、ソロで進むが腰下ラッセルが腰上ラッセルに、さらに雪深くなり最終的には胸上ラッセルに。それでも正常化バイアスが働いて「吹雪てるから仕方ない、こんだけ降ってるんだ、今降った分が追加トッピングで胸ラッセルさ。四時までにロープウェイ駅にたどり着きゃどうなろうと構わないさ」って。あり得ないと思ってた。自分を信じ切っていた。ただ、猛烈な違和感が襲う、まさか!?ロストした?この慣れた天神尾根で?ありえない!!だがまだ認めてなかった。
僅か数m進むのに20分から30分かかってた。下り傾斜なら僅かに進み易く谷に下りたらダメだ、沢に向かったらダメだ!と分かっていたが、とにかく進みたかった。
1時間かけて進んだ距離は僅かだ、ただかなり斜面を下ってしまった。尾根筋から下を見てトレースがある様に見えた「あそこに下りたらトレース踏めて駅に戻れる!」そう幻を見てしまった。トレースだと思ったのは雪崩で落ちてえぐれた跡だったらしい。詰んだ。ヤバいと思った。iPhoneは使えてなかった、画面全体に雪が付着し凍りフロントカメラが塞がれロック解除できずにいた、南無三!開いてくれ!祈りながらiPhone触ると開いた、そうか、Apple Watchがロック解除してくれたんだ、良かった。これで正確な居場所が分かる!
急ぎヤマレコ開きGPSをチェックする。
絶望感だった。僅かだが田尻尾根を下ってた。尾根から外れて沢に向かってた。ものすごく冷静になった。まずは状況確認だ、そうして見回すと愕然とした、今いるのは確かに斜面だ。それもヤバいくらいの斜度だ。
落ち着け、考えろ、どうする、どうすればいい。
選択肢は、、、このまま下るか、登り返して尾根に戻るか、GPSが駅を示す方向に斜面をトラバースするか、3択しかない。
しかし、下るのは雪崩のリスクが高過ぎた、下れば確かにいつか駐車場に着く、が、田尻尾根は急坂だ、夏に歩いた事があるがクソ腹立つくらい急だ、悪い事に、前日までに3m積もり、今日さらに50cm以上降ってる、このふわふわの柔らかすぎる泡みたいな雪だ、そんなとこを下れば確実に雪崩に巻き込まれてしまう。今から田尻尾根を下るのはムリだ。
ならば登り返すか、が、登れない。ピッケルを両の腕で掴み雪を掻き砕き膝で体重をかけて踏む、押して踏む、踏むが踏ん張らない、固くならない。足を置いた刹那ブザマに踏み抜けてしまい全く登り返せない、体力だけが尽きていく。諦めた。
残る一手はトラバースしかない、行けるか?ピッケルで潰すが叩くが全体重かけて足場を作るが、情けない踏み抜き埋まる、足が抜けない、顔まで埋まる、恐怖は無い。全く怖くは無いが、この状況が何なのかは良く把握出来てた。考えに考えて最適解を探し出さねば。
なに振り構って居られない。まずは雪洞を彫ってた。ビバーク決定だ。今夜このまま吹雪いて冷えて斜面の雪が凍り固まり締まれば深夜ならここを登り返せるだろう。きっと大丈夫、凍れて凍ってアイゼン刺されば絶対登る!そう思いながら人が膝を抱えてなんとか収まるくらいの横穴を掘った。座ってみたが頭が当たって尻が冷たく居心地が悪い。
その時、脳内で何かがフラッシュした、違う!ムリだ!夜中に表面が固まっても登り返すか体力あるのか?斜面で雪洞掘りで全身雪まみれだ、僅かだが手袋もハードシェルも靴も水がしみかけてきてる、この状態で今から12時間耐えられるわけない、悟った。
iPhoneを開き110に通報した。「遭難した」ではなく「今現在限りなく遭難状態であり、行動不能であり、雪洞でビバークするつもりだが、五体満足で戻れるか、あまり自信がない」と伝えた。分かる範囲の状況を伝え、GPSの位置情報を伝え、「とにかく今いる場所から動かないでください」と念を押され、折り返しの着信を待つ様にと言われ電話は切れた。
