夜叉神峠から鳳凰三山・高嶺を経て広河原へ
- GPS
- 28:43
- 距離
- 18.4km
- 登り
- 2,183m
- 下り
- 2,033m
コースタイム
- 山行
- 4:04
- 休憩
- 0:47
- 合計
- 4:51
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・夜叉神峠から赤抜沢ノ頭までは良く整備された登山道です。 ・観音岳北斜面で残雪があり、一部凍っていました。アイゼンは使いませんでしたが、持っている方が賢明です。 ・高嶺周辺から白鳳峠の間は岩場が連続します。 ・白鳳峠から広河原までは荒れています。 |
写真
感想
登山は自分のペースで確実に成長できるが、いつも同じ山のコースではそれは見込めない。今年こそは南アルプスに行くぞと決めて9月の連休に予定していたが、雨で断念していた。10月22日に休暇を取って同じコースを行こうと夜叉神峠から登って青木鉱泉に降りるルートを計画したが、青木鉱泉からのバスが先週に終わっている事に気付き、急ぎ広河原に降りるルートに変更した。当日早朝に南御室小屋のブログを見ると降雪の情報。また急いでアイゼンと手袋をザックに詰めた。
9時台の甲府駅からのバスには10数名が乗り、多くが夜叉神峠入口で降りた。ヤマレコにあったとおり最初から結構な勾配だが、もう朝10時台という事もあり、身体が温まっているのか良く動く。今日は鳳凰三山手前の南御室小屋に16時前に着けば良い。ペースを早めず夜叉神峠に着いた。途中、明日の朝食分の乾燥米を忘れた事に気付き、夜叉神峠小屋で代わりの羊羹を買った。小屋の女性によると、昨日降雪があり、北岳に向かった人がコースを変えてこちらに来たという。小屋からの白峰三山は既に白く、快晴の空に良く映っていた。
夜叉神峠から道は尾根沿いになる。勾配は緩いが足元の石が多い。ただ良く踏まれていて、整備も行き届いていたと、全て歩き終わった今となっては思う。
シラビソの明るい林、ダケカンバの紅葉、奥多摩には無い風景だ。2時間ほど歩いても緩傾斜が終わらない、その地形の雄大さにも驚いた。苺平の手前で風景が変わり、岩が増えてきた。岩の影に今秋初の雪を見た。ただ南御室小屋まで雪に邪魔されることは無かった。
約3時間半で苺平に到着。予定より早めに出発したので予定より15分程早い。後は小屋へ降りるだけなので、辻山に寄り道して昼飯を食べよう。ところがこの道がわかりにくい。尾根の北斜面に沿っているはずで、赤テープも貼られているが、じきに見失った。磁石で方角を確かめてなだらかな尾根の稜線を無理に登ると、辿り着いた。
先客は一組のみ。鳳凰三山から白峰三山、富士山まで見渡せる絶景だ。パンとジュースで昼飯を済ませる。情けない事に山頂からの下りでまた道を見失い、南斜面に迷い込んだ。山頂近くまで戻り、赤テープを探しながら歩いた。地形図の登山道の位置は当てにならない事が多いが、この苺平と辻山の間は正確なようだ。中間地点で南御室小屋方面に短絡出来る道も描かれているが、現地には小屋の方が置いたと思われる看板もあった。これまでの体たらくでそちらに行くか迷ったが、良く踏まれているしほぼ直線なので慎重に行く事にした。
小屋までの道は結構な下りだった。どうせ明日また登るのだからそう降りてくれるな、位置エネルギーを無駄にしないでくれと願ったが容赦ない。おまけに北斜面で雪が凍っている。辻山から約1時間、15時15分に南御室小屋に到着した。
小屋で温和な主人にテント泊の受付して頂き、人心地がついた。場所は特に指定されなかったので、引きこもりらしく端の木陰にツェルトを張った。後はやることも無い。寒くなるにつれて着るものを一枚ずつ増やす。暗くなる前に夕飯にしよう。
夕飯はソーセージとチーズ入りのカレー。こちらのサイトのレシピを参考にした。
https://www.camp-outdoor.com/tozan/cooking/curry.shtml
熱源はダイソーの固形燃料をエスビットに載せたものだが、化学的な匂いがきつい。と言ってもガスは重いしうるさいし、好みではない。今度はアルコールストーブを試したいと思った。
まだ宵の口だがテント場から話し声が消えた。替えのシャツも全て着込み、両脇にカイロを貼り付けて寝た。何度か目が覚めたが、寒くて寝られないという事もなく朝になった。
朝便所に立つと朝焼けが濃い。シラビソ林が赤く輝いている。朝食に麻婆春雨を一袋平らげて荷物を片付けた。6時過ぎに出発、最初から急な勾配を手をついて登る。「登山道」という標識を追ったつもりだったが、いつの間にか冬道を行っていたらしい。
