八海山 摩利支岳 八ツ峰北東面滑降


- GPS
- 07:44
- 距離
- 15.6km
- 登り
- 1,487m
- 下り
- 1,605m
コースタイム
合計7時間45分
過去天気図(気象庁) | 2025年02月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
新開道はカッパン倉より先は細く、屏風沢上部の今回の登行ルートはコンディションを選ぶ |
その他周辺情報 | 関連記録 ■高倉沢右俣(不動岳・七曜岳のコルから) 2008/3/9 新潟稜友会(須藤正雄、小川嘉博、佐藤康彦) 初滑降 http://www.rakuseki.net/skimaps/chuetsu/hakkaisan/takakurasawa/hakkaitakakura.html 2023/2/24 anobei https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5207277.html ■高倉沢左俣 2009/3/1 三浦大介、植竹准、小川嘉博 『中部山岳スティープスキー100選』 |
写真
感想
三浦大介氏の『中部山岳スティープ100選』の写真を見て、いつか滑りたいと思っていた八海山北東面。湯川さんが、Xでその斜面の空撮動画と万人に向けた滑走ドローン撮影のお誘いをしていたのを見て、時は来たと思った。湯川さんとは、諏訪の山スキー交流会で二度お会いし、その特異な目的意識や価値観に触れていた。計画段階で、同時並行して連絡を取り合っていた中澤氏を加えて、3人パーティができた。
土曜日も好天予報ではあったが、時期、気温、日射ら斜面方位から、良い雪の条件で滑るには、それでは遅いと考え、金曜日に休暇を取った。山行予定日の2月28日は、中澤氏の奥さんで登山ガイドの旧姓大島わかな氏が出産を終えて退院する日であったため、それに間に合うようなタイムスケジュールで検討を進めた。前日、わかなさんから生まれて間もない赤児の写真とともに送られてきたLINEのメッセージ「明日は事故厳禁でお願いしますね!」が、ずっしりと重かった。
荒山集落で待ち合わせて車をデポし、入山地点まで移動する。5時前に歩きだして、夏道でいうところの新開道をたどる。雪は雨や日射にやられたモナカで、バリバリと音が暗闇の中に響いた。登りは終始湯川先頭で進み、一度も先頭を譲られることはなかった。最後には、所々長い斜面のトラバースや沢の詰めがあり、この日のように雪が安定した日でなければ相当なリスクを伴うが、この日は湯川さんのルートファインディングが勝った。
一度も板を脱ぐことなく、当初狙っていた通りの摩利支岳と釈迦岳のコルに至る。斜面のイメージは頭の中にあるが、この日はまだ直接見れていないため、湯川さんにドローンを飛ばしてもらって、斜面の確認を行う。危険は上部の露岩と複数のクラックにあり、それらのおおよそを頭に入れる。
山頂やや下の肩よりドロップイン。スピードとライン取りでスラフをかわして、自身が思い描いた通りの滑りができた。高倉沢のやや右岸に陣取り、ふたりを待つ。中澤氏は「はじめてのスティープ」ということで緊張していたが、危なげなく下りてきた。最後に撮影を終えた湯川氏が合流し、高倉沢をパーティラン。その後は、所々デブリとなり、日射を受けた南面からは、時々湿雪点発生雪崩が落ちていた。
オツルミズ出合のあたりの側壁から雪崩と土砂が落ちてきそうなあたりがこの日の核心となったが、運良く抜けることができた。あとはおだやかな里の雪を踏みしめつつ、世間話をしながら下山。車を回収してから解散し、その後、中澤宅で退院したばかりの母子と面会した後で、翌朝の山に向かった。
