各務原アルプス縦走☆猿啄城山〜権現山〜鷹巣山

- GPS
- 08:25
- 距離
- 26.4km
- 登り
- 2,024m
- 下り
- 2,057m
コースタイム
- 山行
- 7:29
- 休憩
- 0:57
- 合計
- 8:26
| 天候 | 晴れ一時曇り |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2020年12月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
下山後はタクシーにて岐阜駅へ |
| コース状況/ 危険箇所等 |
良好に整備された一般登山道 |
写真
感想
各務原アルプスは標高200〜300m台の山が延々と東西に連なる山地であり、出張のついでの軽装備でありながら長距離縦走という欲求を十二分に満たしてくれるところのようだ。この時期、低山ならではの紅葉も期待されるところだ。
朝から快晴の天気、宿泊したホテルからも御嶽山の左手には白く冠雪した乗鞍岳がよく見える。まずは名古屋駅を出発すると新快速で岐阜に向かい、駅構内のコインロッカーに荷物を預ける。高山線が出発すると、車窓の左手にはすぐに金華山と各務原アルプス西端部の山々が目に入る。
坂祝の一つ手前の駅、鵜沼の駅名標で初めてこの駅の読み方がわかるが、知らなければ「さかほぎ」とは到底読めないであろう。坂祝で下車したのは私の他には3人ばかり。一人は明らかにハイキング、もう一人はトレラン・スタイルだ。跨線橋からは猿啄城趾のある城山が正面に大きく望む。山頂には物見櫓のような展望台があるようだ。
登山口には到着するとかなりの数の車が停められている。植林の中を歩き始めるが、山頂が近づくと低木の樹林となり、随所に展望が開けるようになる。木曽川を眼下に見下ろし、左手には御嶽山が綺麗に見える。雲ひとつない蒼空が果てしなく広がっている。
猿啄城址が近くと上から続々と降ってくる人とすれ違う。どうやら人気の山のようだ。山頂に到着した時には他に誰もいなかった。展望台からは360度の好展望が広がる。木曽川の右岸に広がる加茂市の市街の上にはうっすらと朝靄がかかっている。その彼方には恵那山が大きく見える。
電波塔のある明王山を目指して、尾根を西に辿る。いくつもの小ピークを越えるが、歩きやすいなだらかな尾根が続く。樹林の切れ目からは左手には随所に広大な濃尾平野の眺望が開ける。
明王山の山頂には北に広がる眺望の山名を記した案内板があり、乗鞍岳の左手には穂高岳、さらにその左手に見える銀嶺は笠ヶ岳と薬師岳であること知る。北に見える山塊は瓢ヶ岳、今淵ヶ岳、高賀山らしい。案内板によると能郷白山や白山も見えるらしいが北の方角には雲がかかっている。山頂の西側には連綿と連なるピークの彼方には山頂に岐阜城を抱く金華山を遠望する。
この各務原アルプスの東部は二重山稜となっており、この明王山からは北側の尾根に容易に乗り換えることも出来るが、各務原アルプスの最高地点の金比羅山がある南尾根を辿ることにする。明王山からは小さな鞍部を経てわずかに登り返すと社殿のある金比羅山に到着する。
なだらかな尾根を下降して一度、谷に降りる。舗装路と交差すると、尾根からは大きく展望が開け、谷の周囲を取り巻く山肌の錦繍を見渡すことが出来る。
谷に下るとトレランスタイルの若い女性三人が出発の準備をしている。谷からは二重尾根の間の谷を辿ることになるが、沢沿いの道に入るとここでも続々とトレランの人たちが降ってくる。この各務原アルプス東部ではトレランの大会が行われるようだが、この日はその試走会なるものが行われているようだ。
谷を登りつめて尾根の合流地点に達するとトレラン・スタイルの多くの人たちがいるが、ここを過ぎると途端に尾根は静かになる。空には急に雲が広がり始め、瞬く間に青空が消失する。大岩見晴台と呼ばれる小ピークでは「のりくらおんたけ日本一見晴らしがいいところ」と記されているが、先程まで綺麗に見えていた御嶽山の山頂部は雲の中だ。
