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Yamareco

記録ID: 4830742
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
比良山系

【野坂山地】明王の禿直登沢(禿の谷)〜明王の禿登攀

2022年10月23日(日) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 福井県 滋賀県
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GPS
--:--
距離
6.5km
登り
687m
下り
669m

コースタイム

日帰り
山行
6:20
休憩
0:00
合計
6:20
8:50
25
駐車地
9:15
125
明王の禿直登沢に入渓
11:20
70
明王の禿の登攀開始
12:30
40
13:10
20
13:30
100
15:10
駐車地
天候 晴れ時々くもり
過去天気図(気象庁) 2022年10月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
滋賀県道533号線(白谷野口線)の明王の禿直登沢出合付近の路肩に駐車。3台分ほど余地あり。
コース状況/
危険箇所等
※ 山行ジャンルを「無雪期ピークハント」としましたが、明王の禿直登沢のパートは沢登り装備(少なくとも沢靴)が必要です。

【明王の禿直登沢(禿の谷)】
 八王子川の支流で、明王の禿に南側から突き上げている谷(【後日追記】この谷は「禿の谷」というそうです。出典は福井岳人倶楽部「福井の雪山」)。堰堤が連続するため、純粋な沢登りの対象としてはおすすめしにくいが、花崗岩の谷に特有の白くて明るい流れで、(二次林ではあるが)自然林に覆われているので案外雰囲気は悪くない。2箇所ゴルジュがあり、どちらも最大5〜8mほどの滝が3つほど詰まっていて、直登も可能で楽しめる(が、どちらもゴルジュ出口で驚愕→がっかりさせられる。何があるかは現地でのお楽しみ!)。源頭に広がる明王の禿のパノラマは絶景の一言。

