Ultra Coahuila 100miles (2018): 35時間17分のトレイルラン
コースタイム
6/23: 00:10 50kmコース完了(スタート地点戻り) → 9:30 50km部門ゴールゲート → 15:00 120km地点エイド(直登手前)→ 19:30 140km地点 →
6/24: 00:17 ゴール到着
今回の大会は参加者20人中13人が完走、3人参加した女性は完走できませんでした。結果は13人中8位。最終門限は140km地点を33時間で抜けることを考えると、なかなかハードだと思います。初日の曇天は結果からすると日差しを避けることができたため恵まれた環境でした。
【100マイル出走動画】
https://www.facebook.com/VertimaniaTrailRun/videos/1856670537968165/
https://www.facebook.com/photoplanetmx/videos/278181323445212/
天候 | 初日曇り、翌日快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2018年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
飛行機
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写真
感想
たった20人の100マイルレース。この大会には他にも12km, 30km, 50km, 100kmの部門があり登録選手1,500人中、1,364人が参加したことを考えるとまるでおまけではないか、最初はそんな気すらしました。
振り返ると、メキシコでの100マイル(トレイル)に参加するまで長い道のりでした。2016年のUTMX 100km、翌年のUTMX 100km、その間に何本もフルマラソンで練習を重ね今日に至ってます。特に昨年のメキシコシティーマラソンは高度2,300mのロードを目標の4時間切り達成、続くUTMX 100km(累積標高3,600m)も17時間を切ってゴールを抜けました。
そんなタイミングでのUltra Coahuila 2018はハチャメチャな旅でした。
当初、6/21の夜便で家族と共にレオン空港からモンテレイ行の直行便に乗るのが本来の予定でした。しかし、6/21朝出勤してフライト状況を確認するや否や、ダイヤが変っていて10:55amメキシコシティー経由での乗り継ぎで経路が変っているではないですか。正直焦りました。大至急、家族に連絡し学校から早退させ、会社に理由を告げて家族と共に空港に向かいました。それがこの旅の始まりでした。
6/21はモンテレイの空港近くのホテルで家族で雑魚寝し、翌朝、前夜から続く雨の中を大会会場目指します。出走開始は13時。予定表によれば12時より直前の説明会がおこなわれるため、朝いちから家族と出発。なんだかんだいって空港から会場へも3時間以上かかりました。それでも、予定通りなので午前10時過ぎに現地に到着した時はホッとしました。
ゼッケンを受け取り事前登録を済ませ、いざ説明会に参加。あらかじめ大会のホームページに目を通しておいたつもりでしたが、ここでようやくコース全容を把握。今回の100マイル(160km)は基本的に12kmのコース、50kmのコース、100kmのコースを繋ぎ合わせて作り上げたコースで同じコースもしくはその付近を何度も通過しながら最終的にゴールする形になります。また、大会側としてはエイドよりサポーターをあてにしていて、サポーターがどうやって効率良く選手のサポートができるかに重点を置いてました。これは、今まで参加した大会と大きく異なった点で、また今回家族のサポートをあまり当てにしていない自分自身は失敗したかなと最初思いました。
事前説明会が40分ほどで終了し、会場に選手が集まり始めます。ここで改めて100マイルが20人程度しかいないことを確信しました。みんなで記念撮影をおこない、お互いの健闘をたたえ合います。12km+50km+100kmをあわせた100マイルのルートなので最初の12kmは走りきると一旦スタート地点に戻ってきます。よって、この12kmのみ空身での走行がゆるされました(おもしろいルールだなぁ)。
13時号砲と共にスタート。100マイルらしくみんなゆったりです。100kmでもない、このスピード感が好きです。12kmはスタート地点からコンパスで円周を描いたように林道を1周します。コースは林道のように通常幅5m程度は確保されているので走りやすいです。また、急登もすくないので走りやすい気がしました。1時間半もするとあっという間に12kmが終わりスタート地点へ。ここから家族からハイドレーションを受け取り50kmが始まります。家族は一旦麓のモンテレイのホテルに戻ってお休みです。