一旦道はなだらかになり、薬師岳小屋を通り過ぎる。岩が目立ってくれば森林限界に近い。喘ぎながら岩場を超えて、薬師岳に到着した。今朝の出発から1時間半後、昨日からなら21時間後だ。勿論ずっと歩いていた訳ではないが、一日かけて目的の山頂に着いた事に、南アルプスという山域の広大さ、雄大さに身をもって感じた。
再び下って観音岳へ。真っ青な空に森林限界上の白い岩稜がよく映っている。足元の雪が増えてきて注意はしていたが、ここまで来なくては味わえない爽快さを満喫しながら歩いた。ここまで来る間にすれ違った方からアイゼンを使ったかを聞いたが、使った方はいなかった。出逢う方皆と「天気に恵まれた」と言い合った。
今日の登山開始から二時間、観音岳山頂に到着した。今回の山行の最高地点であり、自身の山登りとしても初めての高さだった。
山頂はそれなりの賑わいだったが、白峰三山が見渡せる西向きの岩の上が空いたので、そこに座って早弁することにした。切り立った崖の縁なので、恐る恐る崖の反対側にだが。昼飯のつもりで用意したのは、カロリーの高さ最優先で選んだ山崎製パンの惣菜パンと、ジュース代わりのゼリー飲料だ。右は甲斐駒ヶ岳、左は富士山まで見渡しながら食うジャンクなパンは美味かったが、初めて飲んだゼリー飲料は薬臭いだけで失敗だった。
観音岳からは200m下る。前情報通り残雪が増えた。しかも行く先を見通せないような旧勾配だ。四苦八苦していると、立ち止まっている10名程度の団体と出くわした。こちらを視認するとすぐに声をかけて通してもらった。その中を何度か滑りながら通った。みっともない。先に進むと今度は狭隘な急坂の道に座り込んでいる女性が居る。女性と談笑している側の男性に脇を通るよう促された。何をアホなとそのまま進もうとすると、女性がエマージェンシーシートを被っているのに気付いた。そこで漸く救助中だと気付いた。我ながら察しが悪い事甚だしい。談笑していたのも気持ちを和らげる為の「仕事」だろう。
岩と雪だけの稜線を降りて鳳凰小屋への道が分かれる鞍部に着いた。登りはもうそろそろ充分だと思うが、これで最後から二番目だ。息をかなり切らして赤抜沢ノ頭山頂へ到着。この頃にはすれ違う人はかなり減った。また西斜面には黄色い紅葉が広がり、東側には甲府盆地が見渡せる。稀に見る絶景の機会だったと思うが、今日は最後の登りの高嶺がまだあってその後に1200m降らねばならない。勿体無い事に景色を見る余裕は無かった。
鳳凰三山のうち地蔵岳をどうするか。オベリスクに登る体力も技術も今はない。赤抜沢ノ頭山頂からすぐの分岐で地蔵岳を眺めるうち、考えとは裏腹に足が先に動いた。出発が早かった事もあり、予定時間より30分の余裕があった。昼はもう食べてしまったから、地蔵ヶ岳で予定していた昼休憩は要らない。オベリスクの麓に見える双子岩までは行ってみよう。
地蔵ヶ岳との鞍部で、短いピストンをしているにも拘わらず全ての荷物を担いでいる事に漸く気付いた。その辺にザックを放り出してあと少しを登った。地蔵ヶ岳からは救助ヘリが先程の方だろう、何度も試行して釣り上げた様子が富士山を背景に見えた。
赤抜沢ノ頭に戻ると、稜線の先に高い山がみえる。その手前にずっと低いが目立った頂がある。スケールが大きすぎて良く分からないが、地形図を見る限り最後の登りの高嶺までは目立った頂は無い。では手前が高嶺で、その先の鞍部が白鳳峠だろう。よもやあの高みに登る事はあるまい。そう早合点して稜線を進んだ。尾根はどんどん痩せて道は岩だけになる。遮るものがないから先の頂が良く見える。二度ほど偽ピークを超えて、先程の高い方の峰が高嶺だと思い知った。あれほどいた登山者もカップル一組と年上の単独男性一名だけになった。
高嶺の辺りは良く覚えていない。何度も足をひっかけ、ふらつきながら辿り着いたはずだ。そしてその先は見たことのない光景だった。200mは下った先の峠にダケカンバの紅葉が広がる。足元の岩はかろうじて見える。その間は、無い。垂直過ぎて見えないのだ。雪が残る岩稜をしがみついて降りた。ロープや鎖は無い。これが南アルプスか。
時間の貯金を使い果たして白鳳峠に着いた。先程から単独男性と一緒だ。心強く、かつ気を抜けなかった。白鳳峠からは一気に900m下る。前半はゴーロ沢で土は見えない。後半の樹林帯は奥多摩でも良くあるつづら折れかとほっとしたら、折れたところがいちいち1m以上の段差になっていて、膝を消耗する。たまにある木の梯子は腐っている。最後は一足ずつそろそろと足を下ろすしかなかった。麓の紅葉と、たまに聞こえる車の音が慰めになった。
広河原山荘でビールを買って山を振り返った。不安定な歩き方、体力不足等自分の未熟さとこの山域の偉大さの差は甚だしい。それでも自分で立てた計画を貫徹したのだ。
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