【北大月作戦】稚児落し・岩殿山・百蔵山・扇山・権現山・麻生山
- GPS
- 09:36
- 距離
- 28.7km
- 登り
- 2,341m
- 下り
- 2,326m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路:浅川入口バス停-JR猿橋駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
岩殿山:下りは落葉多く滑る。のけ反ったり数m程滑走したりと体を保持するのが大変。 百蔵山:ちゃんと標識のある所から山に入りませう。 扇山:急な登りがきつい。下りは落葉が多いが、岩殿山と違って土に馴染んでいるというのか、滑らない。 権現山:約1100mの扇山から約860mの浅川峠に下った後の1300mまでの上り。足にくる。 麻生山まで:歩きやすい。 北峰:再度岩稜になる。 鋸尾根:鋸というと細かいアップダウンが予想されたが、案の定、岩が盛り上がっているところが。しかし、巻くことができる。非常に落葉が多い。深いところで二、三十センチはあるんじゃないかと思えるほど積もっている。そして通る人も少ないようなので、広場のようなところに出ると道がわかりにくくなる。ここで日が暮れたりしたら進退窮まる。 |
写真
感想
晴れの衆議院議員選挙投票日。天気が好いので投票に行く前に散歩でもするかと出かける。
中央線沿線を日帰りで電車に乗っていく時は武蔵小金井駅からというのが自分の定番となっているが、前回、南大月を歩いた時は駐輪場が無くなっているというアクシデントで始発を逃した。そのため今回は時間に余裕をもって到着。さて、改札を通ろうかと思ったら、4:30発の電車が電光掲示板に無い。何だ何だと思っていたら国立駅周辺の大規模改修で夕方まで国分寺で折り返し運転となっているのだ。
気持ちが後ろ向きの時は帰りたくなるようなアクシデントだが、「じゃあ立川から乗ればいいんだな」と立川へ向かう。立川への道はガーミンで確認。市街地でもある程度使えるのは便利だ。先の秩父でも初っ端から転倒しておいて気持ちが萎えなかったので、心にかなり余裕を持てているということなのだろう。
今回の懸念事項は、
一、投票所が閉まるまで間に合うか
二、ハンターに誤射されないか
の二点。
一については立川発となったことで出発が遅くなり帰りも遅くなることが予想されたが、それでも時間に余裕があると見ていた。二については、先月誤射事件(※)が大月であったばかりなので特に要注意だ。里山ではクマ・イノシシよりもヒトに気をつけないといかん。
(※)
平成24年11月25日、山梨県大月市大月町駒橋の山中で猟をしていた猟友会員がイノシシを狙いライフルを発砲したが命中せず、近くを登山中の東京都の女性の左太ももに流れ弾が当たって女性が大けがを負った業務上過失傷害事件。
大月駅が近づいた車窓からは外が真っ暗に見えたが、いざ駅に降り立ってみると、一月前に南大月を歩いたときに比べたら薄暗いものの歩くには申し分ない。それよりも雲のない快晴の空に関心が行く。
前回岩殿山を歩いたときには標識の無いわかりにくいところから適当に当たりをつけて山中に入った(西側の取り付きは階段の上りから始まるが、標識に従って歩いてくるのとは反対方向からも階段に来ることができる。)のだが、今回は瑞仙橋を渡って標識に従って歩く。階段から始まる山道は最初から急登気味だが少しの辛抱ですぐに展望の開けた岩の上で朝日を浴びることができる。
以後は南方と西方に展望が開けた気持ちの良い稜線歩き。暖かくなったら稚児落しの岩上でピクニックなどしても良いだろう。
稚児落しから断崖上の稜線を天神山へ向かい、その後、兜岩・鎧岩の鎖場を巡る。岩殿山は鎖のある岩場に興味を持った頃に試しに来たことがあるが、岩の上り下りの基本を固めるのに適した、良い岩場だと思う。兜岩からの下りは風化が進んでいるのか、細かい砂利があちこちに溜まって、足を動かすとパラパラ、鎖を動かすとバラバラといった感じだったので、下に人がいないことを確認して、足の置き場等に溜まった砂利を一掃してから下った。
かつて大手門があったとされる築坂から岩殿山城の敷地となる。大月駅から最短で、しかも階段を上ってこられる道のすぐ先が揚城戸跡で、この山城が天然の要害だったことが窺える。第二の関門を過ぎれば山頂の展望台は間もなくだ。城だっただけあって山頂部は東西に広い。雲ひとつ無い青空の下、富士山は雪を被って光り輝き、南大月の山稜は朝日とのコントラストで黒々と聳える。
