下の廊下
- GPS
- 12:28
- 距離
- 30.4km
- 登り
- 5,516m
- 下り
- 6,190m
コースタイム
- 山行
- 7:54
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 8:21
天候 | 初日:晴れ 二日目:雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
整備状況は問題なし |
写真
感想
電気バスのプラットフォームへの通路は、早朝は閉鎖されているので、ダム側から入り口に入って階段には上がらず、路面に侵入禁止の表示がある分岐に進む。
少し行くと日電歩道の案内板があり、プラットフォームに沿っていくと、トイレと洗い場のある日電歩道の出口に着く。車の轍がある広い未舗装道路を少しいくと、登山口になる。急なしばらくの下りでダムの底にたどり着く。木橋で黒部川の左岸に渡ると仙人ダム手前の東谷吊橋を渡るまで、右岸を歩く事はない。内蔵助谷出会までは概ね緩やかな土道だが、近づくにつれ、木道や手摺番線が現れる。内蔵助谷の分岐は小さな標識(?)のようなものだけで、間違いやすいと感じた。たまたますぐ前に先行者がいたので、外すことはなかったが、それまでの道がゆるい登り基調で分岐から内蔵助谷方面はそのまま登り基調、下の廊下はガレた下りになる。このガレた下りが河床に出るための側道か本道なのかの見極めが付きづらい。過去の阿曽原小屋の投稿ではもっと明瞭な看板があるようだけれど、それには気づかなかった。
一旦河原に下り、その後巨石帯を登る。その後いよいよ険悪な道となり、大ヘツリ。急な木製階段を登り、短い木製桟道を経て再び木製階段で急降下。足場が狭く高度感もあってかなり恐ろしい。その後荒々しく岩を削ったコの字の道をカーブを描きながら回り込む。
撤退の判断は、遅くても別山谷の前までにしたい。それ以降で「まずい」となった場合、進退窮まる可能性が高い。
核心部は内蔵助谷出合から十字峽。特に黒部別山谷出合の前後。狭隘な岩の水平歩道や、木道桟橋が連続する。ここで対向者と出会うと、どちらかが安全な場所まで引き返さないといけない。またこの辺りは丁度コースの中間付近で、対向者に出会う確率は高い。
十字峡の吊橋の手前でテントが2,3張りはできそうな広場に至る(勿論幕営禁止)。奥にある巨岩に赤い矢印がペンキ書きされている。矢印の通りに進むと、おそらく十字峡の好展望地だと思う。(無視して吊橋に進んだ結果、十字峡を楽しむ事が出来なかった。再来を誓う)
十字峽を過ぎると道幅は広くなり、細かなアップダウンも影を潜め、歩き易い、平らな道になる。相変わらず、手摺番線は連続するが、すれ違いに難儀するような狭隘さはなくなる。但し渡渉や、滝の中をロープで伝う、滝の下を歩く等の水回りのイベントが増える。滝といえるかは微妙なサイズだけれども。
対岸に送電線を見るようになると、東谷吊橋まで急な下り。しばらく未舗装車道を歩くと仙人ダムの堰堤を渡り、再び左岸。ダム施設に入りトロッコを渡る。硫黄の匂いとムッとした温風が身を包み、ここが高熱隧道であることを想起させる。施設を出ると関電人見平宿舎を左手に見ながら進むと、急な登り。鉄塔巡視路への分岐(通行止め)まで来ると再び水平歩道。最上部の権現峠はトンネルで潜り、しばらく歩くと阿曽原温泉への下りとなる。ぬかるんで滑り易く難儀する。この日は午後から雨予報だったが、テントを張り終えるまでは快晴だった。(その後降り出す)
テント場を横切って阿曽原谷を木桟橋で渡ると、水平歩道への登りになる。人見宿舎からの登りほどきつくはない。暫くはゆったりした水平歩道だが、次第に傾斜の急な斜面のへつりとなる。ただ別山谷前後を知っているだけに、大分感覚が麻痺してくる。折尾谷までは結構長い。ダイナミックな折尾大滝を越えると、短いトンネル。入って数段階段を下るが、暗くて見えないので頭をゴチン。40分程進んで大太鼓。この辺は水平歩道らしい景観が見える。大太鼓は見た目の派手さに対し、道幅は他と比べてやや広く、安定しているので、恐怖感はそれほどでもない。大太鼓を過ぎて10分ほどで眼前に志合谷の険悪なデブリが目に入る。志合谷トンネルは中で歪曲し、足元も深いところで10センチ以上の水たまりになっている。結構長い、素掘りの荒々しいトンネルだ。ヘッドランプに照らされて、輝いている岩が不思議だ。花崗岩かなにかなのだろうか。
