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Yamareco

記録ID: 4164741
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ハイキング
伊豆・愛鷹

それが踊子だった 私はことことと笑った。子供なんだ・・ チャリレコ★長岡ー修善寺ー湯ヶ島ー天城ー湯ヶ野ー蓮台寺ー下田

2022年04月10日(日) [日帰り]
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GPS
24:00
距離
85.1km
登り
1,756m
下り
1,797m

コースタイム

行き:JR東海・東海道本線函南駅まで輪行
8:00 函南駅ー9:00修善寺温泉郷・修禅寺散策9:10ー10:10湯ケ島温泉郷散策10:20ー10:40浄蓮の滝散策10:50ー11:20天城旧道に入るー11:40天城山隧道11:50ー12:20河津七滝散策ー12:40湯ケ野温泉郷散策(♨踊子の足湯入浴)13:10ー14:00下田港
帰り:伊豆急行・伊豆急下田から輪行帰宅
天候 うららか
過去天気図(気象庁) 2022年04月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 自転車
行き:JR東海・東海道本線函南駅まで輪行
帰り:伊豆急行・伊豆急下田から輪行帰宅

全線自転車を使用
☆8:00函南駅
☆沼津アルプス
☆伊豆長岡温泉郷
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☆伊豆長岡温泉郷
☆牧野郷駅
☆修善寺
☆独鈷の湯
☆9:00 修禅寺
☆修禅寺
☆湯ヶ島温泉郷
☆湯ヶ島温泉郷
☆浄蓮の滝
☆11:00 天城
道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ
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道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ
雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
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雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。
私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺飛白の着物に袴をはき、学生カバンを肩にかけていた。
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私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺飛白の着物に袴をはき、学生カバンを肩にかけていた。
一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。修善寺温泉に一夜泊まり、湯ヶ島温泉に二夜泊まり、そして朴歯の高下駄で天城を登って来たのだった。
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一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。修善寺温泉に一夜泊まり、湯ヶ島温泉に二夜泊まり、そして朴歯の高下駄で天城を登って来たのだった。
私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。ようやく峠の北口の茶屋にたどり着いてほっとすると同時に、私はその入口で立ちすくんでしまった。
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私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。ようやく峠の北口の茶屋にたどり着いてほっとすると同時に、私はその入口で立ちすくんでしまった。
そこに旅芸人の一行が休んでいたのだ。
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そこに旅芸人の一行が休んでいたのだ。
小一時間経つと、旅芸人たちが出立つらしい物音が聞こえて来た。
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小一時間経つと、旅芸人たちが出立つらしい物音が聞こえて来た。
あんな者、どこで泊まるやらわかるものでございますか、旦那様。お客があればあり次第、どこにだって泊まるんでございますよ。今夜の宿のあてなんぞございますものか。
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あんな者、どこで泊まるやらわかるものでございますか、旦那様。お客があればあり次第、どこにだって泊まるんでございますよ。今夜の宿のあてなんぞございますものか。
はなはだしい軽べつを含んだ婆さんの言葉が、それならば、踊子を今夜は私の部屋に泊まらせるのだ、と思ったほど私をあおり立てた。
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はなはだしい軽べつを含んだ婆さんの言葉が、それならば、踊子を今夜は私の部屋に泊まらせるのだ、と思ったほど私をあおり立てた。
暗いトンネルに入ると、冷たい雫がぽたぽた落ちていた。
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暗いトンネルに入ると、冷たい雫がぽたぽた落ちていた。
南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた。
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南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた。
六町と行かないうちに私は彼らの一行に追いついた。
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六町と行かないうちに私は彼らの一行に追いついた。
踊子は十七くらいに見えた。私にはわからない古風の不思議な形に大きく髪を結っていた。それが卵型のりりしい顔を非常に小さく見せながらも、美しく調和していた。髪を豊かに誇張して描いた、稗史的な娘の絵姿のような感じだった。
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踊子は十七くらいに見えた。私にはわからない古風の不思議な形に大きく髪を結っていた。それが卵型のりりしい顔を非常に小さく見せながらも、美しく調和していた。髪を豊かに誇張して描いた、稗史的な娘の絵姿のような感じだった。
「高等学校の学生さんよ。」と、上の娘が踊子にささやいた。
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「高等学校の学生さんよ。」と、上の娘が踊子にささやいた。
一行は大島の波浮の港の人たちだった。春に島を出てから旅を続けているのだが、寒くなるし、冬の用意はして来ないので、下田に十日ほどいて伊東温泉から島へ帰るのだと言った。
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一行は大島の波浮の港の人たちだった。春に島を出てから旅を続けているのだが、寒くなるし、冬の用意はして来ないので、下田に十日ほどいて伊東温泉から島へ帰るのだと言った。
大島と聞くと私は一層詩を感じて、また踊子の美しい髪を眺めた。
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大島と聞くと私は一層詩を感じて、また踊子の美しい髪を眺めた。
「学生さんがたくさん泳ぎに来るね。」踊子が連れの女に言った。
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「学生さんがたくさん泳ぎに来るね。」踊子が連れの女に言った。
「夏でしょう。」と、私がふり向くと、踊子はどぎまぎして、
「冬でも・・・・。」と、小声で答えたように思われた。
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「夏でしょう。」と、私がふり向くと、踊子はどぎまぎして、
「冬でも・・・・。」と、小声で答えたように思われた。
湯ヶ野までは河津川の渓谷に沿うて三里余りの下りだった
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湯ヶ野までは河津川の渓谷に沿うて三里余りの下りだった
私は下田までいっしょに旅をしたいと思い切って言った。それは、それは。旅は道連れ、世は情。私たちのようなつまらない者でも、ご退屈しのぎにはなりますよ。
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私は下田までいっしょに旅をしたいと思い切って言った。それは、それは。旅は道連れ、世は情。私たちのようなつまらない者でも、ご退屈しのぎにはなりますよ。
一時間ほど休んでから、男が私を別の温泉宿へ案内してくれた。それまでは私も芸人たちと同じ木賃宿に泊まることとばかり思っていたのだった。
