甲ヶ山・矢筈ヶ山 〜ずぶ濡れ岩峰歩き〜
- GPS
- 07:00
- 距離
- 11.4km
- 登り
- 882m
- 下り
- 869m
コースタイム
- 山行
- 4:46
- 休憩
- 2:03
- 合計
- 6:49
天候 | 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
●香取登山口駐車スペース→甲川分岐 作業車両が入れる道幅もある未舗装林道です。けれども大雨で道に溝ができていたり車の通行を妨げる土塁が築いてあったりしますので、一般車では侵入困難です。ケチらずに歩きましょう。 ●甲川分岐→甲川甲ヶ山取り付き 踏み跡はありますが、笹の茂っているところは道がわかり難く注意が必要です。標識もありません。要所にはピンクテープの目印がありますので、迷ったら周りをよく見ましょう。 ●甲川甲ヶ山取り付き→甲ヶ山の肩 安山岩礫の枯れ沢を直登していきます。途中から左側の尾根に入って踏み跡を上っていきます。このコースで一番つらいところです。 ●甲ヶ山の肩→甲ヶ山→小矢筈→矢筈ヶ山 岩場の稜線を上り下りするコースです。「ゴジラの背」と呼ばれる両側が切り立った岩の列の上を歩いたり鎖やロープを頼りに急な岩場を登ったり下りたりしなければなりません。充分に注意して歩かなければ命の危険もあります。 ●矢筈ヶ山→大休峠 低木の間の切れ込んだ細い道や林間の登山道です。分岐もありませんが、途中一か所笹の茂ったところがあります。そこで道を見失わないように、倒木や枯れ枝に足を取られることが無いように注意しましょう。 ●大休峠→香取分れ 中国自然歩道にもなっている古い街道で石畳が残っている場所もあります。道は広く高低差も少ないので、快適に歩けます。 ●香取分れ→甲川分岐 少し道は細くなります。ブナや杉・ヒノキの林の中の道です。緩い下りが続きます。 |
写真
装備
個人装備 |
ソフトシェル
サポーティングタイツ
ジャンパー
雨具
ズボン
靴下
グローブ
日よけ帽子(ハット)
靴
サブザック
昼ご飯(棒ラーメン+カット野菜)
行動食(飴)
予備食(カロリーメイト他)
飲料(お茶600mL+水1L)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
箸
地図(地形図)
iPhone(GPS+カメラ)
iPad mini
サブバッテリー
カメラ
携帯電話
時計
ラジオ
ヘッドライト
手拭い
ティシューペーパー
|
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備考 | グローブは必須。雨具は持っていたが、すぐに雨が止むと思って使わなかった。結局ずぶぬれになってしまった。 |
感想
大山の近くに「ゴジラの背」と呼ばれる岩の嶺があるらしい、一度歩いてみたいと思っていた。連休の中日、天気予報は曇り、降水確率は20%、そろそろ紅葉も見られるかもしれないと思いながら大山方面へ出かけた。途中雨が降っているところがあり、若干嫌な予感もしたが、「雨ならば無理して登るまい」と思いながら、国道9号線バイパスを赤碕辺りで下りて大山山麓を南方面へ車を走らせた。一息坂峠を過ぎ、香取から山の方へ向かう林道へ入って行った。林道が未舗装になる手前で車を停めて空を見上げた。雲がかかっている。道は濡れているが雨は降っていない。天気予報によると天気は快方に向かうはずだ、よし、歩こう。
登山道へ入るまでに、高齢の男性を一人追い越し、篭を背負った二人組とすれ違った。「天気が悪くて、誰も山を歩いていない」なんて話を聞いたが、「雲がかかっていて残念ですね、でもきっとこれから晴れてきますよ」と言って先を急いだ。足元の草が濡れているので、靴やズボンが濡れる。雲だか霧だかの中なので湿っぽい。けれども雨というわけでもないので、合羽を着ることはしなかった。気が付いた時には、体中がびしょ濡れになっていた。今から合羽を着ても蒸れるし動きにくいだけなので、もう開き直って濡れたまま歩くことにした。
甲(きのえ)川から稜線へ向かうルートは渓筋に安山岩?の礫が覆う枯れ沢を登って行く、これが本当に登山道かと思うようなルートだがGPSによるとここを歩くらしい、赤いマーキングもある。沢に沿って登山道があるのではないかと一旦林の中に入ってみたがどうも道は無さそうだ、諦めて再び沢の礫を踏みしめて登った。途中で左側の細い尾根に踏み跡が見つかったので、そちらに移動して更に登って行った。そのうち、目の前が開けて稜線に出た。「甲ヶ山(かぶとがせん)の肩」に着いたのだ。本当はここから眺めの良い稜線を歩くことになるのだが、残念ながら一面雲に覆われていて展望は無い。おまけに濡れた体から体温が奪われて寒くなってきた。防水のはずの靴の中もいつの間にか水が入ってぐしょぐしょだ。
