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Yamareco

記録ID: 43064
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
札幌近郊

狭薄山・空沼岳〜万計沢コース〜

1976年05月01日(土) ~ 1976年05月03日(月)
 - 拍手
kenn その他5人
GPS
56:00
距離
31.6km
登り
1,647m
下り
1,636m

コースタイム

【5月1日】札幌中央バスターミナル10:25-11:10空沼二股-11:37登山口13:00-15:20万計沼(空沼小屋)
【5月2日】空沼小屋8:10-9:10真簾沼-11:49狭薄山頂上13:15-14:40真簾沼15:15-15:45空沼小屋-16:30キャンプサイト
【5月3日】キャンプサイト7:25-7:55真簾沼8:00-8:40空沼岳山頂9:05-9:36真簾沼9:50-10:10キャンプサイト12:45-13:40丸木橋14:00-14:10登山口14:35-15:45大通-16:25部室
アクセス
利用交通機関:
バス
狭薄山を目指して、氷結した真簾沼上を行く
2009年12月21日 01:43撮影
12/21 1:43
狭薄山を目指して、氷結した真簾沼上を行く
狭薄山がその白い姿を現す
2009年12月21日 01:42撮影
12/21 1:42
狭薄山がその白い姿を現す
狭薄山
2009年12月21日 01:42撮影
12/21 1:42
狭薄山
狭薄山からの漁岳(右)と恵庭岳(左奥)
2009年12月21日 01:41撮影
12/21 1:41
狭薄山からの漁岳(右)と恵庭岳(左奥)
狭薄山からの札幌岳
2009年12月21日 01:40撮影
12/21 1:40
狭薄山からの札幌岳
あほな格好の私
2009年12月21日 01:39撮影
12/21 1:39
あほな格好の私

感想

ぜひ登ってみたいと思っていた狭薄山に、登ることができたGW山行。
好天に恵まれて暑いぐらいで、ランニング姿で登ったりした。

■狭薄・空沼

僕はひとり黙々と雨の中を万計沼に向かって登っていた。ポンチョのフードは破れて使い物にならないので、頭はびしょぬれだ。

雨は我々が空沼二股のバス停から登山口に向かっている時、突然降りだしたのだった。我々は登山口の倒れかかったバスの待合所へ逃げ込んだ。そして対策を考えた。
「もう帰えろう」誰かが言った。みんなそう思った。しかし、これはだめだ。すでに北村が先発しているのだ。「北村さえいなければ」つぶやきが漏れる。やはり彼を見捨てる訳にはいかない。それに我々はバスの時刻を誤って、1時間以上も遅れているのだ。彼は心配しているだろう。一刻も早く行かねばならない。
僕は意を決した。「僕が先に行きましょうか?」話は決まった。僕が1人で行き、彼らは小降りになったら、出る事になった。そうして僕は万計沼に向かったのであった。

さて、僕が一人で行くと言いだしたのには、訳があった。何も北村の事をそんなに心配したのではなかった。実は一人で山の中を歩いてみたかったのだ。しかし、身勝手な行動ではなかったか。とにかく、一人で誰にも追われる事もなく、誰を追う事もなく行けたので、雨の中ではあったが、楽しかった。それには、標語を書いた看板は目ざわりであったが…。
時計がなかったので、時間はわからなかったが、僕はなるべく早く着こうと急いだ。さっきの目的から言うと、ゆっくり行くべきだったが、それでは先発した意味がなくなると思ったし、それに荷が重かったのだ。
最後の沢を渡ると、意外にすぐ『あと一息!万計沼が呼んでいる』の看板に出た。その先のトラバリ気味の所では雪ですべって手こずった。

北村は万計山荘にいた。ストーブが(あかあかと?)燃えていた。山荘には四人のパーティーがいたが、彼らは、北村が心配のあまり、おりの中の熊の様に部屋の中を行ったり来たりしたり、また何度も捜しに行ったりしたと話してくれた。
管理人はいない様だったので中へはいって服をかわかし、北村にいきさつを話した。彼は安心したが、やがて今度は僕が心配する番になった。いくら待てども彼らはこないのだ。むなしく時が流れた。
でも僕は少しほっとした。こんな中をマミスまで行くのが嫌だったのだ。だが、もう今からは行けまい。北村はまた捜しに出かけた。もう雨はとっくにみぞれにかわっていた。僕はそれがすっと沼の水面に吸い込まれていくのを見つめた。
だいぶ経って北村が戻ってきたが、彼は手ぶらだった。どうしたんだろう?四人組の一人は僕に「どうしたんだ?」とたずねた。僕は、女がいるんだと答えた。彼は、今の女は強いはずだと言った。

2時間近くもして、彼らはようやく着いた。寝場所をどうするか?空沼小屋に泊まる事に決まった。僕と北村がストーブを点けるために遣わされた。我々は窓からはいった。火はなかなか点かなかったが、ようやく点いた。
しかし、その時、表で音がした。人の声だ。出てみると女の集団で、藤女子大の山岳部だった。彼らは、小屋の許可証を持っていたので、我々は実権を譲らざるを得なかった。その結果、彼らはストーブを占領し、我々は万計山荘で飯をたかねばならなかった。四人組の一人は「中でラジたけ」と言ったのだが(ラジとはラジウスの略らしい)…。

