リョウシ~コザト~霊仙山☆黄色い花咲く稜線を辿って
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- GPS
- 07:39
- 距離
- 15.0km
- 登り
- 1,384m
- 下り
- 1,393m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
林道上にはしばし大きな落石があり、除去しながら進む |
コース状況/ 危険箇所等 |
白谷橋北詰から尾根への登りがこのコースの最大の核心であり難所、特にパーティーの場合には後続への落石に注意 コザトから北に延びる尾根では一部に藪漕ぎが必要となる(感想参照) 笹峠から西に延びる尾根は一般登山道ではないものの頻繁にピンクテープあり歩きやすい尾根道 |
写真
感想
霊仙を次に訪れる際にはリョウシ、コザトを経て霊仙山最高点に至る南尾根がいいと思っていた。そして、この長い尾根を訪れるには福寿草の花咲くこの季節がいいようだ。比良、北山方面は好天が曇りの予報であるの対して鈴鹿方面は好天が期待出来そうだ。名神高速を東に向かうと、琵琶湖の西側、比良のあたりには重苦しく雲がかかっているのに対して、東の空は明るく晴れている。
河内を過ぎると左手に分岐する権現谷林道を進む。林道はすぐにも切り立った峻険な崖の合間を縫って進むようになる。再び谷が開けるようになると、白谷林道の分岐点にたどり着いた。薄暗い谷間に陽光がさすにはまだ時間がかかりそうだ。
車を駐車して尾根を振り返ったところで目を疑った。急峻な尾根の取り付きはほとんど崖のように見える。それも細かい瓦礫の。斜面をよくよく見ると確かにこの瓦礫の斜面に向かう踏み跡がある。見たところかなり最近のもののようだ。
瓦礫の斜面はいとも容易に落石する。そして一度落下した石は周りの石を巻き込んで落ちてゆく。ルートを探りながら登るためには私が先行したした方が良いだろう。まずは家内を落石が当たる心配のないところで待避させた上で、細心の注意を払って落石しないように足元を確認しながら登る。まずは大きく右へトラバースしながら上がり、折返す地点で家内の到着を待つ。瓦礫の斜面を左手に折り返すと、樹木の間に細かい足場が得られ、急斜面ではあるが階段を登るような感覚で尾根を登ってゆくことが出来た。足元をみると多数のスミレとネコノメソウが石灰岩の間にはやはり最近のものと思われる靴の後が見受けられる。
尾根は登るにつれ徐々に斜度が緩やかになり、歩きやすくなる。ふと尾根を見上げると、猿の群れが尾根の少し上を静かに登ってゆく。猿の通ったあたりに辿り着いてみると、緑色がかった新鮮な落とし物があった。
一の肩と思われる小さなピークを越えると思わず歓声をあげることになる。小さな鞍部の南側斜面に一面の福寿草が咲いている。写真を取るべく群落の中に足を踏み入れるのだが、足の踏み場もないほどだ。折しも東側の尾根の上から顔を出した朝陽がスポットライトのように樹間から花々を照らし始めた。朝の陽光を浴びた花株は金属的な光沢のある花弁をキラキラと輝かせる。
未だ開きかけの花もある一方で、中には花が散ったあと株も多数見かけるので数日前が花の盛りだったのだろう。それでもこれほどの黄色い妖精たちの輪舞は目を愉しませるに余りある。
尾根上には次々と福寿草の小群落が次々と現われ、苔むしたカレンフェルトの間にも可憐な花が顔を覗かせる。なだらかな尾根を黄色い妖精達に挨拶しながら歩くうちに間もなくリョウシが近づいてくる。
リョウシのピークに差し掛かると黄色い妖精たちはいつの間にか姿を消す。ピークは山名標もなく、樹林に囲まれた殺風景なところであったが、しかしピークの北には大きく南霊岳を望む。コザトに向かうべく尾根を東に辿ると、南霊岳から霊仙最高点へと続く稜線が姿を顕した。このあたりから望む霊仙の山頂は御池岳のように平に見える。
コザトへの鞍部には杉の植林地が続くが、植林地を抜けると自然林の緩やかな登りとなる。しばし南側への展望が大きく開け、御池岳のテーブルランドを大きく正面に望む。コザトも樹林に囲まれた殺風景なピークであるが、なだらかに見える霊仙最高点を正面に望むようになる。ここからの霊仙はT字尾根から望む御池岳を思い出させる。
