踊子歩道(浄蓮の滝〜湯ヶ野)
- GPS
- 06:37
- 距離
- 20.6km
- 登り
- 602m
- 下り
- 868m
コースタイム
- 山行
- 6:03
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 6:37
天候 | 晴れ、少し花曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
ー私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。(川端康成『伊豆の踊子』より)
ことこと笑うって、どんな感じでしょう。そんなことを考えながらこだまに乗り込んだのが土曜日の朝。
行先は、踊子歩道です。三島で伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺からバスで浄蓮の滝へ。東京駅から2時間半ほどで到着。
浄蓮の滝そばの道の駅で早めのお昼にします。わさび丼、添えられた生わさびを同行人も私も一心不乱におろす。ツーンと鼻に抜ける刺激‥盛大にむせました。過ぎたるは及ばざるが如し。
涙目で店を出て(いえ、美味しかったですよ)階段を降りて浄蓮の滝を眺めます。
なんでもこの滝には、女郎蜘蛛の化身(もちろん美女)が棲むという伝説があるそうな。石川さゆりの歌詞の碑が置かれ、いかにもな観光地ではありますが、そんな伝説を想起させるのも納得なほどに美しい滝です。
奥にわさび田が広がり、その手前の茶屋でわさびアイスをいただきます。「アイス一つ」頼んだところでお店の方がおろし金でわさびをおろしはじめたのには驚きました。
同行人は「わさび団子二本」‥一本は私の分だよねとつまんだら、二本とも食べるつもりやったんや!と言われる。ごうつく。なぜ私はこの人と毎週山行を重ねるのか?疑問に思う瞬間です。
国道414号と並行して通る道が、旧道「踊子歩道」。しばらくは杉の森を進み、やがて雑木林に変化していきます。
道沿いには清洌な小川が流れ、所々にわさび田があります。
途中、井上靖の文学碑を発見。「猟銃」の一節が掘られています。「愛することを希むや、愛されることを希むや」というくだりは、この短編の一節でしたね。
ふっと、芳香が鼻先をかすめます。顔を上げると、ミツマタが黄色い花を咲かせています。まだ冬枯れの木々が目立つ中、確実に春がそこに来ていることを教えてくれます。
全行程の中盤くらいで、旧天城トンネルが現れます。トンネルではなく、隧道と呼ぶのがしっくりくる佇まい。
ところで、この道を行く人はトイレが少ないことを留意された方が良さそうです。天城トンネル前にトイレがありますが、3月はまだ冬季閉鎖しています。
予報通りのポカポカ陽気ですが、トンネルの中は氷室のようにひんやり。声がよく響くのをいいことに、同行人は天城越えを熱唱します。後ろに人がいなくて良かった。
思いの外長かったトンネルを抜けて進むと寒天橋。これも、天城越えの歌詞に出てきますね。
ここまで踊子歩道は国道の左側を通ってきましたが、宗太郎園地の手前で国道の向こう側に渡らなければなりません。ですが、横断歩道なんてないカーブ、車はびゅんびゅん飛ばしてきます。用心して渡ります。
再びわさび田が広がります。「わさび検定」なる看板を見つけました。「序の口編」とあるけど、さらに難易度高い看板も作ったのかな?
宗太郎杉並木のあたりで、足の痛みが出てきました。しかも旧天城トンネルで肩透かしをくらった尿意がいよいよ限界‥登尾公衆トイレを見つけた時は、足の痛みも忘れて駆け出しました。
やがて、猿田淵の道標が現れます。「旅が好きで日本中くまなく歩き、どこへでも連れて行ってくれる神様」猿田彦命に由来しているとのこと。あやかりたいですね。これからも、知らない景色を追い求めて山行を重ねたいです。万年初心者だけど。
河津七滝へと続く階段はかなりの下りですが、しっかり整備された木の階段で疲れた足でも快適です。
次々現れる滝はそれぞれに個性があり、柱状節理独特の岩の表情も相まって見応えがあります。
滝を過ぎたあたりから、河津桜が多く目につきます。早咲きの桜だからもう時期は過ぎたはずだけど、多くの木々が鮮やかな花を枝に留め楽しませてくれました。
菜の花も一斉に咲いて、明るい黄色と艶やかな桃色の共演に見惚れます。「綺麗だね、綺麗だね」感動した時はボキャブラリーが貧困になります。
たわわに実るみかんの木も多く目につきます。桜とみかんと菜の花と。日も暮れかけてきましたが、これらの景色に慰められて湯ヶ野までラストスパート。
泊まるは福田家さん。お宿の燈が見えた時の安堵感といったら。さほどの勾配はないとはいえ、休憩もなく20kmを歩き通すのは私たちには大仕事でした。
川端康成が泊まったという風情あるお部屋と、昭和レトロなお湯で体を休めます。
お宿のおじさんには「‥浄蓮の滝からずっと歩いてらしたんですか、皆さん途中でバスに乗るんですけどねぇ」と言われました。酔狂だったのかな?
翌日は近隣を散策し、河津からサフィール踊り子で帰路に就きました。車窓から海を眺めながらの食事はちょっと贅沢な気分になれます。
伊豆の踊子の「私」ではないけれど、心に清水を感じた週末でした。ことこと笑い転げた道行でした。
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