志合谷前後は谷を隔てて、水平に穿たれた歩道の軌跡がよく分かる。
志合谷を過ぎると、小さなアップダウンが続き、短いトンネルを過ぎて蜆谷。うんざりするほど歩き、鉄塔を二つほど過ぎると欅平への下り。水平歩道終点近くは桟道が連続し、欅平から登ってくる人にとっては、いきなりの洗礼になるのかな。展望台までは滑り易い急坂。そこから下は整備されたハイキングコース。思った以上に長いコースだった。ちなみに鉄塔上部で野生のニホンザルに遭遇した。また雨があられに変わるとき急に音が変わるので、「熊か!」と驚いて、その場で手をパンと叩く事もあった。(熊鈴は持っていたが、そこそこ先行者もいたので使わなかった)
全体を歩いてみての感想としては、極端に技術を要求するわけでもなければ、体力を必要とするというわけでもない。ただ両者のバランスは絶妙で、どっちも、ある程度のレベルを習得していないと難しい。危険な不整地を、長い時間、緊張感を維持しながら歩き続ける技量が必要になる。ミスは即命取りになるし、一度入山してしまえばエスケープは存在しない。山の総合力が求められるとおもう。今回はテント山行だったが、無駄な荷物は極力排除して臨んだ。ただザックがかなり古いもの(Arc’teryx Khamsin50の初期モデル)を使ったため、身体への締まりが悪く、肩に対する負担が大きくて、ずっと肩の痛みに耐えながらの山行となった。
見通しの良い岩場の高度感のある水平歩道は、誰でも気をつけると思うが、このルートの怖いところは、危険を感じない様な、草付きの道が、実は路肩の先が断崖で、細心の注意で歩かないといけないところだと思う。そういう場所では手摺り番線もないことが多いので、気も緩む様に感じた。
二日目は朝方だけ雨という天気予報が外れて、終始冷たい雨で、時折あられがパラパラと舞う。手先が悴んで言うことを効かなく、ペースも落ち気味だった。お陰で水平歩道はあまり楽しめず、どちらかと言えば拷問モードだった。何より寒かったのは、宇奈月までのトロッコで、風晒しの中一時間半は兎に角辛かった。
また、阿曽原のテン場は平日にもかかわらず人でごった返し、104人も利用したそうだ。感じでは50張はいうに超えるテントが、狭いスペースにごった返していた。私がテントを張った頃は5張りくらい。くろよんのテン場が既に混み合っていたので、ある程度増えるとは思ったが、そんなに増えるとは思わなかった。翌日も水平歩道終点あたりから続々対向者とすれ違い、混むだろうなと思っていたら、その日は184人だったとか。
しかし、全コース通じて、コースの整備が凄まじく、整備作業を行なっている業者や阿曽原小屋の皆さんにはただただ頭が下がる。そもそも古の道を手入れしたわけではなく、人間の意志(欲望?)の力で開拓された道であることを考えると、感慨深いものがある。あの険しい道を、危険な想いをして、毎年手入れしているかと思うと。
既に整備は完了しているにもかかわらず、コースの所々に番線や木道用の丸太が、場合によっては猫車まで保管されている場所があった。トンネルの中や、壁に洞穴状の穴が掘られて、その中に。雪崩などが起きても大丈夫なように。おそらくは非常時や翌年持ち越し用に。あの険しい道を、あれらを現場まで運ぶのだって大変だろうに
ちなみに、前夜泊したロッジくろよんはとても感じが悪かった(私が何か気に触ることをしたのかも知れないが、、)。一方で阿曽原の小屋はとても感じが良かった。小屋のホームページでしょっちゅう怒鳴っているイメージになっているオヤジさんとは違って(笑)
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