焼岳黒谷 雪崩から生還(高度差400m)
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- GPS
- 05:25
- 距離
- 10.2km
- 登り
- 1,231m
- 下り
- 1,230m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
●北面台地 堰堤を過ぎて台地取付きの急斜面はライン取りが難しく、行き詰らないように進む。 1550mを過ぎると斜度は緩み、1640mPを巻くように進む。 1650mから広い台地で高いところを目指しブーツラッセル。 2000mあたりから急斜面になり、固い雪の上に新雪が乗っているのでクトー装着。 2150mからはモナカになる。際どいトラバースは2回。尾根上で所によりクラックの入るところもあったので、もう少し警戒するべきだったかもしれない。 2250m地点で足元が崩れ、雪崩が発生。2名流される。1名は標高差100m、もう一名は標高差400m水平距離で700m流されたが、埋没することなく逃れることが出来た。 ●黒谷 上部は谷も埋まり快適なパウダー(真ん中のデブリは除く) 1750mから谷は狭まる。 1600mから水が流れ出し、左岸を進む。 1550mは急斜面の降下、エッジがしっかりしてないと厳しかった。 1500mは滝横の通過。雪着きが薄く、際どいトラバースとなる。 それ以降は根雪がないため、石がブレーキとなりバランスを崩しやすい。 堰堤を左岸から巻くと林道に合流。 |
その他周辺情報 | YSHR 兄ちゃんはちろり庵で前日宿泊して移動 この辺りの宿でちろり庵はお勧めの宿!ご主人は山に詳しく遭難救助隊員でもある |
写真
感想
四ッ岳から下山後新穂のちろり庵で宿泊して飛騨牛やカレーその他たくさんのごちそうに舌鼓、大満足で就寝した。今日は大魔人、コーエー、兄ちゃんの4人で焼岳・黒谷を目指す。今後の予報を考えるとラストパウダーになるかも知れない、行くしかない。
焼岳黒谷を開拓したのはもう12年前、うまくルートを取れば山頂までスキーで登れて山頂から黒谷を林道までダイナミックに滑れる。自分的には焼岳のスキーコースの中では一押しだが危険な場所も多くて玄人好みのエクストリームコースだろう。昨夜のテレビで羊蹄山で単独ボーダーが雪崩で亡くなるという悲しいニュースもあった。黒谷も決して油断できない。
深夜3時に中尾温泉スタートと約束していた。深夜1時半に起きて宿のお弁当を頂いてさくっと風呂に入っていざ出発、集合場所にはもう皆集まっていた。近年雪不足で黒谷はまともに下まで滑れなかったが宿のご主人の話ではここ数日かなりの降雪があったということで今日は林道まで滑走できるかもと思った。
北面台地に続く林道をガシガシ進んでいざ取り付きへ、雪は多くて容易に北面台地に上がれた。帰りのコースは黒谷なのでアップダウンも気にせずガンガン交代でラッセルを伸ばす。かなりハイペースであった。
北面台地は徐々に斜度を増していく。通常2000mくらいから氷化し始めてかなり厳しい登りを強いられるが今日は雪も安定していて全く問題なく終点の2100m大岩基部に達した。2000m から大魔人がガンガンルートを伸ばしてくれた。
ここからが核心で際どいトラバースを二箇所こなし最後山頂へと続くプチ沢を登り上げる。このコースのみ山頂まで板で歩ける。大魔人を先頭に核心を抜けプチ沢に合流できた。大魔人はすでにスイッチが入っていて休まずガンガンピークを目指し始めた。この先のルートは少しムズい、後50mの急な斜面を登りきればもう山頂まで危険な場所はない。
この急な斜面自分はいつも真ん中の岩の間を抜けることが多い、ここを抜ければすぐ上は平坦になる。大魔人は先頭で左の急な斜面に取り付いた。自分は最後尾で少し距離を開けて無事突破するか見守っていた。もしムズければ岩の間を抜けていこうと思った。
その矢先大魔人が進む急な斜面がいきなり足元から崩れた。すぐ後ろを歩いていたコーエーも巻き込まれあっという間に二人とも雪崩とともに流されて視界から消えた。幸い三番手の兄ちゃんは雪崩がかすめていったが際どく無事、最後尾で距離を開けていた自分は大丈夫だった。
これは大変なことになった。山行中止、すぐに二人を捜索しなければならない、もし雪に埋もれていれば15分が生死を分ける限界だろう。兄ちゃんにすぐシールを外して滑走するぞと言うが捜索中登り返しがあるかも知れないからシールはつけたまま下ると言う。じゃあ任せる、自分はすぐにシールを剥いでビーコンを捜索モードにしてスキーでデブリ跡をなぞるように滑っていく。
かなり大規模な雪崩でデブリがずっと下まで延々続いている。どうか二人とも無事でいてくれと祈るような気持ちでビーコン片手に滑る。100mほど下るとコーエーがいた。無事だった。流されながら左左に体を移動して本流から抜け出したとのことであった。
