平ヶ岳
- GPS
- 14:07
- 距離
- 20.7km
- 登り
- 1,723m
- 下り
- 1,717m
コースタイム
- 山行
- 13:25
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 13:59
天候 | 曇りのち晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
崩落などの明らかな危険箇所はなし。全体として分かりやすい道。 |
写真
装備
個人装備 |
Tシャツ
ズボン
靴下
グローブ
ウィンドブレイカー
雨具
ゲイター
日よけ帽子
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
行動食
飲料
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
スマートフォン
スマートウォッチ
サングラス
ツェルト
ストック
ナイフ
|
---|
感想
久々に、やらかしたな〜という平ヶ岳。きついというのは周知のとおりで、なんなら平ヶ岳に向けてトレーニングしてくるくらいじゃないとだめなんだろうが、むしろ何もしていなかった中年おばさんはこのたび、猛烈にしんどかった。
この日、晴れたら平ヶ岳へ行こうと思っていた。山の天気ではよくあるように、予報は二転三転。でも二、三日前からは晴が確定っぽくて、非常に憂鬱な日々を過ごしつつ雨乞いするも効果なし。マジで登んのかよ〜とか思いながら山の準備をする。
山行前の数日間は、トレーニングどころか一日中PCの前に座りっぱなしで靴すら履かず、料理すらせず、立ち上がるのは風呂とトイレだけで歩数計は一日70歩とかのレベルだった。いよいよ出発する当日は早朝から肉体労働でなんとか血圧を上げ、昼に出発。夜間割引を適用するべく、しばらくは下道。
塩尻くらいまでは頑張ったけど、この時期の長時間運転って気をつけていても熱中症っぽくなる。夜間割引を諦めて高速へIN。もっと早くのっときゃ良かった。既にへろへろな状態で運転を続け、クライマックスの352号線は奥只見湖沿いの真っ暗なくねくね道。車酔い状態でさらに気分は最悪。駐車場に着いたのは22時過ぎ、既に五、六台は停まってただろうか。エンジンを停めると真の闇。とにかく眠って体力を戻さねば……と焦りながらの就寝。
人が動き出す気配で目を覚ましたのは午前三時。みんなはや!!起きてみた感じ、全然体調は戻っていない。車の中は暑くもなかったけど、快適な温度でもない。ましてや車中泊でよく眠れなかった。この感覚、嫌な予感しかしない。予定より早く動き出したけど、それでも全然やる気が出ず、せめてライトなしで歩ける明るさになるまでだらだらする。食べたくもないけどおにぎりを無理やり押し込み、水も流し込む。ああ気持ち悪い……こんな体調で名にしおう平ヶ岳登れるの??
まだ緩斜面の序盤から、こりゃだめだな、という体調。いつもは三十分も歩くとエンジンがかかる感覚があるけど、むしろどんどんしんどくなるばかり。後発の人たちからもどんどん抜かれ、途中で時間的に「これは私が最後尾だな」と察する。
暑さがつらいとは聞いていたし実際すごくつらかったんだけど、それ以上に悩まされたのがでっかいアブ。本当にしつこい。無視するとすぐに接近する。追い払うと接近する。要するに接近する。たまにチームを組んで波状攻撃も仕掛けられる。ただでさえペースを作れないのに、こいつらのせいでペースは乱れまくり、息も上がりまくり、激しい消耗の大きな一因になった。イカリジンの虫よけなんかハ?って感じでガン無視。平然と顔に止まろうとするし。ネット付き帽子とか、物理的に除けないと奴らには効きそうにもない。
この時期は日が長いので、最悪18時台の下山と設定し、頂上へ12時台に着くことを目指す。なんとかその目標は達成できたのでリタイヤはしなかったが、はっきりいってこれはもっと早い段階でのリタイヤ案件だったのでは、と下山した今は思う。