どれくらい時間が経ったか分からないが、救助隊が来てくれるまで生きてなくてはならないから身体を温めるために雪洞を掘り続けた。立派な雪洞が掘れたなと自画自賛してたら着信があり、県警の山岳救助隊の方からだった。
まとめると、今から救助向かいます、悪天候なのでヘリは飛べません、ロープウェイに乗り天神平から徒歩で向かいます、GPS座標目指して向かいますから絶対動かないでください。ただ天候次第では救助は明日になるかも知れません、それは覚悟してください、明日迄耐えられる様に雪洞を掘り低体温にならない様に頑張って待っててください。と、電話を切れ、長い「待つ」が訪れた。
とにかく動かないと身体がブルブル震えてきて低体温の予兆がきた。食料水はある、最悪を想定し、まさかと思いつつアルミ保温シートにテン泊でテントの下に敷くグランドシート(フットプリント)をザックから出してそれぞれ身体に巻き付ける。
アルミシートは気休めだが、フットプリントは降り積もる雪を確実に弾き落として付着を防いでくれた。
バラクラバで顔を覆うと確かに暖かいが眼鏡が曇り、それで無くても着雪で僅かしかない視界がゼロになってしまうので顔の凍傷は覚悟した。
とにかく雪洞を掘り続けた。
今からロープウェイ乗ると言われてたから、詰所からロープウェイまで20分、ロープウェイが方道15分、天神平から田尻の分岐まで夏ならゆっくり歩いても20分はかからないが今は雪山だ、装備装着やザックの重さを考えて1時間はみなくては、、、
すると何分だ、何分待てばいい?頭が回らない、計算できなくなってる、分からんが2時間だろう、そう思うことにした、
よし、2時間生きよう。とにかく2時間雪洞を掘り続けてよう、2時間経ったらきっと救助隊が近くに居てくれてるはずだからホイッスルを吹きまくろう。
恥ずかしいとか情けないとか後悔とか、微塵も無かった。
これで命が繋がった、それだけだった。
一緒懸命ピッケルで雪洞を掘った。掘り過ぎて天井が崩れて埋まるかもと思いながら、でも掘った。
立派な雪洞が掘れたが、よく考えたら扉がないから風を防げない事に気がついた。静かな天気のビバークならこれで良いが今は吹き付ける吹雪だ。失敗したと思った。が、なら扉を作ろうと入り口辺りに雪をかき集めて扉と言うか壁と言うかいわゆる衝立を作る事にした、
まぁまぁいい感じに風除けが出来たが、今度は自分が入る隙間が無かった。塞ぎ過ぎた。寒さのせいか、極限なのか、許容範囲をこえたのか。間抜けだ。
壁を崩し、中に入るとやはりギンギンに冷たい風が容赦なく吹き込んでくる。今のうちに穴を塞ぐかと思ったが、もし救助隊が来てくれたら時に雪洞の中に居たら絶対見つからないぞ!と思い、慌てて外に出る。
時間的にはあくまでもワタシの勝手な想定でのタイミングだが、そろそろなにかしらシグナルがあってもいい頃だろう。
今いる斜面から、天神平は尾根を登った向こう側だ、来るなら尾根上から声が届くはずだ、だから、尾根に向けてホイッスルを吹いた。ピー、ピー、ピー、ピッ、ピッ、ピッ、ピー、ピー、ピー。確かにSOSは短音3回、長音3回、短音3回をワンセットに、1分間隔で鳴らす様な記憶力があって、それが正解か分からないが、とにかく吹いて吹いて息が切れてゼェゼェ言うまでホイッスルを鳴らした。
悪魔が耳元で「無駄だよ、意味ないよ、この風だぜ、届かないよ」と囁いていたけど、吹いて鳴らした。
