安達太良山(過去レコです)。
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- GPS
- --:--
- 距離
- 4.7km
- 登り
- 341m
- 下り
- 335m
天候 | 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2004年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所はありません。 |
写真
感想
以前、蔵王から那須に向かう途中、東北自動車道の二本松あたりから立派な山が見えた。それが万葉集にも歌われた安達太良山で、いつか登ってみたいと思っていた。安達太良山の麓にある岳(だけ)温泉は、その名から想像していた山間のひなびた湯治場とは違い、立派な温泉街であった。その夜の宿は老舗の趣きを感じる気配りの行き届いた宿であった。源泉ははくろがね小屋であり、そこから引いた豊富な酸性湯は江戸時代の「諸国温泉効能番付表」で東北一とされたという名湯である。
次の宿泊地箱根までは5〜6時間かかるので、昼迄にはここを出発しなければならず、せっかくの安達太良山群であるがゴンドラ利用の最短距離往復の安直登山を選んだ。奥岳のゴンドラ「あだたらエクスプレス」は朝8時半が始発というので、ゆっくりと朝食を摂り宿を発った。8時半少し前に奥岳の駐車場に着くと大型バスもとまっており、ゴンドラはすでに運行していた。次々とやって来るゴンドラに待つ事なく乗り込み、勢至平を下に見ながら6分で薬師岳山頂駅に到着。ここはすでに標高1350m、頂上までの標高差は350mしかない。8時45分に登山道に入るとすぐに、右手に薬師岳パノラマパークへの道が分かれ、そこに立ち寄ると見事な景色が広がっていた。てっぺんに乳首を乗せ、こんもりと横たわるおだやかな安達太良山、その右手には対照的に、えぐられた岩肌を剥き出しにした荒々しい鉄山が並んでいる。「この上の空がほんとの空です。二本松市」と記された柱が立っている。高村光太郎の「智恵子抄」の「あどけない話し」からとったものである。今、目の前にその安達太良山の雲一つない空の青さを見ているが、3000m級の山の空の青さはこんなものでは無い。智恵子がその空の青さを知っていたならこの文章は書かれることはなく、安達太良山ももう少し訪れる人が少なく、静かな山になっていたのではないだろうか。妻は「樹下の二人」を思い出し、「あれが安達太良山…、あの光るのが阿武隈川…」とその気になっているが、阿武隈川は何処を流れているのかわからない。しばし光太郎・智恵子の世界を堪能し、登山道に戻る。木道の敷かれた道は五葉松とシャクナゲのトンネルで、その枝に帽子を取られないよう背を丸めて進む。後ろから子供達がガヤガヤと近付いて来たので、木道から降りて道を譲る。黄色い帽子を冠った子供達は埼玉県川越市の二つの小学校の五年生で、150名が二泊三日で合宿していると云う。元気に登る子もあれば、「もう休もうよ」と喘ぎながら登る子もいる。「私は百回以上安達太良山に登った」と話し掛ける父兄もいて、総じて付き添う大人達の方が元気である。とは云え我々よりは余程早く、すぐに見えなくなってしまった。木道が無くなり、溝状の岩がゴロゴロした道を相変わらず枝を気にしながら登る。ちょっとした広場があり、アキアカネが舞う中で先の子供達が坐って休みをとっている。潅木帯を抜け、岩のゴロゴロした斜面を登ると、「安達太良山頂」の柱が立つ頂上台地に到着。大勢の人が休んでいるが、本当の頂上は「乳首」であり、ザックと妻をここに置き、鎖のかかる岩を登って10時5分、溶岩の上に石祠の建つ山頂に到着。安達太良山の裏の眺めは一変して荒々しく、岩肌を剥き出した船明神山と鉄山、その間の赤茶けた沼ノ平は爆発の凄さを物語る。反対側は緑の山が広がり、下を覗くと妻が大岩の日陰に身を寄せて坐っている。大声で呼ぶと気がついて手を振ってくる。乳首を降り、ナシを剥いてひと休みしていると、先の子供達とは別のさらに150人程の子供達が現れ山頂台地は大賑わいである。10時25分、山頂を発ち、登って来た道を引き返して11時20分、ゴンドラの山頂駅に帰り着いた。針の木岳でひと皮むけた腕は再び赤くなり、そこに冷たい水を何度もかけた。
二本松インターから東北自動車道に入り、塩原辺りでは局地的な猛烈な集中豪雨と雷に会い、青空の中で安達太良山に登れた幸運を喜んだ。東北自動車道をひた走り、渋滞の首都高速をナビの案内に従って抜け、東名高速道を御殿場インターで降り、6時前には今夜の宿泊地である箱根仙石原の宿に着く事が出来た。
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