ヤグラ沢遡行・鷹見岩窪下降・西沢渓谷観光



- GPS
- 10:03
- 距離
- 11.7km
- 登り
- 1,422m
- 下り
- 1,415m
コースタイム
- 山行
- 8:58
- 休憩
- 1:04
- 合計
- 10:02
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
ヤグラ沢遡行・鷹見岩窪下降・西沢渓谷観光記録
作成者:丸山・豊永
■日程 2019/10/30
■山域 奥秩父
■天候 晴れ時々曇り
■メンバー
L丸山(35/OB)、豊永(41/B1)
■総評
ヤグラ沢のスラブはヌメヌメで、殆ど直登する気になれず期待外れだったが、鶏冠山の威容と紅葉、東沢渓谷と西沢渓谷の両方を楽しめる好ルートで、それなりに充実した1日となった。
■ヤマレコ記録
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2082590.html
■時間
5:54 駐車場発
6:40 鶏冠谷出合
7:59 ヤグラ沢入渓
10:00 ヤグラ沢二俣
12:13 詰め終わり
12:51-13:02 鷹見岩
13:09-13:18 野帳を探して往復
13:19 鷹見岩窪下降開始
14:15 鷹見岩窪下降終了
15:17 二俣吊橋
15:44 駐車場着
■ルート概況(敬称略)
※滝の落差等は自作遡行図に基づく。
※ヤグラ沢はどちらかというとフェルトソール推奨、鷹見岩窪は極めて容易なためどちらでも可。
○アプローチ
・西沢渓谷無料駐車場
・登山計画書は西沢渓谷入口の林道ゲートで提出可能。
・東沢渓谷の巻き道はよく整備されており、特に不安を感じるところはない。5回程度の渡渉あり。
○ヤグラ沢
・北面の非常にじめじめした沢で、苔が多い。
・少しのゴーロの後、ナメというかスラブというか微妙な連瀑帯が二俣までほぼ休みなく続く。遡行時はぬめりが酷く、水線の直登は厳しかった。スラブ状の岩には泥と苔がのっている部分が多い。谷は浅いので巻きは容易。
・二俣以降、ゴーロも交じるが、相変わらず傾斜が緩い割に登りにくい滝(III〜III+だがヌメヌメ)が続く。台風19号によると思われる新しい崩壊地もあった。
・詰めに藪はなく、比較的楽な詰め。
○石塔尾根
・要所に赤テープ等有り。テープをきちんと意識して歩かないと、枝尾根に入るリスクがある。藪は殆ど無い。
・鷹見岩からの北側の眺望は非常に良い。西壁をIII-程度のクライミングで快適に登れる。通常の登路は東側にある。
○鷹見岩窪
・ほとんど何もないガレとゴーロの沢。下降ルートとしては適している。ヤグラ沢とは異なり、南面で明るく、ヌメりは少ない。
○西沢渓谷遊歩道
・増水しており、遊歩道としては酷な部分があったが、沢靴なら何の問題もない。
■行動記録(豊永)
5時起床。寒すぎてトイレに行く気にもなれなかったのでそのまま車を動かして頂き西沢渓谷駐車場へ。1台先に止まっている車があり、その車の持ち主であろう人がまだ周りは暗いにも関わらず歩き始めていた。大体の準備が終わっても日が昇ってこないので15分ほど待機。もう少し寝ておけばよかった。薄明るくなってきたところでようやく車から降り、荷物とルートを確認してから出発した。
駐車場から1kmほど普通の道を歩くと観光地らしい大きめのトイレや案内板がある。案内板を見てみると、この付近は沢だらけだということがとても良くわかる。名前がいちいち個性的で面白いが、方角がつく名前はなかなか覚えにくい。ちなみに今回遡行した沢はこの案内板にも載っていなかった。さすがマイナー。改めて今日のルートを確認する。そういえば破線の登山道を歩くのは初めてかもしれない。
