天狗岳(過去レコです)。
- GPS
- 32:00
- 距離
- 9.2km
- 登り
- 809m
- 下り
- 791m
天候 | 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
それなりに危険個所があります。 |
予約できる山小屋 |
黒百合ヒュッテ
|
写真
感想
2009年3月20日からの3連休であるが、そのうちの2日間、21、22日の両日をつかって北八ヶ岳の天狗岳に登る予定を立てた。この3日間程、初夏の気候が続き、我が家のコヒガンザクラははや満開。出発の日も朝から快晴。6時半に出発。中央道を諏訪ICで下りる。道路に積雪はなく、渋の湯の手前で少し凍っている程度。渋の湯の駐車場は満杯で、道路脇に車を止めていると渋御殿湯のかみさんがやってきて、「料金を先に払って、並べてとめろ」、と喚く。「道路脇でも金をとるのか、さすが渋の湯、渋いな」、と思いながらも渋御殿湯の受付けで2000円を払う。
閉鎖されている渋の湯ホテルの横の登山道には、雪が積もっている。渋川にかかる橋の手前の小屋の前でアイゼンをつけ、10時35分に橋を渡る。すぐに高見石と黒百合平との分岐があり、右手の黒百合平方面に向かう。登山道はカリカリ、ピッケルで叩いても割れないほどのアイスバーン、おまけに急坂ときている。アイゼンとピッケルを頼りに慎重にゆっくりゆっくり登る。アイゼンはしっかり役割を果たしているが、ピッケルは只の杖。しばらくすると汗が出始め、まるで夏のようだ。踏み固められたトレイルを少しでもはずすと、ズボッと足が沈む。行き違いのため道をよけたのだろう、深い足跡が所々にあいている。こんな深い穴に片一方の足だけを突っ込んで、いったいどんな格好になったのだろう、想像すると笑いがこみ上げて来る。高見石への分岐でスノウシューの男女二人連れが休んでいる。男は額から血を出して、それをハンカチで押さえている。何処へ行くのかと尋ねると、この辺りをぶらぶらして帰るという。山腹を斜めに登るのだが、これが結構急勾配でおまけに長い。登りがやや緩やかになった所で雪の上に腰を下ろして休憩。まだ12時前だがオムスビを取り出して昼食とする。アイゼンの袋を敷いていたが、じきにお尻が冷え、立ち上がって食べる。先ほどの二人連れがスノウシューで登ってきて先に行く。額の出血はとまっているようだ。わたしも出発、すぐに八方台への分岐に着く。「←黒百合平」の標識に従って尾根道を進む。シラビソやコメツガの林をしばらく登ると右手に唐沢鉱泉への道を分ける。見上げれば青空が広がり、降り注ぐ陽がたっぷり積もった雪に反射し、明るい道を快適に登る。木々の高さが低くなってくると間もなく樹林帯を抜け出して黒百合平に到着。登山口から2時間20分ほどの行程であった。黒百合ヒュッテは立派な小屋、テン場には色とりどりのテントが張られて、小屋の前は大勢の人で賑わっている。受付の女性、「夕食は5時半から、朝食は6時から、4時半になったらお部屋に案内しますのでそこら辺にいて下さい」。ザックを片隅において座っていると、受付の女性が寄ってきて、「、個室が空いていますがどうですか?千円ですが」、と云うので、「お願いします」。案内された個室は2階の大広間の奥、窓は2重で結構あったかい。まだ一時過ぎ、夕食までゴロゴロしているには時間がありすぎるので、ピッケルだけ持って外に出る。小屋の前の小山「がま岩」には、頂上まで至るところに足跡がついている。45度もあろうかと思われる急勾配、ふんふん成る程、ピッケルが役に立つ。「がま岩」に登ると平坦な台地、風で雪が吹き飛ばされ、溶岩が露出している。なだらかに登ると向こう側の景色が開け、左下に「すりばち池」が白く光り、「天狗の奥庭」の向こうに天狗岳の双耳峰が並び立っている。東天狗は雪のつかない天狗岩が飛び出してゴツゴツ、西天狗は雪ですっぽり覆われて対照的に穏やかな山容を呈している。溶岩がゴロゴロ連なった「天狗の奥庭」を下り、雪のたっぷり積もった平坦なトレイルを辿る。滑落防止訓練をした跡がある。わたしもピッケル操作の練習をしてみようかなと思うがちょっと急斜面、練習で骨折でもしたら笑いものなので止めておく。急坂を登り稜線に達すると、中山峠からの道と合流する。主尾根のやや下をトラバースするように細いトレースがついている。それほど急では無いが、滑落すれば止まるところは無い。下を見ないようにし、左足は進行方向に、右足は谷側に向けて進む。天狗岩直下の急登を、一歩一歩ピッケルを差し込み登る。