【明王の禿の登攀】
 高島トレイルの赤坂山〜三国山間の稜線の南面に切れ落ちている大規模な岩壁帯。とにかく広い岩場なので様々なルート選択の余地があり、ルート取りにより難度はいくらでも変化すると思われる。今回は直登沢をほぼ最後まで詰め、明王の禿の最も標高が高いピーク(最も三国山寄りのピーク)を目指して登り、最終的に当該ピークのやや西寄りの稜線に登り出た。なるべく登りやすい箇所を選んで登ったため、それほど傾斜は強くなく、壁というよりは岩の堆積といった感じで、いつでもノーロープでクライムダウン可能な程度の岩場が続いた(グレードにして最大でも3級程度)。明王の禿というと風化が激しいイメージがあるが、慎重にルートを選べば稜線直下までは意外にしっかりした硬い岩も多く快適に登れる。
 しかし、核心部は稜線までの最後の10mほどで、表面がボロボロに風化した花崗岩スラブとなっており、少しでも硬いホールドを探りながらの、かなり神経を磨り減らす微妙な登りとなる。おそらくどこを登っても稜線手前で似たような状況に行き着くと思われ、一般的にはおすすめできないと感じた。直登沢の源頭で明王の禿のパノラマを楽しんだあとは、明王の禿の岩場の一番東端に簡単に登れそうなガレ場があったので、そこから稜線に出るのが最善と思われます。あと落石にも注意。
明王の禿直登沢(禿の谷)沿いの林道は,入り口にゲートがあり,車の進入不可。
明王の禿直登沢(禿の谷)沿いの林道は,入り口にゲートがあり,車の進入不可。
アカマツとクヌギやコナラの典型的な雑木林が続く林道を歩いて行く。
アカマツとクヌギやコナラの典型的な雑木林が続く林道を歩いて行く。
林道は次第に荒廃の度合いを増すが,地形図にあるとおりかなり奥まで歩ける。
林道は次第に荒廃の度合いを増すが,地形図にあるとおりかなり奥まで歩ける。
適当なところから入渓。周囲は(いかにも伐採後の二次林ではあるが)自然林で,あんがい雰囲気が良いね。
適当なところから入渓。周囲は(いかにも伐採後の二次林ではあるが)自然林で,あんがい雰囲気が良いね。
典型的な花崗岩の谷で,岩は白く,沢床の砂もいわゆる真砂というやつで真っ白。清潔な感じの明るい谷が続く。
典型的な花崗岩の谷で,岩は白く,沢床の砂もいわゆる真砂というやつで真っ白。清潔な感じの明るい谷が続く。
ただ,堰堤が連続するのが残念。地形図から分かっていたことではあるが。明王の禿の崩壊地から流れ出す大量の真砂を抑えようとしているのだろう。
ただ,堰堤が連続するのが残念。地形図から分かっていたことではあるが。明王の禿の崩壊地から流れ出す大量の真砂を抑えようとしているのだろう。
ガレが激しい谷っぽいので滝はないだろうと思っていたら,急にゴルジュが現れ,5mほどの滝が。右手を小さく巻くように直登。
ガレが激しい谷っぽいので滝はないだろうと思っていたら,急にゴルジュが現れ,5mほどの滝が。右手を小さく巻くように直登。
その上も滝が連続。なかなか楽しませてくれるじゃないですか。しかし,この後,衝撃の展開が…。とんだがっかりゴルジュでした。何があるかは現地でお確かめを!
その上も滝が連続。なかなか楽しませてくれるじゃないですか。しかし,この後,衝撃の展開が…。とんだがっかりゴルジュでした。何があるかは現地でお確かめを!
しばらく穏やかな流れを行くと,またもや両岸が立ってゴルジュに。5mほどの滝。けっこう滝あるやん! この滝も登れる人なら直登してしまいそうだが,大事を取って左岸から巻く。ちょっと岩が張っているので注意。
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しばらく穏やかな流れを行くと,またもや両岸が立ってゴルジュに。5mほどの滝。けっこう滝あるやん! この滝も登れる人なら直登してしまいそうだが,大事を取って左岸から巻く。ちょっと岩が張っているので注意。
巻き終えて谷に戻ると,今度は8mほどの滝。この滝はホールドが豊富で,快適に直登。まさかこの谷でシャワークライミングが楽しめるとは思ってなかった。
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巻き終えて谷に戻ると,今度は8mほどの滝。この滝はホールドが豊富で,快適に直登。まさかこの谷でシャワークライミングが楽しめるとは思ってなかった。
直登後,滝を見下ろす。ただ,このゴルジュも出口でヤツが待っていた…。こちらも何があるかは現地でお確かめを!
直登後,滝を見下ろす。ただ,このゴルジュも出口でヤツが待っていた…。こちらも何があるかは現地でお確かめを!
右岸に岩峰が屹立し始め,なかなかの眺め。明王の禿も近いか。
右岸に岩峰が屹立し始め,なかなかの眺め。明王の禿も近いか。
これは赤坂山方面に向かう枝沢。10mほどの滝となって出合っている。
これは赤坂山方面に向かう枝沢。10mほどの滝となって出合っている。
と,前方についに明王の禿が迫ってきた!
と,前方についに明王の禿が迫ってきた!
明王の禿の眺めに引っ張られるように,細くなった流れをいそいそと進む。
明王の禿の眺めに引っ張られるように,細くなった流れをいそいそと進む。
おおー,ついに近づいてきた。明王の禿の岩壁帯だ。(ていうか,よくこんなところまで堰堤作ったな…。)
おおー,ついに近づいてきた。明王の禿の岩壁帯だ。(ていうか,よくこんなところまで堰堤作ったな…。)
岩の城砦が近づいてくる。
岩の城砦が近づいてくる。
至る所に屹立する奇岩。
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至る所に屹立する奇岩。
ちょっと西側に出過ぎてしまったので,明王の禿の基部を東側へとトラバースしながら,進む。展開する壮絶な岩壁のパノラマ。
ちょっと西側に出過ぎてしまったので,明王の禿の基部を東側へとトラバースしながら,進む。展開する壮絶な岩壁のパノラマ。
ここが1000mにも満たない低山だとはとても信じられない。そんな岩のパノラマが続く。
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ここが1000mにも満たない低山だとはとても信じられない。そんな岩のパノラマが続く。
アルペンチック。陳腐ではあるが,そんな言葉が思わず出てしまう。
アルペンチック。陳腐ではあるが,そんな言葉が思わず出てしまう。
登れるところがないか,弱点を探しながらトラバースを続ける。このあたりは,単独(=確保なし)ではとても無理だが…。
登れるところがないか,弱点を探しながらトラバースを続ける。このあたりは,単独(=確保なし)ではとても無理だが…。
そうそう,明王の禿は,水晶の産地としても有名。足元を探すと,こんな不完全な半透明の結晶ならいくらでも見つかる。
そうそう,明王の禿は,水晶の産地としても有名。足元を探すと,こんな不完全な半透明の結晶ならいくらでも見つかる。
これとか。(写真だと分かりにくいが)一部透明の部分もある。残念ながら,まさに水晶!という大きな結晶は見つけられなかった。
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これとか。(写真だと分かりにくいが)一部透明の部分もある。残念ながら,まさに水晶!という大きな結晶は見つけられなかった。
天を衝く奇岩。
荒々しい岩場とガレ場が交互になだれ落ちている。
荒々しい岩場とガレ場が交互になだれ落ちている。
オベリスク。
奇跡的なバランスで積み重なった岩。
奇跡的なバランスで積み重なった岩。
岩のモニュメントが目白押し。
岩のモニュメントが目白押し。
これも面白い形。
これも面白い形。
岩のシアターですなぁ。
岩のシアターですなぁ。
なかなかの高度感となってまいりました。
なかなかの高度感となってまいりました。
眼下の琵琶湖に向かってなだれ落ちる幾筋ものナイフリッジ。
眼下の琵琶湖に向かってなだれ落ちる幾筋ものナイフリッジ。
冬季に登ってもなかなか面白いんじゃないだろうか。アプローチが大変ですが…。
冬季に登ってもなかなか面白いんじゃないだろうか。アプローチが大変ですが…。
琵琶湖の眺めも広がりを増してきた。
琵琶湖の眺めも広がりを増してきた。
直登沢の詰め。明王の禿の最高点ピークが近づいてきた。せっかくなので,一番高いところを目指そう。
直登沢の詰め。明王の禿の最高点ピークが近づいてきた。せっかくなので,一番高いところを目指そう。
明王の禿の最高点に続く斜面は,意外にも傾斜が緩く,問題なく登っていける。
明王の禿の最高点に続く斜面は,意外にも傾斜が緩く,問題なく登っていける。
次第に傾斜は強まるが,それでも岩が大まかに堆積している感じで,難しい動きは要求されない。ほとんどの人がノーロープで登れるであろうレベル。
次第に傾斜は強まるが,それでも岩が大まかに堆積している感じで,難しい動きは要求されない。ほとんどの人がノーロープで登れるであろうレベル。
なるべく登りやすい弱点を縫うように登っていく。
なるべく登りやすい弱点を縫うように登っていく。
稜線が近づいてきた。傾斜はやや強まるが,あいかわらず岩角が豊富で,難しさは感じない。しかし,核心部はこの後だった。
稜線が近づいてきた。傾斜はやや強まるが,あいかわらず岩角が豊富で,難しさは感じない。しかし,核心部はこの後だった。
核心部は写真を撮る余裕は全くなく,稜線にトップアウトしてから見下ろして撮影。この最後の10mほどの花崗岩スラブ,表面が風化してボロボロの箇所が多く,非常に神経をすり減らされる登攀となった。ここまで快適だったのに,最後の最後でこれか…。
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核心部は写真を撮る余裕は全くなく,稜線にトップアウトしてから見下ろして撮影。この最後の10mほどの花崗岩スラブ,表面が風化してボロボロの箇所が多く,非常に神経をすり減らされる登攀となった。ここまで快適だったのに,最後の最後でこれか…。
登り出た稜線。
明王の禿を見下ろす。登っている最中は意外に平気なのだが,登り終えてから見下ろすとその傾斜にビビる。
明王の禿を見下ろす。登っている最中は意外に平気なのだが,登り終えてから見下ろすとその傾斜にビビる。
遡ってきた直登沢を見下ろす。
遡ってきた直登沢を見下ろす。
びわこ。
小憩ののち,赤坂山へ。山頂に人影はなかった。冬場の積雪期のほうが確実に人が多い,珍しいピークの一つ。
小憩ののち,赤坂山へ。山頂に人影はなかった。冬場の積雪期のほうが確実に人が多い,珍しいピークの一つ。
粟柄越への斜面は一面のススキの銀の波。
粟柄越への斜面は一面のススキの銀の波。
秋だねぇ。
見渡す限り,ススキの穂が揺れ動く風景の中を,ぼちぼち歩く。
見渡す限り,ススキの穂が揺れ動く風景の中を,ぼちぼち歩く。
途中から登山道を外れ,駐車地にダイレクトに降りられるように適当な枝沢を下る。
途中から登山道を外れ,駐車地にダイレクトに降りられるように適当な枝沢を下る。
今朝辿ってきた林道にドンピシャ下山。
今朝辿ってきた林道にドンピシャ下山。