入渓点までは東沢渓谷の破線の巻道を使う。時々鎖や岩場もあったがよく整備されており一般登山道並みに歩きやすい。ホラの貝付近の沢下降を止めるメッセージの板がなぜか3枚も、文面に微妙な変化をつけて登場した。(「ライフジャケットつけよう」「ヘルメットつけよう」「入るな」だった気がする。入るなと言うならそれを初めに持って来ればいいのに。)
数回渡渉もあった。水の勢いはなかなか強く、ふくらはぎ辺りまで浸かることもあったが危険を感じる場面はなかった。10月の終わりの沢水なんて冷たすぎて感覚が無くなるのではないかと恐れていたが、案外いける。石が白く水が綺麗で、ラバーソールがよく効く。斜めの石でラバーの感覚を確かめながら歩いた。
ホラの貝ゴルジュの入渓点で観光を兼ねて一度休憩。少し白の混じった青緑色の水が美しく、写真を何枚も取る。しかしあれでも少し濁っていたらしい。かなり増水もしているとか。大雨や台風のせいであろうが、普段はもっと澄んでいると言われても想像がつかないくらい十分に綺麗だった。
再び巻き道に入ると、ホラの貝ゴルジュが上から観光できた。ツルツルの岩と見るからに深そうな釜だらけで、現状の私ではとても遡行できる気がしない。評判は度々聞いており気になっていた沢だったが、なんだか少しズルをして渓相を楽しんでしまったようだ。
ヤグラ沢の出合はゴーロの土砂崩れ跡のような谷で、比較的わかりやすかった。水はないけど入渓。ガレ場の登りはすぐに終わり、終わりの見えないナメ滝が現れる。岩が黒いので嫌な予感がする、との声が聞こえたが私はよくわからないのでナメの岩に手を掛けるその時まで希望を持っていたが、まあ、よく滑る。見事なぬめりだった。ホールドもほぼ無く、運よく指の置場があったとしてもスタンスがない。直登は無理そうなので、巻き気味に泥に手を突っ込んだり草付きをできるだけ多く掴んで千切れないよう祈りながら体重をかける。そして土砂にそっと足を置く。丸山さんが数m登ったら、待っていてもらいその後に続く。これを3回程繰り返した時には「本当に登り切れるのか?」と疑問が湧いたが、すぐそばにあるとはいえ今更西のナメ沢に転進するわけにもいかない。諦めて覚悟を決めて登る。全体を通して岩肌はぬるぬるだが脆くはなく、溝さえあれば指をかける分には問題ないため、いかにスタンスを誤魔化して登るかが難しかった。どうやって登ったらいいのか全くわからない岩も度々あり、その時はお助け紐を出して頂いた。
途中、1度だけ斜度が緩くなるところがあったので休憩を取る。上を見ても下を見てもナメ滝しか見えないが、沢の対面に聳える鶏冠山がかっこいい。それと、視野を広くしてみるとヤグラ沢の周りの木々も紅葉していて綺麗。ヤグラ沢自体は、泥。
休憩を終えて登攀を再開する。それにしても、本当にこの沢は全てナメ滝だ。気が抜ける場所がほとんどないし、あったとしても数十センチの足場だ。だんだん精神的に疲れてきて、「私は何故こんなところにいるんだ・・」と数回心の声が漏れた。それでもお助け紐にテンションがかかることはなかったのは我ながらよくがんばったと思う。しかしこれも、まともな支点になるものが何もなく丸山さんがよくわからない草と木の中間みたいなものにセルフをとって紐を投げているのを見て「絶対に落ちられない」と思っていたからだろう。おそらくジムだったら幾度となくテンションをかけていた。
そういうわけでロープを出して頂いても状況が良くなることはなさそうだったので時々お助け紐を出してもらうのみに留まった。簡単そうなところは私が先行もしながら進む。
