記録ID: 31347
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ハイキング
八幡平・岩手山・秋田駒
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)16・秋田駒を越える。
2006年08月01日(火) ~
2006年08月04日(金)


- GPS
- 80:00
- 距離
- 81.4km
- 登り
- 2,078m
- 下り
- 2,191m
コースタイム
8/1田沢湖〜乳頭温泉郷
8/2乳頭温泉郷〜秋田駒ヶ岳〜国見温泉
8/3国見温泉〜繋温泉
8/4繋温泉〜盛岡
8/2乳頭温泉郷〜秋田駒ヶ岳〜国見温泉
8/3国見温泉〜繋温泉
8/4繋温泉〜盛岡
過去天気図(気象庁) | 2006年08月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
8/1 今日は名湯の誉れも高い乳頭温泉郷に突撃する予定。孫六温泉に一泊して登山道から山越えで葛根田川のほとりに出ようという作戦だ。靴擦れもすっかり回復したことだし、ここらで一度奥羽山脈を越えてみてもいい頃だ。ここまで幾つもの峠を越えてきて、体力的にも自信が付いてきた。徒歩旅行というと海沿いをシタシタと行くものと思われがちだが、あんまり海ばっかり見てたら飽きちゃうよね。僕は海も見たいし山も見たい。靴擦れのひどかった一昨日あたりは、R45をトンネル抜けて雫石に至るという日和見的な代替案も検討していたが、どうせなら山道を行った方が面白いだろう。トンネルって歩いていると悲しい気分になっちゃうしね。胸の、ここんとこが、カサカサになっちゃうのね。 出発の準備をしていたら車で来た人に話かけられた。なんでも母親を連れて温泉に行くんだとか。親孝行な方である。徒歩旅行なんてことをしていると、車社会ってもんに否定的になってしまいがちだが、こんな使い方なら車も悪くないって気がしてくる。昨夜はここで泊まった由を伝えると、 「最高ですね。」 と言ってくれた。そういう見方も出来るのかな。まあ、悪い気はしない。 道路からでは林に遮られて湖がよく見えないので、踏み跡を辿って水辺に出てみる。田沢湖は大変水のきれいなところである。天気もいいし泳いでみようかと思ったが、水温があまりに低いので止めておいた。トンボがいっぱい飛んでいる。自慢の90mmマクロをカメラに装着してしばし撮影に没頭する。この90mmマクロというレンズは、オリンパスOMシリーズ中随一の名玉の呼び声も高い。中望遠でありながら、接写も出来るという優れもの。これを使いたいが為にオリンパスを選ぶ人もいる、という噂も耳にしたことがある。お値段の方はバカにならないが、今回の旅行のためにふんぱつして導入したものである。しかし90mmという焦点距離は結構クセがあって、慣れないと扱いにくい。ここまでほぼ単なる重りと化していたので、ここぞとばかりにマクロ撮影を堪能してみた。しかしトンボなんて撮ってどうするつもりなんだろうね、俺は。 出来ればそのまま湖畔を辿ってみたかったのだが、歩きにくいので適当な所で諦めて道に戻ってくる。R127への分岐のあたりまで来るとホテルなどが建ち並び、リゾート地っぽくなる。湖面には例の白鳥の形をしたボートなんかも浮いている。水辺の砂地でぼんやりしていたら、体育会系な若者の一団がやって来る。たぶん合宿かなんかだろう。見ているとたちまちのうちに半裸になって、わぁわぁ言いながら水に入っていく。 「ここって遊泳禁止じゃね?」 「ま、いいんじゃね?」 そうそう、溺れて死ねばいいんだ。 