白山・瀬波川支流(無名の谷)〜オフクベ谷下降
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- GPS
- --:--
- 距離
- 1.8km
- 登り
- 806m
- 下り
- 0m
コースタイム
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
瀬波川本流は水量が多いと徒渉は困難。今年は残雪が多く、不安定な雪渓が多く残っていた。 大瓢箪(おおふくべ)山は、蚊が多い。 またこの時期、本流はアブが大発生するので、その対策も必要かも。 |
写真
感想
画像はすべてsdyamazaruさんから提供。
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瀬波川に初めて入渓したのは実に17年前。あれからコツコツとこの谷の各支流を片付け、本流チョーゲージ谷の遡行を含め、右岸のほとんどの谷に足跡を残してきた。しかし最奥にある1本だけ、まだ手つかずの谷があった。瀬波川を思い出すたびに、その残されている支流の事が頭に浮かんでいた。
瀬波川は流程が長く、本流は登攀的な難しさはないものの、両岸から注ぐ大きな支流群によって水量豊富な流れを作っており、白山フリークにとってはかなり魅力を秘めた渓谷である。
しかしその反面、瀬波川の水位変化は激しく、ひとたび雨でも降れば谷は一変、どんな猛者も寄せ付けない暴れ谷と化す。
この瀬波川の遡行は時期と水量をよく読んだ上で計画しなければ、目的の支流にたどり着けないばかりか、たどり着いても時間切れで引き返しとなってしまうことになるという難しさがある。過去にも遡行中に他県パーティーと遭遇したが、水量が多く、徒渉できずに引き返してきたそうだ。徒渉慣れしていないパーティーがいる場合では、予想外に時間を消耗することは間違い無い。
今回入渓した谷は、この長大な本流の最奥に位置しており、それ故になかなか遡行が実現しなかった。しかしここのところの好天に誘われて、ようやく入渓の機会を得ることとなった。この遡行が実現すれば、個人的な話ではあるが、17年来の切願が叶うことになる。
瀬波川はけっこう遠い。本流のアプローチも考えて、外まだ薄暗い時間に集合して現地へと車を走らせる。
見慣れた取水堰堤口にはすでに釣り師と思われる車が一台。早々に準備を整え、気合いを入れて遡行開始。とにかく支流出合に立たないと話も始まらないということで、本流の徒渉では休まず前進。途中腰上まで浸かる流れもあり、早朝から冷たい流れの洗礼を受ける。
おおよそ2時間余で無名の谷の出合に到達。いよいよ遡行の開始である。
今年は雪が多かったため、谷にも相当の雪が残っていた。脆く危ういスノーブリッヂの通過はこれまで幾度となくやり過ごしてきた経験があったが、今回だけはそうはいかなかった。
谷を埋めるスノーブリッヂに行く手を阻まれ、まずはルートファインディングとブリッヂの下で中をうかがった。右に壁沿いで抜けるか、この先の明るい穴から上に抜けるか、しばらく思案した後に後者を選んで先頭を切った。
先頭が抜けきったことを確認して、後続のsdyamazaruくんもやってきた。が、2人が揃って一息する間もなく、潜ってきたブリッヂが大きな音を伴って崩落した。あと数分ズレていたら、どちらかが雪渓の下敷きになっていたことは確実。それを思うと背筋が寒くなって、その先も慎重にならざる得なかった。"スノーブリッヂくらい…"という些細な気持ちしかいままで持っていなかったことを、大きく反省させられる出来事となった。
中流域から山頂に向けて右の支流に入るのだが、どうもその顕著な支流が現れない。と思う間もなく、足下にぽっかり開いた雪渓の穴の下に、大きな涸滝があるのを発見した。入る予定の支流はこの涸滝を出合にかけて、右曲がりで切れ込んでいた。見上げると上部は眩しいほどに白い一枚岩。周辺流域独特のスラブ壁が広がっていた。
無名の谷の核心はこのスラブ壁の通過だった。
sdyamazaruくんが先陣を切るも、例によってロープなど出せるはずもなく、ボロボロと剥がれ落ちる壁をフリーで慎重に越えて行く。その後を追うが、一本目の取り付きで左足の置き方を間違えてしまい、不安定な壁上でそれを修正しようとして失敗、左膝を捻ってしまった。その痛みを堪え、まだまだ続くスラブ壁を少しずつ登って行く。かなりの高さを登ったところにある涸滝のテラス上でようやく一休止。緊張の糸が切れると、途端に左膝が痛み出してしまった。
下降のオフクベ谷は、17年前の記憶が完全に消えていたが、帰宅してから古い記録を読み返してみると、17年前もやはり涸れ沢だった。しかもそのためにフリクションが利いて、大滝も捲きのトラバースから滝身に移り、直登したりとなかなか楽しんでいたようだ。
しかし滝の高さは目測とは言え、実質30mある滝を15mと記録していたりと、人間の感覚の不確かさをあらためて実感。帰宅後は、遡行図の修正に暇がなかった。
ずっと暖めてきた谷の遡行だったが、行ってみれば行ってみたでまるで呆気ないものだった。山とはそんなもので、行く寸前までが、何よりいちばんの山場なのかもしれない。
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