燃える雲ノ平 〜新穂高から往復
- GPS
- 118:59
- 距離
- 49.3km
- 登り
- 3,437m
- 下り
- 3,475m
コースタイム
6日:ワサビ平小屋5:15 - 8:55鏡平山荘
7日:鏡平山荘5:55 - 8:30双六山荘 - 11:43三俣テント場
8日:三俣山荘5:55 - 7:25鷲羽岳 - 8:50ワリモ岳 - 10:07祖父岳 - 11:25雲ノ平山荘
9日:雲ノ平山荘5:40 - 8:00黒部源流 - 8:50三俣10:15 - 11:25三俣蓮華岳 - 13:20双六山荘
10日:双六6:15 - 8:00鏡平山荘 - 10:55ワサビ平小屋11:15 - 12:15新穂高
天候 | 5日:晴れ 6日:曇りのち雨 7日:晴れのち雨 8日:晴れのち曇り 9日:晴れのち曇り 10日:曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2011年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
■登山ポスト:新穂高バス停前の新穂高登山指導センターにあり ■道の状況:全般を通して危険箇所は特になし ■入浴:今回は新平湯温泉 ヘルシーランド奥飛騨「たるまの湯」を利用。800円 |
写真
感想
「今日はこれくらい」とカメラをしまおうとした時にそれは起きた。
水晶岳を覆い尽くそうとしていたガスの塊が突如雲ノ平に下降し、瞬く間に平原を駆けて祖父岳の谷に向かって落ちて行く。
高層の雲はまだ日の光を受けて強く輝いており、雲ノ平を流れるガスはその反射を受けて仄かなピンク色に染まっている。
祖父岳の陰になる三俣蓮華岳でも同じようなピンクの雲と流れるガスの競演が繰り広げられている。
高原全体がまるで燃え盛るように動き、輝く光景に、テラスはあっという間に小屋のスタッフも含めた沢山の人で埋まり、動きの度に歓声が上がる。
三脚を構えてから僅か15分の間の劇的な変化は正に今回の山行のハイライトだった。
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今年の夏山最初の北アルプスは山岳写真ASAの先輩O氏、H氏に同行して憧れの雲ノ平へ。
自分としては初めてのテント縦走。
できるだけの軽量化は図ったものの、衣食住+カメラ・三脚で20kg超となった荷物の重さに耐えられるか不安。
そこで二人より一日早く入山してワサビ平に前泊することにした。
【1日目】深山荘の駐車場に1時過ぎに着くと、満車の表示は出ているものの下山して出て行く車がぽつぽつとあって何とか入れることができた。
じりじりと暑い中、1時間半林道を歩いてワサビ平小屋へ。300m標高を稼ぐ。
入浴できるのが有難い。
【2日目】やや曇った空の下、小屋を出て鏡平へ向かう。
小池新道は何年か前にかなり難儀した記憶があるのでテント装備の荷物を背負って登るのは心配だったが、息が上がらないペースを心掛けると意外と楽に進む。
秩父沢を過ぎた辺りからガスが下りてきて、次第に雨になる。シシウドヶ原で雨具を着ける。
ほぼコースタイムで鏡平に着き、この朝に新穂高へ入って来るはずの後続の二人を待つ。
小屋の前で三時間以上待って二人が到着した頃にはビシャビシャと降る雨になっていた。
雨の中でテントを張りたくない自分とO氏は鏡平小屋泊まりを選択。
休みの関係で日程が短いH氏は双六小屋を目指す…が、雨はさらに強まり、雷も鳴る。
ところが、夕食を済ませた頃にガスが動き出し、青空も覗き始める。
カメラを持って鏡池へ向かうと、だんだん槍の穂先が見え始め、右を見ると穂高の稜線も姿を現してくる。
ガスはどんどん下がっていき6時頃には槍穂の姿がはっきり池に映るようになる。
この頃には池の周りには100名ほどにもなろう人が集まって大騒ぎ。
撮影を大いに楽しんだが、日没前には再びガスが上がって来て何も見えなくなってしまった。
【3日目】この日は三俣のテント場まで。
快晴の下、小屋から弓折分岐までの300mの登りはなかなかキツイ。
しかし高度を上げるとやがて眼下に鏡池と小屋が望め、その向こうに穂高の峰々が黒々と聳える。
稜線に出ると双六に着くまでの間ずっと、槍から西穂に至る長いスカイラインが横にあり、登山道の傍らには花々が絶えない。
今ここにいて、この風景を手中にしていることに浮き立つような嬉しさと幸せを感じる。
この幸福感を伝えることこそ、自分が写真のテーマとしたいことなのだと改めて実感する。
