高尾山口~高尾山~大垂水峠~南高尾山稜~高尾山口 目指せ雲取山!素人山修行その1
- GPS
- --:--
- 距離
- 15.9km
- 登り
- 822m
- 下り
- 814m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
平日早朝の山は人が少なくて初心者には心細いです |
写真
感想
さて、みなさん想像してみてください。
あなたには大好きな人がいます。あなたは調子に乗ってふざけている時にうっかり泥だらけの靴でその人の顔面を踏んづけてしまいました。真っ青ですよね。
しかしその人は爽やかに笑いながら「気にしなくていいよ」と言いました。
あなたはどんな気持ちになりますか?
ますますその人が好きになっちゃいますよね?
前回の私の山行がこんなカンジだったワケです。
全く山をナメた山歩きをしてしまったのに無事に下山を許してくれた山の懐の深さに私は「一生ついていきます!」くらいの気持ちになりました。
そしてもともと漠然とですが、山に登れたらいいなァ ぐらい思ってた私ですからこの後ちゃんと山に登ってみたいと思うのは自然の流れです。
と言うわけで私は山を始めます。
勉強にしてもダイエットにしても目標を持たなければ人は何事も三日坊主になりがちです。私は特にその傾向が強い性格ですので山登りの目標を持とうと思いました。しかしいきなりエベレストだローツェだグランドジョラスだなんて言っても非現実的すぎてより三日坊主に拍車がかかってしまうでしょう。そこで初心者が目指しやすいほどよいハードルの山を探すため色々本を見たりネットで調べたりします。
すると2017m 東京都最高峰 雲取山を発見します。
「へぇ〜、東京の一番高い山、雲取山って言うんだ〜。」
恥ずかしながら私はこの時まで雲取山の存在を知りませんでした。
ここでこれをご覧のヤマレコの先輩方は「マジか?こいつ雲取も知らないで山好きとか抜かしてやがったのか。ありえね〜!」とツッコんでいらっしゃると思いますが、先輩! 世の中は広いのです。私のような人間もいるのです。
雲取山。日本百名山データブックによると「ステップアップに最適な山」と紹介されています。聞けば高校の登山部の大会会場にもなっていたとか。ネットの質問コーナーで初めて北アルプスを行く方がアドバイスが欲しいと山行計画を登山履歴とともに載せていると、経験者の方から「鴨沢ー雲取ピストンを日帰りでできる脚があるから大丈夫じゃないですか」と、雲取山が日本アルプスに進むための試金石的な存在でもあるかのようなコメントが。
これだ!
もちろんいずれは北アルプスや南アルプスの名だたる名峰を歩いてみたい私ですが、そこで山に恥じない山歩きをするための第一段階として雲取山、しかも鴨沢ー雲取日帰りピストンを9時間以内でできるようになりたい。
私は雲取山を目指して今後山修行をすることを心に決めました。
さて、では雲取山に登るために私は何をしなければいけないのか?
体力も脚力も圧倒的に足りませんが、何よりまず山に慣れるべきだと考えます。
そこで購入した私の山バイブル「日帰り山あるきベスト100」で標高差の少なくそこそこ長い距離が歩ける山を探してみます。この本には山によって「入門」「初級」「中級」と難度ランクが分けられております。ちなみに高尾山は「入門」で紹介されておりますが、形だけでも高尾山を2度登っている私的に「いやいや、さすがに入門から改めてスタートってのはないだろ〜」と小さいプライドをかざして初級クラスを見てみます。すると青梅丘陵と南高尾山稜の2候補が。どちらも掲載されている写真を見てるだけで気持ちよさそうで、エスケープルートも豊富なので体力脚力の様子を見ながら山行が進められそうな山ですが、ここは私を山に誘ってくれた高尾山への思い入れの強さで南高尾山稜に決定です。
標高断面図を見ると大垂水峠から150m登って、後は高尾山口駅に向かってゆったりと8キロかけて337m下っていくカンジのコース。これだけ見るともの凄く楽勝な気がして、あまりにも物足りない印象なので最初高尾山に登ってから大垂水峠に下りるルートをプラスします。