尾根上の馬酔木の藪を左右に避けながら細い尾根を進むが、細尾根になると踏み跡も不明瞭となり遂に藪こぎを強いられるようになる。家内は「道はあっているの?」と不安げに聞くが、どう考えてもこの痩せ尾根を迂回する方法はない。藪を進むうちに突然、林道の法面の上に飛び出した。国土地理院の1/25,000地図に記載されている林道よりも南側なので、新たに作られた林道なのだろう。
林道を越えて、尾根の続きへと上がると、斜面にみられる多くの倒木のせいですっかり尾根は明るい。杉の植林の尾根を進むともう一つの林道に出る。こちらは地図に記された白谷林道だ。林道脇ではマルバマンサクの花が春を告げている。わずかばかりの間、林道を歩くと、林道の左手からいよいよ霊仙へと登る尾根に取り付く。
最後はカレンフェルトの急斜面ではあるが、ほどよく足場があるので登りやすい。
霊仙最高点のピークが近づくと途端に多くの人影が目に入る。ピークに出た途端、緩やかな南霊岳からの稜線、霊仙山山頂との間に広がるカルスト地形が視界に飛び込む。北の方角には伊吹山の大きな山容を目にする。その斜面に最早ほとんど雪は見当たらないのだが、その右手には遥か彼方に白い山が目に入る。能郷白山だろうか。
ところで、この霊仙山の魅力はいうまでもなく特異なカレンフェルトによる日本離れした光景だろう。最初にこの山に登ったときに想起したのは丁度30年前、学生時代に訪れたイギリスの湖水地方で山歩きした時の情景であった。その後、知人のイギリス人にたまたま以前の霊仙山の山行の写真を見せた際、彼は同じような反応を示した。「これは本当に日本なのか?故郷のイギリス北部の風景のようだ」。この連想の一致が偶然ではないことをつい最近になって知る。つまりピーター・ラビットが野に遊ぶ雄大な風景はまさにカルスト地形であるということを。
ここまでは南斜面を登ってきたので風の影だったのだろう。ここからは途端に北風に曝されることになる。霊仙山山頂にかけて斜面を下っているうちは霜柱はまだ凍ったままで良かったのだが、山頂にかけての道は霜が溶けて泥濘がひどい状態である。この日は未だゲイターをつけずにいたのだが、みるみるうちにズボンの両裾が泥まみれになった。
山頂の南斜面の岩陰で風を避けて焼売を蒸し、ランチにする。さすがに花の霊仙、山頂にはほぼひっきりなしに人が訪れる。山頂を後にすると草をなるべく踏まないように気をつけながら鹿道を辿り、カルストの谷を渡る。勿論、ゲイターはつけているのだが、今度は有り難いことに地面の泥濘は全くない。
南側の南霊岳への尾根に上がると、多くの人と擦れ違う。南霊岳のピークの直下をトラバースするようになるとカレンフェルトの石灰岩の間に福寿草が一株、二株と咲いている。群落はみられないのだろうかと思ってあたりを見回すと、急峻な斜面の下で群落が目についた。リョウシの南尾根で多くの福寿草を目にした後でなければ躊躇なく斜面を下って、群落を訪ねていたことだろう。
近江展望台のカレンフェルトと急峻な斜面から下り始めると、さすがに周回するには時間が遅いのだろう、全く人と出会うこともなくなった。右下の廃村の落合集落とは別に、正面の谷あいに小さな集落が目に入る。後で確認したところ、入谷の集落らしい。果たしてここも既に廃村となっているのだろうか。
急坂をジグザグと下りきると、笹峠への山毛欅の樹林に入る。一般登山路は廃村の今畑集落に向かっておりてゆく。廃村の今畑集落を訪れたいところであったが、笹峠からのなだらかな尾根を妛原に向かって直進することにする。自然林の快適な尾根が続き、壇香梅の花が随所で咲き誇っている。尾根上の展望地からは左下に権現谷林道と正面の鍋尻山の眺望が大きく開ける。尾根は末端部では多少、傾斜は増すものの下藪もほとんどなく、歩きやすい快適な道を辿るうちに妛原に出る。登山道が着地した集落の裏手には一輪の福寿草がひっそりと咲いていた。村の方が植えたのだろうか。
後は長い林道歩きである。林道を辿ると、朝見た光景の通り、まもなく林道の両側には峻険な崖が続くようになる。迫力ある景色に林道歩きも飽きない。家内が道端に摘み取られた後の蕗の薹を見つける。再び谷が広がるようになると、林道の脇に三本の杉の大樹が見えてくる。三本杉の大樹を過ぎるとまもなく白谷橋に帰り着いた。