国道に出ればスーパーでもあると思っていたのだが、地元の果物を山積みにした直売所があるきりで、広々としちゃっている。困ったな、食糧を買い足しておきたかったのだが。遠くの方に小さい商店を見付けて、かろうじてカップめんをゲット。勿論カレーヌードル。まあ、高野豆腐とか残ってるしいいか。山越えを前に荷物を増やすこともないな。 行く手には駒ヶ岳が聳えている。二千米に満たない山ではあるが、堂々たる風貌である。快晴の空の下に緑が映える。まいったな、登りたくなるでしょ。 灼熱の道をせっせと歩いていると向こうから来た車が目の前で止まった。見れば今朝方会った親子である。多分乳頭温泉にでも行ってきたのだろう。 「わぁ、ホントに歩いてるんだねえ・・・。」 なんて言ってた。ホントに歩いてるんですよ、残念ながら。 リポビタンDを3本ほど差入れして頂く。ファイト一発である。有り難いことだ。こういう親切を受けると、柄にもなくガンバんなきゃいけないような気になってくる。 田沢湖高原のホテル街を越えていくと、道の両手に果樹園が広がっている。のどかな風景ではあるが、日陰がないぞ。非常に喉が渇く。先程のリポビタンDはあっという間に飲んでしまったが、栄養ドリンクってやつは喉の渇きを癒すためのもんではない。小便がまっ黄色だ。ドブを流れる水がやけに美味しそうに見えたのですくってみる。ザリガニの匂いがする。何をとち狂ってるんだ、俺は。 鶴の湯温泉への分岐を過ぎると、森の中の道になる。沢が近いし涼しくっていいよ。辺りに広がる林はブナの幼木のように見える。ブナ林って有り難い感じがするけど、正直なところ、僕には木の見分けなんて付かない。一応ブナってことにして写真とか撮ってみる。 キャンプ場をやりすごせば、いよいよ乳頭温泉郷である。細い未舗装道を突き当たりまで行くと眼下に黒湯温泉の姿が。作為的なまでに古風な佇いである。車で来れるせいか結構な人出である。この車社会にあっては秘湯なんてものは既に絶滅したのだろうか。 今夜の泊りは孫六温泉と決めている。黒湯をさらに下った所である。孫六温泉は15年ほど前に一度来たことがある。春のスキー山行で八幡平から秋田駒まで縦走して、下山後に立ち寄ったのだ。みんな所持金が乏しく、 「どこでもいいから泊めてください。」 などと掛け合ったところ、ふとん部屋みたいな小汚い離れに通されたものである。樹木希林みたいなばあさまが「おっかねえべ。」とか言いながら薪ストーブにガソリンぶっかけて火を起こしてくれたことなどよく覚えている。 今回こそは真っ当な部屋に泊まってやるんだ。お、お金だってちゃんと持ってるよ、僕。と、鼻息も荒く受付へ。素泊まり一泊2820円也。しかし何としたことか、前回とおんなじ所に通されてしまった。どうやらここはふとん部屋ってわけじゃなく、素泊まりの湯治客用の部屋だったようで。ケチらずに食事付にしておくべきだったか?まあ、これはこれでわびし気でいい感じか。自分には似つかわしいという気もする。前回は雪が乗ってて分からなかったが、この離れは茅葺屋根で至って風流な佇いではある。 とりあえずカップめんで腹拵え。僕はカレーヌードルはノビノビにしてネチョネチョなのを喰うことにしている。それが一番うまいと思うよ。どうでもいいけど。 ゆっくり温泉に浸かって明日の山越えに備えて鋭気を養っておく。黒湯にも行ってみた。しかし、夏場のハイ・シーズンってことなのか、人が多いなぁ。背広にネクタイ姿の紳士連中まで見掛けたよ。いくらなんでもそりゃねえだろ・・・。 8/2 孫六温泉をあとに乳頭山へと登山道をたどる。結構急な登りだ。重荷がこたえる。なんの酔狂で徒歩旅行の途中に登山なんか挟むのかといえば、昔の峠越えの雰囲気を出したかったからである。