オコタンペ湖天空回廊を行く:オコタンペ湖南岸尾根・小漁山・漁岳・オコタンペ山
- GPS
- 09:31
- 距離
- 17.8km
- 登り
- 1,379m
- 下り
- 1,382m
コースタイム
天候 | 晴のち曇り,稜線は風強し |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
オコタンペ湖南岸尾根は急斜面に囲まれた細尾根上に雪庇が連続し危険です.お奨めしません. |
写真
感想
いつか歩きたいと思っていたオコタンペ湖を巡る尾根の完全縦走.「オコタンペ湖天空回廊」と名付けました.オコタンペ湖の南岸尾根を含んだ完全周回縦走は,ほとんど行われていないのではないかと思われます.魅力的な尾根に見えるのに,誰も足を踏み入れないのは,それ相応の理由があるのかもしれません.恵庭岳とオコタンペ山/漁岳からの偵察と地図の検討で何とか行けるのではないかという感触を得ました.あとは行ってみなければわかりません.週末に向け,天候は悪くなさそうだったのですが,前夜になり,やや悪化の気配もでてきました.しかし,なんとか行けると考え決行.残雪期には雪庇の崩壊,雪崩れ,滑落の危険がむしろ増すと考え,この時期を選択.しかし,結果的には大きな代償を払うことになってしまいました.
オコタンペ湖に降り,南岸尾根の最初のピークからできるだけ忠実に尾根をトレースしていきます.空と山がうっすらとピンクに染まりましたが,薄曇りの状態です.雪庇を避けながら慎重に高度を上げていきました.途中から天候が良くなり,恵庭岳と支笏湖が綺麗に見えるようになりました.
前方に振丁と呼ばれるP1015.6.ここまで来れば,P1125以外は,それほど急峻な場所はなく,ハイキング気分で行けるはず.天気も良くなってきました.振丁ピークまであと100mくらい.特に雪庇もない,細尾根ではあるけれどなだらかなで穏やかに見える尾根が前方にあり,核心部はほぼ過ぎたと安堵しながら,ピークを視界に入れ足を踏み出しました.まさか次の瞬間にあんな事が起きるとは全く予測していませんでした.とくにどうということのない細尾根で,足もとすらもあまり注意しないでピークへの足を進めたとたん,「ボン!!」という音と共に,目の前が真っ白になり身体が空中に浮きました.すぐに雪面に身体が落ち,雪煙に包まれたまま,凄い勢いで滑り落ちていきます.右手をブッシュに払われ,ポールが飛びました.「落ちた...」と思いながら,足を引っかけて回転し頭から滑落しないようにまずは,落ちるに任せました.一瞬わずかにスピードが落ちたと思ったのもつかの間,また身体が宙に浮き,段差を落ちてスピードが増しました.止まらないかもしれないと思いながら,わずかに斜度が緩くなったと感じた瞬間に両手でブレーキをかけようと試みましたがスピードが増していて止まりません.左手のポールが持っていかれる感じがしたので,肩を脱臼しないように無理せずに放棄しました.雪煙の中で左手に立木が迫り,身体を捻って危うく激突も免れましたが,左足のスノーシューが当たったのか,膝の内側に激痛が走りました.この時には「折れたな」と思いました.再び斜度が緩るみ,わずかにスピードも落ちた感じがしたので,一気にうつぶせになって,両手を雪面に突き刺しブレーキをかけたらなんとか止まりました.なんとか生きています.右手首と左膝,左臀部の痛みでしばらく立てませんでしたが,なんとか立ち上がり,負重してみると,骨折はしていないようでした.取りあえず,無事を知らせるために,大声で声をかけました.左手のポールは,なんとか埋まらず少し上にありました.右手のポールは,落ちてすぐのブッシュ帯にあったようです.その後は,比較的斜度が緩い所を慎重にトラバース.トラバースを続けていくと前方を急斜面に阻まれ,仕方がないので比較的,斜度の緩い浅い沢地形を尾根に向けて慎重に登っていきます.幸い,比較的雪が締まっていて,腕を突き刺し,スノーシューを蹴り込めば何とか登っていけます.これがさらさらの粉雪だったら進退窮まっていたと思います.ラッキーでした.しかし,尾根に登るところには高い雪庇が迫っています.トラバースしようにも両側は崖に近い急斜面で,この雪庇を乗り越えるしかありません.幸い,雪庇が比較的低くなっている場所に白樺の木があったので,その木で身体を支えながら,少しずつ雪庇を切り崩していくことにしました.他に方法はありません.固い雪庇で,なかなか切り崩せません.気持ちは焦りますが,乗り越えに失敗して雪庇ごと滑落したらさっき以上の急斜面を重い雪庇と共に滑り落ちることになります.慎重にステップを切り,針路を切り拓きます.これなら大丈夫と思えるところまで切り崩し,なんとか尾根上に身体を投げ出すことができました.脱出完了.
