富士山吉田口ルート 佐藤小屋周辺 雪上訓練
- GPS
- 29:30
- 距離
- 8.1km
- 登り
- 903m
- 下り
- 902m
コースタイム
二日目 佐藤小屋周辺雪上訓練昼まで12時半発〜14時半馬返
天候 | 両日晴れ 低温マイナス15度 朝は強風16m/s |
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過去天気図(気象庁) | 2013年01月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
五合目まで積雪あるがトレースあり |
予約できる山小屋 |
里見平★星観荘
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写真
感想
東京都岳連の雪山講習会とリーダー検定を傍観者で参加。
朝、馬返につくと、そこに張っていたテントから、ロブソンでお世話になった堤信夫さんが予期せず出てきて、一年半ぶりに再会でハグした。
今週末は東京都岳連6班50人と相模原山岳協会20人あまりが五合目で雪上訓練をするので小屋、テント併せて総勢100人近くになった。富士山五合目は訓練の山。首都圏に近くて、風が強くて雪が固くて、天気がよくて、滑落停止練習にもってこい。
雪山登山講習会は初心者対象。ここ数年は大人気で、すぐ定員50人いっぱいになってしまうそう。若い人が多くなっているのがこの数年の傾向だそう。スケートリンクみたいにコチコチになった五合目の道で、うれしそうにアイゼンでとんだり跳ねたりしている若者の姿が凄く印象的だった。
その横で行われていた、指導者6人を育成する講習兼検定会で、堤さんが講師だった。ピッケル無し、頭逆さまで滑り落ちて、スピードがつきすぎる前に頭を斜面の上に向ける稽古。これをキャッチャーみたいに下で堤さんが飛びついて止めている。やる人も怖いけど見ているのも怖い。次、おっこちてピッケルストップする受講生に乗っかって一緒に滑り落ちてピッケルを立てる角度を教えたり、足引っ張って一緒に落っこちながらそのタイミングを叫んで教えたりで、こんな熱血講習見たことない。
スタンディンアクスビレイでは滑落者を止めた後どうやってロープを固定するかの稽古。実際にやってみるとモタつく動作の理由も、経験でなんでも知っている。細いテープシュリンゲのプルージックが凍ったらどう効かないか、効かなかったらどうやるか。冷凍庫でザイル凍らせて試したりもしている。こういうのは大抵、講習会でしかやらないけど、堤さんの場合、山中での厳しい実体験があり過ぎだから、「そんなの現場じゃ通用しない」ということがいくらでもあったのだろう。
実の経験から生まれた、自分で考えた堤式の技術も多く、見たことなくて目からウロコ、でも見せられると効果覿面で凄く面白い。手品のような古武術のような。古武術と言えば甲野善紀さんみたいに何事も深く考えられた結果の理由がある。立ち位置は右か左か、ビナをかけるのは上からか下からか。
合気道の稽古も同じだけど、体術の稽古というのは本で読んだり講義で聞いても駄目で、お師匠がやっているのを見せてもらって、自分でやってみて直してもらって、それを反復して初めて体が覚えてのものだ。体が習得してから効能が分かることも少なくない。すぐには伝わらないのが堤さんはきっともどかしいだろうけれど。一人でも多くの人に、豊かな経験を伝授したいと思っていることをすごくよく感じる。ここ数年、週末は山や警察や消防のレスキュー講習続きだそうだ。
武術の稽古に似ているのがもう一つ、生徒が師匠に学ぶ態度には厳しい。学ぶ態度がぼやけていると見てとると、「帰っていいいよ」とガツンと厳しいことを言う。お師匠に何かを学ぶ態度というのは、武術の世界ならあたりまえの距離感と立ち位置がある。それを多分経験からだろう、強く知っている。
二日目の朝は風が凄く強くて、山頂アタックに行くよりこっちの講習のほうに惹かれて予定変更した。風はすぐにおさまって、結構なアタック日和だったけど、堤さんのほうに出てよかった。山頂はまた次回。今回はシカタさんも二日目の都合がつかず下山し、一人でのアタックは佐藤さんも心配するからやめた。
今週はこの冬最低の寒波が来て日本海側は豪雪だった。佐藤小屋はマイナス15度。80人弱の宿泊を佐藤さん一家が世話してくれた。ゴーカイで美しい奥さん。
訓練の山は、冬の富士山の一つの顔だ。
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