播磨富士 高御位山/一輪駆動でひた走り 「元」がん患者雲を行く
- GPS
- 32:00
- 距離
- 7.3km
- 登り
- 444m
- 下り
- 441m
コースタイム
天候 | 曇り後快晴後曇り/強風 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ほぼ全山、露岩の山である。浮き石や砂は無く、歩き易い。しかしつまづいて転倒すると、遮る物が無いので場所によっては樹林帯まで数10m〜100m程度の滑落は免れない。低山となめてかからず、足運びには細心の注意が必要。 |
写真
感想
「元」がん患者雲を行く 〜ショートツーリング編〜
久しぶりに連休が取れたので、テントを持って旅に出た。冬型気圧配置で北部日本海側はしぐれ模様。そこを目指すのがバイクでは無理ならば、その冬型の恩恵で晴れ渡るであろう、瀬戸内を狙った。
ここに着いた時は、聞こえるのはさざなみが打ち寄せるリズミカルな反復音だけかと思っていた。が、いやいやどうして。テント設営後すぐに陽が落ちて、辺りを闇が支配した途端に騒がしくなった。沖を行き交う夜網の漁船。遠く左右に見えるコンビナートからは、重々しい機械の音と、構内放送の業務連絡がわずかに響いてくる。
それら人工の音たちの合間に、猫が寄って来る。猫なで声で餌を無心していたが無視していると、威嚇の声に変わった。ひとり晩秋の海岸にテントを張っていると、野良猫さえ恋しくなるが、餌付けは厳禁。これだけ寄って来るあたり、不逞の輩が残飯を投げ与えているのだろう。野良の御同輩、いや大先輩の猫たちよ。人間のおこぼれを当てにすることなく、自ら野性の血で生きて行って欲しい。
昨日まで一月半の長きに渡り、忙しくしており山に入っていなかった。勉学に努め、本業に勤しむ。それは生きてゆくために必須の営みなのだが、やはりオレには野宿が似合っているようだ。飛び飛びで休みは幾度も有ったのだが、日帰りのハイキングとなると移動距離の問題で山域が限られるので、なかなか出かけていなかった。
四輪や大きなバイクで高速道路を使えば、一時間もあれば着いてしまう播磨の海に、原付二種バイクで下道をひた走り三時間かけて辿り着いた。これは立派なツーリングである。高馬力の単車でがむしゃらにスピードを追求していた無謀な時期もあったが、今は良識ある大人のつもり。12馬力のおっとりバイクで制限速度+10kmくらいでひた走った。
ここ姫路市福泊海岸は中国の名所に擬えた、自然の岩が衝立てとなった小赤壁のねきにある。横の砂浜に立派な公園が作られており、無料キャンプ場がある。一昔前、エンジン付きインフレータブルボートをここから出船して、キスやカレイを釣り上げたのも懐かしい思い出。そう、オレは実は海の男でもあったのだ。いまや完全にペーパーキャプテン化しているが。
岩を攀じり、スキーを滑走させ、バイクで風になり、海に浮かぶ。思えばやりたい放題、命がいくつ有っても足らないほど遊んだものだ。こう書くと加山雄三氏のようなセレブリティ感が漂うが、そんな優雅な遊びではない。ご推察の通り、すべて手作り感漂う貧乏道楽である。カネが無いなら知恵を出し、それも出なければ汗を流して遊んできた。
今宵は釣り師もおらず、独占である。新調したモンベルクロノスドーム1型を、街灯下の芝生上に設える。いつものダンロップ2テンよりは多少狭いが、立派な前室のおかげでむしろこちらのほうが至極快適だ。調理はその前室で賄えるので、室内が湿気ないですむ。なにより、そのコンパクトさと軽量化が、オレには革命的である。来たる厳冬の雪山にはこの薄っぺらいフライでは心もとないので、従来通りダンロップに外張りで過ごすだろうが、来年の夏山が楽しみで仕方ない。これだけ軽いテントなら、定着だけではなく縦走もしてみたくなるものだ。
凛と張りつめた、初冬然とした夜の空気を堪能したあと、明けて9日。久々の山に興奮したのか、5時半頃には目が覚めて、する事が無いので持参したパックの肉うどんを温めてかきこむ。朝食べておけば、行動中は食事をしないで済むので便利な身体である。今日も昼食はあえて摂らず、レーションのみ。
七時過ぎ、名残惜しいがテントを撤収。どんよりした空の下、30分かけて高砂市阿弥陀へ移動。今日目指す播磨富士、高御位山(たかみくらやま)の登山口である。福泊(ふくどまり)やら高砂(たかさご)やら、めでたい地名ばかりだがそのとどめは高御位。思わず直立不動で伊勢神宮に参拝している気分で支度をする。