装備

備考 ・ラバーの沢靴使用。花崗岩の沢なのでフリクションは非常に良好で、源頭は岩登りになるためラバーがおすすめ。
・40mロープはじめ沢登りの基本装備(ハーケン数枚など登攀用具含む)は携行したが使用場面なし。

感想

〈明王の禿直登沢(禿の谷)〉
 堰堤の連続する谷である。通常なら、それだけで「遡行価値なし」と断じられてしまっても仕方ないかもしれない。
 しかし、この谷に遡行価値は「ある」。少なくとも、最後までこの谷を遡れば、その意味が解ってもらえると信じている。低山離れした息を呑む光景が、源頭で遡行者を待っている。

〈明王の禿の登攀〉
 角張った花崗岩のザラッとした感触を両手で確かめながら、屹立する白い奇岩を迂回するように、大まかな動作で登っていく。堆積する岩の傾斜がしだいに強まっていく。それにつれて、背後の琵琶湖の輝きも、ぐんぐんと広がりを増していくのがわかるが、振り返る余裕はない。稜線まであと数メートルというところで現れた風化スラブを、じりじりと登っている最中だからだ。やっとのことで稜線に登り出てザックを放り出し、平らな地面に倒れ込むと、赤坂山へと続くなだらかな丘陵は、いちめんのススキの穂の銀の波だった。ここでちょっと休んでから、あの中をゆっくり歩いて行こう。いまは眼下に光る海のようになった琵琶湖を眺めながら。緊張の登高のあとで、それがとても有難いことのように、何かの恩寵のようにさえ感じられた。

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