このホイッスルは本体が二分割になっていて中に氏名住所連絡先や血液型など書いた紙が丸めて納めてある。風呂と寝る時以外はほぼ常に首から下げてるお守りみたいなホイッスルだ。
こいつの音は必ず救助隊に届くはずだと信じてた。
その時着信があり、救助隊からで「近くまで来ている、だがまだ正確な場所が特定できない。ホイッスルを吹き続けてください。もう少しです」と。涙が出でた。生きてて良かったと思った。生きれそうで良かったと思った。
やがて、遠くに微かに「おーい」と呼ぶ声が聞こえた、幻聴か?まさか?ついに頭が悪くなったか?そうも思ったが、その声は確実に大きく強くはっきり聴こえている。
ワタシも精一杯のホイッスルを吹いて応える。息が尽き過呼吸になる寸前だったが、吹いた。
確かに確実に近くで「分かった」と聞こえた。雪が付着してボヤけた眼鏡を外し精一杯に目を凝らすと白いレースの様な吹雪の幕の向こうに微かにヘッドライトの灯りが見えた。灯りは上に下に横に激しく動きながら僅かづつ明るくなってる。
やがて救助隊の全身がハッキリと尾根の上に見え、強く逞しい声で「そこにいてください、今ロープを下ろして懸垂下降で下りていきます、もうすこしです」と。
人間はたまに無力で無知だと思う事があるが、この時は人間の力強さと勇敢さを全身で身に沁みた。
斜面を踏み締め固めながら救助隊の方が下りてきてくれて、安堵で崩れ落ちそうになったが耐えた。
雪洞は捨てた、あれこれ出した荷物はザックに押し込み救助隊が持ってくれることになった。身軽なら登れるからと。
なるほど、ワタシは3択で答えを考えたがザックを捨てて、体ひとつならこの斜面を這い上がれたかも知れない。そしたら救助隊の方々にもご迷惑かけずに自力下山できたかも知れない、そう思ったが甘かった。
この場所に来るまでの数kmの腰上から胸までのラッセルと、ペース配分無しの雪洞掘り、そして冷えからくる低体温寸前のこの身体は、救助隊が張ってくれたロープを掴んでも軽い空身でも、12爪アイゼン履いたこの足をキックステップ数度叩き置いても踏み抜き、絶望感あふれる。
上に待機してる救助隊がスノーシュー履いて下って往復して、さらに踏み締めて固くしてくれて、それを数度繰り返し。ロープを手に巻き付け全身の力を振り絞り、そして、やっと登れた。再び尾根に出れた。救助隊の方々に合流出来てとにかく嬉しかった。
尾根から僅か数十m下の斜面で埋まってたらしい。この距離が上がれないならここから先ひとりで天神平の駅までなんてムリだったなと、そう思うとただ良かったと思った。
アイゼンはムリだからスノーシューに履き替えてくれと言われ、確かにその通りだ、とアイゼンを外そうとするが端末を足先でまとめていたが、その紐が凍って解きたくても解けない。グローブを脱ぐか、いや、それはダメだ、指がなくなる、仕方ないピッケルのピックをねじ込み引っ掛け力技で解き、やっとアイゼンを外せた。
尾根の上は隊員の方があらかじめ踏み固めて平にしてくれてあったので助かった。雪まみれのスノーシューをピッケルでバンバン叩き雪を落として靴先をねじ込みバンドを留める。単純な作業が疲労でサクサクできない、これは情けなかった。
やっとスノーシューに履き替え、シュリンゲでアンザイレンして後ろから確保してもらい、先を急ぐ。
ただ、トレッキングポールはブラックダイヤモンドのレバーロックタイプで大変優秀なストックだが、レバーが凍りつき一本は伸ばせたが、もう一本は伸ばせず短いままだった。
スクリュータイプは凍りついてヤバいと考えレバーロックを選んだが雪山では「凍る時は何でも凍る」とよく分かった。
空身でスノーシューは楽だ。救助隊に前後挟まれているおかげもあるが確実に歩ける。