かなり苦労してようやく二俣。二俣も、二俣を終えても延々とナメ。登れば登るほど向かいの鶏冠山が下の方まで見えるようなる。所々岩が露出していて、やはりかっこいい。
安全性を誤魔化して上に上に進むと、永遠に思えたナメ滝も少しずつ倒木や大きめの岩が増え登りやすくなってきて、終わりを感じ始める。ペースも自然と上がるが、ツメに入り始めたところで豊永はバテてしまった。今までとは違い、どのように進めばいいのかはわかっているのに疲労で体の動きが遅くなり進みが遅くなる。まだまだ体力が足りないことを痛感した。しかし休憩ができるほど安定した足場もなく、仕方がないので何とか気力を振り絞って尾根まで上がった。籔のない斜面が続くのでツメとしての難易度は高くは無いはずだ。
石塔尾根は木々が落葉して明るく、落ち葉でふかふかな広めの尾根だった。トップを替わらせていただき、ここから鷹見岩を目指して進む。登山道の破線ルートらしいがよく見ると道らしきものがあり、特に危険箇所はなく歩きやすかった。しかし歩きやすいがためにルートの外に外れてしまうリスクも高く、何度か違う尾根に入りかけた。少しでもおかしいと思ったら地図やGPSを確認することは有効だ。
歩ける地面に感謝しつつ快適に歩いていると鷹見岩の袂についた。荷物は置いて、岩の上で食べるための行動食をポケットに入れて、ルートとして鎖場があるはずだが簡単そうな岩なので来た方角からそのまま登る。ヌメらないし、ゴツゴツしていて無限にホールドがあるし、最高すぎる。
登り切ってみると、なかなかの展望の良さ。標高はそう高くはないはずだが360度見渡す限り山に囲まれていて、青空とのコントラストが美しい。山々の写真撮影を楽しみつつ1本満足バーを食べ、満足したので今度は鎖を使って降りる。
ところで鷹見岩の周りだけ何故かゴミだらけだった。それもほとんどが歴史を感じるようなかなり古い空き缶。オレンジジュースが何故か多い。他はトマトジュース、帆立の貝柱缶など。お酒がないのが意外だ、と思ったがこんなところで飲酒したらまあ危険なのでどこか健康的な品揃えにも納得。数十年前誰かが鷹見岩の上で飲み食いしたのをポイ捨てしたのだろうか。
缶を物色していると、丸山さんが野帳がを落としていることに気づいた。20分以内に戻ってくると告げられ、しばらくひとりになる。山の中で一人になるのは初めてだ。木々の風に揺れる音や鳥の鳴き声が聞こえるようになり、完全な静寂というわけでもないことに気づく。なんだか気持ちがいい。やはり一回くらいは一人山行に行ってみてもいいのかもしれないと思った。木漏れ日が暖かく、お腹いっぱいで、そういえば疲れていたので、眠い。ちょうど良さそうな倒木があったので枕にして寝転がると、ヘルメットが上にずれて首がぐえとなる。そういえば野生動物もいるかもしれないし、ここも安全ではないと思い目を瞑るのはやめて、カメラの写真を見返して待つことにした。今思えば一瞬でも目を瞑ろうとしたのは良くない判断だった。
10分ほどで丸山さんが戻ってきて、すぐに下降を開始する。鷹見岩窪の水流までは方角だけ確認して、適当に斜面を下った。斜面はとにかく落ち葉でふわふわだが、その下には小石が多く埋まっていて落石を起こさずに進むのはほぼ不可能。落石の直撃を避けられるように横並びで降りた。
鷹見岩窪は滝がほぼ皆無で非常に平凡な沢だったが、ラバーがよく効くし浮石も少なく、あまり水も濁らなかったため気分よく下れた。途中で1,2mほどの落差のある所は複数あり、その度に「これは滝なのでは?!」と滝判定を求め降りてからそこを見返しては「滝じゃない・・」という流れを6回ほどやった。無事に滝判定を獲得したのは2つのみであった。