この山域は、主峰高御位を中心にして、鶴がその翼を広げるように扇状に縦走路が整備されている。この地域特有の、堅い花崗岩を中心にした岩場の連続であるのが、麓よりもはっきり判る。五年ぶりの今回は、ゲートボール場の駐車場を中心として、東の鹿島神社より西の鹿島神社へ至る、還縦走コースを採った。
クルマ数台と、バイクが一台。地域の人々の憩いの場である公園駐車場だが、人影は無い。すでに登り始めたハイカーの車だろう。同じようにスペースを少しお借りして、愛馬を駐輪し、ワークブーツより重登山靴に履き替える。里山にはいささかオーバースペックとなる本革のVOLKL製ドタ靴。来週の立山を見込み、足慣らしに引っ張り出してきたのである。オイルもしっかり馴染み、適度に硬さを保った皮革が、この岩ばかりの荒々しい低山には頼もしい。
支度を整え、九時丁度にスタート。早速Pの前に薄紅のコスモスが満開となっており、被写体になってもらう。何気ない日だまりに揺れているコスモス。「苦労はしても笑い話に時が変える。心配要らない」と唱った百恵ちゃんを思い出しながら、もう少し晴れて欲しいと念じたら、願いは叶った。
みるみる雲が取れてきて、小春日和を通り越し晩夏の様相に。今日は冬の低山ウェアである。あったか素材のTシャツに、長袖ハーフジップ。南向きの尾根で、森林限界を超えたかのように木陰は無く、標高はすこぶる低い。暑い。とてつもなく暑い。耐寒訓練に来たはずが、熱中症を気にかけねばならなくなった。
登り出して30分足らずで、早くもたっぷりと汗を流したら、主稜線に出た。関電の鉄塔と電線の多さが少しばかり気になるが、既に播磨灘は我が手中である。あたりすべての山肌が岩で組成されている、プチアルプスの雰囲気が小気味良い。よって、登りは急。ぐんぐん高度を稼ぐ。これは真夏なら決死の覚悟で登らなければならない、修行の山だ。
たかだか標高300m程の縦走路であるが、アップダウンに富んでおり、気分は飛騨山脈だ。低い山でこれほどシャッターを切ったのは、記憶に無い。それくらい、展望には恵まれている。
一時間半程で、ご神体たる 高御位山のピークに辿り着いた。1パーティが神社下の切り立った一枚岩でロッククライミングをしている。親子程年の離れた男女であるが、その関係は不明。どうでも良いが。完全武装のクライマーが攀じるのを、ジーンズのおばさんが応援している。けったいな光景である。ここはクライムゲレンデであり、ハイキングの山でもあり、神社でもあるのだ。
今日は快晴に恵まれたが、それがもたらす暖気と海からの湿潤な空気、北からの寒気が入り交じり、瀬戸内は春霞のようにもやっている。小豆島も淡路島も、今日は確認できない。あまり長居をすると、雨にやられるかもしれない。30分のぼんやりした時を終え、腰を上げた。
ここ 高御位山の主峰からは、南に直接下る尾根がある。見下ろすと目が眩むような高度感は、とても標高300mとは思えない。今日はそれを見送り、西へと歩を進めた。すぐに、白馬山頂を思い起こさせる重厚な展望指示台がある。空気が澄んでいれば、遠く六甲や北摂大野山も見渡せると刻んである。またの機会にとっておこう。
ここからも、登り下りを繰り返すが、ほぼ岩尾根で樹林は低い。須磨アルプスがずっと続いているような感じだ。当たり前のように軽装のご婦人が登ってくるが、地元の参拝者かもしれない。なまじ高い山を知っていると、「ここでスリップしたら100mは落ちるなぁ」などと憂慮してしまうものだが、幼き頃から庭のように歩いている人にとっては、なんの心配も要らないのだろう。
かたや、オレは帽子代わりに持参したアルパインヘルメットに重登山靴。いささか浮いているが、転ばぬ先の杖。いや、転んだらひょっとしたら死ぬ。転ばぬように歩いた。このドタ靴、久々に履いたが、実に岩には具合が良い。足首までしっかりホールドされているのと、かっちりシャンクの効いたビブラムのソールがなんとも乾いた岩にマッチしていて、まるで滑る気配が無いのだ。普段履いている軽量のトレッキングシューズが軽自動車としたら、これはランクルかジープである。多少砂が乗っている岩肌にも、フラットに足を置けばまったく心配はなく降りて行ける。適材適所とはこのことか。
桶居山と、馬ノ背の分岐を通過して、鷹ノ巣山にて小休止。姫路市街地を俯瞰撮影する。あいにく国宝白鷺城は、天守閣大修理中につき巨大な箱に覆われている。奇麗に修復なった頃、再度訪れてみたい。
ほぼ還縦走を終え、稜線を離れる前にある、百間岩と名付けられた広大なスラブを慎重に下り終えると、鹿島神社の境内に入った事がステージ状の展望台で判った。公衆便所があり、ここからは石段である。こうなると重登山靴はその適所を終え、足が重い。しかしそれもつかの間、紅い鳥居をいくつかくぐると、りっぱな鹿島神社の本殿に飛び出た。
