武尊山(過去レコです)。


- GPS
- 32:00
- 距離
- 11.2km
- 登り
- 1,164m
- 下り
- 1,154m
天候 | 曇り。 |
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過去天気図(気象庁) | 2009年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所が何カ所かあります。 |
写真
感想
11月中旬の山登り、アミューズのカタログを見て武尊山へ登ることにした。夜行バスで行き、翌日武尊山に登って名古屋へ帰って来ると云うスケジュール、バスの中で眠る事ができるかどうが心配。昨年みいと武尊山に登りに行ったが、体調不良のため登山口にも行かず、下から眺めただけで帰ってきた。群馬県は山の国、赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山が有名だが、他にも多くの名山がある。上毛三山をもじって、四阿山、皇海山、武尊山を上毛難山と呼んでいる。難しい呼び名の山ということであるが、この三つを読める人は山登りに興味がある人達だけではなかろうか。穂高岳はホダカダケと読むのであるが、ホタカサンは穂高岳と間違われる事が多いのだろう。これと区別するため山登りをする人は武尊山を上州ホタカと呼ぶ。日本武尊の東征伝説に由来する山名であろうが、タケルヤマでは無くホタカサンと呼ぶのは何故か。武はブ・ム・フ・タケシとか読み、名乗にイサ・イサム・タケ・タケシ・タケル・タツ・フカ・ンと読むが、ホとは読まない。尊はソン・トオトイ・ミコト・タルと読み、名乗にタカ・タカシがあるのでこちらは良い。さて、武をホと読むのはどういう訳か、少し調べてみたが判らない。と云う訳で、武尊と云う字を始めて見てホタカと読む事が出来る人はいないのは当然の事である。
2009年11月7日、夜8時15分に名古屋駅に集合。男6人、女12人に添乗員とガイドの総勢20名、それにドライバー2名。大型バスの2席を占拠する事が出来るので自由が効く。カーテンを閉め、室内ライトも消灯し、座席を倒し、今晩の為に購入したエアー枕を膨らまして睡眠モード。名古屋駅での夕食時に生ビールを飲み、バスに乗り込んでからも缶ビール、さらに持参のウイスキーを飲んでウトウト。眠ったか眠ってないのかわからない内に最初のトイレ休憩所の恵那SAへ。室内灯がついて明るくなり、車内の状況を見ると、女性達は2座席を使って横になって寝ている。明日の昼食のためオムスビを買って出発。座って眠るのはつらいので、わたしも横になろうとするが足の置き場が無い。通路側に頭を置き、足を組んで窓に立て掛けて横になる。横になると大変楽であるが、直に足を立てているのが苦痛になり、坐り直す。どうすればゆっくり眠れるのか、ああでもないこうでもない、ウトウトしながら色々んな体勢をとる。姥捨SAと赤城SAでトイレ休憩、そしてウトウト。 裏見の滝の駐車場に着いたのは何時頃なのか、止まったバスの中で仮眠が続き、室内の明かりがともり、添乗員の「4時ですよ」という声で目を覚ます。朝食の弁当が配られ、まだお腹も減って無いが平らげる。靴を履いたり、トイレに行ったり、ストレッチングをしたりして、5時に出発。まだ真っ暗、全員ヘッドライトを点け一列になって林道を歩く。先頭のガイドは高山の人でこれは始めて会った人。しんがりは杉浦さん、花の本も出しているアミューズ専属のガイドで、わたしも2度ほど連れてもらっている。杉浦さんの前は浜松から参加した75歳の男性、その前は刈谷から参加した72歳の女性、そしてわたし。武尊神社の赤い鳥居を右に見て、眠気まなこをこすりながら、前の人の背中を失わないようすぐ後ろについて緩やかに登る。