正直、これからサポート無しでどうしようかという不安が常に頭をよぎりました。事前に他の選手からドロップバックの話もきいたのですが140km地点までドロップバックは受け取れないという話でした。結局、ドロップバックは使用せず。しかし、これは後になって全く必要ない事がわかりました。
参加者が非常にすくなく、過去に100マイルを走ったランナーも見当たらなかったため、ちょうど同じくらいのペースのランナーと一緒に行動を共にします。最初はアランさん(男性)、アラセさん(女性)と3人で、その後はカナダに住むホセさん(男性)、アランさんと3人で。50kmの2周目を終えてスタート地点に戻ってきたのが午前12時10分。みんな夜中のミスコースが怖くて一緒に行動していたため団結力が高く、20分休んでまた一緒に出発することにしました(今回共にした仲間はみんな初参加だったのがまた意気投合したきかっけです)。
周囲では、サポーターがアランさんとホセさんを介抱したり食事を与えたりしています。すると彼らのサポーターから食べ物が差し出されました。正直、食べ物に困っていたので非常にありがたかったです。暖かい食べ物も口にすることができました。
ちなみに、エイドステーションはコース上設置されてますが、翌日午前5:00am出走の100km以下の部門に向けて準備を進めていたようで、この段階ではただ水や少量の食べ物が地面に置いてあるのみで果物すらありませんでした。
他のサポーターのおかげで食事を取り、未明の12:30amより再スタート。ここから100kmの旅が始まります。ここまでは、自分自身に言い聞かせて下りであってもペースを相当落として走る事を心がけてました。よって体力も万全で、心にも余裕がありました。
この60km-90kmまでは暗闇での行動になります。一部、きわどい箇所はありましたが、ホセさん、アランさんと3人で注意しながら乗り切りました。夜通しでの行動だったため3-4回、延べ1時間ほど仮眠を取りながら行動しました。
自身のレースに動きが見え始めたのは夜が明けた頃です。視界も抜け始め、天気も快晴が確認できた頃、ホセさんがペースを上げ始めこれまで行動を共にしてきた3人がばらけはじめます。アランさんは遅れ始めますが、無理しない程度で自分はホセさんに喰らいついていきました。すると前回通過したロードに戻り、エイドステーションに到着しました。
このエイドでアランさんのサポーターからアランさんの状況を尋ねられ、サポーター仲間に遅れながら元気であることを伝えます。相変わらず何もいわなくとも食事がどんどん出てきます。アレは本当にたすかりました。アランさんが少し後ろにいて元気な事を伝えると安心したようでした。彼らにお礼を告げ、まだサポーターと一緒に休んでいるホセさんを後にしてここから単独の登り返しが始まります。
上り返しはそう大したものではなかったものの(高度にして400m弱)、単独行動になったのかとても長く感じられました。この頃になると、100km部門のトップが5:30amのスタートから自分に追いついてきて風のように抜け始めました。この登りを終えると最初に通過したエイドになり、そこで小休憩。この頃には、だいぶ陽が昇ってきていて温度もあがってましたが、それ以上にびっくりさせられたのは、本日(6/23)より出走しはじめた30kmや50kmの選手のものすごい数でした。
エイドからは一気に下り。そのルートではあくせくしながら30kmや50kmの選手がゆっくり上がってきます。レース二日目で天気もよくなり、選手に囲まれながら気持ちよく走ります。すると、みんなこちらに対し目を見張るような顔つきで声を掛けてくれます。どうも、彼らにとっては100マイルのゼッケンはレジェンドのような存在みたいで、下りをスタスタと勢い良く駆け下りてくるのが異次元のランナーに映っているようです。正直この数キロメートルの下りは最高でした。下から上がってくるランナーは「ピスタ、ピスタ!(特急、特急!)」といったり、「100マイル、ガンバレよ!」の喝采が延々と続きました。
その下りを楽しんでいると気がつくと、次の同行者アルマンドさんが後ろを一緒に走っていてくれました。