失礼を重ねた高尾山へのお詫び行脚も含めて一山超えてからのんびり山歩きを楽しもうと思ったのです、が、初心者の皆さん、実はここにガイドブックから得る印象と実際の山との間に大きなギャップがあることを私は思い知ることになるのです。
さて当日。 私はもはや見慣れたケーブル清滝駅の前に立ち1号路に向かって深々と頭を下げてから歩き始めます。
「ふざけた山歩きをして本当に申し訳ありませんでした」
今回は時間など気にせず山を楽しむつもりでのんびり歩きます。
この頃私はちょうどこのヤマレコのサイトに出会っていました。先輩たちの高尾山のレコを見ながら「うっそ〜!こんなに写真撮りながら、こんな早いタイムで登るのか!」と驚異的な健脚ぶりに椅子ごとひっくり返って驚いておりました。
私はせっかちで平地でも割と歩くのは早いほうで、基本的に山も同じくらいの速度で登りたいと今まではズンズン歩いておりましたが、ここは先輩たちを見習って木々や草花を時々立ち止まって眺めてみたりします。正直それらの知識やありがたみなど何もわからない私ではありますが、いちいち「へ〜」とか「ふ〜ん」とかリアクションをとりながら進んで行くと、アラ不思議。ハァハァ言ってはおりますが、過去2回疲労で吸い込まれるように座り込んでいたスタートして500mのベンチをスルー。今回はこのまま金毘羅神社まで行ってみます。
時々立ち止まる。たったこれだけのことなのにこんなにも違いが出るモノなのか!私は一つ大切な事を学んだ気がしました。
天気は時折パラッと雨の落ちてくる曇天ではありましたが、それがかえって涼しくて心地良く感じます。
正確にムラっ気のある私は本来1号路で山頂を目指すつもりが途中の3号路の標識に急遽進路変更。しかしこの3号路がものすごく気持ちいい。平日の早朝で人がいないせいもあるでしょうがこの道は高尾山の中でもまたグッと山の中に入り込んだ印象があります。時々立ち止まって深呼吸などすると朝一番に木々が吐き出した酸素を独り締めしてるようで、ものすごく贅沢でさらに体が浄化されるような気になります。
しばらくは下って行くカンジで続く3号路は終盤長めの階段登りになります。ここを頑張ってうんうん登って行くと5号路にぶつかり、そこから山頂までの最後の登り階段がグオーっと現れます。ここでこの5号路がこのまま目的の奥高尾まで続いていることにハッと気づき、正直登り階段にうんざりしていた私は思いました。
「高尾山には最初にごめんなさいって言ったし、今回の目的は山歩きだからわざわざ山頂踏まなくてもいいんじゃないかな?」
と言うわけで、お詫び山行と言いながら山頂を踏まない私を懐の深い山は許してくれるに決まってるとタカをくくってそのまま5号路で奥高尾へ。
大垂水峠へは先週歩いたモミジ台から一丁平園地へ向かう道のちょうど中間あたりに分岐が現れ、ここを左に進んで行きます。
ここから道は一気に細くなり、あまり人が歩かない道なのか私の肩くらいまで伸びた草が両脇から道を覆いかぶさるようになり、軽い藪こぎで進むカンジ。人気で人も多い高尾山塊とわかっていても、初めて通るタイプの山道に「ほんとにコッチでいいのかな・・?」とわずかな不安を胸に歩を進めると突然東側がパッと開けた場所に。ここからの景色、低山とは言え360度山に囲まれたような印象で、周りに人の気配がしない事もあって正に山の中に自分一人と言った気分に。これもまたえらく贅沢でまるで自然と一体化できたかのような気分が味わえます。が、そんな気持ちと同時に、 もの凄く恐い。
私はお気楽な性格で決して心配性などではありませんが、それでも「こんなところでもし怪我して動けなくなったらどうしよう?」とか「高尾の中でもここは滅多に人が通らなくて誰にも発見されないんじゃないか?」とか自然と頭に浮かんできて背筋が寒くなるのです。これが山に慣れていないと言うことなのか?
