ミンドロ島ハルコン山登頂の思い出
- GPS
- 56:00
- 距離
- 28.7km
- 登り
- 2,406m
- 下り
- 2,407m
過去天気図(気象庁) | 2005年10月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
フィリピンのルソン島にルソンカラスアゲハという大変美麗な蝶がいて、これが1960年代に日本人によって発見されて一大センセーションを起こしたのだが、あっという間にワシントン条約1類に指定されてしまい、採集も取引もできないことになってしまった。ところが1992年になって隣のミンドロ島でルソンカラスアゲハの亜種が発見されたのである。当時私は日本蝶類学会の会員だったので、このニュースを会報で知った時は本当にびっくりしたものだ。誰が見てもルソンカラスアゲハと同種(代地亜種)であるのに、同種とするとやはりワシントン条約1類の指定を受けてしまうため、大人の事情でミンドロカラスアゲハという別種とされ、しばらくの間採集取引可能だったのだ。(現在はやはり亜種扱いになり、採集・取引は禁止である)ミンドロカラスはミンドロ島最高峰のハルコン山(2582M)の標高1800M以上の高地帯に生息しているらしい。2005年当時山屋および蝶屋として脂の載った時期の私は単身ミンドロ島に乗り込んだのであった。
マニラから、夜行バスでバタンガスへ、バタンガスからフェリーでミンドロ島のカラパンヘ渡る。その昔戦艦武蔵の最期の闘いが繰り広げられたシブヤン海はイルカの飛び跳ねる美しい海だった。
最初はネットで確認していたマウンテニアリング代理店の門を叩いた。店長は快く迎えてくれたものの、どうも歯切れが悪い。PCで骨の露出した女子大生のオロクの写真を見せ、昨年ハルコン山に登山中鉄砲水で流されて遭難した彼女の遺体を自分が下したとか言っていた。またその数年前は熱帯にも関わらず、登山中に暴風雨に遭い、低体温症で遭難死した学生がいると聞かされた。(その話はネットで知ってはいたが)縁起の悪い話ばかり聞かされて気が滅入ったが、じゃあ止めときますといえるはずもなく、とにかくガイドを頼むと、まず先に観光局へ届け出て入山許可をとる必要があるとのこと。この届出の為に2日もホテルに足止めを食らったが、当局の最終回答は「最近は山に共産ゲリラが出没しているので許可できない」であった。許可が下りないなら全責任を自分が負う覚悟の上、闇で強行するしかない。私は信頼のおけるガイドを紹介してもらい、ポーターを雇って自前のパーティーを発足し、山に向かったのだった。
ハルコン山は2泊3日の行程である。途中はヒルの多い沢筋を進む。湿度は高いが山登り自体はそれほど危険を感じるところはなかった。それも天気次第できっと大雨が降ると渡渉困難になるのは日本の山と同じことである。フィリピン人は普段熱帯気候の中で生活しているから、防寒の概念がなく、レジャーとしての山登りという概念もないので、靴も露営の道具もいい加減で原始的なものばかり。こんななりなら遭難や低体温症になるのも致し方ないと思うほどである。それでもへこたれずにポーターは重い荷物を運んでくれる。
途中何度かスコールにはあったものの、頂上に着くころには晴れてさあ、ミンドロカラスでも何でも出てこいと気張ってみたものの、蝶影はほとんどなく、成果は0であった。
下山後、川で水遊びをしている最中に川の水を少し飲んでしまったのが運のつきだった。帰国後、ウイルス性肝炎を発症し1週間病院に隔離入院を余儀なくされ、旅費以上の医療費がかかってしまったのである。
目的の成果はなく、とんだ落ちのついた海外登山であったが、自前でパーティーを組んで海外の山を登頂する経験が得られたので、後悔は全くしていない。
ハルコン山は2006年から2013年まで入山禁止になっていたそうだが最近は春季に限って入山可能とのことである。今でもミンドロカラスはハルコン山のどこかにいるに違いない。
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