鷹見岩窪はあっという間に降り切ってしまった。鷹見岩-鷹見岩窪の水流までが20分ほど、鷹見岩窪下降が40分程だろうか。西沢渓谷との出合付近からは遊歩道も見え、観光客と目が合う。西沢を無理やり渡渉し(この日いち深く少し怖い渡渉だった)無理やり遊歩道に侵入し、駐車場を目指し歩く。西沢渓谷の美しさは私の語彙力では到底表現しきれないが、紅葉もあいまって本当に素晴らしい所だった。遊歩道なので、沢登りをしない人でも、山登りをしない人でも観光できそうなのでお勧め。しかしこの日は台風と大雨の影響でかなり道が荒れ、渓谷自体も増水していて一部浸水したりしていたので一般観光客にはかわいそうだった。ヘルメットをつけたまま歩いたので少し注目され、話しかけられたりもしたが問題なく駐車場まで戻り、山行完了。お疲れ様でした。
■備考
・ヤグラ沢の沢登りとしての記録は、奥秩父の谷100、山登魂、千葉山の会くらいしか見当たらない。これらの記録では割と良い沢のように書かれているが、今回はヌメりのせいで遡行価値が高いとは感じられなかった。
・ヤグラ沢は易しめの2級上程度、鷹見岩窪は1級下程度の沢。
・西沢渓谷遊歩道では多くの観光客と出会ったが、それ以外は人との遭遇なし。
・ヤマビルなし。
■CL感想
・ヤグラ沢がヌメヌメで思い通りの遡行ができず残念。他の記録ではヌメりにそれほど言及されていないので、たまたまかも?
・鷹見岩はなかなか良く、寄り道の価値があった。東のナメ沢がよく見えて登攀意欲を駆り立てられる。
・転進前の計画であるゼニイレ沢に行って、快適なスラブを楽しみたかったと何度思ったことか。来年リベンジ。
・休日は混みそうな紅葉の西沢渓谷を平日に楽しめて良かった。濁流でない西沢渓谷を初めて見たが、沢屋から見てもやはり素晴らしい渓谷である。
・転進先は西のナメ沢と迷ってヤグラ沢にしたが、西のナメ沢の場合は時間的に厳しかった可能性が高い。アプローチも下山も時間がかかるので、春に行く方が良さそう。
・随分遅い時間から西沢渓谷の奥へと向かう観光客がいたが、心配になる。
■丸山→豊永コメント
・せっかくラバーソールの沢靴を買ってもらったのに快適なスラブ登攀を楽しんで貰えず残念。来年こそ。
・割と難しめの滝でもノーテンで登っていて、だいぶ沢登りに慣れてきていると感じた。
・山の中でうたた寝しても別にいいと思います。
・課題は登攀よりも登坂(の速度)にあると感じる。長い沢にも行けるようになるために、沢山山に行って登りに慣れましょう。
・平日山行へのお付き合いありがとうございました。
■反省
−石塔尾根で野帳を落とした。少し戻って回収したが、今年2回目であって、対策が必須。
■豊永コメント・感想
・ラバーソールの効きを沢へのアプローチで体感し感動した。履いたことのない人にはぜひ1度試してみて欲しい。ザラザラめの壁×クライミングシューズよりも効く。
・沢登りに行ったはずだったが、遡行・下降した沢よりも鷹見岩からの展望と西沢渓谷が良かった。
・ナメは見る分には結構好きなのだが流石にもうお腹いっぱい。体力的にも使い果たしたのでもう今年の沢に思い残すことはない。
・登坂は私の明確な弱点。登山道でも沢でもすぐに息が上がってしまうのでもっと体力をつけたい。そのためには沢山山に行くのが一番なのかもしれないが、残念なことにもうこれ以上ない程の頻度で山へ出向いているのであった。(時間の経過をお待ちください)
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