いやいや、もちろんそう言う事もあるでしょうが、ここはもう一つ大切な事を私は忘れているのです。
この時私はガイドブックに載っている大雑把な地図と設置されている道しるべを頼りに歩いていましたが、ちゃんとした地図を持っていなかったのです。
山では色んなトラブルが起こる可能性が常にありますが、あらゆるトラブルの対処の基本となるのが自分の位置を把握していると言うことです。私はこの時それができていなかった事がより怖さを大きくさせていたのです。
初心者の皆さん、山には必ず地図とコンパスを持って行ってください。
これを使いこなすことで貴方の山行がより安全でより確実なものになります。
高尾山のような完璧に近い整備の中を歩いているだけだと地図の必要性はなかなか感じられないかもしれませんが、地図読みができる事でその山行が何倍にも楽しくなるのです。少なくとも貴方が趣味の欄に「山歩き」と書きたいのならば、最低限の地図読みは覚えておくべきだと思います。
この後も私は踏み跡のしっかりした道を進みながら、相変わらず人に全く出会わないこの道にホントにこっちでいいのかと不安にかられながら歩きます。途中林道を2度ほど横切って行きますが、ガイドブックと道しるべを何度も何度も交互に見直して進んで行きます。それでも2度3度アップダウンを伴う下り道をうんうん進んで行くと、やがて遠くから車の流れる音が聞こえて来ると共に山に不釣り合いな排気ガス臭が漂い始め、ほどなく甲州街道が現れます。ここが大垂水峠です。
街道の向こうの南高尾山稜へは登山道から直接橋を渡って行けます。
さて、ここで一つ言い忘れていましたが、前回私は靴による足首の痛みに地獄のような山行を強いられましたが、今回その対処法として 何もしておりません。
あれは要は、新しい靴にありがちな靴ずれの一種に違いないと踏んで「あれだけ長い時間痛みに耐えたんだからいい加減靴が足になじんだか、あるいは足が靴になじんだに違いない」と勝手に安心しておりました。
しかし現実はそんな甘くはございません。この辺りで再び足首に痛みが出始めました。
しかしここからは南高尾山稜。ガイドブック的には150m登って8キロかけて300m下るだけのぬるいルートですから、前回のような地獄は見ないだろうと安心して進んで行きます。時折り雨を降らせた厚い雲はすっかり薄くなり、空も大分明るくなってまいりました。
山稜に突入すると道を山腹を右に巻くようにゆったりと登るように進み、すぐに大洞山への最後の登りが現れます。急登と言うほどでもなく尾根はすぐそこにあるのがわかる程度の登りですが、ひと山超えての登り返しと言うこともありえらく難儀いたします。
ヒーヒー言いながら登りきるといきなりベンチがずらりと並ぶ場所に。
「あ、大洞山 着いちゃった・・・」
そう思って金毘羅神社以来の休憩をここでたっぷりとってしまった私ではありましたが、初心者の皆さん、ここは山頂ではございません。
大洞山の山頂はここから200mほど進んだところにあります。
山頂だと思ってのんびり休んだ後、行軍を再開した瞬間に本当の山頂が現れると腰が抜けるほどビックリしますのでご注意ください。
さて、南高尾山稜はこの後コンピラ山、中沢山、西山峠、泰光寺山、三沢峠と進んで行きますが、私は正直ガイドブックのイメージで、まあ途中の山への登りは別にしても、終始ゆるやかな下りが延々と続いているような気になっておりました。
ところが初心者の皆さん、山はそんな生易しい場所ではないのです。
山はデコボコしているのです。
しかもこの南高尾山稜のデコボコ=アップダウンは結構シビアです。
急登、急下りを伴う小ピークが随所に登場し、私は心の中では そりゃそうだよなと思いながらも悔し紛れに「ダマされた〜、ダマされた〜」とつぶやきながらヒーコラ進んで行きます。幸い上に列挙した各山には巻き道が併設されていますので、アップダウンにやられまくっている私は遠慮なく巻き道を行くのです。
そうです、初心者の皆さん。山には平らな道など皆無に等しいと心得てください。
ガイドブックや観光用の簡略地図などではなんでも無さそうに見える道程でも甘く見てはいけません。山はデコボコしていると肝に銘じてください。
しかしそんな山の中でもごく稀に、数十メートルの平らな道と遭遇する時があるかも知れません。
それははっきり言って奇跡です。
そんな道は神に感謝しながら歩くようにしましょう。
ちなみにこの道中、中沢山を越えて少し進んだところに「見晴台」と呼ばれる南側の切り開かれた好展望の場所がありますが、ここは人ひとり通れるくらいの道の脇に無理無理細っそいベンチを用意したような場所で居心地は決して良くありません。私はここで景色を楽しみながら昼食をとろうと持参したパン(ザックの中で下敷きのようにペシャンコになったクロックムッシュ)を一口食べたところで、目の前をハイカーの方が通り過ぎた瞬間なにか小動物のフンの上に落として台無しにすると言う経験をいたしました。ご注意ください。
さて、この先三沢峠を抜けると、これまたしっかりとした登りを経て東屋のあるふれあい休憩所があり、更にこれまたしっかりとした登りを経てこの山行最後の山 草戸山に辿り着きます。展望が全く見えない展望台がある山頂ですが、テーブルのあるベンチもいくつか並び結構開放感があり気持ちのいい場所です。
ここでもはや私の得意技と化した足首の痛みも最高潮をむかえます。
その痛みは言ってみれば、えっ? もしかして すでに骨砕けてんじゃないの?
