浜石岳-薩埵峠 〜時の忘れもの〜 B51
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- GPS
- 12:31
- 距離
- 18.6km
- 登り
- 991m
- 下り
- 1,006m
コースタイム
- 山行
- 6:11
- 休憩
- 0:14
- 合計
- 6:25
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
興津駅発13:54(JR、320円)静岡駅着14:12、発14:20(新幹線、5830円)品川駅着15:40 |
コース状況/ 危険箇所等 |
午前中に山頂から富士山を眺めたければ左回り、下山後に桜えびを食べたければ右回り。 |
写真
感想
(5月4日 山伏〜大谷崩 からつづく)
バスは、定刻どおり午後7時37分、静岡駅前に着いた。未だ眠り足りない。ぼんやりと大きな駅舎を見つめ歩き出した。食事の間、何を話したかあまり覚えていない。ただ、静岡には親切な人と美人が多いね、と言うと、変わらないですね、と返されたこと、鮮明に残っている。
駅で握手をして別れた。楽しい時間を過ごせた。心から感謝した。Iは、改札口に入ってから一度振り返り、そして小さく手を振った。一瞬とまどい、返し、今日の宿に向かった。
昨晩、横になりながら計画変更を考えていた。目的地を、バス便利用が不可欠な竜爪山から、初日に見送った浜石岳に切り替えた。海に近く、「駅から駅」の道をぼんやりと歩いてみたかった。少し寝坊して6時40分静岡発三島行きに乗る。由比には7時1分着、まだこの時間、桜えびの賑わいは感じられない。
静かな出発、いつものペースで歩む。県道を離れ、新幹線を跨ぐ曙大橋は出発後18分で通過した。思っていたよりも勾配はきつい。舗装路歩きはしばらくいいやと思いながら歩いた。登山道の分岐点に到達するのに1時間20分が経過していた。
地図に無い整備された道をしばらく進むと、浜石野外センターの広場に飛び出す。右にキャンプ場炊事場を見ながら再び登山道へ。山頂への水平距離は僅かなのに何故か西へ巻いて行く。
薩埵峠に通ずる尾根道に合ってからほどなく山頂に到達した。広々としたその場所では、車でやってきた多くの子供たちが駆け回っている。富士山は、カメラのレンズ越しでは霞む濃さで、そして思っていたよりも控えめな大きさで目の前にあった。南アルプスは昨日同様、姿を現してはくれない。10分ほどの滞在で、南下を開始する。
標高707メートルとはいえ、出発点は海抜18メートル、少し疲労を感じていた。樹林帯の中をゆっくりと滑らかに進む。普段はこの静けさを楽しめるのに、今日は予想以上に物足りなさを感じていた。いつしか疲労は十分に蓄積され、鉄塔まわりの明るい場所に吸い寄せられた。基礎に座り込み、天を仰ぐ。強くもなく弱くもなく、陽射しはただ優しかった。
その後の木々たちの話し声に、少し気は紛れたのかもしれない。気圧傾度弱く、むしろ海風は強い。松の森も竹林も撓って軋んで様々な音を立てていた。あまりの饒舌さにハッと振り返る。そんな楽しい時間は瞬く間に流れ、やがて当然のように眼前に海が在った。
春の陽射しを受けて輝く。穏やかなその表情に、急に胸騒ぎを覚えた。突然疲労が戻ってくる。足早に進み始めた。かんきつ類の散らばる路面を見つめ、無心で目的地に向かう。薩埵峠は思いのほか遠かった。
多くの観光客に紛れ、お決まりの構図に収まった富士山をカメラに写す。潮風に吹かれながら遊歩道を西へ進んだ。やがて興津駅までの道は、登山口からアスファルト舗装路に変わる。途中、標識に従ったお蔭で、訳の分からない迂回をさせられ、疲労感は頂点に達した。もはや憤る気力も失せ、駅到達前に、赤色の自動販売機でいつもの飲み物を手にした。
片手に持ち、国道1号線をスマートフォンを見ながら歩く。画面では東海道線上り列車の遅延が告げられていた。仕方ない。三度静岡に戻り、高速移動で帰るか、ゆうべ彼女がそうしたように。海の碧さが、もう訪れることの無い時間を少しだけ留まらせてくれた。波間に消えぬうちに。
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