見えるのは足元だけ、裏見の滝はどこにあるのやら。真っ暗な中を1時間弱歩き、沢を渡ると剣ヶ峰との分岐に到着。ここで林道は終わり、尾根に上がる登山道となる。空も白み始め、ヘッドライトも外し、枯れ落ちたカラマツ林の中、これから登る尾根を正面に見て、カラマツの落ち葉を踏みしめながら登る。数日前に降った雪がチラホラと残っているが、登りになると汗も出始め、ウインドブレーカーを脱ぐ。いつしかカラマツ林はシラカバ林に変わり、勾配もきつくなる。分岐から1時間10分、尾根に登り着きひと休み。コースタイムより若干遅いが左程の事は無い。浜松の爺さんはちょっと遅れ気味だが、刈谷の婆さんは意気盛ん。「わたしは百名山なんか目指していないが、あと6っつ残っているだけ。わたしはコーザンをやっている」。「コーザン?」、「日本の3000m以上の山は全部登った。富士山は冬が良い。わたしは毎日トレーニングをし、ジムにも通っている」と、聞きもしないのに自慢げにお話しされる。「わたしは日本の山では写真は撮らない。外国の山に行く時に撮るだけ。外国の山はいいですよ、あなたも行ってらっしゃい」、「・・・」。癖々するような人だが確かに元気で、遅れず付いてくる。左下にカマボコ型の小さな避難小屋が見え、ここから尾根伝いの登りが始まる。シラカバ林はシラビソの林に変わり、登山道にも雪が現れ始める。浜松の爺さんが少し遅れ気味ではあるが、隊列を組んで順調に登る。尾根に登って1時間20分程経った頃、ガイドが立ち止まってアイゼン装着の指示を出す。事前に6本歯のアイゼンを持参するように求められていたが、浜松の爺さんは4本歯しか持ってきておらず、ガイドに叱られている。他にも4本歯がいるが大方は6本歯、中には12本歯もいる。アイゼンの付け方が判らず戸惑っている人もいて、「ちゃんと練習してこいよ」、と云いたくなる。大分時間のロスをして出発するとすぐに鎖場が始まり渋滞。杉浦さんがガイドに呼ばれてアシストに行く。ガイドが岩についた氷をピッケルで打ち割り、杉浦さんがおばちゃん達にいちいち足の置き場を指示している。おばちゃん達が一人づつ、モタモタと登って行くのをじっと止まって見ていると寒くなって来る。これを登り終えると今度はロープが現れる。ロープが掛っている場所は雪解けでドロドロ状態、おばちゃん達にはちょっと無理。ガイドが自前のロープを取り出して別の場所に掛け、下で杉浦さん指示。ここで再び大渋滞。これをクリアーするとまたまた岩場、そして大渋滞。見上げれば林の向こうに空が広がり、時間的にもそろそろ頂上か、と元気を取り戻して登る。急な岩場を這い上がり、大岩の門を通り抜けると展望が開け、右手にツンと尖った剣ヶ峰が現れる。正面には沖武尊、目指す頂上が飛び込んでくる。どうやらこの先にはもう渋滞は無さそうだ。10時過ぎ、登り始めてから5時間ちょっとで全員無事沖武尊の頂上に立つ。360度、見渡す限り山山山、上空は雲がかかっているが眺めは抜群。ガイドが「この時期にこんなに良く見えるのは珍しい」、と云うと皆さん大喜び。ガイドが同定する山々、まずは近くに見える燧ケ岳。そこから左回りで奥に見える平ぺったいのが会津駒ケ岳、近くに見える至仏山。燧ケ岳と至仏山、尾瀬の山がこんなに近く見えるんだ。遠くにこれまた平ぺったい平ヶ岳、そして越後三山は魚沼駒ケ岳と八海山と中ノ岳。ぐるっと左、近くに雪を冠った谷川岳と仙ノ倉岳、それに続く苗場山。遠く、草津白根と横手山、そして根子岳を従えた四阿山。先週登った四阿山はどってっとした何の変哲もない山であったが、ここから見る四阿山はピラミダルな形の良い山であった。スジの入った浅間山、裏から見る八ヶ岳連峰。富士山も、うすぼんやりとではあるが白く浮かんでいる。南アルプスと思ったのは秩父の山々、そして近くに赤城山。