岩殿山城はウィキペディア等を見ていただくとわかるが、武田氏に仕えた小山田氏の居城であった。織田軍が甲斐に侵攻した際、小山田信茂は武田勝頼に岩殿山城に逃れるよう勧めておきながら勝頼が逃げてきたところで裏切り、武田氏嫡流は天目山で滅亡。その後、小山田信茂は不忠であるとして息子と共に織田に処刑されましたとさ。機会主義的に立場をコロコロ変えるような奴は信用できないということですな。最近の日本でも政党ロンダリングが流行っているが、さて。
途中通ってきた稚児落しも織田軍に包囲された岩殿山城から小山田信茂の側室一行が落ち延びる際、赤子が泣きだしたので護衛の者が側室から赤子を取り上げて崖底に投げ捨てたことから稚児落しと言うそうである。小さいながら歴史の詰まった山である。城だから当然か。
岩殿山からの下りは、東側の登山口から歩く人がいないのではないかと思えるほど落葉が積もっており、下る勢いと相まって非常に滑りやすく、横向きになって一歩一歩慎重に歩く。それでも途中、2〜3m程ズシャーッと滑走し、道を飛び出してしまう。道が階段になってほっとする。
集落を抜けて、葛野川を渡り、百蔵山へ。携行飲料の減りが意外と速いため自動販売機で追加調達する。
百蔵山へは大きく分けて扇山方面からの道と、南面からの百蔵浄水場または和田美術館からの道と、今回歩いた西側からの道の三つがある。
福泉寺バス停先で右に折れ、しばらく歩くと「百蔵山→」という標識があり安心する。しかし、その先で地図上は道になっているのだが実際のところは砂防堰堤になっている箇所があり、あれ?おかしいなあと暫く行ったり来たりする。必ず迂回路があるはずだと、とりあえず地図は無視して道を先に進むと、石灯籠と石碑が並んでいる角に再び標識がある。その道は奥の涼泉寺に続いている道で、涼泉寺の脇と道路の終点付近から二つ登山道が延びていることは把握しており、道路の終点から登ることとしていた。涼泉寺手前で犬が吠えてきたと思ったら、何と後を追いかけてくるではないか。こういう時にこちらが走っては余計追いかけられると思ったのと、あまり怖い種類ではなかったのとで、後ろを注意しながら歩き続ける。結局、その犬は深くは追いかけてこなかった。
なおも道路を歩いて行くと、道路の末端に行き着く前に山へ入っていく道を発見。道標は無いが非常にしっかりした道なので、「全ての道は山頂へ通ず」とばかりに突入する。最初は道もしっかりとしていたが、だんだんと倒木が多くなり道が細くなる。一旦道を見失うが、一息ついた後、道を再確認し奥へ進む。最終的に落葉が積もった、開けた空間に出たのだが、道が不鮮明な所でこのような広場に出ると、その後、道が前に行くのか右に行くのか、はたまた左に行くのか非常にわかりづらい。が、幸い、涼泉寺からの道があると思われる稜線がすぐ目の前に見えるので、そちらの方に歩いていく。道は尾根上の本線に対して中腹を並行して進んでいくが、いいかげん歩きにくい道に嫌気が差して本線に直登する。上がったところでピンクのリボンが枝についているのを見て、これで後は楽だと安心。しかし、本線もまた倒木が多く歩くのに難儀する。それまで歩いてきた道よりはマシといった程度だ。12月も半ばというのに汗が滴り落ちて水分の消費も激しい。大間山周辺からようやく道の状態が良くなった。体力的というよりも精神的に疲れて百蔵山で長めの休憩をとる。
稚児落しでは手前の山に山体の大部分が隠れていたが、高度も上がったことでその全容を現した富士山に満足し、中央線を挟んで南側の大月山稜を後に百蔵山頂を辞する。どの山頂もそうだが、直下は急な坂だ。こちらも落葉は多いが、落葉が古いからか、人の往来が多いからか土に良くなじんでいて歩きにくいということはない。
扇山へ至る道のクライマックスは手前の大久保山への長い急な上りである。それまで他のハイカーと出会わなくても、ここで皆詰まるので一気に周囲の人が増える。「ああ、1000m級を歩いているんだなあ」と低山との違いを噛み締めながら歩き、やっとたどり着いた山頂は扇山ではなく大久保山。しかし、以後はなだらかな道を暫く歩いていけば間もなく広い扇山の山頂に至る。