稜線をしばらく歩いたところで鈴の音が聞こえてきた。向こう側から男性が下山してきた。下関からやってきたというこの男性は悪天候のため途中で引き返してきたらしい。熊の形跡らしきものも目にしたらしい。そうか、そう言われるとちょっと考えてしまうが、あの礫の沢を下って戻るのはできれば遠慮したいので、きっとこれから天候も好転するだろうと、高をくくって進むことにした。
しばらく稜線を進むと目の前に緩く右にカーブした岩の列が現れた。ここが目的の「ゴジラの背」だ。いやあ、見事な岩稜だ。晴れていれば絶景だろうな。けれども霧の中に浮かぶ岩の列も本当にゴジラの背中にしがみついた雰囲気で悪くない。岩の上に登って足元が滑らないかどうか確認してみたが、大丈夫そうだ。この靴、夏に旅行をしたときに東京の登山用品店のアウトレットで買った5.10(ファイブテン)の登山靴は、オフロードタイヤのようなソールでしっかりと岩にグリップしてくれる。よし、歩こう。用心深く岩の上の滑りにくい所を、そして岩の隙間の足掛かりの良いところを探して歩く。霧であまり遠くが見えないのがかえって集中力を高めてくれる。ゴジラの尻尾から頭に向けて一歩ずつ進む。ゴジラに振り落とされませんように。赤い実のついた茂みを通り抜けるとゴジラの頭、甲ヶ山山頂へ辿り着いた。石が積まれた脇に「甲ヶ山1338m」と書かれた板が無造作に置かれている。天気が良ければここでラーメンを作ろうと思っていたのだが、とてもそんな状況ではない。リュックから取り出したシリアルバーをかじり、お茶を口に含んで早々に先へ進むことにした。
山頂から東側に下る道を見つけて、ごつごつした岩の急斜面を下りて行った。かなりの急坂だ。あれ、もしかして、ここ、ゴジラの背より難所かも。所々、岩に赤いスプレーでマーキングがしてある。そこがルートらしい。滑りこけないように気をつけながらルートを探して歩く。一度かなり高度を下げてから再び稜線の斜面に茂る灌木の間の細い道を這い上がって小矢筈へ、更に下って上って一等三角点の標石のある矢筈ヶ山の山頂へ着いた。
矢筈ヶ山の山頂を踏むのはこれが3度目になる。けれども、この展望の無さはこれまでで最悪だ。しかももう2時が近い。距離的にまだ今日予定している行程の半分ぐらいだ、先を急ごう。ここから先は岩の上を歩くような所は無いはずだ、ペースを上げて歩くと矢筈ヶ山から40分ほどで大休峠の避難小屋へ到着した。やっと雨がしのげる場所に来たが、皮肉なことに、ここに来て雨が上がり空が明るくなってきた。
避難小屋の中で荷物を広げて昼食のラーメンを作っていると私と同じようにびしょ濡れになった男女2人組が小屋に入ってきた。ユートピア小屋からやってきたそうだ。ユートピア小屋にはずいぶん多くの人がいたということだ。男性の方は一眼レフと三脚を持っていて写真を撮るのが目的だったようだが、今日はダメだったろうな。
温かいラーメンを食べたら身体が温まってほっとした。小屋を出て、暗くならないうちに車まで戻ろうと少しペースを上げて歩いた。いろんな鳥のさえずりが賑やかな森の中の道を軽快に歩く。大休峠から1時間余りで、車を停めていた香取の林道登山口まで下りることができた。
せっかくの絶景コースなのに天気の読みが甘かったため、歩き通すことはできたもののあまり楽しむことのできなかった登山だった。登山って地図に軌跡を記せたら良いというものではない。そこでいろんなものを見て、いろんな体験をして、自分が地球の一部であるということを実感することで、生きていることの幸せを感じるんだと思う。この日の登山はその充実感が3割引きぐらいだったように思う。確かに雨の中での岩嶺歩きは貴重な体験だったとは思うが、それが目的の登山ではなかったはずだ。今度来るときはしっかり晴れた日を選びたい。無理せずに引き返す勇気も持ちたい。もっと余裕を持って山歩きを楽しみたいものだ。
帰りの車では暖房とエアコンをかけて、濡れた服が乾くように、そして風邪をひかないように、居眠りしないように安全運転に気をつけながら家へ向かった。
10月7日 コジラ岩の取付きでお会いした、下関のpeak6497です。
当日は雨中での登山、しかも難関の香取コースを踏破し無事下山されたことが何よりです。
大山山系に於いて北東方向に位置する山々は非常にワイルドでその魅力惹かれ、ここ数年はまっています。
Katsuharaさんが言われるように、甲ヶ山〜小矢筈〜矢筈ヶ山間の通過はコジラ岩以上の危険度が伴うが、その反面魅力たっぷりのルートですね。
次回訪れる時はKatsuharaさんのレコを参考にして歩きたいと思っています。
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