ならば何故スノーシューを履かなかったのかと考えたが、柔らかすぎる深雪の新雪にずぶずぶに埋まりアイゼンを脱ぎスノーシューを履くスペースがなかったからだ。履き替えたくてもその必要を感じた時には履き替えできる環境が全く無かった。だからアイゼンで歩き通そうと思ったが、今こうしてスノーシューで歩いてる事から、さらにもっと早く状況判断してスノーシュー履き替えてれば事態は変わっていたかも知れない。
確かに行きは最初アイゼンだった。グリベルの12爪のセミオートマチックだから食い付きは最高だ。だからイケるはずだった。
まだ天気が良く、怪しい雲はあるが穏やかな昼前に、トレースがある平らなエリアでスノーシューに履き替えて歩いてみたが、ワタシのスノーシューはMSRのライトニングアッセントにテールプレートを付けてロングにしてる為あり得ないほどの浮力があるが、左右それぞれ横幅があり、また前後が長い、どちらかと言うと後ろがやたら長い。
なのでワカンの方がつけて踏んでくれたトレースは幅が合わず左右が噛み合って踏みつけてしまう、
幅を考えてトレース幅より広く歩くのは足首が負けて女座りみたいに膝が曲がってしまい長い距離は歩けない。かと言ってわざわざあるのにトレースを避けて、トレースに沿って雪原を踏み歩くのはなんか無駄だ。それでせっかく履いたスノーシューだが、すぐに脱いでしまった。
テールプレートを外すと言う手もあったが、あれは外すのもハメるのも以外と力とコツが必要で不安定な雪面ではやる気にならない。
まぁそんなわけで、前爪アイゼンもピッケルもトレッキングポールもスノーシューも持っていたが、最終的にはアイゼン、ピッケルに頼ってしまった。
※今改めて考えたら、アイゼンとスノーバスケット付けたトレッキングポールならもしかしたら、ある意味多少進む距離が伸ばせてたかも知れない。これは分からないが。そうだ、今度試しに行こう。ってそう言う事を言うと多方面から叱られそうだから自粛しよう。
平坦なエリアは普通に歩けたが、登り斜面はやはりキツイ。
登りだからヒールリフトを上げて登るが斜面が急で食い付かないままズルズル下がってしまう、
バンバン叩き付けても噛まないですべる。見かねた救助隊の方が「斜度が合わないからヒールリフト畳んで靴の爪先から雪に蹴り込んで見てください!」と、やってみる、スノーシューはブラブラさせて、靴先の爪を使いキックステップで数度叩き込むとなるほど刺さる。
スノーシューは基本平坦なエリアを、ある程度の斜面はヒールリフトを、それ以外の斜面は脱いだほうが良いと考えていたが、こんな使い方も有るのだと知った。いろいろ調べて実践してきたつもりだが、まだ無知だった。反省してさらに学習しよう。
最後の斜面を登り切るとロープウェイ駅からスキーコース沿いのスキーエリアを区切る長いロープが張ってある場所に出た。
「あ、ここか、やっとここまで戻れたんだ」と呟いてた。
あとは下るだけ。夏なら駆け下る場所だ。残雪期ならアイゼン外して半分滑りながら大股でリズミカルに走り下る場所だ。
今は体力も筋力も尽きかけてるからムリだ、ゆっくり進む、一歩一歩進むのがやっと。だけどそれでいい、ここで無理や無茶をすると山神さまが「お前だけは許さん、今ここで逝っておしまいッ!」とお仕置きしてくるかも知れない。それだけは避けたいから確実に一歩、また一歩を進む。
ロープウェイ駅が近づく、目の前だ。
扉の前に係員が待っていてくれてる。
何台ものロープウェイの車体が繋がって並んで止まってる。
時間は5時だ。
