7歳児とゆくいにしえの中道往還と子抱き富士・三方分山
- GPS
- 05:04
- 距離
- 5.9km
- 登り
- 584m
- 下り
- 588m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
コロナのこわい東京をはなれ、山梨県の富士河口湖町にステイした我々。
富士五湖周辺には、魅力的なおやまがたくさんある。近くに宿をとっておけば、朝早くからスタートできる=ちょっとたいへんなおやまでも登れる、とふんでいた。
でもお宿が心地よすぎて早起きも早出もできませんでした!!
というわけで今回は三方分山に登ることに。精進集落下の湖畔に車をとめる。
湖畔なので遊び回りたい息子をなだめて山に連れ去る。今はやめてしまったと思われる食堂「かどや」さんのところから山に進む。
道はなんとタイル敷き。これは中道往還、甲州と駿河を最短距離で結ぶ重要な古道なのだ。道の両脇には古い民家が並び、諏訪神社には大木の杉がある。おそらくは峠越えの前、旅人が泊まった宿場だったのだろう。
ただちょっとひと気がない。調べてみたところ、土石流災害を避けるために集落ごと精進湖の南に移転したのだという。どうりで古い家がたくさん残っているわけだ。なかには朽ちかけて中が見えている家もあり、息子は興味深そうにしていた。
民家がなくなり道が土になって、いよいよ古道らしくなる。石垣にふちどられ沢の横をジグザグに進んでいく中道往還、ここを甲州名物となる煮貝が駿河から運ばれていったかと思うと感慨深い。あと徳川家康も甲州入りのときに通っているが、歴史に1mmも興味がない妻からするとやはりここは煮貝の道だろう。
そんな歴史ある道だけれど、砂防ダムができていて一部ルートが変わっている。精進集落の荒れかたといい、歴史的なものがここはあまり守られていない印象だ。
さて息子はというと、この4日のうち3日やまのぼりしていることもあってか、いつもにまして足が進まない。妻が「今日は頂上を目指さなくてもいいことにしよう」という。この調子だとしかたないね……息子は枝で妻とチャンバラを始めた。まあ楽しくいこう。
ゆっくり進んで、道の曲がり角でひとやすみ。コーヒーやココアを飲んでいたら、息子が忍者の修行を始めた。道を切り拓きながら山肌を登る訓練をしている。岩と木の根に足をかけながら、うまいこと通りづらい斜面をすりぬけて戻ってきた。
これで息子のエンジンがかかる。忍者だから古い道をペースよく登っていくのだ。それにしてもこの中道往還、主要道のわりになかなかの坂道である。甲州街道の小仏峠の何倍もきつい。こんなきついところを本当におさむらいや商人たちは歩いたのだろうか。歩いたのなら、どんな草鞋を履いたのだろうか。想像しながら登っていく。
坂がゆるくなり、峠に到着。その名を女坂、あるいは阿難坂という。女坂というとよく男坂とセットで「ゆるいほうの坂」をさすが、ここでは違った。その昔、臨月の女性がここを通りかかり、産気づいてしまった。そのまま出産したが母子とも助からなかった、という話に基づくそうだ。なんて悲しい話!
臨月なのにこんなきつい坂を通らねばならなかったのにはどんな理由があったのだろう。息子は「ひとやすみしようよ」というが、とてもここでココアをいただく気にならない。すっかり字などが消えた石碑に軽く手を合わせて山頂に向かう。
峠からはゆったりとした尾根道。ところどころガッツリ削られて穴になっているが、ロープで囲われていたりするので大丈夫。
と思っていたら、かなり近くにとんがった山が見えてきた。これは急登っぽいかな、と思ってここでさっきスキップしたお休みを入れる。富士山が木々のあいだにのぞいている、こんな山道で飲むあったかい紅茶は本当においしい。
さあ坂にとりかかろう。すごい急坂だが、道は直登ではなくトラバースになっている。道の勾配はさほどでもない。が、すごい急坂をナナメに通るので、コケたら即、奈落である。しかも道が細くなっている。息子はニコニコ進むが妻がおびえていた。
折り返しての斜行はもう少し楽だった。尾根を回り込むように日向に出ると、キツツキのドラミング音。見ると、コゲラが枝をつついていた。
少し進むと道はまた尾根に乗る。ほとんど平坦な道、山頂が近いことがわかる。草の上には雪が少し残っていた。
林のあいだからは富士山、逆方向には甲府盆地が見える。走るようにして進むと広場のようなところに出た。三方分山、山頂。
息子はウキウキで山頂標に抱きつくなどしている。しかし山頂は林になっていてあまり眺望がよくない。あれ、と思ったが、富士山のほうがあいている。そこに進むと、
めっちゃめちゃ展望!!!
