経ヶ岳(過去レコです)。


- GPS
- --:--
- 距離
- 7.7km
- 登り
- 889m
- 下り
- 887m
天候 | 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2003年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
左程の危険個所はありません。 |
写真
感想
赤兎山の頂上から見えた経ガ岳は荒島岳より堂々としており、関心を持って調べてみると標高は荒島岳より高く、両白山地の盟主であると記されている。長野県にも同名の山があるが、いずれも山頂に経文が埋められている事がその名の起原のようである。
平成15年10月4日、暗いうちに出発し、福井県に入って九頭龍あたりでようやく明るくなって来た。勝原を過ぎた所で「六呂師高原」の案内に従い右折し県道大野勝山線を走り、スキー場が見えて来た所で右折して林道法恩寺線に入った。林道を未だ登りきっていないが、右手に造林用作業道が分かれ、そこに「経ガ岳登山口」の案内がある。しかし林道はまだ上に向かっているので、他にも登山口があるのでは無いかとさらに進むと、道は下りにかかり駐車場が現れた。登山口らしきものは無く、やはり先程の案内が入り口だったのだろうと引き返し、ゲートが閉じられた作業道の入り口の前に車を止める。仕度を整えていると石川ナンバーの車がやってきて、中年の男性が「ここが登山口ですか?」と聞くので、「多分そうでしょう」と答えた。その人が車をとめている間に、作業道のゲートをくぐり、7時半に歩き始めた。10分程歩くと道は二股に分かれており、左は登り、右は下りとなっている。案内も目印も見当たらず、生憎、地図も案内本も持って来るのを忘れてきたので、ままよと左側の道を登る。10分程登るがどうも方向が違うような気がして今来た道を引き返すと、先程の石川県の男性がおり「どちらの道が正しいのか」と尋ねると、「私もわからないが、どうも登山口が違うようだ」と云う。その人が迷っている間に、右の道を下って行くと砂防ダムがあり、道はそこで途切れている。再び引き返すと、石川県の人はいなくなっていたので、左側の道へ行ったのだろうと思い、わたしも先程行った左側の道を再び歩き始める。8時40分、左側に「経ガ岳、唐谷コース、登山口」と記された標識があり、これで間違い無い事が判りホッとした。左が山肌、右が谷の細い道を、滑り落ちないように10分程進むと、豊富な水が流れる谷に降り立った。転石をたどって向こう岸に渡り、何の目印も無いので人の踏み跡らしきものを頼りに進むと急坂となった。めったに人が通らないような道で何やら心細いが、わたしより先に先程の人が行った筈なので心強い。ところが蜘蛛の巣も張っていて人の通った形跡が無く、先程の人は何処に行ってしまったのだろうと再び不安が押し寄せる。赤い小さな実をたわわにつけたナナカマドが色づき始め、初秋の彩りをかもし出しているがそれを楽しむ気分ではない。枯れ沢や水が流れる沢を、果たしてこれが本当の登山道なのだろうかと不安を抱きながらも、ほかに道らしきものも無いので歩を進める。行く手に転がる石どもは苔むしており、頂部が一部禿げているのが足跡と思われるが、その形跡は余りにも心細い。所々にロープが付けられているので、登山道である事に間違いは無い。上空が開け、大きな石がゴロゴロと積み重ねられた幅の広い枯れ谷が現れ、石をつたってこれを登っていると、すぐ隣りの林の中でガサゴソと大きな動物が動く音がする。一瞬身を構え、背中のカウベルを振り鳴らし、恐る恐る見ても何者か定かでない。慌てちゃいかんと、運を天にまかせてその場をやり過ごし、再び森の中の道となる。緩やかなぬかるんだ道を歩くと、明るくて広い原っぱに出た。草が一面にはえた原っぱに足を踏み込むと、ズブズブと足がとられる湿原である。良く見ると、ひとすじの、かすかに草が傾いた踏み跡らしきものが見える。