僕はこう見えて泉鏡花の大ファンなのだ。「高野聖」の天生峠は言うに及ばず、「星女郎」の倶梨伽羅峠とか、「栃の実」の栃の木峠など、峠ものが大好きなので。よく踏まれた登山道を越えていく感じは、車道なんて無いいにしえの峠越えの雰囲気に近いんじゃないだろうか。 「さんどぉ〜、ばあっくにぃ〜」 などと口ずさみながら、泪橋を逆から渡ろうかという意気込みで盛んに登っていくと、わりとあっさり稜線に出た。乳頭山の山頂でタバコなどふかしながら小一時間ぼんやりする。今日もいい天気で、はるかに駒ヶ岳のゴツゴツした岩肌も見える。予定では葛根田川沿いの滝ノ上温泉に下るつもりだったが、折角登って来たのにこのまま下ってしまっては惜しいやうな気がしてくる。 「秋田駒を越えて国見温泉まで行けば良くね?」 「でもちょっと遠くね?」 などとなかなか相談はまとまらなかったが、結局稜線を歩いてみることにする。登山者としてはあまり褒められた態度ではないな。 稜線上には登山客の姿も多い。よく整備された歩きやすい道だ。すれ違うおばさん達が僕のザックを見て呆気に取られたやうな顔をしている。 「あなたは一体、何処から縦走してきたのですか?」 「いや、別に縦走してるってわけでは・・・。」 本人的には峠越えのつもりなんだよぉ、なんていう事情はちょっと説明しずらい。 熊見平あたりで少し沢筋におりて水を汲みにいく。湿原みたいになっていてわりとすぐに水が流れ始める。たよりない流れにそっとペットボトルの口を寄せて、水を注ぎこむ。空に透かして見てみると、もわもわしたものが浮いている。ちょっと流れが小さすぎたかな。あまり下っていくのもダルいので、まあいいか、ということにしておく。なるべく飲まないようにしとこ。 笠森山、湯森山と登り返しはあったが、さくっと横岳到着。ここに荷物を置いて、空身で駒ヶ岳アタック。池の周りには幾つかピークが並んでいるが、何処が本命なのかよく分からん。どれでもいいかってことで男女岳に登っておく。十数年前も登ったはずだが、まるっきし覚えてない。むしろ下山時の壮絶な直滑降の方が印象が強烈だ。当時は「スキーで曲がったりするのは潔くない。」というやうな思想に毒されており、「コケたら死ぬ。」などと思いながら必死で滑ったものである。 荷物を回収して、国見温泉へと下山開始。急な尾根筋のザレ地に道は続いている。眼下の湿原にも道が付いているようだった。主稜線を逸れて道が急斜面に入ると、歩きにくくなる。薮の下にえぐれた赤土の道が続いている。何度も転びながら、せっせと歩いていると雨がぱらつきはじめる。なんだろうね、あと15分待てねえのか?などと悪態をついていると、程無くして舗装道に転げ出る。温泉は目と鼻の先だ。 国見温泉でも素泊まりを敢行。森山荘という宿の門を叩いてみる。この宿は小さいながらも小ざっぱりしていて好印象だ。値段は孫六とおなじ2820円也。 汚ねえ服を脱いで早速湯舟にGO。ここの湯は薄っらと緑がかっている。湯の中に藻の一種が含まれているとかで、湧出して来たときは透明だが、この藻が光合成することで緑色になるんだそうで。しばらく人が入らないと、結晶した湯の花が湯の表面に幕を張って真っ白になる。蝋のやうにカピカピになるのだ。ここの湯は今回の旅行中に入った温泉の中でも屈指の変わり種である。 乾物まみれのいぢましい食事を作るのはいやだったので食堂で食べることにする。この宿には食堂が併設されていて、素泊まりといっても必ずしも自炊じゃなくていいようになっている。ひっつみ汁とやらを試す。何なのかよく分からんが、地元の名物らしい。ほうとうみたいなものだった。まあ、美味しかったけど、ひと山越えてきた身には量的に物足りない。