足は,真っ直ぐにつけば,なんとか歩けそうです.戻ることも考えましたが,あの急斜面をこの足で安全に下山する自信がありません.天候も悪くないし,このまま前進した方が良いと考えました.しかし,天候はあっと言う間に悪化.雪庇を慎重に避けながら前進.時々,風が収まり,天候が回復するのかと思わせながら,結局また地吹雪のような風.なんとか小漁岳(小漁山)を経て漁岳へ.ここまで来ればもう安心です.オコタンペ山を経由して無事に下山しました.
オコタンペ湖南尾根は痩せ尾根(細尾根)を伴い両側が急斜面になっていることはあらかじめわかっていました.通過困難な場所が予想外にあった場合,下降のルートだと,逃げようがない可能性があり,そうなると引き返して小漁岳・漁岳を経てかなりの距離を戻るか,P1125付近からオコタンペ湖へ降りるかという選択になってしまうので,最初に南岸尾根から登るルートを選びました.無理だと思ったらそこで撤退するつもりでした.
多数の雪庇箇所があるのは予測していました.雪庇の踏み抜きは絶対に避けなければなりません.雪庇に注意しながら,通過が困難な細尾根があれば,なんとか斜面をトラバースするしかないと思っていました.実際に,滑落する前までは,雪庇を避け,何事もなく進んでいました.滑落地点の判断で最大の問題は,雪庇の存在を全く認識していなかった点です.全く穏やかな尾根に見えていました.シュカブラも雪面の波打ちもなく(記憶では),まさか雪庇の上に足を踏み入れたとは全く思いませんでした.視線は,むしろ前方のP1015.6振丁ピークにありました.落下は,まさに突然でした.
地図を見ながら振り返ると,次のような事だったのだと思います.
1.ピーク前の平坦な尾根は,必ずしも細尾根と言うほど痩せた尾根ではないのですが,地図で見ると南側が凹状に抉れるように急峻になっています.その抉れた部分に雪庇が乗る事で,一見すると平らな広い尾根に見えていました.
2.この尾根には南西に走る尾根を登ってアプローチしています.さらに尾根に乗る部分で南南東に尾根が分岐していて,この尾根の陰になって雪庇の縁が全く視野に入りません.恵庭岳からの写真で検討を繰り返したときも,この部分は南岸尾根後半のエリアで遠くに位置していて,拡大しても詳細がわかりにくくなっていたのでした.
ただこれらは,地図をきちんと読み込めばあらかじめ予測できるものだったのではないかと思います.経験不足を露呈したと言えるでしょう.
左膝は,前十字靱帯及び内側側副靱帯共にGrade IIの部分断裂.内側半月板後節の水平断列と関節内血腫.大きな代償を払いましたが,この程度で済んで良かったと思うべきなのでしょう.経験不足と油断の結果です.他の人の参考になればと思い掲載しました.
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