貫ヶ岳、白鳥山 〜年末富士見 白鳥の章〜 A36


- GPS
- 06:32
- 距離
- 14.5km
- 登り
- 952m
- 下り
- 1,450m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
芝川駅発14:55(JR身延線、320円)柚木駅着15:25 |
コース状況/ 危険箇所等 |
白鳥山登山道には、台風による倒木が多く見られました。 意識して歩いたので、コースタイムは参考になると思います。 |
写真
感想
(12月29日竜爪山からつづく)
バスが静岡駅前に着き、遅い昼食をゆっくりと取ったのち、東海道線で富士駅に向かった。ちょうど富士市では30日の女子駅伝開催のため、どの宿も早くからいっぱいだった。キャンセル待ちでようやく連泊の宿を押えた。ここを拠点に30、31日の登山を行う(予定だった)。
翌30日の午前4時55分、身延線柚木駅に向かい出発する。街はまだ眠りの中、風は予想どおり強かった。定刻まで待つこと12分、始発列車は5分遅れてやってきた。この5分の長かったこと。年末ゆえにダイヤが異なっていたのか、入念に確かめてきたのにひどく不安にさせられた。
芝川駅には、5時50分到着。暗い中、歩き始めるのを嫌い、タクシーの予約を、あえて6時30分にしていた。結局そのタクシーは22分に現れ、中沢公民館まで運んでくれたのだが、明確な登山口、歩き始めが林道であることなどから、夜明け前の到着でも良かったのかもしれない。「今日は南アルプスがよく見えています」そう言った運転手が煙草に火を点けている間に、二日目の登山は始まった。
一乗寺の境内を左手にしながら、道は登山口に導いてくれる。今日は、再びこの場所まで戻って来なければならない。そう思いながら、登山道に入った。急坂ではないが、確実に高度を上げ、やがて標高400メートルを超えたあたりから緩やかな勾配となった。普段であれば、足早に進んでしまうところだが、小鳥のさえずりも風の音も聞こえて来ない、これ以上は無理だろうと思えるほど静かな時間に感謝しながらゆっくりと歩いた。
稜線の手前は、地図どおりの急登が待っていた。下りでも通過することを意識しながら登る。乾燥期でなければロープの欲しいところだ。慎重に足を運び、8時7分、ようやく稜線分岐点に到達した。途中、垣間見た富士山に雲が近づいていることを知ったため、先に晴海展望台に向かう。
およそ20分後、予想よりはるかに素晴らしい光景が目の前にあった。富士山、その手前に天子山地、右には愛鷹連峰、そして光に輝く駿河湾を望めた。水分補給を忘れ、ベンチに座ることなく、ただ見つめていた。15分のときは瞬く間に過ぎ、貫ヶ岳に向け、往路を引き返した。
小刻みなアップダウンを経て、標高897メートルの山頂に着く。木々に囲まれ、この季節でも眺望は得られない。思いきり反らして高い青空を見上げてから、そのきれいに刈られた場所をあとにした。
三度分岐点を通過し、下山の途に就く。登りの際、手強いと思われた急坂もストックを駆使して難なく下りることができた。そして再び針葉樹林帯、やはり静かだった。そういえば道中誰にも会っていない。俄かに昨年末の雨乞岳を思い出した。
登山口、そして中沢公民館へと戻った。既にB案のタクシープランを選択していた。今朝走った、駅からここまでの道のりを考えると、白鳥山まで歩く気は起きなかった。何より県境の道無き登りへの不安がそうさせた。ところがタクシーを呼ぼうと画面を見ると、圏外の文字。これだからSは困る。仕方なく電波の通じる場所まで歩くことにした。
30分後、日向集落に着き、タクシー会社に連絡をし、到着を待った。20分後、待っていたかのような早さで、今朝の運転手が現れた。「どうでしたか」の問いに、静けさと素敵な眺望のことを話すと、嬉しそうに南部町の良さを語ってくれた。
白鳥山を訪れる多くの人がそうするように、山頂の手前で車を降りた。そこからは一投足で「恋人の聖地」に辿り着く。先ほどとは異なり、今度は富士山から左手、北西方向の山々を見渡せた。御坂山地、身延線沿線の山々、愛おしき安倍奥の山々、その向こうに南アルプスの姿があった。当然のように湯を沸かし、コーヒーを味わった。日陰ゆえ寒さが身に沁みる。そろそろ出発、と思い立った頃、この日初めて登山者と出会った。自転車で来たというその人は、登山口から丁寧に登って来ていた。そう、登山はこうでなくちゃいけない、呟きながらその場をあとにした。
本成寺への下山路には倒木多数、急坂、長い石段有りと、なかなか楽しむことができた。タクシー利用をし、体力を温存できたことで、翌日へ疲れを持ち越すことも無いと思われた。流れの消えた富士川を渡り、芝川駅へと戻る。14時55分、僅かに感じる物足りなさと共に、宿に向かった。
そして翌朝5時、愛鷹山に向かうべく宿を出ようと、暗がりの中、手さぐりで靴棚から取り出そうとした瞬間、異変に気が付いた。掴めない。一昨日と同じ場所に置いたはずの靴が無かった。宿の人を起こしている間に、乗車するはずだったバスの発車時間が過ぎた。登山どころではなかった。
派出所から警察官が来て事情を説明したが、結局、宿の内外にそれは見つけられなかった。届出をしてから茫然自失、宿を出た。駅までの道中、様々なことを考えた。そして、これは今日は登るなという暗示だったに違いない、そう思うことにして、帰京の途に就いた。平成30年はとても悲しい出来事で幕を閉じてしまったが、何はともあれ今年も山で多くの思い出を得ることができた。車窓から富士山を眺めながら、来る年が、素晴らしい一年であることを願った。
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