尾根を緩やかに辿って金山のピークを越える。急下降が始まったかと思うと双子岩と記された大きな岩の展望地があり、これから辿る向山にかけての稜線の眺望が広がる。双子岩とあるがもう一つの岩が見当たらない。
峠に下ると姿の良いお地蔵様の石仏がある。明和七年十一月吉日と刻まれている。1770年に相当するらしい。この岩坂峠は尾張と美濃を結ぶ交通の要路の一つであったようだ。そもそも各務原アルプスは尾張と美濃の間を遮るように東西に横たわっているので、この山地を南北に縦断する峠越えの道はいずれも交通の要路だったのだろう。
尾根道には数多くのモチツツジの花が咲いている。勿論、この季節なので一つの株に多くても2〜3の花を見る程度ではあるが、最近、暖かい日が続いたので花が咲かせてしまう株が多いのだろう。尾根道を登り返すと先程、降ってきた山の斜面には上下に並んだ二つの大きな岩が目に入り、双子岩と命名された理由を合点する。
いくつもの小さなピークを越えて三角点のあるピークに登り詰めると須衛と山名標がある。ピークからは久しぶりに濃尾平野の光景が展開する。ピークを西に向かうと二つの大きな山の間に金華山が目に入る。二つの大きな山はそれぞれ岐阜権現山と各務原権現山だろう。金華山の姿を目にするのは明王山以来、久し振りだ。先程まで空を覆い尽くしていた雲はまばらになり、明るい日差しがさしてきた。
向山を過ぎて坂を下ると桐谷坂に到着する。東海北陸自動車道がこの峠の西側をトンネルで潜っているが、この高速道路がなければ岐阜の北部から名古屋に向かうにはこの峠を越えることになったのであろう。峠の祠には石仏の三面の観音様の祀られている。三面ということは馬頭観音だろうか。険しい顔をされていることが多いが、石仏の観音様は驚くほど柔和な表情を浮かべておられた。
桐谷峠からは車道を渡り、林道から谷沿いの登山道へ入る。権現山という名の山は多いが、大概は鋭鋒なので登りがきついことを覚悟していたが、意外にも尾根は緩やかな尾根が続く。明るい陽射しのせいもあり尾根上にはコナラやタカノツメと思われる低木の黄葉から鮮やかな透過光が降り注ぐ。
山頂に到達すると突然、展望が開け、西側には金華山へと続く山並みが明瞭に見える。人の気配もなく、山頂を独占させて頂く。山名標は芥見権現山と記されているが、芥見とはこのあたりの地名らしい。
時間は12時半を少し回ったところ、日没までに金華山にたどり着くにはこの山に12時に到着したいと思っていたが、前半でもう少しスピードを上げる必要があったようだ。しかし、金華山に辿り着かねばならない山旅でもないので、今日は無理のない速度で行けるところまででいいだろう。
南側には各務原権現山が近くに見えるが、老洞峠への下りと登り返しが今回のコース中最もきついところだろう。老洞峠への下りはかなりザレており、滑りやすい。峠に下ると急峻な尾根を一気に登り、北山のピークに出る。ここから各務原権現山には一度、方向を逆に転じて尾根を東に辿る。
各務原権現山は立ち枯れの樹の多いところだ。立ち枯れているのは樹影からすると杉の樹だろうか。山頂の東屋でクロワッサンのサンドウィッチでランチ休憩にする。山頂には続々と人が登って来られる。先程までいた芥見権現山とは異なり、こちらは人気の山らしい。
尾根を西に辿ると伊吹の滝への分岐がある。尾根を西に直進して次のピークから下降すると下道を歩く距離が少なくなるのだが、滝に惹かれてここを下ることにする。延々と階段を下ることになるのだが、ここでもかなりの数の人達とすれ違う。どうやら伊吹の滝から各務原権現山に登るのはかなりの人気コースのようだ。
伊吹の滝は水垢離のための人工の滝であり、不動尊が祀られているところであった。滝そのものは迫力はないが、境内には紅葉した楓が見事であり、さらに椿の花が満開の花を咲かせている。境内にはかなりの車が停められているが、多くは各務原権現山に登られている方のものだろうか。