霊仙を訪れるのには最後にもう一つの楽しみがある。河内の風穴の手前にある「風緑」におけるかき氷だ。天然素材のみで作られるシロップをかけて味わうかき氷は私の知る限り、最上級だ。かぼちゃ、人参、黒胡麻など魅力的なメニューが並ぶのだが、家内とかき氷を一つずつ食べるにはまだ気温も高くはないので、躊躇なくこの時期限定の摘みたての生いちごとそばがきぜんざいを選ぶ。ピンク色のシロップをかけた氷を口に運ぶと新鮮な甘酸っぱい苺の香りが口の中いっぱいに広がるのだった。
※昨年に訪れた際の「風緑」の日記です
https://www.yamareco.com/modules/diary/306675-detail-163780
コメント
この記録に関連する登山ルート
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こんなルート知りませんでした。霊仙の南側から上がることも考えたことが無いですね。
最高点から稜線を歩いていると南側はガレた急斜面と谷部に林道があるな〜というぐらいの記憶です。確かにP782、P798、三角点の829.8と良い感じの稜線はありましたけど… トレースは付いているんですね。
稜線直下は御池岳へのT字尾根や土倉からのルートよりきつそうです。
yamaizuさんは凄いな。このルートも歩かれるとは。あまりキツイルートばっかり行っていると「私行かない」ってことになりませんかね〜 いらぬ心配ですけど。
風緑さんのかき氷、美味しそうですね。湧水をゆっくり製氷した氷とのことですからやっぱり感じが違うのかな。どこだったか製氷池から切り出した天然氷で、かき氷をしている映像をテレビでは見たことがあり、まろやかな味とか。
京都の梅小路近くに、八ヶ岳の天然氷を使った「かき氷カフェ」があるって聞きました。かき氷が1000円越とか?? 価値はあるんでしょう。
ののさん コメント有難うございます。
>こんなルート
確かに御池岳へのT字尾根や土倉からのルートを思い出すのですが、こちらの方がきついということはないと思います。家内も意外と登りやすかったと申しております。
p782の林道の出合の直前はわずか300mほどだと思いますが、藪の細尾根になりますので、ここだけは辛抱です。p798はコザト北峰と呼ばれるピークです。この辺りは東への展望が随所で開けます。なんといっても核心は最初のガレた尾根の取りつきで、ここを注意して慎重に登りさえすれば。
>風緑さんのかき氷
風緑のかき氷は決して高くはなかったと思いますし、ここは絶対におすすめです。特に天然素材のみで作られるシロップが絶品です。ののさんも美味しい人参を作っておられることと思いますが、南瓜や多賀人参のかき氷などは気に入られるのではないでしょうか。この店があるので、樽が畑の方からではなく、河内から入ることを選択するといっても過言ではないのです。もしもいらしたら、是非、ご感想を教えて下さい。
昨年、霊仙の後で訪れた際の日記がありましたので、感想の後に貼り付けておきました。
yamaneko0922さん、こんばんは。
リョウシ、コザトですか。鈴鹿にこんなピークがあったんですね。初めて聞きました。
最初の瓦礫の斜面は落石の危険だけではなく滑落の危険もあるのでしょうか?
霊仙や伊吹の展望も所々得られて稜線歩きを楽しめそうですね。
福寿草の大群落も見事です。金剛山やポンポン山でしか見た事の無い福寿草ですが、遥かに見応えがありそうです。
あと権現谷林道の岩壁迫る様子、美味しそうなかき氷と魅力的に感じました。
yukkyさん コメント有難うございます
丁度、yukkyさんはお元気かな〜
最初のガレ斜面は滑落の危険性はまずないと思います。一番の問題は数人のパーティーで行動した際に先行者が落とす落石だと思います。短い距離ですので、慎重に登れば大丈夫でしょう。福寿草の群落は、私は他をよく知っているわけではありませんが、ここは圧巻だと思います。伊吹の展望は霊仙の山頂に辿り着いてのご褒美です。
風緑のかき氷もいらっしゃることがあれば是非。
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