これをたどって湿原を横切ると、「山頂←池の大沢→唐谷」と記された立て板があり、「クロサンショウウオ生息地、本州中部から東北地方にかけての高い山に分布する」と記されている。やっとここで一息ついて水を飲んだが坐る場所もなく、立ったままの休息である。右手上方にも、正面上方にも格好の良い山が立っているが、どちらが経ガ岳か分からない。踏み跡らしきものをたどって進むと再び森の中に入り、しばらくは緩やかな道を歩くがやがて急登となる。長い急坂を、時にはフィックスロープを握ってよじ登り、心臓がバクバクして来る。バクバクが不整になっても登り続け、2段脈が出始めた所で立ち止まる。心臓を気づかいながらゆっくり登ると尾根に出た。左右の山の鞍部で、道は両側に分かれているが、「切窓」と書かれた小さな標識があるのみで、どちらが頂上なのか分からない。池の大沢から見た所では、右手の山のほうが高そうな感じだったので、右手の道に入る。木立は無くなり青空が広がり、笹でおおわれて柔らかそうに見えるなだらかな山であるが、かなり急な直登である。森の中から出て景色が一変し、道端にはオヤマリンドウが咲き、気分は一転明るくなる。どんどん高度が上がり、振り返ると、左手の山が象の背中のように眼下に横たわり、背骨の如く長い尾根道が続いているのが見下ろされる。どうもあの道が正規の登山ルートらしく、人の姿も遠望出来る。ここで今登っている道が経ガ岳頂上への道である事を確信する事が出来、ひと安心するが再び2段脈が出現。ゆっくりゆっくり、休み休み登り、頂上を目指しているとひょっこり開けた場所に出た。中年の2人連れがやすんでおり、かたわらに柱が立っている。何の事はない、そこが頂上であった。途中、道に迷ったが、所要時間は作業道ゲートから3時間15分であった。頂上は大きな広場で、さえぎるものの無い360度の展望が待っていた。目の前に赤兎山があり、小さく赤兎避難小屋も見え、その向こうに白山が聳え、それに続いて別山から美濃馬場にいたる峰々が並び、それらから幾つもの支尾根が伸びている。一の峰の向こうに御岳が堂々と坐り、乗鞍も垣間見え、えもいわれぬ展望である。反対側には荒島岳が、その向こうに能合白山、冠山と続き、目を右に転じれば福井の町並みが広がっている。暑い程の日射しの下、おむすびを食べながら坐っていると、次々に人がやって来て感嘆の声を発する。頂上も騒がしくなり、充分に景色を楽しんだので、11時15分に頂上を発った。頂上からの急坂を降りる際いきなりこむら返りが起こり、ぐっと我慢してストレッチングを行う。切窓迄の急坂の途中で例の石川県の人が休んでおり、どうしたのかと尋ねると、あれから車まで戻り人に聞いて、もっと先の登山口を教えてもらったとの事であった。池の大沢の手前で、中年の男性1人と女性2人のパーティーが登って来るのに出会ったが、これが唐谷ルートで出会った唯一の人達であった。「昔はこの登山道が主であった」と話して呉れた。途中、ヘビに遭遇し、これを避けて飛び越し、着地した所が斜めになった水の流れている岩盤で、滑り落ちてズボンが水浸しになってしまった。急坂を慎重におり、1時32分に車に帰り着いた。下山に要した時間は2時間17分であり、高度計を見ると、およそ760mであった。
平成の湯で汗を流し、眠気を振り払いながら5時前に帰り着いた。帰宅してから調べて見ると、象の背中のように見えた山は、中岳から杓子岳さらに保月山へ続く山で、その先に保月山コースの登山口がある。唐谷コースを紹介してある本もあったが、「初心者だけの入山は無理。本コースは足腰に自信の無い人にはすすめられない」と書かれてあった。行く前にこれを読んでいたら、このコースを登る事は絶対に無かっただろうが、勉強不足のおかげでちょっとした冒険をする事が出来た。
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