お茶をガブガブ飲んで誤魔化そうとしていると高校生らしい少年達の一団がやって来る。多分部活かなんかで来ているのだらう。世は合宿花盛りと見える。もちろんそういう人達は素泊まりなんかしない。色とりどりの器を並べた豪華な御膳をわぁわぁ言いながら盛んに平らげていく姿を見ていたら、お茶で誤魔化そうなどといういぢましいことをしているのが嫌になってくる。さっさと部屋に引っ込む。昼のビスケットが残っていたので雨音を聴きながらポリポリとやる。いずれにせよ、いぢましいね。 8/3 R46に出て、一路盛岡を目指す。昨日登山道なんて歩いたもんで、学生時代の元気が戻ってきたやうな錯覚に襲われる。まだまだ老け込むには早いぜ?なんてうそぶきながら軽快に歩いていたら、あっさり靴擦れになってしまった。折角治ったと思ったのにぃ。 道端の食堂が「南部地鶏」をうたっているのを発見。世はまさに地鶏花盛りと見える。今朝は強烈に不味いウドンに乾物を浮かべて流し込んで来ただけだったので、ちょっと早いが飯にする。親子丼をチョイス。例によって「ぢどり」っていう有難味は今一つ分からんかった。この際、なんでも美味い。 この食堂から少し歩くと「あねっこ」という道の駅に着く。ここはやたらに広い駐車場を備えており、様々な土産物を盛大に売りさばいている。入れ変わりたち変わり車がやって来て、人でごった返している。車社会の権化みたいなところだ。こういう所でお土産とかゲットすると、徒然な旅人達の心にも、某か達成感のやうなものが生じるのだらう。一応寄ってはみたものの、案の定何も用がない。 赤淵からR46を逸れて、川の向こうの住宅地を抜けていく。住宅が途切れると田んぼの中に真直な道が続く。今日も天気はすっかり回復して、めまいがしそうな陽気だ。日影のない一本道は危ないよ。ロクに水も飲めぬままフラフラと御所湖まで。 橋の近くに「雫石町歴史民族資料館」なるものを発見。ひどく喉が乾いていた上に、便意すら覚えていたので、立ち寄ってみる。南部曲り屋という伝統建築を移築してきて、中を資料館として開放しているということである。異常なまでにヒマそうな施設だ。僕は別に古民具趣味など持ち合わせがないのだが、まさか、厠だけ借りてさよーならってわけにもいかないので、展示室をひやかしてみる。屋根の高い、土壁の古民家は冷房なんてしなくても涼しい。ひっそりとしていて足を休めるのに調度いい。昔はこんな立派な家があちこちに立っていたのだろうか。物陰の薄暗いあたりで、馬でもいなないていそうな気配だ。 展示品の数々を見るともなく見ていると、職員のおじさんが出てきて色々説明してくれる。この人が館長さんなんだろうか?よっぽどひまだったんだと見える。若いヒトは珍しいと思うよ。みんな道の駅でお土産買うのに忙しいからね。僕も便意さえもよおさなければ、寄ることは無かったと思う。丁寧にあれこれ説明してくれたのだが、みんな忘れてしまったな。すいません。おじさんの話は仲々尽きそうもなかったので、「ちょっと便意が。」などと言って適当な所で切り上げる。午後も三時をまわって大分陽射しも和らいで来た。 橋を渡って御所湖畔の道を行く。狭い道だが、わりと車の通りはある。何時の間にか、世間では家路を急ぐ時刻が近付いているので。「乗って行きなさい。」などと声を懸けてくれるおネエさんなどいる。乗っていきたくなるでしょ。乗らないけど。あのヒトとか、意外と同世代だったりするのかもしれない。こんな時、あちゃら側とこちゃら側で随分深い溝が開いちゃってるやうな気がしてくる。あちゃら側の女性は素敵だよね。 繋大橋を渡って繋温泉へ。早速温泉街へ突撃。こういう温泉街ではボロっちい共同浴場に入ることにしてるのだが、案内所で訊いたところそうゆうモノはないんだそうで。