伊吹の滝から次の三峰山までは市街地を歩くことになる。これが意外と長く感じられる。道標も何もないので地図がなければ登山口がわかりにくいところだ。見上げると、山の上の方に展望台が見える。
ようやく三峰山の展望台にたどり着くとここの眺望は素晴らしい。既に明王山ははるか彼方であるが、二つの権現山を含め、各務原アルプスの全体を俯瞰することが出来る。西に進むべくピークの西側の尾根を下降すると金華山までの眺望が開けるが、金華山はまだまだ遠い。
気持ちが焦ったせいだろうか、気がついたら日野の市街に下降する尾根に入り込んでいた。ルートを修正し、東海学院大学の脇に降りる。次の野一色権現山には登山口の標識も何もないが、石段のある小さな神社の先に登山道が続いている。
尾根の取付きはかなり急ではあるが、登るにつれてすぐに斜度は緩くなる。唐突に鳥居と祠が現れたと思えば、そこが野一色権現山の山頂であった。一人のご婦人がいらしたので、「正面に見える大きな建築物はなんでしょうか?」と聞くと「尾張一宮のツインアーチ」と教えて下さる。そのすぐ近くにご自宅があるそうだ。
おそらく地元でこれを知らないものはいないのだろう「どちらからいらしたんですか?」と聞かれる。「京都です」と答えると「おやまあ、私は学生時代、京都で過ごしたんですよ、京都芸大がまだ今熊野にあった時代に・・・」。京都芸大で絵画を学ばれておられたらしい。ところで最近、京都芸術短期大学が京都芸術大学と改名したが、京都芸大とは京都市立芸術大学のことだ。当時は地下鉄がなかったと仰るが、声にしても全くと言ってもいいほどに歳を感じさせないのは日頃の登山の賜物なのだろうか。
よくよく考えるとこの日、各務原アルプスでの初めて会話であった。「それにしても、京都からどうしてこんなマイナーな山に?」確かに遠方からわざわざこの山目当てに登りに来る人はいないのであろう。各務原アルプスを東西に縦走の途中であることをご説明すると、さらに驚かれたが、この山のピークに立っている理由をご納得して頂けたようだ。
金華山から夕陽が見たかったけど届かないかもしれない・・・というと、次の洞山、それから鷹巣からも夕陽を見ることが出来る。特に鷹巣は展望が非常にいい。ということを教えて下さる。これは非常に有難い情報だった。この分で行くと、鷹巣の山頂に到着する頃が日没の時間になる可能性が高い。
次の洞山にはまもなく到達する。山頂は樹林に囲まれて展望はないが、山頂の西からは夕陽を正面に見ることが出来る。しかし、陽が沈むには時間が早い。金華山の山頂にある岐阜城がかなり高く感じられる。
鷹巣への登りにさしかかると夕陽を浴びて黄葉の樹々が黄金色に染まっている。岩場もあり、それなりの急登ではあるが、背後に岐阜市街の好展望が広がる。山頂にたどり着くと、先ほどのご婦人が教えてくれた通り、その西側からは大きく展望が開け、夕陽を鑑賞するには絶好のロケーションである。まもなく鈴鹿山地の御池岳と霊仙山の間にゆっくりと陽が沈んでゆく。
すぐ右手の金華山からは「本日の最終のロープウェイは5時でございます」とアナウンスが聞こえてくる。金華山までたどり着くことが出来ずに、この鷹巣の山頂で一人静かに日没の時間を迎えることが出来たというのは、怪我の功名だったかもしれない。
この鷹巣は山頂から西側に岩場が連続するがいずれも好展望が広がっている。刻々と色合いを変えてゆく残照を眺めながら下山するには格好の尾根だ。樹林帯の中に入るとすぐに神社の建物が目に入る。この岩戸公園でも美しい紅葉が残っていた。
紅葉に眺望に長距離縦走を堪能することが出来た山行であった。金華山には届かなかったが、むしろこの山を再訪するという楽しみが出来たことが嬉しく感じられるところだ。最後にこの各務原アルプスをご紹介頂いたgreenriverさんに深謝。
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山猫
