沖武尊から南へ伸びる尾根の向こう、日光の山々は男体山に奥白根。360度の大展望を存分に楽しみながらオムスビを頬張る。「登りのルートを下るのは難しいので別ルートをとる」とガイドが云い、全員が賛成する。剣ヶ峰へ向かう痩せ尾根に、登山道が続いているのが見える。陽当たりのよい尾根道なので雪は溶け、ぬかるみ状態。ガイドの指示でアイゼンは着けたまま、ぬかるみを避けながら尾根を下る。軽く登ってまた下る。鞍部に降り、そろそろ尾根からはずれて右に行かないといけないんじゃないかと思うが、そのまま剣ヶ峰に登って行く。え〜、また登るの!振り向けば沖武尊がどんどん遠ざかって行く。剣ヶ峰まであと100mと云う標識が現れ、ここで頂上への道から分かれ、やっとの事で尾根から裏見の滝に下る登山道に入る。と、これが大変な急坂で、おまけに雪をのっけた岩と雪解けのぬかるみ。先週行った四阿山から根子岳への下りもかなりの急坂であったが、それにも増して急でドロドロ。眠気どころの騒ぎで無い。段差の高い岩からダブルストックで飛び降りた所はぬかるみ。ズボンの裾はあっという間に泥だらけ。ザックにはスパッツも入れてあるのだが、もうあとの祭り。根っ子の這いまわる急坂、岩と泥の段差、ノロノロと隊列が下る。浜松の爺さん、靴が引っ掛かって前のめりにひっくり返るが、足が抜けず転げ落ちずに済む。隊列の前の方で、「キャ〜」と云う声がし、ガイドが杉浦さんに来て呉れと云う。急坂でしばらく立ち止まっていると、「男の人2〜3人来て下さい」と声がかかる。わたしの前の若い男が降りて行く。下から聞こえてくる話しでは、おばさんが前のめりにゴロゴロと転落し、顔から血が出ているとの事。これはわたしの出番かなと下りて行くと、おばさんがタオルで顔を押えて倒れている。ガイド2人は救急箱を取り出しただけで、どうすればいいのか判らずオタオタしている。メガネを掛けていないので詳細は分からないが、鼻が裂けて出血している。取り合えず応急処置にかかる。ザックからわたしの救急セットを取り出し、滅菌ガーゼを鼻に当て、弾力包帯で鼻を圧迫止血し、両手が使えるようにする。おばちゃんのザックから荷物を半分取り出して杉浦さんのザックに詰め、軽くなったザックをガイドが担ぐ。おばちゃんは立ち上がり、手も足も大丈夫のようである。この先も延々と続く急坂、おばちゃんはガイドのすぐ後ろにつき、慎重に下る。予定では2時までにバスに戻り、温泉で汗を流して帰る筈だったんだが、もう誰もそんな事は期待していない。名古屋からの終電車に間に合うかどうかが問題となって来た。何度かツル〜っと滑ってよろめくが、その度にストックが支えて呉れる。それを見てうしろの刈谷の婆さんが喜ぶ。体力度☆☆☆のツアーであるが、杉浦さんは「このコースは夏ならば☆☆☆でいいけど、今の時期は☆☆☆☆にしないといけないな」とつぶやく。だけどわたしは思う、「そんな事をしたら客が集まらない。来年のカタログも☆☆☆となっているに違いない」と。コースタイム1時間半の急坂下りを3時間以上かかって下り、林道終点に降り立ちひと安心。林道を足早に下り、15時40分、裏見の滝登山口の駐車場に帰り着いた。朝出発してから10時間40分が経っていた。あ〜疲れた。
あたふたとバスは出発し、猛スピードで高速道路をひた走る。途中のトイレ休憩も2回だけ、夕食も適当に弁当を買い求めバスの中で食べる。いつもは一宮から下道を通るのであるが、この日ばかりは名古屋高速を使い、浜松の爺さんも何とか終電に間に合ったようである。初体験の夜行バス、暗いうちからの登山、遅くなっての帰宅。強行軍ではあったがたまにはこんなのも良いか。
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