大山(過去レコです)。


- GPS
- 32:00
- 距離
- 7.5km
- 登り
- 995m
- 下り
- 989m
天候 | 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
とくに危険個所はありません。 |
写真
感想
2006年6月3日、鳥取砂丘に立ち寄ってから宿泊地の大山町に着いた。当日は山開きが行われる日で、一本500円也のたいまつを買い、古びた石畳の道を登って大神山神社奥宮へ行くと、神社の中では神事が執り行われていた。あたりが暗くなり始めた7時半に神前のご神火をたいまつに移し、たいまつ行進が始まった。大提灯を先頭に、神官、僧兵、からす天狗が続き、その後に従う一般参加者の中に混じってたいまつをかかげた。二千本のたいまつの灯かりが参道を埋め尽くし、神秘的な雰囲気を漂わせていた。天気予報では明日も晴れである。
翌朝5時10分に夏山登山道の登山口に入る。古びた僧坊跡の苔むした石垣に沿って進み、阿弥陀堂を右に見て丸太で土留めされた階段を登る。明治になるまでは一般の登山者は入ることを許されず修験者だけの世界であった。昨夜のたいまつ行列の影響もあるのだろうが、なんとなく神秘的な雰囲気が立ち込めている。ミズナラの林、若葉が明るく、マイナスイオンとオゾンをたっぷり吸いながらゆっくりと進む。二合目で一休みし再び登り始めると、もう若者二人が下ってくる。聞くと「二時に登り始めて、頂上でご来光を迎えてきた」と言う。わたしはご来光というものに関心はないが、若い人達でもそんな事に興味を持つ人がいるのだと感心する。整備された階段が続き、ちょっと早いが四合目でも一休み。このあたりから下ってくる人と行き違うことが多くなる。それも全て若者で、聞くと鳥取大学のユースホステル同好会だとか、島根大学のサークルだとか、岡山大学のワンダーフォーゲル部だとか、極めて健全な大学生が多いのに驚かされる。こんなに多くの若者が登っている山は珍しく、大山が地元の人に親しまれ愛されていることがわかる。徐々に勾配が増し、左に行者コースからの道が合流し周りの木々も低くなり始めた頃、コンクリートの小さな避難小屋のある六合目に到着する。眼前に三鈷峰と宝珠尾根が見え、右を覗けば弥山、剣が峰、天狗が峰と続く大山の稜線と、その下に崩れた北壁を間近かに見る。さわやかな風が頬をなで、汗を吹き飛ばし気持ちよい。山開きの様子を撮影しているテレビ局のカメラを背に六合目を出発すると、タチツボスミレやイワカガミの花が咲くガレ場の急坂となる。これを登りきると勾配は緩くなり木道が現れる。山頂近くは一面背の低いダイセンキャラボクに被われ、薄晴れの天気の下、穏やかさを醸し出している。ダイセンキャラボクはキャラボクの分布南西限で、日本最大の純林であることから特別天然記念物に指定されており、保護のためかくの如き木道が整備されているのであろう。一部狭い尾根があるが再び木道が続き、避難小屋が見えてくると間もなく弥山に到着。ゆっくり登って、途中休憩もたっぷりとって三時間の行程だった。剣が峰から天狗が峰に続く稜線の両側は崩壊しその姿は迫力満点だが、弥山から先のナイフリッジはロープが張られて立ち入り禁止となっている。残念ながらかすみ空で日本海は見えなかったが、この時期、雨が降らなかっただけでも良しとせねばならないだろう。
石室を通るコースを下り、ガラ場の急坂で滑ってしりもちをつく。列をなして次から次へと登ってくる人達のために待つ時間が長い。十時から山頂で神事が行われることもあり、人の列はとぎれることがない。ヘリが2機上空から山開きの様子を取材している。途中から右手の行者コースに入り、明るいブナ林の中の急な階段を慎重に下って、広々とした川原のような元谷に下り立った。崩壊した大山の荒々しい北壁の眺めは、涸沢から見上げる穂高の山々を想像させる。たかだか千七百mほどの山であるが、ここからの眺めはアルプスに匹敵するものである。大山を西から眺めると裾野を広げた富士山のような姿で、伯耆富士と呼ばれるほどの秀麗な山だそうだが、ここからの眺めが本来の大山の姿を表していると思う。惜しむらくは無粋な幾つもの砂防ダムの存在である。ダムから溢れるばかりの砂礫の多さは、この人造物の無意味さを示し、いくらあがいても崩壊を続ける大山に逆らうことは出来ない。大山はおよそ2万年前の噴火で出来た溶岩ドームで、時を経て今や解体期にある。地震があるごとに崩壊が進み、いつの日か大山が小山に変わる日があるだろうが、それが自然の成り行きというものである。自然は自然のままにするのが良い。たっぷりと大山を堪能し、大神山神社奥宮に帰りついた。大山は日本百名山の名に恥じない味のある山であった。
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