山頂付近は、一瞬疲れも吹き飛ぶ素晴らしい眺望だった。ザックを下ろして休み、もう周囲には誰もいなくなった平ヶ岳を満喫できたことは、確かに幸せなことではあった。下山のことを考えると手放しでは楽しめないけど、でも確かに楽しんださ。その時点では。
ランドマークの玉子石は外せない!なんてネットの情報は華麗に無視。頂点以外にこだわりはない。これまでの体験では、行動時間が6時間を超えると身体がきつく感じ始め、10時間を超えるともはや牛歩状態になる。ましてや体調が悪く、灼熱状態のこの日。行動時間は最終的に14時間だった。最後の痩せ尾根など、多分全然前進していなかった。トラロープを前に座り込み、息を整え、アブを怒鳴りつけ(どうせ誰もおらんし笑)、水を飲む。
私はかつて、山で泣いたことが一度ある。この日が二度目になった。
初めて泣いたのは山形の大朝日岳。最初から最後まで悪天候の中を十一時間半。暑くて、周囲は何も見えず、雲に包まれただひたすら登っては下りてを繰り返す。山にはたった一人。これが私のやりたいことなのか、と唐突に全てが馬鹿馬鹿しくなって登山する自分を罵りながら泣いた。まあこういう異常な精神状態って、要するに身体が極限まで疲弊すると起こることであって、子どもが疲れてぐずるのと同じことだ。通常の大人には起こらない。なぜなら日常生活ではそこまで疲労する前に行動を止めるから。でも山では限界!と思っても歩かねばならない。泣くというより怒りながら歩いた。
そして平ヶ岳。今回はもう、身体が限界だった。足もふらふら、腰も痛くて、頭も朦朧。隙あらば足が止まりそうになる。動きを止めても下山が遅くなるだけだ。そこで私は考えた。十年以上前に亡くなった愛猫ねずちゃんの最期はこんなものではなかったはずだ、それに比べりゃこんなもんちょろいだろう、痛いの辛いの言っていられるか――それが良くなかった。通常の精神状態ではねずちゃんのことは絶対に思い出さないようにしている。私には、思い出すと0.2秒で泣くものが二つある。一つがねずちゃんのこと。もうひとつはフランダースの犬最終話だ。
日中は聞かれなかった夜の虫の声を聞きながら、私はねずちゃんのことを思い出して号泣しつつ下山した。最後の最後で、これが呼吸器にも深刻なダメージを与えて精神的にも肉体的にも終末を迎え、屍となって歩き続けた。もはや分速5メートルとかそんな感じ。
駐車場が近づき意識を取り戻し始めると、周囲がやたらとブンブンうるさいことに気づく。頭を振っても手を振っても音は消えない。日は傾き、森の中はもう暗かった。なにが起こっているのか状況がよく分からない。恐怖におののきながら力を振り絞って登山道を出ると、私の周りはアブ団子ができていた。下山したらまずザックを下ろして、ゆっくり靴を脱いで、おトイレも行って、なんなら外で寝転んで……なんて妄想はすべて消滅。たった一台ぽつーんと残ってた車に飛び込み、アブが一匹も車内に入らなかったのだけは奇跡だが、汗だくの身体で運転席から見たものは、ガラスというガラスへ「血〜吸うたろか〜」とガンガン飛び込んでくるアブの群れなのでした。ヒッチコックかお前ら。
狭い狭い車内でザックを下ろし靴を脱ぎ着替え。もう死にそう。
平ヶ岳に登って、本当に良かったこと。それは、もう平ヶ岳に登らないとな〜って思わなくて良くなったこと。二度と来ることはあるまい。私には過ぎた山でした。
おそらく体調万全であってもキツい山であることは間違いないです。涼しくなってから登ろうかとも検討しましたが、これより6時間早く登れる…とかは絶対ないので、日の長さを優先して良かったかなと思っています。
来年の登頂目指して頑張ってください!
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する