ロープウェイの営業は4時までだが、窓口や店を閉めた後の従業員の方を麓に降ろすために5時までは稼働しているとの事らしい、緊急事態で非常対応で下山が四時を過ぎて最終に乗れなくても、しっかりとした理由があれば便乗させてくれるケースもあるらしい、これは知らなかった。今までゆっくりし過ぎて「あー、こりゃ最終に間に合わないから田尻で下るか」と田尻尾根に向かい滑り転びケツを泥だらけにしてたが、最終後1時間以内に辿り着けるならワンチャン、駅に向かうのもありかも知れない。ただ、思うにこれは確実に避けるべき手だ、そう思う。子供連れや登山初心者でスリッピーな下りのケガのリスク高そうな同行者いる場合の特殊なケースだと思う。
往復キップは購入済みなので、駅舎入り口で急ぎスノーシューを脱ぎ抱え、急かされ連なる車体の一番前の車両に案内され、乗り込む。
ひと息付く間も無くロープウェイは動き出し、下る。
安堵だ。本当に助かった。
シートに座り、ワタシの為にこのマヌケなワタシの為に、あの悪天候で雪崩リスクのあるあの場所にきてくれた3名の隊員の方々の顔を初めて見れた。皆若い、立派な方々だ。感謝と謝罪しか出ない。
ワタシが雪に埋まらずに下山していれば、今頃待機所でのんびり年末を楽しまれていただろうに、済まなかった。感謝だ。
県警の山岳救助隊の方だから、もちろん取り調べがあった。ロープウェイの中で、遭難に至る経緯の取り調べを受け、正直に全て話した、昼から天候悪化で撤退したが降雪でトレース埋まり、視界不良で分岐を見落とし田尻沢に向かってしまった、斜面でコースロストに気付き登り返せず、トラバースもできず、ビバークしようと思ったが死ぬ気は無かったが凍傷で5体満足戻れるとも思えず、救助要請しましたと。
救助隊の方には納得して頂けたようで、ひと安心だった。
もし、装備不足、技量不足、知識不足のふざけた理由でヘルプして「なんだ、こんなヤツ助ける為に登ったんか」なんて思われたらワタシャ腹掻っ捌いて詫びるしかない。
ただ体力不足は感じた。いや、普通の同年代に比べたら体力脚力はあるつもりだ。
伊達や酔狂で、高尾山1日で全コース歩いてみようで28kmの登り下り2000m越え9時間越えの1~2泊が相当をやってるわけじゃない。
でも腰ラッセル、胸ラッセルを独りで数km時間制限ありで続けると、正直下山直後までは気が張っていたから真っ直ぐ歩けたが、クルマのシートに座り目を瞑るとぐったりと崩れ落ちそうだった。
最後の気力で谷川温泉湯テルメに向かい、湯に浸かったら、一気に気が抜け湯船で寝落ちしかけた、
ワタシにしては普段の倍くらい長く湯にいて、身体を温め、とにかく帰途についた。途中長く休憩したせいもあり帰宅は夜中過ぎだったが、自宅に戻れて可愛い金魚がパチャパチャ跳ねて挨拶してくれるのを見て良かったと改めて思った。
まあ、長くなったが、ここからがこの山行の本題だ。
ワタシは正直若くはない。体力も衰えてる、そんなヤツが全身運動ラッセルしまくって埋まって這い上がってきたのが29日の昨日だ、30日はクルマの荷物下ろしたり濡れたウェアの洗濯したり干したり、後片付けで夕方少し寝たくらいだ。
31日は睡眠3時間で朝からいろいろとやるべき事を片付けてた。その寝ないまま「いま山行かないと一生山登りしなくなりそうだ」と感じて、干して乾いたばかりのウェアを着込んで必要な装備をザックに詰め込みクルマを走らせて瑞牆山荘近くの県営無料駐車場に来た。日が替わり、年が替わった朝の四時だ。
とりあえず、支度をして山に向かう。
僅か数十m歩いただけで全身の筋肉が悲鳴を上げてる、
まぢか!?
オイラの疲労はここまで困憊なのか!!
びびった!