やがて空沼小屋には北大らしきパーティーも現れて我々はますます隅に追いやられてさびしく飯を食った。
僕は階段を使わないで、はりをよじ登って二階に登り降りしたりした。相馬氏はまねをしたが、技術がちょっと……で窓ガラスを割ってしまった。そのため、小屋の人たちに変な目で見られて、何となくヤバイ雰囲気が一瞬、まわりを包んだ。
夜も更けると、藤組と北大組は意気投合して歌など歌い出した。我々だけがのけ物である。高校生は相手にされないのだ。

翌日は快晴だった。マミスまでの途中で僕はすでに、照りつける太陽のために暑くなってランニング一枚になっていた。マミスの沼上は所々ズボッと埋まると下に水があった。
我々はP.1176を目指した。初め、それを狭薄だと思ったのだ。だが、それはあまりに近すぎた。しばらく行くと視界が開けて狭薄が目に入った。なかなか豪快だ。こちら側にがっと落ちている斜面、急峻な尾根。どこかの写真で見たヒマラヤの一峰に似ていると思った。

我々は札幌ー空沼の縦走路を越えて、狭薄の東尾根に取りついた。やがてガスがかかってきた。見えなくなる。寒くなる。だが頂上まではランニングで通そう。ガスはますます濃くなる。磁石と地図のみが頼りだ。
幾つ目かのこぶを越えた時、我々は段々下っているのに気がついた。進行方向に登りがある気配はまったくない。間違えたに違いない。さき程のコブまで戻った。ここもすでに間違ったルートなのか。戻るべきだろうか?もっと。…勿体ない。だいいち、こっちでいいのかもしれない。我々はこのコブから左に落ちている急な斜面が、地図ではゆるく見える斜面ではないかと気づき、降りた。この判断が正しかった事は先に急な尾根が続いていた事で証明された。

尾根はますます細くなる。しかし、頂上はい然見えない。いったい後どれ位登ればいいのだろう。頂上が見えないのは疲れる。尾根の左側はがっと落ちている。尾根を登り切ると、そこは頂上だった。木にナイロンのデポがゆれている。
そうだ、僕がこの山を知ったのは小学生の頃だった。地図で高い山を捜していて、この山が札幌や空沼よりも高いのを知ったのだ。思い出が僕の心をよぎった。あれから…年。この僕がその狭薄のてっぺんにいるとは…。この山は僕が登りたかった山のひとつだったのだ。
い然ランニング。ガスもまだ濃かったが、大湊氏の「ハレロヤ」の大独唱によって次第に晴れてきた。我々は四方をながめ、飯そしてクタバレ。

頂上から離れる時は名残惜しかった。今度は尾根から見通しがきいた。振り返ると、狭薄のその急だが、どっしりとした姿が本当にまるでヒマラヤか日高の山の様に見えた。帰えりたくなかった。何度も振り返った。しかし、それはやがて見えなくなった。
帰えりは快調にブッ飛ばしてマミスに着く頃にもまだ陽は高かったが、空沼行きは明日にして万計に戻った。空沼小屋は人であふれていた(OBの新妻氏も来ていた)し、万計山荘には管理人が来ている様だったので、我々は見えない所にツェルトを張った。そして最後の夜を楽しんだ。

翌日、起きるともう陽は高いが空沼まで行く事にする。夕べは遅かった(古堂が7ブリッジで奇跡の大逆転負けを演じたのであった)ので眠かったが、大湊氏はまだ空沼岳の頂上を極めた事がないので皆で行った。マミスの上でSMACのテントを発見するが無人。

頂上からは素晴しいながめだった。遠くは後方羊蹄山、恵庭岳、それに札幌岳、狭薄岳、そしてなだらかな山容の漁岳は、ここからずっと尾根が続いていて行けそうだった。よく見るとそこに豆粒が動いているのが見えた。あの四人組かもしれない。僕も行きたかった。相馬氏もそう言った。こんないい天気はそうは望めそうになかった。しかし休みは今日限りだった。あきらめた。もちろん最初から行けるなどと思っていた訳ではないのだが…。
やがてアタックザックのパーティーが登ってきた。すごい(ひどい?)パッキングだ。中には丸太が入っている様な形のザックもある。聞くと道工大の人だった。相馬氏はうちの近くだと言って勇んで、札幌岳へ行くのかとたずねた。するとC.Lらしき男がうなずいて、そうだ“札岳”へ行くのだと言った。我々は顔を見合わせた。そういう略し方は初耳だった。彼らが発明したのかもしれない。

テントに戻ると、我々はマットを外に出して日なたぼっこをした。ぽかぽかとあたたかい。飯を食うと我々は降りはじめた。快調に何事もなく下まで降りた。
登山口に着くとヒッチの組合せが決められた。僕と相馬氏、古堂と山田、そして大湊氏と北村。この組は二人共日焼けで顔が真っ赤だったので赤鼻コンビ(又は赤鼻トナカイ)と名づけられた。我々は先に追い出されてしまった。だめだった。ようやく車が来たが、これは古堂組に乗っ取られていた。我々は不吉な予感がした。赤鼻組にも抜かれるのでは…。それは大きな屈じょくだった。我々は彼らをバカにしていたからである。案の定、彼らを乗せた車がやってきた。くそっ!しかし、その車は我々の前でピタッと止まった。その車にはまだスペースがあったのだ。我々はかろうじて救われた。ほっとした。

こうして狭薄岳は僕の最も好きな山の一つとなったのである。

(札幌西高山岳部部報「熊笹」18号より)

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