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一時間ほど休んでから、男が私を別の温泉宿へ案内してくれた。それまでは私も芸人たちと同じ木賃宿に泊まることとばかり思っていたのだった。
小川のほとりにある共同湯の横の橋を渡った。橋の向こうは温泉宿の庭だった。
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小川のほとりにある共同湯の横の橋を渡った。橋の向こうは温泉宿の庭だった。
湯から上がると私はすぐに昼飯を食べた。湯ヶ島を朝の八時に出たのだったが、その時はまだ三時前だった。
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湯から上がると私はすぐに昼飯を食べた。湯ヶ島を朝の八時に出たのだったが、その時はまだ三時前だった。
男が帰りかけに、庭から私を見上げてあいさつをした。
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男が帰りかけに、庭から私を見上げてあいさつをした。
あくる朝の九時過ぎに、もう男が私の宿に訪ねて来た。起きたばかりの私は彼を誘って湯に行った。美しく晴れ渡った南伊豆の小春日和で、水かさの増した小川が湯殿の下に暖く日を受けていた。
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あくる朝の九時過ぎに、もう男が私の宿に訪ねて来た。起きたばかりの私は彼を誘って湯に行った。美しく晴れ渡った南伊豆の小春日和で、水かさの増した小川が湯殿の下に暖く日を受けていた。
「向こうのお湯にあいつらが来ています。ーほれ、こちらを見つけたと見えて笑っていやがる。」
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「向こうのお湯にあいつらが来ています。ーほれ、こちらを見つけたと見えて笑っていやがる。」
私は川向こうの共同湯のほうを見た。
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私は川向こうの共同湯のほうを見た。
湯気の中に七八人の裸體がぽんやり浮かんでいた。
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湯気の中に七八人の裸體がぽんやり浮かんでいた。
突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場のとっぱなに川岸へ飛びおりそうな格好で立ち、両手を一ぱいに伸ばして何か叫んでいる。手拭もない真裸だ。
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突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場のとっぱなに川岸へ飛びおりそうな格好で立ち、両手を一ぱいに伸ばして何か叫んでいる。手拭もない真裸だ。
それが踊子だった。若桐のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。
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それが踊子だった。若桐のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。
子供なんだ。私たちを見つけ喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先きで背いっぱいに伸び上がるほどに子供なんだ。
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子供なんだ。私たちを見つけ喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先きで背いっぱいに伸び上がるほどに子供なんだ。
私は朗らかな喜びでことこと笑い続けた。頭がぬぐわれたように澄んで来た。
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私は朗らかな喜びでことこと笑い続けた。頭がぬぐわれたように澄んで来た。
ああ、お月さま。ー明日は下田、うれしいな。 芸人たちはそれぞれに天城を越えた時と同じ荷物を持った。湯ヶ野を出はずれると、また山にはいった。
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ああ、お月さま。ー明日は下田、うれしいな。 芸人たちはそれぞれに天城を越えた時と同じ荷物を持った。湯ヶ野を出はずれると、また山にはいった。
「いい人ね。」
「それはそう、いい人らしい。」
「ほんとにいい人ね。いい人はいいね。」
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「いい人ね。」
「それはそう、いい人らしい。」
「ほんとにいい人ね。いい人はいいね。」
私たちは朝日のほうを眺めた。河津川の行く手に河津の浜が明るく開けていた。「あれが大島なんですね。」
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私たちは朝日のほうを眺めた。河津川の行く手に河津の浜が明るく開けていた。「あれが大島なんですね。」
二十歳の私は自分の性質が孤児根性でゆがんでいるときびしい反省を重ね、その息苦しいゆううつに堪えきれないで伊豆の旅に出て来ているのだった。
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二十歳の私は自分の性質が孤児根性でゆがんでいるときびしい反省を重ね、その息苦しいゆううつに堪えきれないで伊豆の旅に出て来ているのだった。
山々の明るいのは下田の海が近づいたからだった
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山々の明るいのは下田の海が近づいたからだった
途中、ところどころの村の入口に立て札があった。
物ごい旅芸人村に入るべからず。
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途中、ところどころの村の入口に立て札があった。
物ごい旅芸人村に入るべからず。
私は太鼓をさげてみた。「おや、重いんだな。」「それはあなたの思っているより重いわ。あなたのカバンより重いわ。」 と踊子が笑った。
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私は太鼓をさげてみた。「おや、重いんだな。」「それはあなたの思っているより重いわ。あなたのカバンより重いわ。」 と踊子が笑った。
芸人たちは同じ宿の人々とにぎやかにあいさつをかわしていた。
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芸人たちは同じ宿の人々とにぎやかにあいさつをかわしていた。
栄吉が船の切符とはしけ券とを買いに行った間に、私はいろいろ話しかけて見たが、踊子は掘割が海に入るところをじっと見おろしたまま一言も言わなかった。
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栄吉が船の切符とはしけ券とを買いに行った間に、私はいろいろ話しかけて見たが、踊子は掘割が海に入るところをじっと見おろしたまま一言も言わなかった。
乗船場に近づくと、海ぎわにうずくまっている踊子の姿が私の胸に飛び込んだ。ずっと遠ざかってから踊子が白いものを振り始めた。
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乗船場に近づくと、海ぎわにうずくまっている踊子の姿が私の胸に飛び込んだ。ずっと遠ざかってから踊子が白いものを振り始めた。
相模灘は波が高かった。「何かご不幸でもおありになったのですか。」「いいえ、今人に別れて来たんです。」私は非常にすなおに言った。泣いているのを見られても平気だった
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相模灘は波が高かった。「何かご不幸でもおありになったのですか。」「いいえ、今人に別れて来たんです。」私は非常にすなおに言った。泣いているのを見られても平気だった
踊子に別れたのは遠い昔であるような気持ちだった。
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踊子に別れたのは遠い昔であるような気持ちだった。
私は何も考えていなかった。ただすがすがしい満足の中に静かに眠っているようだった。
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私は何も考えていなかった。ただすがすがしい満足の中に静かに眠っているようだった。
私は涙を出任せにしていた。頭が澄んだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、そのあとには何も残らないような甘い快さだった。
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私は涙を出任せにしていた。頭が澄んだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、そのあとには何も残らないような甘い快さだった。