だが負けるもんか、とりあえず行けるとこまで行くんだ、と上がらない脚を上げ、進まない足を蹴り出し進んだ。
いやぁ、まぢトロい、自分で分かる。
同じく御来光目指して先を急ぐ登山者に何度も抜かれる、
彼らはまるでリニア新幹線みたいに速くサクサク登って行く、比べるとワタシはまるでローカル線の各駅のディーゼル気動車みたいに遅い。
だが、仕方ない。ワタシは一昨日筋肉使い切ってボロボロの身よ、しかも寝不足よ。
ただ、この登山にこれからの全ての山行がかかってる気がして、疲れたとか眠いから、そんな理由で撤退は出来ん。
ゆっくり進み、瑞牆山ビュースポットでひと休み、ゆっくり進み、富士見平小屋に着く、しばし休む。
再びゆっくり進み、高見岩分岐で座り込む、
風が強い、冷たい、肌が痛い、気温はマイナス5℃だった。風が強いから体感温度はマイナス15~20℃だろう。
降雪は無いから良かった。
大日小屋の広場で座り込む、やっと立ち再び進む。
明るくなってきた、大日岩の分岐でまた座る、動けん、だが、歩く。
肩が妙にショルダーベルトが食い込み痛む、大抵は背筋が弱ってるか、体幹が前に傾いてるか、だが今回は両方だと思う、原因は分かっても対策が無い、仕方ない耐える。
大日岩の鎖場でちょい元気出る。
が、しばらく森の中をだらだら登るだけなので単調で歩きながら寝てしまいそうだ。
とりあえず、鼻歌を歌うとサビのトコでイキナリ追い抜かれる。歌うと登山者現れ抜かれる。これはジンクスらしい。
すでに日も高い、空が明るい、木々の隙間から陽が差している。キレイな眺めだ。
やっともう直ぐ砂払いの頭、直下の急登は冬は毎回凍りつき滑る滑る。だから事前にチェーンスパイクを装着。準備万端なり。
が、雪はあるが想像よりは氷じゃない。残念。
まぁこの方が楽だから良いけど。
砂払いの頭で座り込み休む。
山専ボトルの熱々の白湯が身に沁みる、美味い。
岩稜好きとしては、ここから先はスキップらんらんでぴょんぴょん飛び跳ねて進みたいが、全く脚が上がらん。
仕方ない、のんびり行く。
空が晴れ渡っている。青い、深く青い。綺麗だ。
金峰山、瑞牆山は好きなので季節問わず何度も登りに来ているが、午前中のみ一方向だけ晴れ、反対側はガスガス。のケースか、
全部ガスガスのガスが大抵だ。
元旦の今日は360度全て眺望ある。
八ヶ岳の向こうに薄く雲が見えるが、心が正直な者には見えない雲だ。
だからワタシには全く雲は無いの奇跡の天晴れだった。
幾つか岩のピークを越え、凍りついた岩はチェーンスパイクの爪をガシガシに効かせて、フィンガーフックに指をかけ、腕を伸ばしピッケルのピックを適当な岩の隙間に引っかけフィクスして這い上がれる。
岩場でトレポは絶対使わない派で手足四本最大限に使います派だけど、冬の凍った岩場ではピッケルは意外と役立つ。とおもう。
とりあえず、ここまで来るとあとわずかだ。
金峰山は4/5はだらだら森の中を登るだけであまり面白くは無いのだが、森林限界を抜け砂払いの頭から先の1/5はめちゃくちゃ楽しい。だからよく登りに来る。
クソ重たい脚を引き摺るように山頂を目指す、五丈岩もすぐ目の前だ。
やった!着いた、まずは記念撮影。
食事はカップ麺の天ぷら蕎麦とスーパーの惣菜の海老天を2本持って来たが、食欲がないから、柿の種を食う。前はいろいろ食材持ってきて調理してたが最近は山の昼メシは柿の種が多い。
美味くて軽くて素早い。塩分も摂れ、カロリーもそれなりに高そうだ。
水分は熱々の白湯。
一応粉末インスタントのコーヒーや甘いカフェオレの袋も持って来てるが、白湯が一番早くて美味い。まるでじじぃみたいだ。泣ける。
山頂の岩を登るとまさに360度天晴れの快晴。素晴らしい。山々の神が与えたもうたご褒美だ。
目に焼き付けようとしたが老眼でイマイチ鮮明じゃない。