各務ヶ原アルプスは2度縦走しましたが、それでも長かったです。
その先、三峰山~鷹巣山まで(*_*)
鷹巣山の岩場で夕日ですか、、良かったですね。(^-^)V
金華山はぜひ日を改めて、おいでくださいm(_ _)m
前日の愛岐トンネルも良かったですね
私はまだ行けてないです。(;´・ω・)
jionさん コメント、それから前日のレコも訪れて下さり有難うございます。そういえばjionさんはお近くなんですね。
それから、なんと! 各務原アルプスは猿啄城〜伊吹の滝までだったんですね。三峰山のあたりから急に案内標がなくなり、果たして西はどこまでなんだろう?と思いながら歩いておりました。
でも鷹巣山の雰囲気は非常に良くて、今回の山行のフィナーレに相応しい素敵なところでありました。
この各務原アルプスは随所で好展望が開けて、これから辿る山、辿ってきた山が望めるだけでなく、南北にも壮大な景色が広がっていいですね。特に晩秋のこの季節に訪れることが出来てよかったです。金華山だけでなく、迫間不動なども気になるので、また訪れてみたいと思うところです。
おはようございます。
いつも山深く入り込むyamanekoさんには、物足りないかもしれないと心配していましたが、それなりに楽しんで頂けたようで良かったです。
そして、yamanekoさんがレコを書かれると、こうなるんだなあ、と感心しました。とても趣き深い落ち着いたレコで、心惹かれます。同じ山でも、全く違う印象です(笑)。どこに行くかも大事ですが、何を見て何を感じるのか、それがとても大事だと感じる山行でした。
とても良い山行レコ、ありがとうございましたm(_ _)m
レコにも書きましたが、まず、この各務原アルプスをご紹介下さり、有難うございます。縦走の楽しみ、そして濃尾平野、御嶽山や乗鞍岳の眺望、峠のお地蔵様、紅葉、夕陽と存分に楽しませて頂きました。
レコは今回は備忘録のような雑記を書き連ねているだけなのでお恥ずかしい限りです。
今回いろいろと教えて頂いたので、愛知への次回の出張が楽しみなのですが、コロナのせいでそれがそう簡単に実現しないのが残念です。
各務ヶ原アルプスって低山のようですがいい感じの稜線なんですね。
写真30なんてほんといい感じです。二重山稜の感じもしますが線状凹地がゴルフ場になっているんですね。ここでプレーするのも面白そう。
途中でお逢いされたご婦人のとのお話。今熊野にあった時のお話なんですね。私は東福寺の生まれ育ちなので今熊野も三十三間堂とか遊び場のエリアでした。智積院のところですね。
地下鉄がなかった時代とのこと。わたしは市電が走ってる時代ですけどね(笑)
学校帰りに学ラン着て自動車教習所へ通っていましたが、教習で市電敷きを走るのが怖かったのを思い出しました。また話が脱線してしまいました。
新コロナ禍の影響で出張も減ったとお聞きしておりましたが、中部地方へ出張されていたんですね。
最も高い金比羅山でも400m以下と低いのですが、低山の魅力が凝集されたところで、実に魅力的です。特にこれだけの距離にわたって二重山稜が続くところは私は他には知りません。
岐阜は遠くに感じますが、米原で新幹線に乗り継ぐと実に早いですね。
ご婦人が京都で学生時代を過ごされていた時代も市電の頃でしょうね。市電敷という単語は知りませんでしたが、確かにかつては京都のmajorな通りを市電が走っていたわけですから、教習で市電敷を走らないわけにはいかなかったのことでしょう。
今回は実は今年度、おそらく最初で最後の出張です。通常であれば当然のごとくキャンセルになるのですが、これは既に二回延期になったもので、諸事情でこれ以上の延期が出来ず、出張しなければオンラインでの重労働が課せられることになるのでした。多数の出張で忙殺されるのも大変なのですが、出張がないのも残念ではあります。
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