日帰り入浴を受け付けている旅館の一覧表を貰ったので、一番安い宿を選んで湯を借りる。緩い坂を登ったところにある小さな旅館で、観光客よりは土木作業のおっちゃん方が多い様な感じのところだった。まだ土方衆が引き上げて来るには時間が早いと見えて、浴室はひっそりとしている。狭いけどこざっぱりしていて、いい湯でしたよ。 湯上がり、そこらをブラついてみる。ボロ過ぎず、新し過ぎず、調度いいバランスを保ちつつ、こぢんまりと雰囲気をかもした温泉街である。傾きかけたストリップ小屋なども見える。営業しているか怪しいほどの傾きっぷりだが、連夜つげチックな濡れ場が繰り広げられているのかもしれない。 「あんた、アタイを連れて逃げておくれよ。」 とかって。僕はまだストリップというものを見たことがない。そのうち突撃してみなければなるまいな、勉強のために。まあ、今回のところはやめておく。僕もさすがに野宿のテントからストリップ小屋をアタックするほどバカではない。 湖畔をのぞむ、だだっぴろい駐車場の片隅の四阿の下で、缶ビールなど傾けているうちに、すっかり陽も沈んであたりは宵闇に包まれる。いい感じで酔いがまわってきた頃合に、何処からともなく若い男女の姿が現れはじめる。手に手に花火を携えている。それが次から次から湧いてくるのだ。世はカップル花火大会花盛りかよ。まったくエロい世の中になったものだ。別にねたんでいるわけではない。そねんでいるんぢゃぁないんだよ。 極度に居づらくなってきたので、湖のほとりの人気のない辺りまで落ち延びてテント設営。悶々として寝苦しかったのは、気温のせいばかりではあるまいて。 8/4 今日は盛岡まで移動。大した距離ではない。のんびりゆく。まあ、こういったことはちんたらやったからといって楽になるというもんでもない。かえって靴擦れが痛みだしたりするものだ。ぴゃ〜っと済ませてしまいたいのは山々だが、そういうガッツは仲々湧いてこないというのもまた事実なので。 御所湖畔を離れて、テキトーな裏道を通って盛岡へ。道中のことは今一つ覚えていない。思いのほか時間がかかって、JRの高架をくぐる頃には夕方になってしまった。盛岡駅はすぐ近くのハズなのだが、仲々辿り着かない。盛岡はゴチャついた狭い路地の多いところである。ちょっと弘前に似たところがある。城下町ってこういうものなんだろうか。 駅のコインロッカーに荷物を突っ込んで、夕暮れの町に繰り出す。片手には洗濯物を満載した手提げ袋。いい加減、洗濯しないと着替えがないよ。「洗濯ぐらい自分で手洗いすれば?」という意見をいただく場合もあるのだが、一日約30km、30kgの荷物を担いで歩いたあとに、手洗いなどするガッツは仲々湧いてくるものではない。メシも作らねばならないし、日記も付けなければならない。こう見えて結構忙しいのよ。食器だってロクに洗ったことないのね、僕。 駅前の目抜き通りを歩いて行くと、なんか町は妙にうわついた気配。どうやら今夜は、お祭りのようで。東北三大奇祭のひとつ、“さんさ踊り”。いわゆる“盆ダンス”である。まったくの偶然である。とりあえず洗濯物をやっつけねばなるまい。コインランドリーなんて何処にでもありそうなものだが、いざ探そうとすると見付からないもので。それっぽい路地裏をうろついてみたもののラチがあきそうもない。商店のおばちゃんなどに訊いてみるが、「さぁ?」などと首をかしげている。ないところにはないものだ。あちこち尋ねまわって、漸く場所が発覚。教えて貰ったところへ行くと、あたりは飲み屋が軒を連ねる盛り場である。わりとこういったところにコインランドリーを見出すことが多い。