大室山を前に従えたいわゆる子抱き富士が、左右の裾野と青空のなかにドーン! ああ、これは、すごい。これを見るための山なんだな。
雄大な富士山を見ながら、ご飯を食べよう。今日のおにぎりはタコミートとチーズをいれたタコにぎり、それとチーズウインナー。
インスタント勢は息子にはフォー、妻は鶏白湯肉団子スープ、僕には豚カツオだしそばが与えられた。平時から大好きなベトナムのフォーが当たった息子は大喜び。実際、インスタントにしては本当においしいものだった。
さて、くだりましょう。ピストンは面白くないのと急斜面トラバースを妻が怖がったので、精進峠経由にしよう。あっちだ
と方向が決まった瞬間に走り出す息子。ウサギかよ! 必死で追いかける父母。
尾根道といえど、というか尾根道ゆえに、けっこうアップダウンがある。小ピークの岩の上に小さな祠型をした金属の造形物があったが、おそらくこれが精進山なのだろう。しかし目もくれずに息子は前進してゆく。
よく見ると、息子は岩がちの斜面では走っているわけではない。単におそろしく巧みにステップを刻んで岩を根を素早く踏み越えているのだ。体幹がまったくブレない。いったいいつのまにそんな技術を?
けっこうな速さで尾根道を踏破し、息子は精進峠で座って待っていた。鉄の棒が立っていて、巻かれたテープに小さく「精進峠」と書いてある。ここから降下するようだ。妻が追いついたとみるや、息子はスタートを切る。休ませろよ。
精進峠からのくだりはけっこうな急斜面。九十九折のトレースが細かく刻まれてる。斜行のときには斜度はあまりないが、曲がるときに下を向かなければいけない。しかも晴天続きで土はザラザラに乾いている。冬なので下草はほとんどない。つまり、気を抜くとすべる。すべりまちがえると、すべりおちる。
ここを息子はなんの苦もなくくだってゆく。いやーこれはさすがにとうちゃんもちょっと怖いんだが……なんの変哲もない山道のようにすたすたおりていけるのは、スピードを制御する技術をもっているからだ。すごいな息子。
しかして妻は、想像どおりではあるが泣きそう。「こっちは楽だって言っとったやろ」 はい、ええまあそうでしたっけね。あまり記憶にございませんが。
道の先から「ママよかったね、こわいとこおわったよ」と声がする。彼のいうとおり斜度がゆるみ、一気に楽になった。沢がつくった平地のようなところに出る。
と思ったらでっかい砂防ダムがあり、それを横から乗り越えるように道ができている。正直に言おう、すげー邪魔!(しかたないんだけど)
ここを越えたらもうふもと。集落跡にできたと思われるオートキャンプ場を抜けると精進湖畔だ。
ここは富士山と大室山がうまく重なるところで、精進湖のモニュメントがある。ので、とりあえず写真をとっておく。
ここから精進集落の駐車場まで、県道には歩道がないのでちょっと危ない。湖畔を歩いていくことにする。
湖にはワカサギかなにかを釣っているボートがちらほら。ボートのないところは湖面が静かで、ダブル富士を見ることができた。そしてそんなところにでかい石を投げ込む息子! ほどほどにしてね!
バウムクーヘンのような多層の岩があったので息子に渡すとそれも投げてしまった。今のはバウムクーヘンの岩だったんだよ、と言うとしまった!という顔をして「どうしようなげちゃった」と暗い顔をした。かわいいやつめ、そんな石どうでもいいやつだよ。
ほどなく駐車場に到着。ずっと富士山に見守られる山行だったけど、歴史も感じられて楽しかった。そして息子はくだりのトレランぶりにさらに磨きをかけた。三が日からこんな具合なので、今年はてんこ盛りの1年になりそうだ。
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