って言うくらいの痛みです。
私は痛みのあまりここでシューズのひもを全開にゆるめてこの後の山行を続けますが、初心者の皆さんは決してマネしないでください。
靴を買ったら試し履きをすること。(私以外の人はするんでしょうね)
それでも痛い箇所で出たら、これは後日発見した技ですが、痛くなる箇所にあらかじめテーピングを施せば痛みを緩和できます。
いよいよ山行も終盤。草戸山から北に進路をとり、まだまだこれでもかと現れる急登急下りのアップダウンに、私は疲労と痛みでゼーゼーキャーキャー言いながら進みます。途中草戸峠では高尾山方面の展望が見事で一瞬疲れも吹き飛びます。薬王院と思われる建物も確認できますが、それが本当に薬王院かどうかは定かではありません。どうぞご自分の目でご確認ください。
草戸峠を過ぎてもまだまだアップダウンは続きます。
それでも意識を朦朧とさせながら進んでいくとやがて四辻の分岐に出ます。
ここは真っ直ぐ進むとJR高尾駅、左に行くと京王高尾山口駅の分岐ですが私は左へ。後は250mから300mほど下り道を進むと終点の草戸山登山口です。最後は登山道が民家の脇を通る道になっており場合によっては洗濯物など確認できてしまいますが、ここは見て見ぬふりをして歩くようにしましょう。
南高尾山稜。のんびり山に慣れながら歩くゆるゆるウォーキングのはずが私の認識の甘さから体育会系の猛特訓のような山行になってしまいました。
このルート、山行2〜3回のド級初心者の方にはかなりハードルが高い道だと思います。
しかしトレーニングだと割り切ればこれほどいいルートはないと思いました。
私もここを歩き切った経験が、後の山行にどれだけ役に立ったかわからないくらいです。ここを普通に歩けるようになったとしたら、相当な体力と脚力を手に入れる事ができると思います。どうぞ一度チャレンジなさってみて下さい。
ただし一つだけ。このルート中随所から伸びている梅ノ木平へのエスケープルートですが、実は梅ノ木平のバス停はめったにバスの来ない恐ろしい場所です。タイミングが悪いと平気で3時間バスが来ません。エスケープする場合は高尾山口駅まで歩くつもりでいるのがいいでしょう。
とは言え、結果想定より難度の高かった道を歩けた経験で私は「もっともっと山を歩きたい」と思うようになります。
しかし、そんな私の体に異変が・・・。
次回 山修行 三浦半島 大楠山 鷹取山 編 お楽しみに
それでは さようなら
最初の出だしの文章で思わず最後まで読んでしまいました。高尾山はわたしも10年程前に登った事りありますので。高尾山について、そして山行について、とても細かく丁寧に書かれていて素晴らしいと思いました。どんな山でもなめてはいけない本当にその通りだと思います。
「山には必ず地図とコンパスは持ってい行って下さい。」わたしも本当にそう思いました。わたしは今年5月に戸隠山に行って、良く調べもしないで、地図も持たずに初級レベルなのに登ってとても危険な目にあいました。
もっと山について勉強しなくちゃいけないと思いました。良いお話を聞かせていただき、とても勉強になりました。
hirokoさん、コメントありがとうございます。
稚拙な文章を褒めていただき恐縮でず。
大自然、特に山なんてトコはその気があれば誰でも気軽に入っていけるところですが、
実は「やるべき事はしっかりやる。やっちゃいけない事は絶対しない。」 なんて当たり前のルールが直接命に結び付いてしまうと言うものすごい場所だと思っています。
しっかりと準備をして挑む。それが何だか山に対する礼儀のような気がしているのです。
そんな思いが初心者の方に伝わればいいな、と思って書きました。
hirokoさんも日本各地の色んな山に登られて羨ましい限りですが、危ない思いもされてる
ようですね。
偉そうに言ってますが私もまだまだ修行中の初心者です。
お互いにしっかりと山の事を学びながら、これからも楽しく安全な山歩きをしましょう。
どうぞよい山行を
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