これを登りきると目の前に西天狗岳が飛び込んでくる。東天狗岳との鞍部から西天狗岳の頂上まで、真っ白な山肌にトレイルが一本、そこを団体さんが列をなして登っているのが見える。雪のとんだ溶岩の上を歩いて東天狗頂上に着く。晴天のもと、南に硫黄岳から続く南八ヶ岳連峰、真ん中の赤岳と阿弥陀岳がひと際高く、白く輝き、きりっとそそり立っている。その後ろに見える南アルプスの山々は、残念ながら黄砂で霞んでぼんやりとしか見えない。東には目の前にもっこりした東天狗岳があり、先ほど隊列を作って登っていた人達の姿が頂上に見える。中央アルプス、北アルプスはやはり霞んでいる。北には北八ヶ岳の山々が穏やかな山容を並べ、中でも蓼科山がひと際端正な姿を目立させている。さすが諏訪富士と呼ばれるだけの事はある。風が強くフードがばたばたしているが、しばらく頂上からの景色を楽しんでから下山にかかる。最初の急坂をピッケルを頼りにゆっくり慎重に、時には後ろ向きになって下る。狭いトラバースも、風に吹き飛ばされないよう、アイゼンを踏みしめて下る。トラバースが終わり再び急坂、前方下の「天狗の奥庭」に向かって下る。中山峠分岐からは快適に下り、「天狗の奥庭」から最後は「がま岩」の急坂を下り、黒百合ヒュッテに帰り着いた。布団がずらりと並べられた大広間、布団の上を歩いて奥の個室へ。缶ビールと持参のブランデーをちびちび。5時半からの夕食、食堂は満杯である。わたしの横は東京からのツアーを率いる若いガイドさん。缶ビールを飲みながら山の話しをする。夕食終わって部屋に戻るが、酔いが回っているのですぐに布団に入る。大広間の人達の話し声で眠れないが、いつしか夢の中へ。夜中、風が吹きすさぶ音に目が覚める。明日は大荒れだろう。
翌朝は5時半に起床、窓の外はもう明るい。ドアーを開けると大広間の人達はもう誰もいない。6時から朝食を摂って、ゆっくりと仕度にかかる。準備が終わって下におりると、あんなに大勢いたひとはもう出発し、外人さんが4人いるだけである。まだ7時半にもなっていないが、ここにいても何もすることが無いのでハードシェルに身を固めフードをかむって外に出る。雪が風に舞い上げられ、テントはバサバサ揺れている。昨日のうちに天狗岳に登っておいて良かった、こんな風の強い日には登ることはないだろう。このまま渋の湯まで下るにはまだちょっと早すぎる。中山峠から高見石までならそう大したことは無いだろうと、テン場の横から中山峠に向かう。突風にあおられ、5分も歩かないうちに断念。素早い決断、このまま引き返すことにする。樹林の中に入ると梢は風になびき、ザワザワと風の騒ぐ音がするが、登山道を下るわたしの所までは届かない。フードも取り外す。締まった雪の上にザクザクと刺さるアイゼンの音が快い。トレイルをはずしても足が沈むことはない。唐沢鉱泉への分岐もやり過ごし、快適に下る。最初は細かい雪であったが、雪の結晶は徐々に大きくなり、いつしか雨に変わった。昨日登って来たとき、スノウシューの二人に出会った場所、高見石への分岐に至ると、男が一人地図を広げて尋ねて来る。「家があって、駐車場があって、駐車料金2千円払った場所に行きたいのだが、どちらへ行けばいいのか?」と。渋の湯のことを云っているらしいので、「どちらでも同じですよ」と答える。男の持っている地図を見ると、高見石方面へ行くほうが近道らしいので、わたしは右に折れる。急な下り、登山道は氷と化し、アイゼンをつけていても怖い。昨日額から血を流していた男がいたが、スノウシューではこの氷道は登れないだろう。登山道を避けて林の中の雪の上を下る。高見石からの道に合流し、勾配は緩くなっても氷道は変わらない。左手は山、右手は谷、登山道を避ける事が出来なくなり、やむなく氷にアイゼンをがっつんがっつんと踏みおろしながら恐る恐る下る。渋川にかかる橋にたどり着くまでずっとこの調子であるが、こんな氷の上でも滑ることなく、アイゼンは優れものであると実感。橋を渡ってアイゼンをはずし、車に戻ってザックを入れ、かわりに着替えを持って渋御殿湯に入る。石鹸の使える「西の湯」に入り体を洗う。入ったときはわたし一人だけだったが、どんどん人が入ってきて4人分の洗い場も浴槽も一杯になり、外人さん4人は立ったまま空くのを待っている。
途中寄り道をし、蓼科の北欧料理「ガムラスタン」で昼食。
アイゼン、ピッケルの冬山初体験、何だかやみつきになりそう。
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