山頂では昼時ということもあって中高年グループ等20名ほどがランチを広げており、私もその一隅に腰を下ろして昼食休憩。相変わらず展望は良い。
扇山から権現山へはぐっと下がった後の登りがしんどそうだ。しかし、大久保山への急登をこなした後では相対的に楽に感じるのではないかと思えた。そうはいっても鞍部から約500mののぼりである。先の急登ほどではないにせよ急なのぼりが続く。私は権現山まであとどのくらいと考えるのをやめた。その結果、歩くことに集中でき、何時の間にか高みに登っていたのである。しかし、権現山の頂上部が視界に再び入り「もう少しだ」と意識してしまってからは、非常に辛かった。権現山の頂上で最も長い大休止をとる。権現山は百蔵・扇よりも標高が高く、北・東・南に開けているため、この日一番の展望が得られたのではないかと思う。南には歩いてきた山に加え、もちろん富士山。東は相模湖などが見える。そして北方。ただ漫然と眺めていたのだが、後で確認してみたら、馴染みの深い笹尾根に三頭山、雲取山をはじめとする奥多摩の山々だった。眺める東京の山もまたよし。雲取山は最近行っていないので来年春あたりに歩いておこうかなと思う。
昼過ぎに奥まった権現山に来る人も少なく、静かな、落葉の積もった道を歩く。本日最高地点を過ぎたからにはもう大丈夫だろうと思っていたが、最近は低山ばかり歩いていた身にはアップダウンがこたえる。
そういえば、帰りのバスのことを全く考えていなかった。以前調べたときには16時台だった記憶がある。間に合うかどうかよくわからないが、とりあえず16時頃にバス停に着けば大丈夫だろう。麓までの直線距離と時刻を踏まえると、辛うじて間に合う感じである。とすると、麻生山の二つのピーク(因みに二つ目のピークの方が展望がよく富士山も見えた。)を越えた後、下山道が二つあるのをどうするか。
一つは麻生山から降りた鞍部から降りていくルートであり、もう一つは北峰を超え、鋸尾根(この名前は標識を見て知った)を下るルートである。私は『紅の豚』に出てくる空中海賊マンマユート団のボスと同様、「仲間はずれを作っちゃかわいそうだろうが」と北峰も登っておくことにした。すると、それまでとはうってかわって岩稜となり、慎重に歩かねばならなくなった。こりゃ大丈夫かいなと不安にはなったが、北峰からの展望は労力に応えるだけの素晴らしさで後悔することもなかった。「鋸尾根」の標識に、この先細かいアップダウンがあるのかと戦慄。幸いなことに落葉に隠れて踏み跡薄く、道が続いているか不安にさせる尾根ではあったが、巻き道があり、2箇所巻いた。
しかし、その後がまた厄介。落葉の海である。完全落葉した上に、辛うじて人が歩いたんだなとわかるトレースがある。それも、比較的狭い尾根上を歩いている分にはトレースが薄くても問題ないのだが、ちょっとした広場のようなところに出ると、もう道が右へ続くのか、左へ続くのか地面を目視するだけで判断するのは至難である。手にした地図を何度も確認し、下る尾根を間違えないよう慎重に歩く。尾根を間違えなければ、落葉が堆積していても、また道があるなとわかる。しかし、下る尾根を間違える人がいれば、間違った尾根にもトレースができているかも知れない。地図は必携だ。また、日没間近という状況であれば、完全に道をロストできるだろうことを保証する。完全に道をロストしたらどうすべきだろう?とりあえず前方に道が無いか斥候だろうが、暗くなってしまったら万事休す。ライトの明かりは前方を広く照らすものなら何とかなるかもしれないが。落葉を布団にして翌朝まで寝るのが良いのかもしれない。
とにかく、最大の難所は越えた。あとは落葉が何十センチも積もる急な下りだ。落葉は滑る。急な上りだと足を踏ん張るのは大変である。それなら、落葉で滑走していけばいいじゃないかと下りは勢いをつけて半ば駆け下りるような状態。しかし、落葉の下に何が埋もれているかわからないので、あまり推奨はしない。私も後半は石が露出し始めたので、また平常運転に戻った。道に石が出てくれば間もなく里に出る。
目の前に広がる小さな茶畑にほっとする。お世話になった山に手を振って別れを告げ、最後にバス停へ向かう途中の自動販売機で買ったコーラをがぶ飲みして本日の山行は無事に終わった。
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