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Yamareco

記録ID: 21354
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沢登り
日高山脈

チロロ岳、1940m峰、戸蔦別岳、幌尻岳、エサオマントッタベツ岳、カムイエクウチカウシ山

1984年08月08日(水) ~ 1984年08月14日(火)
 - 拍手
GPS
152:00
距離
66.5km
登り
5,345m
下り
5,551m

コースタイム

8月8日札幌(9:00)→パンケヌーシ川曲り沢標高760m取水ロC1(l5:00)
8月9日C1発(5:45)→西のコル(8:55)→チロロ岳(9:30)→チロロ川二股(1400)→上の二股C2(14:30)
8月10日C2発(7:30)→標高924m二股(l2:l5)→ポンチロロ川標高1290mC3(l5:10)
8月11日C3(5:45)→1940m峰(7:55)→北トッタベツ岳(9:50)→トッタベツ岳(11:15)→ポロシリ岳(13:40)→七ツ沼カールC4(15:40)
8月12日C4発(5:40)→新冠川二股(10:00)→標高980m二股C5(l0:25)
8月13日C5発(6:10)→エサオマントッタベツ(8:45)→ナメワッカ分岐(11:20)→標高1917m(14:00)→9の沢カールC6(15:40)
8月14日C6発(7:40)→カムエク北のコル(8:50)→カムエク(11:00)→コル→8の沢出合い(l5:25)→林道終点(l7:00)→コイカク沢出合いC7(18:50)
札内ヒュッテ→ピョウタンの滝→上札内ピョウタンの滝で水泳の後ヒッチ
アクセス

感想

沢登りというものを山岳部で知って以来三ヶ月、初めて一週間の長い山に入ったのがこの山行。リーダーのジェットシンが、まだ踏んでいない北日高の山頂を欲張った計画のため、途中のやや難しい沢のある部分をずいぶん夏道で稼いで、結構広い範囲のピークを巡るという独創的な計画だ。日高の沢の、右も左も分からぬ一年目の僕にその意味など当時分かるわけも無し。どうしてこのパーティーに入ったのかも憶えていない。しかし沢を登って、沢を降りて、又登って・・・という日高スタイルの山旅は、北大でなければ味わえない。日が経つごとに山奥を歩く自由をかみしめるのだ。

タゴサクさんの白タクシーで札幌を出て、パンケヌーシ川に取りついた。日高山脈で初めて登った記念すべきピークがチロロ岳だ。チロロ双峰の間のコルに上がリ、東峰をアタックした。砂礫がハイマツの上に飛び出た、なんとも地味な山頂だった。ポンチロロ川をはさんで、南に逆光の1940m峰が眩しかった。光る夏雲、うだるハイマツの香。これぞ日高の夏の旅のはじまりだ。

チロロ川に一度下ってから1940m峰に登る。頂上直下の急登をハイマツをつかんで登り切ると狭い頂に出た。この山が日高の北部l900m地帯の、カムエクに次ぐ堂々たるピークであることをそれほどありがたく知っていなかったように思う。この山のスマートな肖像を知らずに沢の中からとにかく登ってしまったからだろう。山の名前が数宇であったことも原因だろうか。しかし日高に於いては数字の山名の山のほうが個性を放つ存在であることを後に知った。

ハイマツの中に出来た踏み後を辿ってにょっきり聳えるトッタベツに登った。万里の長城のような長い稜線歩きの一里塚である。l940m峰から延々と夏の乾燥した稜線を歩いてきた僕は、七ツ沼のカールバンドの上で、すでに根性が果てていた。シンさんに促されてポロシリへの登りにかかった。後にも先にもルームの山行で、僕がバテたのはこのときだけだ。ポロシリ直下のみんなだまされる例のニセピークに定番通りだまされて、やっとガスのたれこめるピークにたどりついた。僕は疲労のあまりそこで居眠りをした。

七ツ沼に降りて、テン卜を張ろうとしたが、この夏、沼はすっかり干上がっていた。野村さんがニイカップ川の源頭へ水を汲みにいって、ザック一杯あげてきた。僕はくたびれているのに、沢の中の天場のように水をがぶがぶ飲めないのが恨めしかった。バテてしまってテント設営をさぼってしゃがみ込んでいるとシンさんに、疲れているのはお前だけじゃないんだよ、と叱られた。

その夜は強い風が吹き、貧相な棒切れをポールに立てた夏用テン卜をゆさぶった。夜中に小便にでた本多がもともとぼろの入り口のチャックを壊し、二度と締まらなくなってしまった。風でテン卜が飛ばないよう、緊急脱出に備えて、朝の2時ころからパッキングし、しゃがんでテン卜を押さえる始末。真鍋さんが壊れた入り口を糸で縫い付けていた。薄明るくなったら、朝飯抜きでさっさと新冠川へ下った。

次はエサオマンの北カールを登った。神威岳南面沢の二股の天場を出て、沢を詰めると巨大な円形劇場のようなカールの中に入った。急なカールバンドをハイマツを踏み越えて登りに登ると、細い稜線の上にでた。その時には、山頂はその細い稜線が幾分高くなっている場所だとくらいにしか思われなかった。夏道の途中にあるただのポコにしか思えなかった。その後、エサオマンのすばらしさを知り、何度も通うことになろうとは。

稜線を歩いて南へ進む。ナメワッカ分岐のあたりだろうか。ハイマツの上に横たわってミーハーな真鍋さんあたりがラジオをつけると、ちょうどロサンジェルスオリンピックの閉会式をやっていた。その日は札内川の9の沢カールに降りて、天場とする。薮の開けた、水のながれる天場を見つけ、夏テンを張って焚火。いかにも羆が躍り出てきそうな天場だ。でもカールの正面には札内岳の雄姿が見えるこのカールボーデン、山岳部歌の二番にぴったりの場所だ。翌日は再び稜線にあがり、カムエクを目指す。天気は今一つだったがその三角の引き締まった頂を、この夏の最後の総仕上げとして祝い、8の沢左岸尾根を下った。

長い札内林道を歩いて観光地のピョータン滝の滝壺で飛び込んで泳いだ。やはり別のルートで一週間日高を彷徨った宮井さんのパーティーとここで一緒になった。ササキのパンツが、柄パンでなく、真っ白いブリーフだったので、泳ぐとやばい感じだったが、見て見ぬ振りをした。良い天気だったので車で滝を見物に来る人が多かった。その人たちにめいめいヒッチで乗せてもらい、帯広のハゲ天でリーダースタッフのおごり天丼を3杯食べた。4杯はなかなか食えない。札幌までは思い思いにヒッチして帰った。車のラジオからはサザンオールスターズやフットルースがかかっていた。お金はぜんぜんかからなかった。


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