装備

個人装備
ロードレーサー+SPDシューズ(歩ける自転車靴)

感想

 小説のトンネルに入る日永かな  ほの香
 かの頃は自動車はない春の夢  ほの香
 踊子の巡るお座敷春夕焼  ほの香
 踊子は子供なりけり鳥雲に  ほの香
 湯ヶ島や湯宿の垣に桃の花  ほの香
 ブロンズの踊子の指リラの花  ほの香
 大島を大きく暈し春がすみ  ほの香
 踊子の櫛や鼓や鳥雲に  ほの香
 下田には下田の歴史鳥雲に  ほの香
 短編を風がめくつて伊豆は春  ほの香

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コメント

Honoca さん

素敵なレコです。踊り子の道巡ってみたいと思っていましたので、憑依同行ありがとうございました。
チャリオ(orコ?)さんおめし替えですか?新緑に映え映えです。d(^_^o)

「短編を風がめくって伊豆は春」 お陰様で堪能。 「小説のトンネルに入る日永かな」色々と染みます。

そういえば藤沢駅近くのカトリック教会がスマホ持った人で賑わってました。何やらポケモン捕獲者達らしく別の意味でも聖地化しているようですね。
2022/4/14 15:58
obanyanさん
次の日曜は復活祭です、クリスマスと違い変動制なので毎年変わります
ポケモンは解りませんが今日は聖金曜日でイエズスが処刑された日なので少々祈りました

短編とエッセイとどっちにしようかと迷いましたよw
2022/4/15 19:45
かなり酔っているので返信は明日書きますんw
おいら的にも充実したので呑みすぎましたー
2022/4/14 21:34
今晩はです。
ほろ酔いはいいですが泥酔はいけませんww

「伊豆の踊子」この短編は一時間もあれば読めてしまうので電車で読むのにも丁度いいw
読むたびに「伊豆の見どころ」のごとく美しい言葉が散りばめられている。
その美しさの中でブルジョアVS蔑まされた人の対比は、現代の観光地殺人「衝撃」ドラマにはない素朴な展開で大変気に入っています。

俳句の鑑賞もありがとうございました
ほろ酔いの時にいい句ができる気がします
2022/4/15 19:35
返信コメントの時系列が変(;^_^A
2022/4/15 19:46
プロフィール画像
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