鈴鹿 天狗堂・サンヤリ 滑落事故報告
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- GPS
- 11:10
- 距離
- 9.5km
- 登り
- 943m
- 下り
- 945m
コースタイム
- 山行
- 10:11
- 休憩
- 0:57
- 合計
- 11:08
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
尾根に忠実につけられた道で、部分的に急な箇所や沢の源頭のトラバース箇所がある。 |
写真
感想
●遭難者:女性、18歳、大学生、山岳関連団体へは所属していない
経験:登山歴15年 無雪期縦走と低山雪山の経験あり、岩や沢などのバリエーション登山の経験はなし
●パーティー構成:
メンバー:男性4人(40代A、30代B、30代C、20代D)、女性2人(50代母E、10代娘F(遭難者))
経験:A=沢、岩、雪山の経験あり)、他=無雪期縦走、低山雪山経験あり
装備:スリング、カラビナ、救急道具、ストーブ、(ロープはなし)
●日時:2021年5月3日(月)11時12分頃
●天候:晴れ 気温 18℃ 風 なし
●目的:自然観察ハイク(シャクナゲなどの花を見る)
●事故発生地点:滋賀県東近江市君ヶ畑町 天狗堂南東尾根810m付近 "N35°08.856' E136°23.646'"
●診断:骨盤2カ所と肋骨を骨折、擦過傷、打撲、内蔵損傷(全治6ヶ月の重傷)
●リスク:低山日帰りハイク、尾根に忠実に沿ってつけられた道のため、急な箇所が多く歩きにくい。
●場所の状況:尾根沿いの道で、部分的に急斜面もある/樹林帯(植林)/登山道上=一般土(A層)、一部に岩の露出している箇所がある
●事前問題:難しくはない低山日帰りハイクと考えていた。
●日程の消化:予定通り
●態様:滑落
●原因動作:死角となった岩の上で滑り、さらに土を踏み抜いてしまい、バランスを崩して滑落
●原因詳細
状態:天狗堂からの南東向きの尾根の下りで、標高830mから800mにかけて、登山道は東側にある沢の源頭部を緩い下りでトラバースするようについている。登山道は、その先で左折して東向きの尾根に取り付くが、その手前が滑落開始地点である(写真1、写真2)。遭難者Fは、パーティーの先頭から2人目を歩いていた。滑落開始地点の下り方向右側に岩があるが、登山道の下側からみるとわかりやすいが(写真3)、登山道の上側からだとわかりにくい(写真1、写真2)。Fは、この死角になっていた岩の上に足を置いたことで、足を滑らせてしまい、登山道谷側の土を踏み抜き、バランスを崩して、頭から斜面へ落ちたと考えられる。この岩には、土に覆われた部分もあったらしく、ひじょうにわかりにくかったと思われる。Fは、ここから東向きの尾根のすぐ北側にある沢中を、標高差で70m〜80mほど滑落した(地図参照)。
滑落の様子:Fは、滑落開始地点から、小さな沢の源頭部の斜面を、頭を下にして滑落し始めた(写真4)。Fは、頭が下ではまずいと思い、咄嗟に体勢を変えたため、ゴロゴロと転がってしまうようになる。途中で1回滑落が停止しそうになったが、止まることはできなかった。滑落した斜面は下部で明瞭な沢地形となり、露岩が出ているところが3ヶ所ほどあった(写真5、写真6)。滑落は、落ちた小さな沢が北西から入る大きな沢と合流する50mほど手前で止まった(写真7)。ちょうど斜度が緩くなったところだった。標高差で70〜80mぐらいの長い滑落であったが、幸いなことに、滑落中に木や岩にはぶつかることはなかった。
問題:死角となった(土に覆われた)岩の上に足を置いた。結果論としては、もっと慎重に足を置く場所を考えるべきだったが、岩に気がつくことは難しい状況と言える。誰にでも同様な事故が起こる可能性がある。Fは疲労はしていなかった。
●事故後:意識=あり、運動能力=左半身が全く動かせない
●救出処置:事故発生がおよそ11時12分。パーティーメンバーAが、登山道を滑落開始場所から標高差70mほど下ったところから、Fが落ちたと思われる沢に斜面をトラバースして接近する。ちょろちょろとした流れのある沢中にFが横たわっているのを発見し、無事Fに到達する(11:30)。Fを沢中から安全な場所に移動させる(12:00)。Fも動かせる右半身を使っての移動はできる。携帯電話が通じない場所だったため、Bが登山道を林道まで下りて、消防に救助連絡をするとともに、遭難場所のGPS情報も送る(12:15)。ヘリコプターが場所確認に来る。別なヘリコプターから救助隊員1名が降りてくる(15:00)。Bが消防隊と一緒に戻ってくる(15:10)。ヘリにFを収容(16:00)。最初に移動させた場所から直接つりあげての収容であった。
●反省点:
・登山道の状況をもっと調べるべきだった。
・下りでは、滑る岩や踏み抜きなどに注意が必要であった。
●幸いした点:
・滑落中に木や岩にぶつからなかったこと。特に頭部に損傷がなかったことは大きい。
・バリエーション登山の経験者Aがいたため、救助の初動が速く、かなり短時間で遭難者に到達できたことで、遭難者を安心させるとともに、安全な場所に移動するなど迅速に適切な措置が取れた。
●教訓:今回のような事故が低山ハイク中に起こったことに、我々は注意を向ける必要があるだろう。コロナ渦中でも健康維持のために、低山でのハイキングは推奨されるが、このような滑落事故は誰にでも起こる可能性がある。どんなに注意していても、事故の100%の回避は難しい。我々にとってできることは、野外での行動中は常に注意を怠らないことであるが、歩行技術などを向上させることも重要である。もちろんそのためには経験をコツコツと積んでいく必要があるのだが、その行為自体がリスクに晒されることでもある。登山や仕事で野外活動を行う場合には、そのようなリスクがあることを常に意識しておかなければならない。
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