まぁ心の目で多少美化して記憶に焼き付けておこう。
さて、下山のリミットが近い。まぁどんなに遅くなっても暗くても、この山のこのコースは歩けるが、やはり明るい内に行けるとこまで下っていたい。
山頂で挨拶した若者に手を振り下る。
金峰山の岩稜は下りもまた楽しい。
この区間だけは若返るし、満面の笑顔だ。
砂払い頭から森の中に入ると、あーあ、終わったな、とおもう。
大抵はこの辺りで気が抜けてダラけて足を滑らし転ぶか、バランスを崩して爪を破る。
今回は慎重に行こう。やや身体を前傾に保ち体重を推進力にして脚の筋肉を最小限にして進む。
邪道だがラクなのだ。慣れるとかなり素早く下れる。ワタシが同年代下り最速を叫ぶのもこの技のおかげなのだ。
とりあえず、ゆっくりではあるが順調に下り、大日岩辺りで暗くなってきた。
感覚では大日小屋で陽が落ちる想定だったが、山頂でゆっくりし過ぎたようだ。
ブラックダイヤモンドの600ルーメンのヘッドライトを点けると、やたら明るい。しかも鮮明に明るい。このヘッドライトは素晴らしく、20秒くらいの短時間だけだが側面を叩くと1,000ルーメンで照らしてくれるのだ。
600ルーメンでも相当に明るいが、それでもルーファイでピンクテープ探す時に1,000ルーメンで照らすとさらに遠くまでの広範囲が視認でき確実に素晴らしい。ただデカく重たいが、許容範囲だと思って愛用してる。
かなり暗くなり寂しくて鼻歌を歌うかなと思っていたら、やはり後ろから急に若者が現れた。
ビクッとしたが、顔には出さず挨拶をする。
聞くと甲武信ヶ岳の方から来たとの事、すげぇ。
一昨日ラッセルで体力筋肉使い切って無く元気なら並走していろいろ話しを聞きたかったが、なにぶんもう声を出す体力すら尽きかけてる。
先を急いでる様なので行ってもらう。
って速い、すぐに見えなくなる。さすがだ。
ワタシはゆっくり行こう。急いでも下山は同じ真っ暗だ。
高見岩分岐を過ぎ、だらだら下り、ようやく富士見平の小屋に着く。
先ほどの若者はすでにテントを張っている。
さすがだ。素晴らしい。ワタシが有名な大企業の社長なら迷わずリクルートしてるとこだが、ワタシャ別に大企業でもないし、社長でもないので、世間話をしてお互いにエールを贈り、再び下る。
ワタシも若けりゃテント担いでロング歩いてみたいが。今は流石にキツイ、同世代にはまともに歩けない奴や階段上れない奴だらけだ。山を歩けるだけワタシャ幸せだなと思う。
富士見平小屋からは早い。下りはあっという間だ。
遠くに瑞牆山荘の灯りが見えると嬉しくなる。
いつかここに泊まりに来よう。
だが、これだけ歩いて平気だったのに、登山口から駐車場までが長い。あまりに長く遠いので横穴掘ってビバークしようと思ったが、やめた。
まだ冷静でいられたらしく悪魔の囁きに負けなかった自分が好きになった。
クルマに辿り着き、ドアを開け靴を脱ぎ、シートに座ると安堵した。
やり切れた。あの疲労困憊のズタボロの身体で、このクソ寒い金峰山ピストン出来た。
もし疲れたから、とか。眠いから、とか。めんどくさい、とかバカみたいとか、そんな理由で引き返してたらもう山登る資質も資格もないからやめようと決めてたけど、馬鹿みたいに時間かかったが、クソみたいに遅かったが、歩き切れたから。まぁまたこれからも山登りは続けてもいい事にしよう。
とりあえず、クソ眠い睡魔に負ける前にクルマ走らせ無事に帰宅できて良かった。
相変わらず、デカい水槽でデカい金魚がパチャパチャ跳ねて挨拶してくれる。
帰宅できて良かった。
山の神さま、また山が好きな皆様のおかげ。感謝。
明けましておめでとうございます。相変わらずですが今年もよろしくおねがいします。
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