一願成就の神様。ひとつだけ願いを叶えてくれる、そう記憶の片隅にあったはずだが、すっかり忘れていた。本来の参道を通らずに上から降りてきていきなり拝殿に来ているので、案内板等を見ずにたくさん願いを掛けてしまった。まあ、煩悩にまみれたこの身。少しでも願いが届くなら、長生きさせて下さい。それだけです。裕福な暮らし等要りません。
他力本願、困った時の神頼みが大好きなオレ。山の前後で通りがかった寺社仏閣には必ず参拝する。山の神、海の神。お釈迦様やキリストさま。八百万の神達に見守られているから、いままで死なずに来たのだろう。これからもよろしくたのんます。
参拝を終え、ペットボトルの水道水を飲み干したあと、とぼとぼとアスファルトを歩き、駐車場へ戻った。けなげに主を待っていてくれた12馬力の我が愛馬。稜線までは晴れ渡っていたのが、百間岩あたりからは風雲急を告げ、みるみる暗くなってきた。雲が東へ飛んで行く。予定では加古川で500円の温泉に浸かって旅の疲れを取るはずだったが、これはいかん。濡れるのもいやだが、風が強まると、バランス悪い積載をしているこのバイクでは危険で帰れない。家路を急ごう。
案の定、明石あたりから北西の風が強烈に吹きすさび、そこらじゅうの葉っぱを落としている。今日が本来の木枯らし一号ではなかろうか。後部に荷物満載の原付二種は、よろよろしながらもなんとか無事にスイートホームに帰り着いた。
今回はこれにて。
コメント
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ああ! こちらとは季節が一月違う!
コスモスの色鮮やかなこと!
頭を垂れた稲穂の黄金色が豊かなこと!
私はGPSを使わない主義なのですが、こうして地図をアップして頂けると、何処にある山かわかりますね。何しろ、名前を聞くのも初めて。地図を広域にして、先ず、位置を掴むところから記録を拝見しました。
一番、興味をひかれたのは、花崗岩のクライミングゲレンデ。良いですね、まだ暖かいのでしょう。関東でしたら「三つ峠山」の屏風岩が同じようかな! 何しろ岩場の最下段のバンドが登山道。ロッククライミングの見物を組み入れた企画募集型のハイキングがあるくらいですから。クライマーによっては、ゲレンデがにぎやかだと発奮する人もいますから、ジーンズのおばさんの観戦も役に立っていたと思いますよ。
それにしても、お酒の豊富なこと! あれ、一晩で全部飲んじゃったんですか?
転ばぬ先の杖とは理解できても、重登山靴にヘルメット姿を想像するだけで、おかしくなってしまいました。 「あの人は、いったい何をしにこの山へ来たんだろう?」 失礼!
mizuki
mizuki先輩、こんばんは〜。コメントありがとうございます。
お褒めいただき恐縮です。遊びの時は機材は古くて安いもの主体なんですよ。しかし、古いカメラを使いこなすのも腕のウチ、デジタル化した今のカメラはコンピュータと一緒で、新しいモノを追いかけてもキリがありません。
クライミング、私も高見の見物人のひとりだったのですが、なんかむずむずしました。危険な兆候^^;
酒は、ビールは空けましたが広島の銘酒「賀茂鶴」の生貯蔵酒は、半分で止めましたよ。もったいないので。
重登山靴もヘルメットも、来週の予行演習なんです。ほんとはアイゼンピッケルワークもしたかったんですが、既にバイクの積載限界を超えていたので、断念・・・。
来週の雪山は、プロによる初心者講習会につき危険な場所には行きませんので、ぶっつけ本番で思い出します。
僕も登ってる気分になっちゃいました。
読んでいて ワクワクと嬉しくなってきます。
sekitoriさん 本当にとてもおもしろいっす!!
何と言葉にしたら良いのか・・・
書き込んだり消したり・・・・
このコメント文面作成するだけで一時間近くからかってます。
簡単にまとめると・・・・
sekitoriさん最高
zorobejiさん、こんにちは〜。コメントありがとうございます。
しっかり読んでいただいて、嬉しいです(^^)
山も人生も、楽しまないと損‼と常々思ってますんで、いつもこんな調子で登ってるんですよ。
難しい山ではそれなりに作戦を立てますが、やはり楽しくない山行はしたくないです。
zorobejiさんも、楽しく安全に山歩きを続けて下さいね!
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