トマさんから高倉沢の誘いがあった。秋に八海山を歩いた時に高倉沢左俣は私でも楽しく滑れそうに感じたので、了承する。しかし、話を聞いたところ、入道岳ではなく八ツ峰の稜線から直接落とすという。ああ、これは痺れそう。湯川さんが昨年空撮した映像をみて、摩利支岳からの滑走を狙う。阿寺山経由で入道岳からのアプローチ案があったが、色々考慮して、新開道から直接八ツ峰へあがるプランに変更。
荒山に車をデポして登山口へ。湯川さん先頭で進んでいく。とても速い。初見のルートでもライン取りに無駄がなくうまい。途中からモナカのラッセルになるがペースは緩まることなく高度をあげる。トマさんが「休憩しよう」と提案して一息入れるが、声をかけなかったら止まることは無かったと思う。カッパン倉を巻くと尾根が狭くなってくるのでトラバース。その後高度を上げて、またトラバースとして屏風沢へ入る。これは条件がよほど良くないととれないルート取りだ。間隔を空けて、沢を詰めるときは上下に重ならないようにしながら行く。八ツ峰が近づくと割れるようになるが伝播はしない。岩の付け根を通過するときにワッフ音がした。地形をうまく選んで稜線へ乗り上げる。湯川さんはこの辺のライン取りもとてもうまく、声をかけ合ったりと、2年前の「山スキー・ボードの集い」で色々言われていた様子を知っているだけに、意外だった。結局ペースは緩まることはなく、山頂まで一度も先頭を譲られることがなかった。すごい。
稜線についたら摩利支岳は目の前。北東側からシールで登るが雪は安定している。トマさんは山頂ドロップで、板を持って登る。ピークは踏みたいので私も摩利支岳までは空荷で往復。今回、ロープを持参したが、使わずに登ることができた。雪は柔らかいのでアイゼンも無しでいけた。湯川さんがドローンを飛ばして斜面の様子を伺う。ドローンの使用に関しては、未知の要素が欠け、冒険性に影響があると考える人もいる。ドローン以外にも、Google Earthであったり、望遠レンズだったり、写真だったりと、色々な要素があるが、ここでは触れない。しかし、ドローンを使用した事実は書くべきだと考えている。3人で空撮映像を見るとクラックが多いがなんとななりそう。真下のアイスに注意する。
トマさんからドロップ。とんでもないスピードでかっ飛んでいった。わずか1分。空撮をしていた湯川さんも驚き、感動していた。
トマさんから無線が入る。「もっとスキーヤーズライトに行った方がいい。大小含めクラックが多い。スラフはそんなに出ない。」とのこと。緊張の中、私もドロップ。クラックを越えると穴に雪が落ちていく。アドバイス通りスキーヤーズライトへ。雪はいいので慎重にターンしていく。パラパラと結構な量のスラフが横を流れていく。話が違う。逃げるようにスキーヤーズライトに行きすぎて、逆にクラックの多い部分を滑ることになってしまって反省。ともあれ、集中して無事に滑りきり、リグループ。とてもいい解放感だ。楽しかった。スティープをやる人はこれが癖になるのだろう。
湯川さんも無事に降りて来て、あとはパーティラン。高倉沢は日陰になっていて上よりもいい雪で板が走る。私なりに飛ばしてるつもりなのに一瞬でトマさんに追い抜かれた。途中からモナカになり大苦戦。トマさんは簡単そうに滑って行く。よく見るとターンをほとんどしていない。なるほど、モナカはそうやって攻略するのか。下流に来るとデブリだらけ。湯川さんと必死に追いかける。左右から湿雪の雪崩が落ちてくるので、足早に水無川へ。林道もデブリが多く、越後三山森林公園までは苦労したが、あとは快適に下山。
車を回収したら、この日退院する妻と産まれたばかりの娘を迎えに病院に向かう。退院の時間に余裕で間に合った。
駒ヶ岳は移住する前からずっと大好きだが、八海山は南魚沼に来て、家の窓から毎日見ているにつれ、移住して思い入れが強くなった山だ。家の裏山で、記憶に残る体験ができたことが嬉しい。八ツ峰から直接落とすという今回のプランは私だけではやろうと思わないので、2人に感謝しかない。
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