後は大魔人、どこまでもデブリは続いている。果たして大丈夫だろうか、200m、300m下っても全くビーコンは反応しない、さらに下まで流されているようだ。滝場も超えてさらに下へ滑っていく、何と標高差で400m、水平距離で700m下った地点で大魔人発見、無事だった。必死に雪崩の中でもがき続けて埋まらないように頑張ったらしい、700m流されて埋まらなかったのは奇跡だが諦めずに助かる努力を最後まで行った結果でもある。何もしなければ多分埋もれていた。
止まる直前片足の板が外れて埋まったが、奇跡的に発見できた。ウィペットも片方無くしたがこれも奇跡的に見つかった。もっている人は違うと思った。片方の板が最後まで外れなかったこと、止まる寸前まで両方の板が残っていたことで浮力が生まれて埋められなかったことも一因だと思った。彼を見つけるまで色々なことが頭をよぎったが本当に無事で良かった。彼が止まって一段落して僕が着くまで5分ほどだったからもし埋もれていても深くなければギリギリ掘り起こせたかも知れない、何れにせよ際どい時間との勝負だろう。
その後10分ほどして皆降りて来て合流できた。さあ最後まで油断しないで黒谷を安全圏へ、黒谷下部は降雪があったとは言え岩や水も出ていてかなり危険な香りがしたが自分が先頭で安全な既知のコースを慎重に滑っていく。皆が追従してくるのを確認しながらようやく安全な林道に合流して無事駐車場へ。
まあ長年毎週のように限界に迫るハードな山行を繰り返していれば危険な局面にも数多く出くわすのは当たり前、ただいつでもできる限りリスクを減らすような備えとと万が一の時にリスクに対応できる行動が生還につながるのだと改めて実感した。山に入る多くの登山者の他山の石になればと思い追記した。
日曜にドカッと雪が積もり、快晴が続くので焼岳北面から黒谷を滑ることになった。過去の記録を入念に調べ、万全の態勢で臨むことにする。雪の状態で色んなバリエーションになるので、どんな状況でも対応できるようにシミュレーションし、緊張を保ちつつ3時前に出発。今回は先生のほかに大魔人さん、hayawataさんも参加されるので覚悟してかからないと痛い目に遭うと言い聞かせた。
林道を進み、台地の取付。ここは僕が切り開くこととなった。アスレチックな登りで行き詰らないように、先をよく読んで進むとまあまあ上手くいくことが出来たが、最後は詰めが甘く、先生に先を行かれてしまった…
台地に乗り上げると快適な斜面が続く。みなさんでラッセルを回してだんだんと疎林になるにつれ、斜度が急になってきた。雪は柔らかいのでスキーのまま進むことが出来た。2100mからクトーを着け、核心となる。ここは大魔人さんに絶妙にルートを切り開いていただき、必死についていくことしか出来なかった。それでもビビりながらだけど…
2220mあたりから沢状を詰めていくが、それ以前からモナカで所により亀裂が入ることもあった。あっという叫び声が聞こえたと思ったら、地面がズレていくのがわかった。初動は緩かったのですぐに左側に逃げようとしたが、そのまま仰向けで流されてしまった。流れ出すとスピードは上がり、とにかく埋まらないように必死にもがいた。流れから逸れようと必死に左を意識して、もがいていたら上手く流れからはずれることが出来た。流れている時、急斜面で一瞬ふわっと浮いた感じになった時にはヤバいと感じたが、どこにもケガはなく、無くしたものもなかった。
とりあえず無事を報告するのに携帯をかけたが、叫んだ方が早かった。流されたのは真ん中にいた僕だけだと思っていたので、すぐに登り返そうとした時、hayawataさん、YSHR先生が降りてこられ、大魔人さんも流されたと聞き、青ざめた。すぐにビーコンのモードをサーチに切り替え、ビンディングとブーツだけ滑走モードにし、シールオンのまま下った。しばらく下ったところで、hayawataさんから大魔人さんの声が聞こえたから、シールをはがそうと聞いたときには心から安堵した。シールをはがし、慎重に下っていくと皆さんいて涙が出そうになった。大魔人さんは400mも流されたということだったけど、必死にもがいて埋没は免れたということだった。
しかしここからも油断は出来ないので気持ちを切り替え、慎重に下った。幸い、雪は最後までつながっていたので、慎重にこなすと無事に堰堤まで戻ることが出来たので、緊張を解くことが出来た。
今回、雪崩を経験したが、奇跡的に2名とも無傷で生還することが出来た。山の神様がいるのならば、心から感謝したい。直近の天気、気温、雪の降り方、斜面、いろんなことを検証して、これからさらに安全な登山が出来るように勉強したいと思った。この記録で少しでも参考になることがあればいいと思った。今年は寒暖の差が大きいのでこれからも油断は出来ない。
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