終わってみてから本当に実感しますが、このアルマンドさんがいなければ自分自身ゴールできなかったと思います。非常に気さくなかたで、昨年・一昨年を走ったUTMX(Ultra Trail de Mexico)でこちらを見ていて知っていたようです。アルマンドさんはその後、ゴール手前20kmまで、つまり距離にして40km以上を行動してくれましたが、二日目の日中の日射でヘロヘロになった時も、「200歩ルール、遅くてもいいから200歩をジョギングペースで走るんだ、一旦休んでまた走る、これを繰り返して乗り切ろう!!」といってくれ、もうダメかと思われた時間帯に自分を見捨てず行動を共にしてくれました。あの40km、後半は強烈な上り返しも含め、初対面だったにも関わらず、あたかも戦場の戦友のような思いで濃密な時間を共にしました。
道志村トレイルレースの最後の上り返し(鳥ノ胸山)の2倍はあろうかというほどの上り返し(直登)を乗り越え稜線に出たのは、二日目午後3時ごろだったでしょうか。その先は楽をさせてもらえるかと思いきや、いつになっても高度が3,200-3,400mから下がらず、ガラガラした車石も多く苦戦しました。最後から二つ目のエイド(La Mesita、140km地点)に到着したのが夜7時半くらいだったと思います。この時期、メキシコは夜8時まであかるいため、周囲の明るさには救われました。
残る距離20km、時折100kmの選手が全く違うスピードで抜けていきます。しかし、それもだいぶまばらです。すれ違う選手と話をすると、どうも以前先を越したホセさんが1時間以内の距離に迫っているとの事でした。その時になると、元気のあったアルマンドさんもつかれが見え始め、最後は歩くといいました。最初は、一緒にゴールしたい思いのほうが強く行動を共にすることを選びましたが、ホセさんのニュースを聞くとアルマンドさんから「先を目指せ、行け、がんばれ!」といってくれました。最後の単独行がここから始まります。
最初は、この最後の20kmは楽勝かと思ってました。これはレース後、他の選手も口にしてましたが、ラスト20kmはキラールートでした。まづ、関係者がまったくコース上に見当たらない。道標はあるものの目指している方向があっているのか逆走しているのかもわからない、以前周回しているのでところどころ見覚えがあるものの、果たしてこのコースが本当に正しいのか、刻々と過ぎていく時間の割りに変化が乏しいルートだったため余計に不安が胸の中をよぎりました。
この頃からでしょうか?完全に暗闇となった未舗装道を走っていると、疲れのせいで目にはいるものが全て人の顔のように見えます。1-2回ほどですが、100km選手が追い越して行ってくれた時はコースは間違っていないという確信で安堵しましたが、それもつかの間、彼らのペースに追いついていける程の体力は残されておらず、追いつこうにも全く追いつけず彼らはあっという間に行ってしまいました(これって幻覚ではないよな。。。)。
長い暗闇を独りで走っているといつも不思議な心の境地に駆り立てられます。体も疲れきり、足も痛みを抑えて走っていると、いろいろ考えたこともないようなことが頭をよぎります。自分は時間通り間に合うのか、時計を見ていても時間が過ぎるばかりで周囲はゴールの気配すらありません。この状況が3時間程度続いたと思います。
突然、暗闇から声を掛けられ最後のエイドだと告げられます。そこはチェックポイントにもなってました、この時はコースを誤っていなかったんだと確信に満ち溢れ、どれだけホッとしたことでしょう。そこで残り6kmと告げられます。
最後の6kmになると集落がすこしずつ見え始め別の100kmランナーにも助けられながら、先も見え始めていたので心の余裕を取り戻し始めながら進んでいきます。それでも、コースの不明瞭さに何度かミスコースしましたが、やがて見慣れたコースに入りゴールがもう目の前であることを確信します。
時計を見ると午前12時手前。残る20kmだけで4時間以上かかったことになります。もともと高度も高い場所だったので仕方ありませんが、ペースは遅くとも歩き出すペースよりは早かったことを考えると、どれだけ苦戦したのかが垣間見れます。
最後のロード2km、家族にあらかじめ伝えていた時間帯よりだいぶ遅れてしまいました。しかし、それ以上にコース脇からはささやかながら賞賛、おめでとうの掛け声が心に満ち溢れ、感動と達成感がこみ上げてきました。大音響のゴールが目前であることを心で噛み締めます。最後は35時間前に出発したゲートを通過してゴール。長い長いたびは、終わってみるとあっという間に過ぎていってしまいました。
道中、いろいろな人に助けられました。メキシコで初めて走った100マイルは忘れられない思い出になりそうです。
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