僕は今回の旅行で、すっかりコインランドリー趣味ってものが芽生えてしまった。とくにこういった、場末感の漂う、薄汚れた一角にコインランドリーを見出すと萌えてしまう。缶コーヒーを飲みながら、たまっていた日記でも付けて見たりする訳だ。こんな時はジョージアだろうって気がする。ボスとかワンダじゃなくて。なんでだろうね。外ではお祭りが始まっているやうだ。ぴ〜ひゃらら・・・と、祭囃しが風に紛れて聞こえてくる。そんなのを尻目に洗濯に明け暮れるってのも、ある意味風情だよね。なんでこんなところに情緒を見出すやうになってしまったものやら? ほかほかの洗濯物を携えて、お祭り見学にいそしむ。色んなチームがあって、それぞれに嗜好を凝らしたコスチュームで、個性的な踊りを披露して練り歩いてゆく。お祭りの踊りってのは基本的に神さまに捧げるもんだと思うんだが、アフロのづらで踊り狂う様を見てるとそんなのかんけーねーみたいだ。それでいいのか?盆ダンス?別にどーでもいいのか。 見てると全然まわりと振りがあってない子とかいる。しれ〜と踊ってるのね。面白いよね。カワイイから許されるんだと思うよ。 小一時間も見ていると「はい、おしまーい。」って感じで、パトカーとか出て来て終わりになってしまう。夜通し踊り狂うのかと思ってたのでずっこけてしまった。こんなことならコインランドリー趣味なんかに現を抜かしてるんじゃなかったな。 あてどなく夜の町をひやかして歩く。神社の参道筋には出店が立ち並び、お祭り気分の酔漢共でごった返している。ちょっと雰囲気のあるラーメン屋でジャジャ麺を相手にビールのコップなど傾けてみる。ジャジャ麺って盛岡の名物としてわりと有名だと思うけど、なんかパッとしない食べ物だよね。僕は盛岡に来る度に「あれは何かの間違いだったのかもしれない。」と思ってジャジャ麺を食べてみるのだが、美味だと思ったためしもないのだ。“赤いきつね”をのびのびにして、スープを捨てた感じだろうか。美味さの片鱗も伺わせないあたり、名物料理としての面目躍如たるものがある。むしろ、美味しくないってことを再確認してほっとするってとこに、ジャジャ麺の醍醐味はあるのだろう。そのあたり、“ドクターペッパー”に通ずるおかしみを感じる。 ジャジャ麺には、肉ミソの残った皿にスープを注いで貰って卵をとき入れて〆るという、通っぽい食べ方があることを今回はじめて知った。「ちぃたんたん」とかって呪文めいた合言葉を唱えると、店の人が合点してスープを注いでくれるという決まりになっているらしい。(注;記憶があやふやである。まったく違う呪文だったかもしれない。) 僕も知った風な顔をして「ちぃたんたんっ」と呪文を唱えてみる。はたして、無愛想なオヤジが皿にスープを注いでくれる。なるほど、よく出来てやがらぁ。しかし、だからといってこの料理が名物として幅を効かせうる所以が解明された訳ではない。ジャジャ麺、ナゾは深まるばかりである。 夜も更けるに従って、喧騒は増していくやうだ。ノーヘルのやんちゃなバイクが夜の町に賑わいを添えている。むしろ、お祭りはこれからが本番のやうで。こんな時に野宿なんてしてると酔漢共が踊り込んで来そうなので、今夜はネット難民をして遊ぶことにする。都会には都会の夜の明かし方があると思うよ。 |
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「お湯入れすぐ喰いバリバリ」というのが星川流だったな。13年も前の話で悪いけど。
Joe Newmanなんぞ聴きながらコレを読んだ。ジョーならば、ジャジャ麺旨いって云うかもな。
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