岩木山(過去レコです)。
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- GPS
- --:--
- 距離
- 9.9km
- 登り
- 1,175m
- 下り
- 1,160m
天候 | 雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
飛行機
|
コース状況/ 危険箇所等 |
つるつる登山道で滑って捻挫してしまいました。 |
写真
感想
2006年9月27日、夜中は荒れ放題の天気であったが、前線は北上し、朝から晴れ模様となってきた。代わって東北地方、なかでも青森あたりが低気圧に巻き込まれ、青森行きのJAL3145便は、「青森空港の天候次第では名古屋に戻る」という条件付きで中部国際空港を飛び発った。雨の中、無事、青森空港にランディングし、ひと安心して弘前市内のホテルに向かった。
翌朝、ホテルの窓から見た岩木山は頂上に雲を冠っていたが、津軽富士の呼び名にふさわしく、なだらかな裾野を左右に広げた端正な姿をしていた。太宰は小説「津軽」の中で、「富士山よりもっと女らしく、十二単の裾を、銀杏の葉をさかさに立てたようにぱらりとひらいて左右の均整も正しく、・・・・・・透きとおるくらいに嬋娟たる美女」と岩木山を表現しているが、確かにそんな気品を感じさせる山であった。津軽の人には親しみを込めて「お岩木山」、信仰の対象として「お岩木さま」と呼ばれ、多くの歌にも登場する。美空ひばりは「りんご追分」で、「お岩木山のてっぺんを、綿みてえな白い雲がぽっかりぽっかり流れてゆき、桃の花が咲き、桜が咲き・・・」と語り、吉 幾三は「津軽平野」の中で、冬に出稼ぎに行った父親が、春になって戻ってくるのを、「いつもじょんがら大きな声で 親父うたって汽車から降りる、お岩木山よ見えたか親父」と歌っている。岩木山は、津軽のシンボルである。津軽岩木スカイラインで8合目まで行き、そこから頂上を目指す予定であったが、この山の美しい姿をみているうちに、それでは申し訳ないという気持ちになり、ふもとの嶽温泉から頂上を目指すことにした。嶽温泉まで行くと登山口はすぐに見つかった。赤い鳥居をくぐり、これまた赤いお稲荷さんの社を過ぎると林の中の散歩道となった。裾野の道であろう、傾斜も緩やかで、下の方から時折り「ど〜ん」という音が聞こえてくる以外は、物音のない静かな森の中を進む。「ど〜ん」と言う音で、登山口には熊に注意と記されてあったことを思い出し、おまけに粘土を固めたような滑りやすい道で、ぱらぱらと大粒の雨も降り出し、気分良く登るというわけにはいかない。ゆっくりとホテルで朝食を摂ってきたので、登り始めは8時35分と遅めであったが、行く手を遮る蜘蛛の巣は、わたしが本日始めての登山者であることを物語っており、心細くなる。「熊さん出るな〜」。30分程で湯ノ沢への分岐に至る。霧が立ち込めたブナの森は幽邃であり、かつ幽玄がただよう。上着だけ雨具をまとったが、ズボンはそのまま、笹の葉の水が裾を濡らす。湯ノ沢分岐から15分ほどで、「巨木の森」への道を分ける。山頂まで2時間30分とある。この辺りから徐々に傾斜を増し、粘土質の道はいつしか石の転がる溝状の登山道となる。ブナの根っ子の階段を滑らないように慎重に登る。急な登りとなり、所々に丸太の階段も設けられている。ブナの背丈も低くなり、左手から車の排気音が聞こえ始め、登山口からちょうど2時間で8合目の標識の立つ小広場に着く。ここから僅かに登り、スカイラインの広い駐車場に出ると、そこには軽自動車が1台あるのみで誰一人としていない。強風が吹きまくり、9合目まで行くリフトの切符売り場にも誰も居ず、「悪天候のため営業休止中」と張り出されている。登山道に入ると風は遮られ、固い岩の露出した道を登る。もう紅葉が始まっている。2人連れが下りて来るのに出会い、本日始めて会話する。9合目からは火山岩の登りとなり、登山道からはみださないようロープが張られ、「危険」の札が立ててある。霧にかすんで鳥ノ海も鳥海山も見えない。鳳鳴ヒュッテを過ぎると、火山岩の登りが終わり、今度は大岩の急な登りとなる。強風にあおられ、よたよた登る。もうすぐ頂上だと思える頃、強風は暴風となり、濡れた手袋が指をしびれさせ、身体中が冷えてくる。三角形の塔が見え、それを目指して大岩の積み重なった急登を登り、11時50分、登山口から3時間20分かかり、やっとのことで山頂に到着した。猛烈な風の中、三脚は吹き飛ばされそうであったが、なんとか記念撮影をし、早々に山頂避難小屋に逃げ込んだ。眺望は望むべくも無く、岩木山神社奥宮に参拝し下りにかかった。こんな滑りやすい道はぶっそうなので、帰りはスカイラインをバスで戻ろうと考えながら慎重に下った。8合目の駐車場は、やはり人の気配はなく、バスの時刻表を見ると、次のバスは1時45分発で、50分以上待たねばならない。はたしてバスが来るかどうかも定かでなく、ままよと登山道を下り始めた。急斜面の降下は、石や木の根っ子で滑らないように気をつけ無事終わり、裾野の緩斜面に入った。熊おどしの「ど〜ん」という音も聞こえ始める頃、長い緩斜面は粘土を固めたような道となった。気を緩めたわけではないが、左足がつるりと滑り、それを支えようとした右足がグニャリと曲がり、痛みが走り水溜りにしゃがみこんでしまった。立ち上がろうと思ったが、右足関節は力が入らず、しばしそのまましゃがみこんでいた。脛骨をとんとんと叩いても痛みはなく、まず骨は大丈夫であることを確認。やっとの事で立ち上がり、右足関節の痛みが引くのを待つが痛みは一向におさまらない。仕方がないので右足をかばいつつ下り始める。右足をかばうという事は、左足に重心をかけ、右足を引き寄せるということになるが、右足を引き寄せる際に右足関節は屈曲し、その度に痛みが走る。そこで右足関節を屈曲しないようにしながら、逆に右足に重心をかけるとこれが具合が良く、なんとかお稲荷さんの登山口までたどりつくことが出来た。登りは8合目まで2時間であったが、下りは8合目から2時間半を要した。
道端にとうもろこし売りのテントが並び、そこで食べたゆでたての「嶽きみ」は、未だ味わったことのない、あま〜い、それでいて歯ごたえのある逸品で、足の痛さを忘れさせてくれた。
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