双六からは巻道を行くが、これが沢筋に一旦大きく下ったりして予想外にアップダウンがある。
遠いなあ、と思う頃にやっと三俣の小屋とテント場が見えてくるが、雨がポツポツ降ってきて慌ててテント場へ走り下りる。
雨が強くなってくる中、何とか二つのテントを設営し、しばらくテントの中で小降りになるのを待つ。
雨が上がったので小屋まで受付の手続きに行くと、この日は雲ノ平まで行くはずのH氏がいて、雨で前途を断念して泊まることにしたというので3人でビールを飲む。
H氏は翌日鏡平へ向かって下山とのこと。
【4日目】いよいよ雲ノ平へ。
三俣にテントを張ったまま、雲ノ平山荘に泊まって来ようというO氏のナイスアイデアに救われた思い。
三俣小屋裏から鷲羽岳に登る。これで5週連続で初百名山登頂となる。
鷲羽岳で撮影の時間を暫く取った後、ワリモ岳・祖父岳を経由して雲ノ平へ。
昨年新装なったばかりの快適な雲ノ平山荘で一人布団一枚を確保。
撮影のロケハンに周囲を散策するが、天気もいま一つなので意外に作品になりそうな場所がない。
ところが、山荘には二階にテラスがあり、正面に水晶岳が見える。
夕方の光景をここから撮るのが良いだろうということで一致。
夕食を終えても雲が低く、山の頂上は見えてこない。
それでも鏡平での経験から日没が近づけば気流は動くという期待があり、6時半頃に三脚を立ててガスが切れるのを待つ。
すると間もなく水晶岳の頂きが姿を現し、雲がピンクに染まって、やがて西から日没の太陽の光が徐々に山肌を赤く染めて行く。
思った通りだと10数枚を撮影したところで水晶岳から光が消えた。
* この後、冒頭部分となる。
【5日目】三俣経由で双六まで。
疲労もピークに近く、三俣でテントを撤収してから三俣蓮華岳の頂上を踏んで双六まで戻るこの日の予定は、正直言って完遂の自信がなかった。
雲ノ平から祖父岳の巻道を行き、黒部源流を渡って三俣に登り返すルート。
初めは黒部五郎岳が右手にあり、前方に笠ヶ岳が顔を出す。
振り返ると水晶岳の奥の遠方に立山や剱岳も見えている。
さらに進むと槍・穂高の姿が現れる。思えばこの5日間ずっと槍穂の稜線を眺めている。
3時間ほどで三俣に戻り、今度はテントの重さを加えて三俣蓮華岳へ。
心配したとおり疲れた足には非常に堪えたが、O氏のイーブンペースのリードのおかげで何とか頂上に到達。
この後も幾つかのアップダウンをこなして、双六岳の中道を下りて双六山荘のテント場に辿り着いた。
【6日目】鏡平を経て新穂高へ下山。
朝のうちは靄がかかっていたが、弓折岳への稜線を行くうちに谷の向こうに槍や穂高がうっすらと見え隠れするようになる。
鏡平で大休止した後、長い長い下りを続けてわさび平小屋に倒れこむようにして着き、ソウメンを二人で注文。
下界の味に急激に安堵感が広がる。
さらに長い長い林道歩きを重ねて、双六を発ってから約6時間かかって新穂高に帰着した。
6日間で約50km、累積標高3,500mを越えた山行は、度重なる幸運とO氏のサポートのお陰で100%以上の満足感で終えることができた。
## 「山岳写真ASA」ブログの該当山行記事は ⇒ http://sangakuasa.blog130.fc2.com/blog-entry-48.html
はじめましてTadさん
ほんと、同じようなルートを歩いてますね〜
まさに、9日の双六キャンプ場では上の方のロープ沿いに張ってました。
近くにいたかもしれない、この記録、おもしろいですね。
それにしても雲ノ平では素晴らしい景色に出会えたようで、うらやましい限りです。でも毎回違う景色に出会えるから何度も登ってしまうのかも。。。
これからもテント泊も頑張って下さい!
雲ノ平(私はテント泊)と双六でニアミスだったようです。
雲の平での夕焼け、テントの中にいたので見そびれたようで残念でした。
雲ノ平が見えてからが遠かったこと、
双六の巻道もアップダウンで大変でした。
裏銀座は奥深いので「割」と静かでいいルートです。
また時間があれば行ってみたいですわ。
tatomo さん、初めまして。
tatomoさんの記録も読ませて貰いました。
毎日殆ど10時間以上歩いておられますね。羨ましい体力です。
双六のテント場の写真には我々のテントも写っていて、何となく嬉しくなりました。
またどこかでお会いするかも知れませんが、よろしくお願いします。
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